「ヨナ、あんた明日から教師やりなさい。」
保健室のベッドで目覚めて直ぐに聞かされた言葉がこれだった。少しは心配していて欲しいのだが。
「一応、理由を聞いてもいいか?」
「あら、あんたにしては察しがいいじゃない。」
「ISを動かしたからだろ。」
「8割はあってるわね。そう、あんたはISを動かした。世界で二番目の男性起動者になった。幸い、避難は済んでいて、見た人は少なかったから揉み消す事には成功したけど学園としては確保しておきたいのでしょうね。ルオ商会からの出向という形で非常勤講師。それがあんたの新しい仕事よ。」
それは察しがついていたが残りの2割はなんだ。
「じゃあ、残りの2割はなんだよ?」
「今度転校生として男が来るのよ。正確には男のふりして入ってくるだけだけどね。それで講師にも男性がいた方がいいだろうという理由ね。」
「何だそれ、企業関係か?」
「そうね、ウチよりも直接的に織斑一夏のデータを取りに来た、という事でしょうね。でも、まさかデュノア社が社長令嬢を送り込んでくるなんて思いもしなかった。ヨナ、あんたはナラティブがまだ動かせるか確認しておいて。動かせなかったら本社に持ち帰るから。」
「ああ、分かった。」
「それと、あんたの補佐をする講師がいるから挨拶しときなさいよ。あんたの知ってる人だから。」
俺が知ってる人?誰だろう。
「とりあえず、動くか試さないと。」
ナラティブの待機状態を解除する。すると腕の部分が解放された。あの兎は対策しなかったのだろうか。
「まぁ、動くっぽいし報告は後でするか。とりあえず寝とこ。」
寝るまでに考えていた事はあの時、倒れる時に聞こえたリタの声のことだった。
あれはリタの声だった。サイコフレームのせいかただの幻聴か。それでも初めてリタに繋がりそうな手掛かりだった。
「というわけで君には明日から講義をしてもらう。雇用契約書などはこちらで準備しておくので後ほど受け取って欲しい。」
「分かりました。ですが、俺の補佐をする人がいると聞いています。それは誰なんですか?」
「ああ、それも紹介しないとな、入ってくれ。」
「失礼します。ん、君は…」
「紹介しよう。アナハイムエレクトロニクス社から出向してきた、アムロ・レイ氏だ。」
「どうも、アムロ・レイです。よろしく。」
「どうも、ヨナ・バシュタです。お久しぶりです。アムロさん。」
「アナハイムの新年会以来かな。ヨナ・バシュタ君。いや先生をつけた方がいいか。」
「ヨナでいいですよアムロさん。むしろあなたが講師をした方がいいんじゃないですか?」
「それについては…」
「私が説明しよう。本人では言いにくい事だからな。」
「織斑先生…」
「アムロ氏は知っての通り忙しい身でな。いつも授業を行えるわけではないからな。
だから補佐という名目で赴任してもらっただけだ。授業自体は各自で行ってもらう。」
「なるほど、そういうわけですか。」
「そういう事だ。これからよろしく頼む。」
「こちらこそよろしくお願いします。」
「では、君達に行ってもらう授業内容だが…」
とある一室にて
「ねぇ、ルオ商会にあのコード渡したでしょ。」
「さて、私が流したのは君が無人機で学園を襲撃する事だけだが?」
「それだけでも十分契約違反にならない?」
「私と君の契約には君に施設一式を貸し出す。使用料として月に一個ずつ男性にISを起動できるコードをこちらに提供する。お互いを直接害さない。という二つだけだったはずだが。」
「あー、そうだったね。この狸。」
「褒め言葉として受け取っておこう。それに、コードを渡す男は既に決めている。ルオ商会に渡す必要性はない。」
「そういう事にしておいてあげる。」
「私と君は協力関係にある。君に直接何かをするような事はない。そちらから仕掛けてこない限りは。」
「覚えておくよ。あなたはあなたの計画を進めていればいい。私の欲しい物もそこにあるから。」
「そう簡単には渡しはしない。あれは呪いであり祈りだ。君が手にすれば呪いにしかならない。」
「自覚はしてるよ。でも、私はそれが欲しい。ラプラスの箱、その中身を。」
「あれはそんなに大したものではない。あれはただ、封印された物だ。歴史に葬られた存在。それがラプラスの箱の中身だ。それを開ける。それが私達の目標なのだから。」
「それまでは協力してあげるよ。それと、亡国企業に渡す例のアレ、どうするの?どうなるか分からないけど。」
「そのまま渡しておけばいい。彼なら上手く使うだろう。」
「分かった。じゃあ送っておくね。じゃあ次の納品日にまた来るよ。サイアム・ビストさん。」
「あぁ、また次の納品日に。」