サトシとユウリとキバナが無敗のキングを倒すためにガラル地方で旅する小説 作:lane
こんなアニポケだったら良いなぁってのを描いていこうと思います。
ホップ、マリィ、ビート辺りの扱いに困っている
ポケットモンスター、縮めてポケモン。この世界のあらゆる所、森に、海に、川に、山に、空の上に生息する不思議な生き物。彼らは人と共存しながら日々を過ごす。手を取り合い、互いが互いを尊重し笑い合う隣人のような存在。それがポケモンだ。
この世界ではポケモンバトル、という言葉がある。人と人が自身の相棒であるポケモン同士を競わせ、高め合い、繋がり合うコミュニケーションのようなものだ。そしてここ、ガラル地方はポケモンバトルが大人、子供問わず最も人気な地方だ。
「今回のエキシビジョンマッチはなんと!アローラ地方チャンピオン!!サトシ選手対、皆さんおなじみ、ガラル地方最強のジムリーダー!!キバナだぁぁぁ!!!!」
吹き抜けたスタジアムからは、ここの寒い気候からか冷たい風が肌を撫でる。しかしスタジアムの熱気はその程度では下がらない。周りを見渡せばまるで、観客席を埋め尽くすほどの沢山の人が、俺たちの行動の一挙動すら見逃すまいとばかりに注目している。
体がビリビリと震え、今、ここに、この場所…シュートスタジアムに立つことの意味を改めて突きつけられる。辺り一面に生えた芝のフィールドを踏みしめ、眼前を見据える。
「せっかく招待したってのにガラル地方のチャンピオンが相手じゃなくてわりぃな、アローラチャンピオンさんよ」
オレンジ色のバンダナを巻いた褐色の男を見定める。その眼は鋭くこちらを見据えており彼が並大抵の相手ではないということを戦う前から感じ取る。
「だが…まぁ、チャンピオンだろうとこのキバナ様が勝つ!」
突きつけられる勝利宣言に会場が沸き上がる。ガラル地方に来る前に読んだ本に書いてあったことだけど、彼はこの地方で2番目に強いトレーナーでジムリーダーだ。扱いが難しいと言われるドラゴンタイプのポケモンで構成された彼のポケモンと、彼の実力は本物で他の地方のチャンピオンにならなってもおかしくない…とまで言われるほどの実力だそうだ。実際に向かい合って感じ取る威圧感はまるでドラゴンを相手にしているかのような錯覚を覚える。
「ピィィッカ!!」
俺の肩から飛び降りた相棒が、その程度の威圧など効かない、とばかりに返事を返す。小さな体のはずのピカチュウが、今この時俺の目にはホエルオーの如く大きく、そして頼もしく見えた。
観客たちはアローラという島にあまり面識がないようで、どこの地方のチャンピオン?ピカチュウでキバナに挑むのか?まだ子どもじゃないか。等と口々に疑問を挟む。観客達がこちらを注視し、まるで劇場のような雰囲気の中、俺は深呼吸を一つし、自身のトレードマークである帽子を、ツバが後ろになるようにかぶり直し、気合いを入れてこの状況に相応しいセリフを口に出す。
「お手柔らかにお願いします!でも、勝つのは俺ですよ」
煽りを入れて観客を沸かせる。このバトルはテレビで中継をされるので、ここで出した言葉はもう二度と引っ込めることが出来なくなった。
「そうかい…なら見せてもらおうか。オマエの力!!いきな!!フライゴン!!」
砂漠の妖精が静かに舞い降りる。地面タイプのポケモンに電気技は効かない。そして、地面タイプは電気タイプにとって弱点でもある。端から見ると勝敗は分かりきったように思えてしまうのも無理はないけれど、生憎、俺と俺のピカチュウはこの予想をひっくり返してやるとばかりに燃えていた。
「いけ!ピカチュウ!!」
「ピッカァ!」
負ける気がしない。俺たちならばどんな相手でも倒すことが出来る。
辺りは静まり返り、両者の激突が予想される中、審判の開始の合図が告げられる。
「只今より、アローラチャンピオン、サトシ対ナックルシティジムリーダー、キバナのエキシビジョンマッチを開催する。使用ポケモンは一体。ルールはどちらかが戦闘不能になるまで。それでは…」
「試合開始!!」
「ピカチュウ!!電光石火!!」
「フライゴン!砂嵐だ!」
試合開始とともに同時に指示が下される。砂嵐の中ピカチュウがフライゴンに肉薄するも、手応えはなく、影だけが残される。キバナさんはフィールドや天候を利用したトリッキーな戦術を得意とする。だったら俺はそのフィールドを更に利用して打倒する!
「悪く思うなよ!相性の差だ。フライゴン!地震!」
砂嵐の中に身を隠し姿が見えないフライゴンからの攻撃。地面を大きく揺らし、衝撃でピカチュウがこちらに吹き飛ばされる。しかし、すぐさま体制を整えて、砂嵐の中に隠れているフライゴンを警戒する。
「ピカチュウ!スタジアムを10万ボルトで照らせ!」
「なにっ!?」
この砂嵐の中、一瞬でも視界が明るくなれば場所は特定出来る。そのためにスタジアムを覆い尽くさんばかりの電撃を放てば、電撃が跳ね返る場所がある。そこがフライゴンの居場所だ。
微かに他の場所より電撃が濃い上空に向けて指示をする。
「ピカチュウ、上だ!アイアンテール!」
電光石火で加速しながら、アイアンテールをフライゴンを真下に叩きつける。ピカチュウの素早さに対応しきれていないうちに仕留める!
「エレキネットで身動きを封じろ!!」
電気技に効果はない、しかし、だからといって全てが効かないわけではない。体の中の水分に電撃を与えれば地面タイプといえどもダメージは通るし、実際にスプリンクラーの水を浴びたイワークを電撃で倒したこともある。エレキネットとしてのダメージは0に等しいが、空を飛び回られる厄介さを封じることはできる。
「フライゴン!鋼の翼で網を切り裂け!!」
「フラー!!」
身動きを封じられながらも器用に羽を動かし、網を切り裂くフライゴン。だが、その一手があればピカチュウはフライゴンに追い討ちをかけられる!
「逃すな!ピカチュウ!最大火力でボルテッカー!!」
空中で身を翻しながらフライゴンを真上からぶつかり直撃させる。
「なんと!?サトシ選手!!地面タイプへの追撃に選んだ技が電気タイプだ!?これはどうなる!?」
砂煙が辺り一面に立ち込める。砂嵐も治り、視界が晴れたそこにはボロボロのフライゴンの鋼の翼と、ピカチュウのアイアンテールがぶつかり合い火花を散らしていた。そして、互いが跳ね返し合い、互いの主人の元に戻る。
「これは…!」
ボロボロのフライゴンが膝を折る。スタジアム中が驚愕に目を開いた。
「効いてます!!ピカチュウのボルテッカーが!!地面タイプのフライゴンに効いています!!こんなことがかつて一度でもあったでしょうか!?常識を覆すような戦い方はまるでガラル地方に逆風が襲いかかったようだ!!」
「なぜ、電気技が…!?」
驚愕に目を開いていたのはキバナさんも同じだ。観客にも向けて説明をする。
「地面タイプに電撃は効かない…確かにその通りです。でも必ず許容上限がある。その上限を俺のピカチュウの強力な電撃が上回った」
地面タイプに雨の日に電撃が通りやすい理由はその許容上限が低下するからだと考えた。なら、電撃は素の状態でも全く効かないわけではない…というのが俺の推測だ。
「なるほどな…!砂嵐を張ってたにも関わらず無茶苦茶しやがる!流石はチャンピオンといったところか!」
「なら、俺サマもこのフィールドをぶっ壊すぐらいでいかないとな!!フライゴン!!ダイマックスだ!!」
フライゴンをボールに戻し、自撮りを始める。ガラル地方ではポケモンが巨大化し、バトルが行われるのが特徴的だ。その大きさ、迫力は凄まじくポケモン自身も大きく強化される。
しかし、どこでも巨大化…ダイマックスが出来るわけではなく、パワースポットと呼ばれる場所でのみその現象が起こるようだ。そして、そのパワースポットに建てられたのがスタジアムというわけだ。最も一箇所だけ、パワースポットではない場所にスタジアムが建っているが今は置いておこう。
後ろに放り投げられた巨大なボールからフライゴンが出現する。予想よりも遥かに大きい図体を見上げながら、冷や汗が頬を伝う。
「どうだこれがダイマックスだ!!でかいだろ?」
ダイマックス中はポケモンが強化される。その持続時間は短いものの、この状況をひっくり返すには恐らく十分なくらいだろう。
「まずは、電撃が効かねぇようにしなきゃな!ダイロック!!」
巨大化したフライゴンが尻尾を地面に叩きつける。その速度はお世辞にも速いものではなかったが、その瞬間、地面が盛り上がり、四角く硬質化しながらこちらへ倒れてくる。
「っ!?ピカチュウ!全力で右に跳んで10万ボルト!!」
ピカチュウが跳んだ瞬間、巨大な岩が地面に叩きつけられる。これがダイマックス時の特別な技…更に砂嵐が吹き荒れる。そして、放たれた電撃はフライゴンを傷つけることすら敵わなかった。
「いくらそのピカチュウの電撃が強力だからって、ダイマックスと砂嵐で強化されたフライゴンの守りは崩せねぇだろ!!」
ピカチュウの攻撃手段がこの一手のみで限られてしまった。全力でまたボルテッカーを放てばダメージ自体は通るかもしれないが、あまり期待できないだろう。そうなると、アイアンテール、電光石火で戦うしかないが…あまりにも威力が足りない。
「くっ…これが…ダイマックス…!」
あまりのスケールの違いに苦笑いをするが頭を振りかぶり、気合いを入れ直す。
「まだまだ!こっからだ!ピカチュウ!!」
「ピカッ!!」
微塵も諦めるつもりはお互いない。ここから何かあるはずだ。フライゴンにダメージを与えられる何かが。
「よくやったが、ここでおしまいだ!!フライゴン!!ダイアース!!」
フライゴンが地面を叩きつける。地面が割れてこちらへ向けて大きなひび割れが襲う。とにかく回避だ!
「ピカチュウ!躱せ!」
なんとか躱したピカチュウだが、少し掠ってしまう。このままでは打開策もなくやられるだけだ。ダイマックスが切れるのを待ったとして、その後を戦い抜く体力は恐らく残されていないだろう。次で決めなければやられる。しかし…
「ダイアースは更に守りを堅くする。念には念をってわけだ」
キバナさんの電撃対策がそれを難しくする。いや、本来は対策なんてしなくても良いタイプ相性のはずが、させられている…と捉えるべきだ。見たところ、急な方向転換と小回りは効かないし、飛ぶスピードも落ちている…だったら!!
「ピカチュウ!!電光石火で動き回りながら電気を溜めろ!!」
回避をしながら、最大火力を超えた電撃でダメージを与えるしかない!出来るかどうかより、こっちの方が希望があるはずだ!
「させるか!!ダイアース!!」
地割れと見まごうほどの衝撃を持ち前のスピードで躱す。ダイマックスが小回りが効かないのなら、こっちは小回りで勝負だ!
「ピカチュウ!足の下に潜り込め!!」
速度が遅くなっているから、急に足元にこられても反撃ができない。そして技を出すのに溜めが必要だから、技を放つ時にはもう後ろに回り込めている。その大きなスキに限界まで電気を溜める。
「ちっ!そうきたか!だが上空なら関係ねぇ!フライゴン!!飛び上がってダイロック!」
砂嵐全てを岩に変換しながら上空から広範囲にぶつけるために飛び上がる。その大きな挙動の間に限界以上に電撃を溜める!
「ピカチュウ!もっとだ!溜め続けろ!!」
「ピィィッ…カ!!」
あまりの電気量に発光し眩く輝く。まだだ、まだ足りない!
「終わりだ!!喰らいな!!」
岩の塊を限界まで引き付ける。今だ!!
「ピカチュウ!いっけぇぇぇぇ!!」
「ピィィッッカチュュゥ!!!」
目が眩むほどの電撃と空中の砂嵐全てを岩に変えたダイロックが衝突する。あまりの眩さに目を閉じて、そして…
光が収まりフィールドを見渡すと、倒れているピカチュウと、フライゴンが目に入った。
「…両者戦闘不能!!よってこの勝負…引き分けとする!!」
張り詰めていた空気が一気に打ち消される。観客も静まり返っている。そうか…引き分けかぁ…
勝ちたかったな…ピカチュウ…
「お疲れ様ピカチュウ…ありがとな」
「ピカピ…」
ダイマックスに対抗するために即興で編み出した戦術じゃ足りなかったか。次は超えられるように鍛え直しだな。
「おいおい…ダイマックスを使わずキバナと引き分けって…」
「まるでネズさんみたいだ」
「いや、絶望的な相性の差をダイマックスを使わずにひっくり返したのが1番すげぇだろ」
「アローラのチャンピオンってすげぇ強いってことだろ!」
勝てなかったのは残念だけど、俺は確かな手応えを感じていた。ガラル地方でダイマックスが相手でもしっかり戦えてることがわかった。ならこの戦い方は間違っていない。それに俺もダイマックスを使いこなせればもっと強くなれるかもしれない…!
「相性不利でしかもダイマックスせずドローか…全く…恐ろしいな、サトシ」
バトルが終わりこちらに手を差し出される。
「こちらこそ、ありがとうございました、キバナさん。ダイマックス…凄かったです」
なんとなく、この人とは気が合うと思った。フィールドを制圧したり戦い方が少しだけ似ているからかもしれない。
「さぁ!激しいバトルを繰り広げた両者に盛大な拍手を!!それでは皆さん!これにてエキシビジョンマッチは終了ですが…ジムチャレンジの申し込みが明日から始まります!」
「今夜のサトシ選手とキバナ選手の熱いバトルはガラル地方に吹く新しい風となることでしょう!そして、それは今テレビを見ている君たちも一緒だ!!是非参加してみてはどうでしょうか!!それでは!!Ta-ra for now!!」
「わー!サトシ選手かー!!すごいなぁ!!」
テレビの向こうではインタビューに答える少年が居た。いつもダンデさんの試合を見ていても、なんだか現実感がないなぁってずっと思っていたけれど、この人は私と年齢はそう変わらないはずなのに凄いなぁ…。私もあの場所で戦ってみたいなぁ…
「ちょっとユウリ!明日から旅が始まるんだから、いつまでもテレビ見てないで寝なさい!!」
気づけば夜中になっていたようだ。
「ちぇっ…はーい…」
大人しく布団に入る。しかし胸のワクワクは収まらず、体をジタバタさせる。うわ、これ寝られないやつだよ…!
サトシ選手がインタビューで言っていた言葉を思い出す。どうして、相性が悪くて戦闘には向かないピカチュウでダイマックスを使わず引き分けにまで持ち込めたかっていう質問に対して…
「俺は相棒を信じているからどこまでも強くなれる…かぁ…!!カッコいいなぁ!!」
明日から始まるポケモントレーナーの旅に想いを馳せながら夜は更けていった…
サトシのテンションで地の文とか書きにくすぎた裏闘技場