機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズofアストレイ 作:黒アライさん
名瀬「で?改まって話ってなんだ?」
名瀬はユーリと話し合えて数日後、オルガとビスケットに話があると言われ、またも客室に足を運んでいた
ビスケット「そのことなんですが…とりあえず、これを」
スッ…
ビスケットが手に持ったていたタブレットを名瀬に渡した。名瀬はそれを見ると、少し驚いた
名瀬「こいつぁ…」
ビスケット「僕達が火星で、ギャラルホルンから鹵獲した物のリストです」
名瀬「結構あるなぁ」
ビスケット「はい、それで話というのは、それを売却できる業者を紹介して欲しいんです」
ビスケットの言葉に、名瀬はタブレットに入っているギャラルホルンから鹵獲したという物資のリストを確認していた
名瀬「馴染みの業者はいないのか?」
ビスケット「CGS時代から付き合いのある業者はいるんですが、物が物ですからね…並の業者では扱えきれないんじゃないかと…」
名瀬「確かになぁ…」
ビスケットは申し訳なさそうに話を続ける
ビスケット「もちろん!仲介料はお支払いします。…どうにか、お願いできないでしょうか…」
ビスケットは座りながら頭を下げて頼み込んだ。名瀬はその様子を見て数秒後に尋ねる
名瀬「…お前ら、そんなに金に困ってんのか?」
ビスケット「…それは…」
ビスケットがいいどもると、隣にいたオルガが代わりに答えた
オルガ「…正直、困ってます」
名瀬「ならよ」
名瀬は体制を変え、足を組み直しながら尋ねる
名瀬「なんで俺が仕事紹介してやるって言った時に断った?」
名瀬の質問に、オルガは何故か少し驚いてしまった
オルガ「え?あ、いや…だって、あの話を受けたら、俺達はバラバラになっちまうって」
名瀬「…なっちゃいけないのか?」
名瀬の疑問は至極当然である。その質問に、オルガは少し沈黙した後、語りだす
オルガ「…俺らは、離れらんねぇんです」
名瀬「離れられない?きんもちわりいなぁ…男同士でベタベタと…」
オルガ「なんとでも言ってください…俺らは、離れちゃいけない」
名瀬「だからなんでだよ」
オルガ「…それは…」
名瀬が理由を聞くが、オルガは答えられずに、必死に思考を巡らせていた
オルガ「…繋がっちまってんです。俺らは」
名瀬「…あん?」
オルガはなんとも言えない感情をなんとか言葉にしながら話す
オルガ「死んでいった仲間が流した血と、これから俺らが流す血が混ざり合って…鉄みたいに固まってる。だから…だからはなれらんねぇ」
オルガは名瀬の目を真っ直ぐと見返しながら力強く語る
オルガ「離れちゃいけねぇんです。危なかろうが、苦しかろうが、俺らは…」
名瀬はそこまで聴くと、おもむろに立ち上がり、尋ねる
名瀬「…マルバに銃を向けたとき、お前言ったよな?アンタの命令通りに、俺はあいつらを…あいつらってんのは、その死んじまった仲間のことか?」
オルガ「…」
オルガは名瀬の言葉に俯いた。いくら命令されたとはいえ、仲間に死んでくれと言っているのと同じような作戦を彼らにやらせた隊長としては、その事を聞かれるのは胸が痛くなった
名瀬「離れらない?結構だ、好きにするといいさ。だがな、鉄華団を守りぬくってんなら、こっからは誰もお前に指図しちゃあくれないぜ?」
名瀬はオルガを見下ろしながら指差し、そういう。オルガは良くも悪くも鉄華団の団長である。団長というのは仲間に適切な命令を下す者、しかし団長に指図をする者はいない。団長になるということは、自分自身で、仲間全員の道を切り開いていかなくてはならないのだ。
名瀬「お前の命令一つでガキどもが簡単に死ぬ。当然だよなぁ?お前らの今の道は、例えるならポケットぐらい小さな戦争そのものだ。だがいくら小さかろうが戦争は戦争…戦争じゃ命なんて安いもんだ、一瞬で失われる…そして、その安っちい命を預かる責任は、誰にもなしつけることはできねぇ…てめぇひとりで背負っていかなくちゃいけねぇんだ」
名瀬はそこまで言うと、途端に心配そうにオルガを見つめながら尋ねる
名瀬「オルガ…お前に、それが背負えんのか?その責任の重さに、重圧に、耐えられんのか?」
オルガ「…っ」
オルガはその言葉に、言葉をつまらせてしまっていた…
ーーハンマーヘッド 育児室ーー
アトラ・クーデリア「…うわぁ…!」
赤ちゃん「オギャア!オギャア!」
2人が見ていたもの、それはベットで泣いている小さな小さな赤ちゃんであった。
アトラ「…これが、名瀬さんの…?」
アミダ「そうだよ。母親はそれぞれ別々だけどね」
ラフタ「元気でしょぉ?ウチのダーリン!」
クーデリア「…えぇ…本当に…」
ラフタはそう言うと子供をあやしはじめる。アトラとクーデリアはラフタの言葉に苦笑いしつつ子供を見つめていた。彼女達も女の子であり、アトラにいたっては今はまだ若いが、想い人もいる彼女にとっては、赤ちゃんの存在は決して関係のないことではなかった。
ウィーン…
ラフタ「ん?…あ!」
アミダ「…おや」
ユーリ「…」
ラフタが子供をあやしていると、育児室の扉があいた。そこにいたのは相変わらずの無表情であるユーリだった
ガシッ!
ラフタ「ユーリじゃん!ひっさしぶり!もうなんですぐ会ってくんないの!?心配したんだかんね!?」
ユーリ「…うぁ」
ラフタはユーリの肩を掴み、揺らしながらまくしたてる。ユーリもガクガクと揺らされる。
アミダ「よしなラフタ。はしゃぐ気持ちは分かるけど、そんなに揺らしたら吐いちまうよ」
ラフタ「おっと、そっか…んでも!納得いかないっての!皆に心配かけて…」
ユーリ「…ごめんなさい」
ユーリは頭を下げながらラフタに謝った。ユーリにとってラフタは、時に頼りになり、時に世話の焼ける姉のような存在であった。そんな彼女に、自分から出て行ったとはいえ、心配させていたことに、心を痛めていた。もちろん、ほかのハンマーヘッドのクルー達も同じだ
ラフタ「…んもう…いいよ!許してあげるよ。妹の失敗を許すのも、姉の務めだかんね!」
ムギュ
ユーリ「んぐ…ん」
ラフタはユーリに抱きつきながら頭を撫でる。ユーリも最初はビクリと体を震わせたが、次第にラフタの背中に手を回した。
アミダ「ラフタ、そこまでにしな。子供が待ちかねているよ」
アミダは困ったように笑いながらラフタの背を叩く。
ラフタ「あ、ごめん姐さん!」
ラフタはユーリを離すと、離乳食をとりにいった。その際、自由になったユーリは赤ちゃん達をみると呟いた
ユーリ「…増えてる」
クーデリア「え?」
アミダ「あぁ、アンタがいなくなったのは4年前だからね。そのうちに、3人ぐらいは新しく生まれたよ」
アトラ「…えぇ?」
本当に元気な人だなぁ…とアトラとクーデリアは苦笑いしていた。ユーリも赤ちゃんの1人を撫でながらその言葉を聞いた。
アトラ「…あの、ユーリちゃん」
ユーリ「…ん?」
アトラ「…ちょっと、外に出ない?」
ユーリ「…?」
アトラはうずうずとしながらユーリを半端強制的に外に連れ出した
アミダ「…フッ」
クーデリア「…??」
ユーリ「…どうかしたの?」
ユーリは育児室のすぐ隣の壁側でアトラと2人でいた。アトラはその言葉に、少し言葉をどもらせながら小声でユーリの耳元で聞いた
アトラ「…もしかしてだけど…あの中にユーリちゃんの赤ちゃんもいるの…?」
ユーリ「………」
アトラ「…あれ?ユーリちゃん?」
ユーリはアトラの方を振り向き、心なしかいつもよりも冷たい無表情でアトラに告げる
ユーリ「…私が、子供を持つような歳に見える?」
アトラ「…あ、えっと…そう、だよね!あはは…」
アトラは焦ったように笑う。それもそうだ。よくよく考えればユーリは14歳。対して赤ちゃんは1歳か2歳の子だ。もしもこの中ににユーリの子がいたとなると、少なくとも12歳以下の歳に生んでいることになる。流石にそれはないだろう
アトラ(…そっか…まだ、早いんだよね…うん…)
アトラは落ち着きながら心の中でそう呟いた。焦る必要はない。いつか自分にも、赤ちゃんを抱く日は来ると自分に言い聞かせていた。
ユーリ「…全く…」
ユーリはため息をついていたが、少しばかり顔が赤くなっていた。彼女もいくら女を捨てた世界で暮らしていたといえども女の子なのだから、そういう話は恥ずかしかったらしい
アトラ「…ねぇ、ユーリちゃん」
ユーリ「…何?」
アトラ「…ユーリちゃんはさ、赤ちゃん、欲しい?」
アトラは顔を赤くしながら恥ずかしそうにそう尋ねた。その言葉に、ユーリは難しそうに答える
ユーリ「…私は、多分そういうのとは程遠い世界にいるから、子供を授かるのは、難しい」
アトラ「…そんなことないよ!」
アトラはユーリの目の前に立ち、肩を掴んでそう言った。
アトラ「…だって、ユーリちゃんのお母さんも、傭兵していたんでしょ?」
ユーリ「…そうだけど、それが何?」
ユーリは怪訝そうに聞いた。子供の話と自分の母親のことになんの関係があるのだろうと思った。しかし、アトラの言葉によって、当たり前の事に気付かされる
アトラ「それでも、ユーリちゃんっていう子供を産んでるんだよ!なら、ユーリちゃんだってきっと、そういうチャンスはあるよ!」
ユーリ「!」
アトラはまるで自分のことのように必死に話した。ユーリはそんな当たり前の事が頭から抜け落ちていた事に少し驚いた。が、すぐに元の無表情に戻った
ユーリ「…確かに、お母さんは傭兵の身でありながら私を産んだ。でも、産んだ後も、その子供と一緒にいられるとは限らない。現に私の両親はもういない…貴方達も、そうでしょ?」
アトラ「!…そう、だけど…」
アトラはユーリの言葉に、見てわかるほど落ち込みながら下を俯いてしまった。
ユーリ「…でも」
アトラ「…?」
ユーリ「…抱いてみたい、とは思う…かな…自分の子供…」
ユーリはまるで初めから諦めているかのように乾いた笑みを見せながらそう呟いた
ーーハンマーヘッド 客室ーー
オルガ「…覚悟は出来てるつもりです」
名瀬「…ほぉ?」
オルガは身を強張らせながら告げる
オルガ「どこの誰とも知らねえ奴に、訳のわからねぇ命令をされて、無駄死にさせられるのはごめんだ!」
オルガはそこまで言うと、名瀬を見上げ、力強く答える
オルガ「…あいつらの死に場所は…鉄華団の団長として、俺がつくる!そして…」
オルガ「それは俺の死に場所も同じです…あいつらの為なら、俺はいつだって死「ビシッ!」ッて!?」
オルガが話している途中に、名瀬はオルガの額に指を打ち付けた。その時の名瀬の表情は、呆れて物も言えないようだった
名瀬「テメーが死んでどうすんだよ…指揮官が死んだら、それこそ鉄華団はバラバラになって終わりだ…」
名瀬「…まぁでも、血が混ざって繋がって…か…そういうのは、仲間っていうもんじゃないぜ?」
名瀬は一転して微笑むと、一言呟いた
名瀬「…家族だ」
オルガ「!」
オルガは、その言葉にとても驚いた。オルガにとって名瀬の放った言葉は、心の奥底にすっぽりとはまり、同時に、この後の鉄華団のあり方を決める物であった
名瀬「ま、用件はわかった」
ビスケット「え?あ、あの!」
名瀬はそう言うと、部屋を出ようとした。が、ビスケットはまだ返事をもらえていない故に、急いで止めた
名瀬「わかってるって、悪いようにゃぁしねぇよ」
ビスケット「…お、お願いします!」
オルガ「…あっ!お、お願いしますッ!」
ビスケットは去っていく名瀬に向かって礼を言い、呆けていたオルガも我に帰り、ビスケットに続き急いで礼を言っ
ーーハンマーヘッド 廊下ーー
オルガ「…あぁぁ…」
ビスケット「ん?、どうしたの?オルガ」
ビスケットとオルガがイサリビに戻る途中、急にオルガがしゃがんで頭を抱え込み、唸った
オルガ「…しくじったぁ…」
ビスケット「え、そう?考えてくれるって言っていたじゃないか」
ビスケットはオルガの言葉に、そんなことはないとフォローした。実際、名瀬の反応は決して悪くはなかった。少なくとも、何もしてくれないと言うことはないだろう。しかしオルガはそう言うことを言っていた訳ではなかったらしい
オルガ「問題はそこじゃねえんだ…商売の話はあくまで対等にしなけりゃいけねぇってのに…あんなガキ扱いされてよ…」
ビスケット「…フフッ…アッハハッ!」
オルガの苦渋の声を聞いたビスケットは、静かに笑った
オルガ「な、なんだよ!」
ビスケット「…大丈夫だよ、何があっても、俺たちはオルガを信じてついていくから」
ビスケットの放った一言。なんの変哲もない言葉だが、オルガにとっては心の重荷を下すことができた一言であった
オルガ「…おぉ、わかってる」
オルガはそう言うと、足を進めていった…
ーーハンマーヘッド モビルスーツ格納庫ーー
ガションッ!ガシャンッ!
ババババッ!
ラフタ「ヘッ!」
昭弘「チィッ!…ハッ!?」
うわぁぁぁっ!!?
ガコンッ!
ラフタ「よっしゃあっ!勝っちぃッ!!」
モビルスーツ格納庫内に突如として広がる昭弘の悲鳴、それと同時にハンマーヘッドのモビルスーツの一つである百里から汗だくのラフタが喜びながら出てきた。
ガコンッ!
昭弘「…ハァッ…ハァッ…!ま、まだだ…!まだ終われねぇッ!!」
するともう一つのモビルスーツであるの百錬から汗だくの昭弘が這い出てきてそう言った。2人はモビルスーツのコクピット内で百里と百錬のシミュレーター訓練をしていたのだ。状況から察するに程よくラフタと交戦していたがあと少しのところで敗れたのだろう、ひどく悔しそうに昭弘は唸っている。
アミダ「やめときな!暑くなってちゃ勝てないよ。ちょっとはユーリを見習ったらどうだい」
ラフタ「心配しなくても、また可愛がってあげるよー」
昭弘「ヌッ…ウグゥ…!」
2人の言葉に、昭弘は何一つ言い返すことができずに唸っていた。
三日月「じゃ、次は俺達の番だね…いこう、ユーリ」
ユーリ「うん、じゃあ私は百里で、三日月は百錬。いい?」
三日月「わかった」
ユーリと三日月は必要最低限の会話で、次のシミュレーターの順番と設定を決めていた。
アジー「…しかし、よくもまぁ飽きもせずに毎日毎日やるもんだね。正直感心を通り越して呆れるよ」
アジーの言葉に、2人は振り向くと、意図した訳ではないが、同時に告げた
三日月・ユーリ「俺(私)達には、これぐらいしかできないから」
アジー「…はいはい」
アジーは乾いた笑みをうかべると、ラフタが叫ぶ。
ラフタ「今回のシミュレーターのモビルスーツは百里と百錬だし、シミュレーターに阿頼耶識はないんだから!ユーリはともかく、三日月!アンタはたぁっぷり可愛がってあげるからねぇっ!」
ラフタは三日月に指差し、そう言う。前の戦闘でラフタは三日月に墜とされる結構ギリギリのところまでダメージを与えられたので根に持っているのだろう。
三日月「…可愛がるって…ユーリとは別の意味で変な奴だなぁ…」
ユーリ「…え?」
三日月はコクピットに潜り込む際に一言そう呟いた。ラフタには聞こえなかったが、その横にいた1人の少女の心をさりげなく傷つけていくのだった…
ーーハンマーヘッド ブリッジーー
アミダ「あのオルガって子、どうだったんだい?話してきたんだろう?」
名瀬「それが青臭え話ばっかりで、ケツが痒くなっちまったぜ」
名瀬はブリッジの指令席に座りながらアミダに愚痴を言っていた。だが、言っている本人の顔は、不思議と微笑んでいた
アミダ「昔のアンタも相当だったけどねぇ…お望みならベッドの上で朝まで昔話でもしようか?」
名瀬「勘弁してくれ…」
名瀬は苦笑いしながらオルガ達の頼みを叶えるべく算段を立てていた。その時、オペレーターのエーコから報告が入った
エーコ「あ、正面!歳星を捉えました!」
名瀬「…やっとか」
名瀬は長かったと言わんばかりに溜息をつきながら歳星えと艦を進める
ーーイサリビ 廊下ーー
オルガ「…あれが、歳星だとよ」
三日月「ふーん」
ユーリ「…長かった」
オルガと三日月、ユーリは廊下のガラス越しに肉眼でも見えるほどに近付いた歳星を見据えていた
オルガ「…最近、どうだ?向こうの艦でえらくしごかれてるらしいじゃねぇか」
三日月「オルガに見捨てられないように、頑張らなきゃいけないからね…はい、ユーリ」
ユーリ「ありがと、三日月」
三日月は火星ヤシの実を頬張りながらユーリにも数粒渡し、オルガの問いにそう答えた。その様子をみながら、オルガはまるで歳の離れた弟と妹を見てるような気分になり、静かに笑いながら話す
オルガ「…バーカ、見捨てるとか見捨てないとかじゃねぇよ。家族ってのは…」
三日月「え?」
ユーリ「…家族?」
2人はオルガの方に振り向き、聞き返す。オルガは少しあっと気づき、口を閉じると、片腕の拳を三日月にだした
オルガ「…これからも頼むぜってことだよ、ミカ。それと、ユーリもな」
三日月「…うん」
ユーリ「わかった」
2人は静かに返事し、オルガの差し出した拳に自分達の拳を当てた。淡々とした一言の返事だったが、3人にとっては、それだけでもとても心強い返事であった…
…はい!如何でしたか?なのだ!ユーリちゃんの姿はあまり言葉ではいい表しにくいのだ。しかし自分で挿絵を作れるほど画力はないのだ…だから個人の想像でもいいからだれか挿絵とか描いてくれたりしないかなぁ…ていつも思ってるのだ。よければ描いてくださいなのだ!それでは次回も読んでくださいなのだ!