傷になれる性格だったらいいなぁ(小声)
もう何年たったのだろうか。
あの人が消えて。
止まり続けた時計は進むことを忘れただ振り子を揺らしているだけであった。
この薬指の白銀のリングをいくら眺めてもあの人は帰ってこなかった。
桜が散り
太陽が鎮守府を照らし
秋の特有の風が通り抜け
雪が降る
そしてまた桜が咲き誇り
繰り返す。
「かーがさんっ♪」
そんなどことなく狂喜と無邪気を混ぜたような声とピタリと首筋に触れる冷たい物体。
鉄十字のマークが入った黒いマント
黒と白を主体とした無数の勲章がじゃらじゃらと音がなるほどつけられた改造されたナチスの親衛隊の服
満月のように白金に輝く中央につけられた白銀の鷲が装飾の独特な帽子
明らかに不要なぐらい大きなサングラス
女性のようにしなやかで腰まで延びている黒髪
「提督......」
「YES,I AM!」
そっと確かめるようにその頬を撫でる。
「今日は良いもの持ってきたんだ」
そうい言いつつ持っていた袋から色々な支障を取り出す。
「似合うかな?一回着てみてくれよ」
「......まぁ、えぇそのぐらいなら」
いつもの弓道着を脱ぎ捨てよくわからない服
ぴっちり
スーツっぽいと思ったがそれは全身まではなく。
脇とかが一部丸出しだった。
「提督」
「わー綺麗......さてここで種明かし」
そういい、服の裏から一枚のタブレットを取り出しそっと見せる。
『蒼藍の誓い』
察した。
「これ......そう言うことですか」
「一目見て傷に成りたいと思っただってしょうがないじゃないか、クールな加賀さんがなにも救えずなにも得ずしまいにゃしまいにゃ無限ループぎゃん泣きシーン、これで興奮しない俺は居ない、そして定期的に曇らせるのも楽しいしあと一歩で届くゴールを自分で蒔いた種で自滅するそのさまは本当にいいじゃん、だから逆に考えるんだ、超活発そうな加賀さんの目の前で無惨な死を遂げればどれだけ傷になるか、いやまぁハッピーエンド欲しいならあげるよ、二人だけの世界だけどさ、そうそこ、その愛を取るか正義を取るかで苦しみ続ける加賀さんは本当に美しく魅力的なんだよ」
「............それだけですか、そうやってハッピーエンド厨にタグでハッピーエンド着けてヒロイン精神衰弱、主人公とヒロイン二人の世界でエンドをハッピーエンドと信じて止まず、純粋な救いや尊さを求めて来た人達を苦しませて何が楽しいのですか」
「は?ハッピーエンドってのは主人公視点だぞ、『全体の』ハッピーエンドってなんだそれ、馬鹿言うなよ、ハッピーエンドの定義調べてこい、あと最近なんか尊い尊い言っとけば良いみたいなTwitter見てると尊いがなんか軽く思えるから重いものした簡単だね♪」
「......どうすれば誰一人苦しまずハッピーエンドになるのですか」
「じゃあ、早く改二なってよ、加賀さんが改二ならないから主人公補正的なあれが乗らずにずっと気分でバッドエンド書いてるんだろうが、ねぇ、あの妖精〆て貰えないの、ねぇ!!!あぁもうどうでもいいや鋼鉄すりゅ!!」
ただ加賀さんが加賀さんの服着るのがしたかっただけ