機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズofアストレイ 作:黒アライさん
ビスケット「と、いうわけで」
ビスケットはそう切り出すと、声を大きくしてイサリビのブリッジにいる者達に報告する
ビスケット「テイワズのボス、マクマード・バリスタンさんと交渉することが決まりました!!」
シノ「うぉぉーー!!」
チャド「マジかよ…!やったなおい!」
ダンテ「ったりめぇよ!苦労したんだぜぇ?俺達!」
ユージン「それは艦内にいた俺達も同じだっての!!」
シノ達はブリッジではしゃぎ周り、喜びを全体で表現していた。まだテイワズの傘下に入れると決まったわけではないが、なにももたない少年少女達が、テイワズのボスと交渉できるまでに進めたのは、紛れもなく彼らの努力と強運のおかげである。
しかし、オルガが落ち着いて皆を諫める
オルガ「慌てんな…まだテイワズの傘下に入れると決まったわけじゃねぇんだ」
シノ「あぁ、そっか…」
ユージン「そうだぜ、まだなんとか食いつないでいる状態だ。俺達はここからまたさらに上がって行かなくちゃいけねぇんだかんな…それで、こっからどうするんだ?ビスケット」
ユージンがこれからの道のりについてビスケットに聞くと、ビスケットはこれからの予定について答える
ビスケット「これから俺たちは、タービンズの方達と一緒に歳星に向かいます」
シノ「歳星?なんだそりゃ?」
シノが聞くと、オルガが答える
オルガ「なんでも、テイワズの本拠地である、デッケェ艦なんだとよ」
ユージン「ん?ちょっと待てよ。本拠地は木星なんじゃねぇのか?」
ユージンが質問する。確かに、ずいぶん前の会議に、テイワズの本拠地は木星だと言っていた
オルガ「あぁ…言い方が悪かったな。確かに本拠地は木星だ。それは変わりない。だが、相手はテイワズっていうとにかくデケェ組織なんだ。移動できる拠点も、必要だろ?」
ユージン「…なるほどな、わかった」
ユージンは納得すると席に座った。すると、今度はフミタンから報告が入る
フミタン「団長さん、火星と連絡が繋がりました」
オルガ「そうか、んじゃあ、こっちの状況を伝えるんで「その前に」
フミタン「あちらからメールが来ている様ですが…」
オルガ「何?」
ーーイサリビ ブリッジ付近 廊下ーー
オルガ「…」
ビスケット「…」
オルガ・ビスケット「「ハァ…」」
2人は窓から宇宙を見ながら、同時に溜息をついた
ビスケット「…まさか、火星の運営資金が底をつきそうだなんて…」
オルガ「…もう少し持つかと思ったんだがな…」
ビスケット「ギャラルホルンに目をつけられてちゃ、ろロクに商売なんてできないもんね…なんとかしないと…」
オルガ「…」
2人は頭を悩ませながら、今後についてのことを考えていく…
ーーハンマーヘッド モビルスーツ格納庫ーー
アミダ「…」
アミダは格納庫に入り、今回の戦闘の被害総額を確かめていた
ラフタ「あぁ!姐さん!」
アジー「話は終わったんですか?」
すると、モビルスーツの整備が終わったのか、ラフタとアジーがアミダに寄ってくる
アミダ「あぁ、あの子たちを連れて、歳星に帰ることになったよ」
アミダがそういうと、ラフタがうずうずしながらアミダに問う
ラフタ「あの白いモビルスーツに乗ってた子も来てるんですよね!?」
アミダ「さぁねぇ?アタシは見てないよ」
アジー「気になるのかい?」
アジーは白いモビルスーツがなんだったかを思い出しながらラフタに答える。すると、ラフタはまるで自分の事のよう自慢気にバルバトスのことを語った
ラフタ「中々いないからねぇ。アタシをあそこまでアツくしてくれるのは!ま、もちろんダーリンほどじゃ無いけどさ?」
アジー「はいはい」
元気に語るラフタを横目に、アジーは呆れたように笑いながら軽く返事する
アミダ「でもまぁ、ホントにいい子達だと思うよ」
アミダはそう言うと、ふとしたことを思う
アミダ(…素直に名瀬の言うことを聞いていれば、楽できたろうに…)
ーーイサリビ モビルスーツ格納庫付近ーー
ザッ…ザッ…
三日月「…」
三日月はいつも通りの無表情でモビルスーツ格納庫に向かっていた。だが、その顔は無表情ではあるが、心無しか、少しばかり覇気がなかった
三日月(…俺は…)
ユーリ「三日月」
三日月「!」
三日月が振り返ると、そこにはいつも通り、真っ白なハロを抱えたユーリがいた
ユーリ「…何、悩んでるの?」
三日月「え?…いや、別に悩んでなんて無いけど」
三日月は不思議そうにそう聞くが、ユーリはその言葉を聞くと、呆れた様に語る
ユーリ「…無自覚なんだ…そんな顔して、なにも悩んでいませんなんて、説得力無い」
三日月「…俺、そんな変な顔してた?」
三日月は自分の顔を触って確かめた。ユーリは壁にうっかかりながら三日月に聞いた
ユーリ「…もう一度聞くけど、何悩んでるの?」
三日月「…」
三日月も同じようにユーリの隣で壁に寄りながら言った
三日月「…俺、勝てなかった」
三日月「皆を、危険に晒した…俺がもっと早く敵を倒せていれば…」
三日月はそういいながら手首につけている青いミサンガを握る。
ユーリ「…三日月、貴方は敵を殺すことだけが、貴方の全てなの?…違うでしょ?」
ユーリ「三日月は、必死に戦い、そして生きて帰ってきた。それでいいじゃない…それだけで、オルガ達は嬉しいと思う」
ユーリの言葉を聞いた三日月は、宇宙を見ながら静かに問う
三日月「…勝てなくても、いいのかな?」
ユーリ「負けてもいい。どんなにボロボロになってもいい…でも死んじゃダメ。生きていれば、何度だってやり直せる…皆が生きて、そして集まり合えば、そこが私達の家になる…簡単に言うと」
ユーリ「生きるほうが、大事ってこと」
三日月「…そっか」
三日月はその言葉に納得したのか、少し微笑みながらユーリに礼を言う
三日月「…ありがとうユーリ。少しスッキリしたよ」
ユーリ「別にいい。借りを返しただけだから」
三日月「…借り?そんなものあったっけ…?」
ユーリ「少し前、私が夢を見て泣いていたときに励ましてくれた」
三日月「…そういえばそんなこともあったな」
三日月は思い出したようにいった。ユーリは自分の泣き顔を思い出して欲しくなかったのか、三日月の背を押しながら話を変える
ユーリ「…早く。格納庫に行くんでしょ?」
三日月「え?あ、そうだった…でも、ユーリもくるの?」
ユーリ「アビスの整備は私にしかできない」
三日月「そういえばそうだったね…じゃあ行こうか」
ユーリ「…うん」
ーーイサリビ モビルスーツ格納庫ーー
ウィーン…ガコン!
おやっさん「コラァ!そこ気ィつけろって言ってんだろぉ!」
ライド「す、すんません!」
そこでは前の戦闘で損傷したバルバトスやグレイズ改を整備する子供達がいた
オルガ「おーい!おやっさん!」
おやっさん「んお?あぁオルガか」
オルガ「どうだ?調子は」
オルガのその言葉に、おやっさんは溜息をつきながら整備状況を報告する
おやっさん「グレイズの方は、まだ予備パーツがあるし、アビスは言わずもがな…問題は…」
おやっさんはそういいながらバルバトスの頭部を下から見上げる。そこには肩部に座っている三日月がいた
オルガ「ミカァ!」
三日月「!、オルガ」
オルガは三日月を呼ぶと、三日月のところに登って行く
三日月「うまく行ったんだって?」
オルガ「あぁ、なんとかな…ミカもよくやってくれたな」
三日月「いや…今回、俺はあまり役に立てなかった…ごめん」
オルガは三日月が謝るのを見て、慌てて問う
オルガ「な、何言ってんだよミカ!お前は充分よくやったよ」
三日月「…やっぱり、そう言ってくれるんだ」
オルガ「そりゃぁ、当たり前だろ?ってか、わかってて聞いたのかよ」
三日月「ユーリが、そう言うだろうって言ってた」
オルガ「…ユーリが?」
シャッ…シャッ…
ユーリ「…」
オルガがユーリを見ると、そこにはアビスのコクピットハッチの上で愛用のナイフを研いでいるユーリの姿があった
三日月「…とにかく、このままじゃダメだ。もっともっと強くなって…生き続けないとね」
オルガ「…そうだな、俺も、もっと頑張らねぇとな」
オルガ達はバルバトスの剥き出しになったフレームを見ながら、そう決心した…
十日後…
ーーハンマーヘッド 客室ーー
コッ…コッ…
ガチャ…
ユーリ「…」
名瀬「…よぉ、来たか、ユーリ」
名瀬はソファに座り、自分が愛飲している安酒を飲みながらユーリにそう言った。
ユーリがこのハンマーヘッドの客室に来た理由は、単純に名瀬から2人だけで話がしたいと言われたからだ
ユーリ「…なんですか?話って…」
名瀬「とぼけんなよ…お前が一番よくわかってるだろ?」
名瀬の言葉に、ユーリは若干顔をしかめながら確認する
ユーリ「…何故タービンズを無断で抜けたか、ですか?」
ユーリのその表情を見て、何故は安酒の入ったグラスを置いた
名瀬「誤解のないように言っておくぞ?俺は別にお前が抜けたことを責めちゃぁいねぇ…もともと、付いてきたい奴が勝手について来いってのが俺の船だからな。俺ぁ単純に、理由が知りたいんだ。あまり不自由な思いはさせてなかったと思うんだが…まぁとにかく、座れよ」
名瀬はそういいながらもう一つのグラスに自分と同じ酒を注ぎ、対面に置く
コトッ…
ユーリ「…」
グイッ!
名瀬「おっ」
ユーリはそれを受け取ると、一気に飲み干した
名瀬「…いい飲みっぷりだが、本当に飲むとは思わなかったぜ。お前のことだから、まだ未成年だから飲まないとでも言うと思った」
名瀬はそういいながら、空になったユーリのグラスにまた酒を注ぐ
ユーリ「…今回の事は、少し言いづらいから…お酒の力を借りたくなりました」
ユーリは既に少し頬を赤く染めながらもそう言った。名瀬はその様子を見ると、深くは追求しなかった
名瀬「そうか…そういや、その敬語、やめていいぞ?前々から思ってたが、お前に敬語はあってねぇよ」
名瀬はグラスを振り、カラカラと氷の揺れる音を鳴らしながらそう言った
名瀬「ところでどうだ?中々上手いだろ?そこら辺に売ってあるなんの変哲も無い安酒だが、俺にとっては思い出の品なんだよな」
ユーリ「…知ってる…昔、名瀬さんが飲めない私に、お酒の代わりに昔話を聞かせてくれたから…」
名瀬「…そういや、そうだったな…そんなことも、あったなぁ…」
名瀬は感慨深そうにそう答える
名瀬「…なぁ…教えて、くれるか?」
ユーリ「…」
コクッ…
ユーリは静かに頷き、語り出す
ユーリが傭兵になったのは、母親であるアメリアの死が告げられてからすぐだった。ユーリが傭兵として働く一年前、アメリアの乗っていたケイオス・アストレイ…今で言う、アビス・アストレイの腹部には、グッサリと、鉄製のブレードが2、3本突き刺さっており、木星近くの資源衛生にぶつかり、静止していた状態で見つかった。それを名瀬が偶然仕事中に見つけ、鹵獲したのだ。
名瀬はアメリアのことはよくモビルスーツ関連のことで知り合い程度には知っており、娘を養う為に傭兵をやっているのだと聞いていた。名瀬は顔見知り程度であったが、とにかく心配し、アストレイのコクピットを見たが、そこには所々大量の血で汚れており、煤で黒く汚れた青い鈴付きのリボンがあるだけの、無人のコクピットであった…そして、そのコクピット内の隅に、半分血で汚れた真っ白なハロがあり、そのハロは「アメリア!アメリア!」とざっと叫びながら、一つの写真を体の隙間に挟んでいた
ハロ「アメリア!アメリア!アメリア!アメリア!」
名瀬「…わかったから!ちったぁ黙ってろっ!…あん?お前何挟んで…」
ピラ…
名瀬「…!こいつぁ…!?」
名瀬の見つけた一枚の紙切れは、アメリアと、その旦那と思われる銀髪の男と、幼い少女が笑いながら寄り添い合う写真であった。そして、その裏には、彼女の住んでいる住所と思しき言葉が書いてあった
そこからの名瀬の行動は早かった。もともと名瀬はなんでも放っておけない性格であった。だからこそ、その一枚の写真の情報をもとに、アストレイをできる限り修復し直し、それを持ってその住所と思しき場所に行った。全ては、母親を待っているであろう、1人の少女を救う為に…そして、そこには確かにポツンとかなり町外れのところにある一つの家があり、幼い銀髪の少女が1人だけいた。名瀬はハンマーヘッドで独自に運んできたアストレイを近くに下ろし、その少女に告げた
ユーリ「…貴方、誰…?どうして、お母さんの機体を持ってるの?」
ユーリは警戒心を最大限に高め、いつでも攻撃できるように背中の後ろでナイフを握っていた
名瀬「…その、お前さんの母親なんだがな…」
名瀬「…亡くなった…」
ユーリ「…え?」
名瀬から急に告げられた母親の死に、ユーリは最初は嘘だと思ったが、母親がいつも大事にしていたアストレイが本物であることがわかると、ユーリは取り乱し、泣き叫びながら家に篭った。名瀬も、出来る限り側にいようとしたが、家はどこもかしこも戸締りがされており、入ることは出来ず、何度呼びかけても反応が無いことから、結局数日分の食料と、一枚の写真と鈴付きのリボン置いてその場を離れた…
ユーリ「…」
グスッ…
ユーリ「…お父さん…あのね、お母さんも…死んじゃった…私を置いて、死んじゃった…」
ユーリは一枚の写真を握りしめながら呟く
ユーリ「…あんなに、死なないでって…帰ってきてって…いったのに…!」
ユーリ「…お母さんの、嘘つき…」
ユーリはずっとずっと泣きながら、1人過ごしていた。が、ある時少女は、最愛の人を失った寂しさを紛らわそうと、一つのことを思いつく
ユーリ「…お母さんの、役目…私が、やらなきゃ…」
チリリン…
アメリアが生前やっていた役目、それはアストレイにもついている5機のGNドライブを破壊することである。今は3機破壊されているが、残りの物も破壊する為に、彼女は心の無い深海のような青い瞳をアストレイにむけ、写真と共に置いてあった鈴付きの青いリボンを髪につける
それから一年後の話だった。名瀬はいつもどおりに仕事をし続け、タービンズとしてテイワズの中で名を上げていた。その時であった。仕事の関係で危険な商売をすることになり、護衛を雇おうとした時、鈴付きの噂を聞いた。既に死んだはずのアメリアが名乗っていた鈴付きの噂が、今なお騒がれていることに不審がり、まさかと思って依頼すると、あの時の黒いアストレイと、少し髪の伸びたユーリが現れた。
名瀬は当然驚き、彼女から何故傭兵などをやっているかなどの理由を聞いた。それを聞いた名瀬は、とにかく心配で心配で、自分も少し手伝ってやるからここに残れと言った。ユーリは断りつつも、名瀬の周りの女性達にも説得され、最終的に、共に行動するようになった
ユーリ「…私も、出て行きたくなんてなかった…ここは私にとっても、凄く居心地が良くて…まるで新しく家族ができたかのようにさえ思えた…でも…」
ユーリ「…当然、私は気になった。どうして他人である私に、ここまで優しくしてくれるのだろうって…そして私は一つの考えについた。私がお母さんの娘だから優しくしてくれるんだって…」
名瀬「…ちょっと待て、それ「わかってる」
ユーリ「名瀬さんがそんなことで私を拾ってくれた訳じゃないのは、《今なら》わかる…でも、昔の私は、そう思うと不安だった…もしそうなら、いつかこの人達は、私にお母さんにとっても、自分達にとってもなんの利がないとわかると、捨てるんじゃないかって…」
ユーリはグラスを握りしめながら下を俯きつつ話を続ける
ユーリ「私は、もしそうなったら、今度こそなにかが壊れると思った…私の中の何かが…だから、自分から出て行ったの。もう、失う苦しみを味わいたくなんてないから」
名瀬はユーリの話を聞き終わると、追加の安酒を自分のグラスに注ぐ
名瀬「…あいつらはどうなんだ?鉄華団…あいつらは、お前を捨てるとは思わねぇのか?」
ユーリ「…鉄華団は、私の事を知らなかった。私の母親の事も、何も…それでも、私を家族として迎えてくれたから…」
グイッ
ユーリはそこまで話すと、またも自分のグラスに注がれた酒を飲み干し、桃色に染まった顔で名瀬を真っ直ぐと見ながら告げた
ユーリ「私は、鉄華団を信頼し、共に戦う事を決めた」
名瀬「…そっか」
名瀬はその言葉を聞くと、満足したように酒を飲む
名瀬「お前がそこまで言うってんなら、俺からは何も言わねぇよ…達者でな…」
ユーリ「…ごめん、名瀬さん」
名瀬「なんで謝る?謝るような事言ったか?」
ユーリ「最初から今まで、ずっと…迷惑かけてきたから…」
ユーリは申し訳なさそうに俯くと、名瀬は近寄り、ユーリの小さな頭に手起き、撫でながら言った
名瀬「いいんだよ…お前がどこに行こうと、このタービンズの家族であることに変わりはねぇ…アミダ達も、お前がいなくなってからもずっとそう言ってた…」
ナデナデ
ユーリ「…ありがとう、名瀬さん」
コテッ…
名瀬「…ん?おい、ユーリ?…寝ちまったか…」
ユーリは涙目になりながらも名瀬に礼を言い、そのまま眠ってしまった
名瀬「…まぁしゃあねぇか、あんだけ呑んでりゃそりゃ眠たくもなるわな」
名瀬はユーリを抱え、一つの部屋のベットに休ませた
名瀬「…ユーリのこと、頼んだぜ…」
名瀬「鉄華団…」
名瀬は1人、そう呟いた…
…はい!如何でしたか?なのだ!よければ感想など下さいなのだ!それではまた次回も読んでくださいなのだ!