30オーバーのおっさんの妄想力と勢いで書いた作品になります。
お見苦しいかと思いますが、よければご覧ください。
「ねぇ西片、勝負しようよ。」
夕暮れ時、いつだったか石の水切り勝負をした河原で、わたしは西片に勝負をけしかけた。
今度ばかりは、負けちゃうかもなぁ…ふふっ!
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「高木さん、あの…い、一緒に帰らない?」
珍しく西片の方から誘われた。
まぁいつも誘ってもらってるというか、誘うようにけしかけてるんだけどね。
でも今回は純粋な西片の意思だ。
どうしよう…すごーく嬉しい!
すぐに返事をしたいところだけど…
悪い癖だと自分でも思うけど、からかいたくてしょうがない。
「ふぅん…西片、わたしと一緒に帰りたいんだぁ。」
「なっ!そんなこっ!………うだよ…」
「んー?聞こえないなぁ。」
「そうだよっ!」
「なにがそうなのかなぁ。」
「高木さん!」
あはは!
顔真っ赤にしちゃって。ほんとからかうの楽しいなぁ。
まぁ、今はこのくらいにしといてあげよう。
「ふふっ。いいよ、一緒に帰ろ。」
「…うん。」
私たちは川沿いの道を歩いていた。橋を渡る手前のあたり。
「遅くなっちゃったね、もう空が真っ赤だよ。教室の掃除手伝ってくれてありがとね。」
「別にいいよ…」
…?
何だろ、西片なんか思い詰めてる?
からかったときの反応はいつもと一緒だけど…
またなんか企んでるのかな?
うーん、いつもなら考えてることが手に取るようにわかるんだけどなぁ…
よし!ここはひとつ、からかってなに考えてるか聞き出してやろう!
「ねぇにし…」
「高木さん!」
話しかけようとしたら向こうから名前を呼んできた。いきなりどうしたんだろう?
「その…ちょっとそこで…その…話さない?」
「…うん、いいけど…」
今日の西片ほんとにどうしたんだろう?いつも以上に変な西片。
…もしかして…うーん、どうだろ?
わたしは西片に促されて河原の土手を降りて橋の下に向かった。
夕暮れ時なので橋の下は結構暗くなっていた。
「…女の子をこんな暗いところに連れ込んで、西片はなにを考えてるのかなぁ。」
「っ!べっ別に変なことはしないよ!」
「変なことってなに?西片は何を想像してたの?」
「なっ何にも想像してないから!」
「ほんとかなぁ。」
「もうっ!高木さん!」
あはは!
よかった、いつもの西片だ。
「ごめんごめん。で?何を話すの?」
「…うん。その…」
安心したのも束の間、西片はまた思い詰めた顔し始めた。
暗くてよく見えないけど…顔がなんか赤いような…
…なんとなくわかってた。西片ずっとそわそわしてたし、こんなシチュエーションだし、なんとなくはわかってたけど…
「高木さん!俺…」
「うん、なに?」
「高木さんの事、好きです!」
時間が止まった。
「好きです」って言葉が頭の中で何度も何度も繰り返されて…その意味が理解できたとき…
あぁ、宙に舞うってこういうことなんだな。
こんなに嬉しいこと今まであったかな?
前に西片に夏祭りに夏祭りに誘われたことがあった。あの時もすごく嬉しかったけど、今回はそれと比較にならない。
どうしよう…すごーくすごーく嬉しい!
すぐに返事をしたいのに…
わたしも好き、大好きって言いたいのに…
悪い癖、拗らせちゃった。
「俺と、つき…」
「ねぇ西片、勝負しようよ。」
「つきあっ…え⁈勝負⁈」
あ、今の西片の顔、面白いな。だいぶ混乱してるみたい。
まぁ告白したらいきなり勝負だもんね、そりゃそうなるか。
「西片が勝ったら、西片の言うこと、なんでもひとつ聞いてあげる。西片も、わたしが勝ったらわたしの言うこと、なんでも聞いてね。」
ま、勝っても負けても結果はおんなじなんだけど。
ほんとに悪い癖。自分でも呆れちゃうよ。
でもこの方がわたしらしくて…
わたしと西片らしくていいかなって。
なんて、素直になれない言い訳かな。
でも、西片は…
「…うん、わかった!受けて立つよ高木さん!」
…西片のこんなに自信に満ち溢れた顔、初めて見たかも。
…ちょっとクリティカル。
「で、何で勝負するの?」
西片の問いに、河原に落ちている石を拾って答えた。
「水切り勝負しようよ。」
ここは前にも、西片と水切り勝負をした河原。西片、川に落ちそうになったわたしをかばってずぶ濡れになってたな。懐かしい。
…それに水切り勝負以外にも、もう一つ。
「…いいよ!あの時のリベンジを果たさせてもらうよ!」
前はわたしが勝ったけど、今回の西片はなんだか手強そうだ。そう簡単には負けないけどね。
「前みたいなハッタリは通用しないからね、高木さん。」
「わかってるよ。わたし、先に投げていい?」
「どうぞ!」
「じゃあ…えいっ!」
ぽちゃっぽちゃっぽちゃっぽちゃん。
わたしの投げた石は3回跳ねて水に落ちた。
「3回かぁ、いつも通りかな。」
「ふふん!」
西片もう勝ったつもりでいるな。でも、そう簡単にはいかないよ。
「ちなみに西片は最高記録何回だっけ?」
「…15回くらい…かな。」
ふふっ。また見え張っちゃって。そんなんだからわたしにイジワルされるんだよ♪
「それなら、わたしの3回と15回を足して、18回水切りしたら西片の勝ちってことで。」
「エェェっ⁈」
あはは!
今いい顔したなぁ。楽しいなぁ♪
「だって普通にやったら絶対に西片が勝つでしょ?ちょうどいいハンデだと思うけど。」
「うっ!…うーん…」
俯いて悩んでる西片。流石にちょっと難易度高かったかな?
勝っても負けても結果は同じだし、いい顔も見せてもらったから、もう少し優しくしてあげようかな。
そう思って声をかけようとした時、しばらく俯いていた西片は顔を上げて言った。
「それでいいよ高木さん」
そう言うと西片は、少し選んで石を拾い、川のそばに立ち、こちらに振り向いて、わたしの目をじっと見据えてこう言った。
「俺、今度ばかりは絶対に勝つから。」
…今まで西片の表情は色々見てきた。
恥ずかしそうな顔も、悔しそうな顔も、悪だくみしてる顔も、たくさん見てきた。だけど…
こんなにカッコイイ顔は初めて見た。
今まで何度かあったけど…
間違いなく最高に効いた…
…クリティカル。
効きすぎてぼーっとしてしまっているわたしをよそに、西片は川の方を向いて構えた。
少し助走をつけて大きく振りかぶって投げた石は…
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「すごいね西片。まさか向こう岸まで跳ねてっちゃうなんて。」
「…ま、まぁね…」
結果は言った通り、西片の投げた石は川の向こう岸まで届いた。しかし…
「まぁ、10回くらいしか跳ねなかったから、水切り勝負はわたしの勝ちなんだけどね。」
「うっ…うん。」
すごいとは思うし西片すごくカッコよかったし、正直負けでもいいと思ったけど勝負は勝負。
それではわたしは勝利者の権利を行使させてもらおうかな♪
「西片、わたしのお願い、聞いてくれるよね。 」
「…うん」
西片はなんだか照れくさそうに頷いた。わたしが何をお願いするか、なんとなくわかっているのかもしれない。
わたしは、西片が好きです。付き合ってください。
なんて。
言わないけどね。
やっぱり最初は西片に言って欲しいから…
西片の目を見つめて…
「西片がさっきわたしに言ってくれたこと、もう一回言って。」
西片は、夕日でも誤魔化しきれないほど顔を真っ赤にして、それでもわたしの顔から目を背けずに…
「おっ…俺…高木さんの、事が…好きです!俺とっ…付き合ってください!」
顔が熱い
涙が出てきそう
頭の中が
嬉しさで溢れかえってる。
「わたしも…西片のことが大好きです!これからも、よろしくね!」
わたしの返事に西片は、今まで見たことないくらいの満面の笑みで…
「うん!よろしくね、高木さん!」
ほんとに幸せな時間。
西片の見たことない表情が見れて。
西片に好きって言われて。
西片に好きって言えて。
「うん♪これからもいっぱいからかわせてね♪」
「えぇっ⁈そっち⁈」
「あっははは♪」
また出ちゃった、悪い癖。
でも、これがわたしと西片っぽいかな。
「帰ろっか、西片。」
「…そうだね。」
…あと一つ、残ってる勝負がある。
わたしは西片に手を差し出して…
「手、繋いで帰ろ。」
「えぇっ⁈」
大袈裟に後ずさりする西片。
…やっぱり恥ずかしいのかな?
まぁ今日西片いっぱいがんばってくれたし、ちょっぴり残念だけどこれくらいにしといてあげよう。
「恥ずかしがり屋なんだから。」
そう言って歩こうとした時、西方から手を繋いできてくれて…
「そ、その…俺たちもう…そういう関係だし…手繋ぐなんて、別に大したことじゃ…」
『そんなにわたしに勝ちたいなら、手繋いでくれたら西片の勝ちでいいよ。』
「…よかったね、西片。」
「ん?なに?」
「なんでもない♪それよりさ、わたしたち、そういう関係って、どういう関係?」
「なっ!そ、それは、あの、こっ恋人…」
「んー?聞こえないなぁ。はっきり言ってくれないとわかんないよ。」
「もうっ!高木さん!」
「あははは♪」
今度ばかりは、負けちゃったなぁ…ふふっ♪