西片視点です。
お見苦しいかとは思いますが、よければご覧ください。
「高木さん!俺…」
夕暮れ時、いつだったか石の水切り勝負をした河原で、俺は再び勝負に出た。
今度ばかりは、絶対に勝つ!
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「高木さん、あの…い、一緒に帰らない?」
うぅ…やっぱり自分から誘うのは恥ずかしい。
それに、俺から誘ったらきっと高木さんは…
「ふぅん…西片、わたしと一緒に帰りたいんだぁ。」
ほら来た!やっぱりからかわれたよ!
「なっ!そんなこっ!………うだよ…」
「んー?聞こえないなぁ。」
「そうだよっ!」
「なにがそうなのかなぁ。」
「高木さん!」
「あはは♪」
高木さんめぇ!
あははじゃないよまったく!
せっかく勇気を出して声かけたのに!
「ふふっ。いいよ、一緒に帰ろ。」
「…うん。」
…まぁいつものことだし、誘えたからいいとするか。腕立てのノルマは増えたけど…
「あぁ、でもわたし今日日直で教室の掃除あるけど…」
「待ってるからいいよ、なんなら手伝うし…」
…あっ!しまった!
「ふぅん…そんなにわたしと一緒に帰りたいんだぁ♪」
くそぅ!油断した!
また腕立てが増えてしまったぁ…
俺たちは川沿いの道を歩いていた。橋を渡る手前のあたり。
「遅くなっちゃったね、もう空が真っ赤だよ。教室の掃除手伝ってくれてありがとね。」
「別にいいよ…」
掃除中はずっとからかわれっぱなしだったなぁ…
よく考えたら絶好のタイミングだったのに…
最大のチャンスを逃してしまった…
ついでに腕立てのノルマも大きく増えた…
最近はっきり気付いた俺の高木さんに対する気持ち…
今日こそはきちっと伝えたい!
もうあまり時間もないし…
ええい!俺も男だ!
覚悟を決めろ!西片!
「高木さん!」
高木さんはキョトンとした顔で俺を見ている。
今ここで!…い、いや、流石に道のど真ん中は…
そうだ!あの橋の下にしよう!
「その…ちょっとそこで…その…話さない?」
「…うん、いいけど…」
俺は高木さんをつれて河原の土手を降りて橋の下に向かった。
夕暮れ時なので橋の下は結構暗くなっていた。これなら人に見られることもない。
ん?こんな暗いところに女の子を連れ込むのは…
「…女の子をこんな暗いところに連れ込んで、西片はなにを考えてるのかなぁ。」
し、しまったー!
「っ!べっ別に変なことはしないよ!」
「変なことってなに?西片は何を想像してたの?」
「なっ何にも想像してないから!」
「ほんとかなぁ。」
「もうっ!高木さん!」
くそぅ!…いや、今のは完全に俺の自爆だ。
というか、高木さんを不安がらせたらどうするんだ俺!
せっかく2人になれたのに!
「あはは♪ごめんごめん。で、なにを話すの?」
よかった、とりあえず不安がってはないようだ。
気を取り直して…
「…うん。その…」
言え!言うんだ俺!
昨日散々家で練習したじゃないか!お母さんに気味悪がられるほどに!
ここで伝えなきゃ男じゃない!
「高木さん!俺…」
「うん、なに?」
うおおおおおおおおおお!
「高木さんのこと、好きです!」
言ったああああああああ!
続けえええええええええ!
「俺と、つき…」
「ねぇ西片、勝負しようよ。」
「つきあっ…え⁈勝負⁈」
えっ⁉︎えっ⁉︎勝負⁉︎なにそれおいしいの⁉︎
「西片が勝ったら、西片の言うこと、なんでもひとつ聞いてあげる。西片も、わたしが勝ったらわたしの言うこと、なんでも聞いてね。」
い、いきなり勝負って…
全然理解が追いつかない!どういうこと…
…も、もしかして…フラ、れた、のか?
いやいや冷静になれ俺!まず状況を整理しよう。
俺は高木さんに告白した。
高木さんは勝負しようと言ってきた。
勝った方が負けた方になんでも一つ言うことを聞く。
…ううん、やっぱり少し理解が追いつかないけど、まだフラれたわけではなさそうだ!
というか、勝てば高木さんに言うこと聞いてもらえるんだから、勝てばいいじゃないか!
それなら…!
「…うん、わかった!受けて立つよ高木さん!」
今まではずっと負け続けてきたけど、この勝負は絶対に負けられない!
勝って俺の気持ちを…高木さんが好きだって改めて伝えるんだ!
「で、何で勝負するの?」
高木さんは石を拾ってこう言った。
「水切り勝負しようよ。」
そう言えばここは前にも高木さんと水切り勝負した場所だった。
あの時は勝負にも負けて、川に落ちてずぶ濡れになって、情けない限りだったなぁ…
…あとなんか忘れてるような…
まあいい!
「…いいよ!あの時のリベンジを果たさせてもらうよ!」
前は高木さんの心理作戦にまんまと嵌められて負けてしまったが、今回はそうはいかないよ!
「前みたいなハッタリは通用しないからね、高木さん。」
「わかってるよ。わたし、先に投げていい?」
「どうぞ!」
「じゃあ…えいっ!」
ぽちゃっぽちゃっぽちゃっぽちゃん。
高木さんの投げた石は3回跳ねて水に落ちた。
「3回かぁ、いつも通りかな。」
「ふふん!」
3回なら全然余裕だな!なんなら少しハンデをあげてもいいくらいだ!
高木さんにそう提案しようとした時。
「ちなみに西片は最高記録何回だっけ?」
「…15回くらい…かな。」
…ほんとは13回。前よりは記録が伸びたけど…15回'くらい'だから誤差の範囲って事で…
「それなら、わたしの3回と15回を足して、18回水切りしたら西片の勝ちってことで。」
「エェェっ⁈」
いやいや!ハンデをあげようとは思ってたけども!
流石に厳しい…
「だって普通にやったら絶対に西片が勝つでしょ?ちょうどいいハンデだと思うけど。」
「うっ!…うーん…」
…反論の余地がない。
くそぅ!見栄張るんじゃなかった!
ここはもう少し難易度を下げてもらうように交渉するか…
…いや、そんなんじゃカッコ悪い。
ただでさえここまで、情けない所を見せたんだ。
そんなんじゃ胸を張って高木さんに告白できない!
「それでいいよ高木さん。」
俺は水切りしやすそうな石を選んで川辺に立ち、高木さんの目を見据えてこう言った。
「俺、今度ばかりは絶対に勝つから。」
そうだ。勝つんだ!絶対に勝つんだ!
俺の気持ちを!高木さんに伝えるんだ!
少し助走をつけて大きく振りかぶって投げた石は…
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「すごいね西片。まさか向こう岸まで跳ねてっちゃうなんて。」
「…ま、まぁね…」
結果は高木さんの言った通り、俺の投げた石は川の向こう岸まで届いた。しかし…
「まぁ、10回くらいしか跳ねなかったから、水切り勝負はわたしの勝ちなんだけどね。」
「うっ…うん。」
勢い余ってちょっと遠くに飛ばしすぎた…
はぁ…負けてしまった…
しかも凄いのか残念なのかわからないちょっと微妙な感じで負けてしまった…
締まらないなぁ…
「西片、わたしのお願い、聞いてくれるよね。 」
「…うん」
高木さん、どんなお願い言ってくるんだろう…
…なんだか嬉しそうな顔してる気がする。
勝負に勝ったから?それとも…
…もしかして、高木さんも同じ…
高木さんは俺の目を見つめて…
「西片がさっきわたしに言ってくれたこと、もう一回言って。」
夕日で分かりにくいけど、高木さん顔が赤い?
…どうしよう…めちゃくちゃ可愛い。
じゃなくて!
さっき言ったこと…
…あ、あああ!俺の気持ち…!
た、高木さんめ!そう来るか!
え?でもそれって…そういう事?
…改めていうとなると、死ぬほど恥ずかしい…
いや!俺も男だ!高木さんの顔を、目をしっかり見て!言うんだ!西片!
「おっ…俺…高木さんの、事が…好きです!俺とっ…付き合ってください!」
やばい、全身が熱い!特に顔が熱い!
大丈夫か俺⁈ほんとに燃えてるんじゃないか⁈
高木さんは…
やっぱり顔が赤くなってる⁈目も潤んで…
「わたしも…西片のことが大好きです!これからも、よろしくね!」
時間が止まった。
「大好きです」って言葉が頭の中で何度も何度も繰り返されて…その意味が理解できたとき…
あぁ、俺今なら最強の魔王とかでもワンパンで倒せる気がする。
こんなに嬉しいことは今までなかった。
嬉しくて嬉しくてたまらない!
俺は嬉しさ余って満面の笑顔で…
「うん!よろしくね、高木さん!」
ほんとに幸せな時間。
高木さんとの勝負には負けたけど。
高木さんに好きって言えて。
高木さんに好きって言われて。
「うん♪これからもいっぱいからかわせてね♪」
「えぇっ⁈そっち⁈」
「あっははは♪」
….高木さんめ。
まあでも…
このほうが俺と高木さんらしいかな。
「帰ろっか、西片。」
「…そうだね。」
…なんだろう。
やっぱりなんか忘れてる気がする…
そんな事を思っていると、高木さんに手を差し出されて…
「手、繋いで帰ろ。」
「えぇっ⁈」
ええっと、流石に恥ずかしいと言うか、これ以上はほんとに燃えそうで怖いと言うか…
大袈裟に後ずさりしてしまった俺を見て、高木さんはこう言った。
「恥ずかしがり屋なんだから。」
笑ってるけど、少し残念そうな顔で…
…くそぅ!情けないぞ俺!高木さんにこんな顔させるなんて!
俺は先に行こうとする高木さんの手を取って…
「そ、その…俺たちもう…そういう関係だし…手繋ぐなんて、別に大したことじゃ…」
そ、そうだよ!別に手を繋ぐくらい…
手を、繋ぐ?
「…よかったね、西片。」
高木さんがボソッと何か言ったけど…
「ん?なに?」
「なんでもない♪それよりさ、わたしたち、そういう関係って、どういう関係?」
高木さんめええええ!
「なっ!そ、それは、あの、こっ恋人…」
「んー?聞こえないなぁ。はっきり言ってくれないとわかんないよ。」
「もうっ!高木さん!」
「あははは♪」
俺、今日何回腕立てすればいいんだろう…
今度ばかりは、勝ちたかったなぁ…