サトシとユウリとキバナが無敗のキングを倒すためにガラル地方で旅する小説   作:lane

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久々の投稿になります。


まどろみの森の秘密〜VSロケット団〜

 ゆっくりとメッソンを持ち上げ、抱きしめる。体の震えが収まり安心したメッソンの顔を見て、よくわからないけれど私は心がいっぱいになった。

 

 これからこの子といろんな所に行くのかと想像するだけで、胸中はワクワクしてしょうがない。でも一つ言うことがあるとすれば……

 

「メッソンって結構重いんだね」

 

 さっきから腕がプルプルしてきて、こんなに小さいのにその体はとても重く感じられた。

 

「メッソンの一般的な体重は4キロもあるのよ」

「ちなみに怯えると玉ねぎ100個分の催涙成分を持つ涙を流すんだって!」

「さらにさらに、皮膚の色は濡れると姿が見えなくなるのよ。それでもって進化すると……」

 

 食い気味で説明を続けるソニアさんに私もサトシさんもにが笑いをするしかなかった。

 

「ソニア、図鑑とモンスタ〜ボールを早く渡してあげなさいな。彼女たちが困っているでしょう」

 

 

「えっ?あっ!ごめんなさいね、つい……」

  

 

「ごほん、ユウリちゃん。おめでとう!今日からあなたもポケモントレーナーよ。これはポケモン図鑑とポケモンをゲットするためのモンスターボールよ。今日からあなたの旅が始まるのよ!」

 

「私の旅が……」

 

 差し出された新品の図鑑とボールはキラキラと輝いていてまるで私の旅路を祝福しているように思えた。

 

 

「よかったな、ユウリ」

 

「サトシさん、あ、ありがとうございます!」

 

「いいって、敬語なんて。そんなに歳も離れてないし…俺たちはもう同じポケモントレーナーなんだからな」

 

「いや、でも……チャンピオンにそんな…」

 

「そんなの関係ないぜ。初心者だとか、チャンピオンだとか。トレーナーになったその瞬間俺たちはライバルさ」

 

 とんでもないことを言い出すサトシさん。私とサトシさんがライバルだなんて。そんなことはありえない……と思ってしまう。でも、サトシさんがそう言うなら……!!

 

 

「じ、じゃあ、サトシ……ありがと」 

 

 

 何となく、でもすごく気恥ずかしくなった私は今すぐここから出発したい気分になった。これ以上この場所に居たら緊張でどうにかなりそうだ。

 

 私は慌てて深呼吸をひとつして前髪を整える。メッソンをボールに戻してよし、と小さく呟く。準備万端だ。

 

「そ、それじゃあ、私行って来ます!」

  

 逃げるように走り出す。必死に顔を見られないように。多分今の私の顔はすごいことになっていそうだから。

 

 しかし、突然何かにぶつかる。よく見てみるとそれは研究所のドアだった。

 

「いったーい……」

 またもやこみ上げる恥ずかしさに身悶える。周りを見るとみんな心配そうな顔をしてる。朝からこんなことばっかりだ……。

 

「だ、だいじょぶです!い、行ってきま〜す!」

 とにかくその場から離れたくて私はドアを開いて外に出た。

 

 

 

 

 

 

 しばらく走って研究所が見えない場所まで行くと、少し落ち着くことができた。そうだ、メッソンをお母さんに見せに行こう!寝坊して準備もよくできなかったし一回家に戻ろう。

 

「よ〜し、頑張るぞ〜!」

 

 これからの出会いと別れの旅に期待を膨らませながら私は家へと向かった。

 

 

 

「ユウリのやつ、大丈夫かなぁ」

「ピカピ〜カ」

 

 一塁の不安を残して去って行った彼女のことが気がかりになる俺たちだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いないわねぇ、砂利ボーイのやつ……」

 

「ガラル地方に居るのは分かってるんだけどなぁ」

 

 ニャースを象った気球に乗った男女が呟く。その白い服の中心にはRの文字が刻まれていた。

 

 ガラル地方でのエキシビションマッチから砂利ボーイの居場所を特定し、アローラ地方からはるばる追いかけてきたはいいが、如何せん寒冷な気候でシュートシティへは気球では行けず、そのまま電車を乗り継いで探した。しかしその時にはすでに砂利ボーイは出発した後だった。おまけにガラル地方は木々が多く、上から探そうと思っても中々見つけられずに彼らの気力は尽きかけていた。

 

「にゃんとしてもあのピカチュウをサカキ様に献上するのにゃ」

 

 そう言ったのは一匹のニャースだった。人語を理解し喋る珍しすぎるニャースである。

 

「そうは言っても、見つからないんじゃ仕方ないわよー……」

 

 伏し目がちにうなだれながら答えるその姿は悪の組織ロケット団だとは思えないほど、弱気だった。

そんな姿の同僚?にニャースもため息一つ。

 

「にゃらば、この地方の珍しそうなポケモンを探しながら、砂利ボーイも探すにゃ。これにゃら文句にゃいはずにゃ」

 

 実際にそれは彼らの目的に沿った正論だった。しかし、二人は顔を上げようとしないままだった。

 

「なんかいまいちやる気が出ないのよねー。せめて珍しいポケモンが向こうから来てくれればいいのに…」

 

「やれやれだにゃ」

 

「お、珍しそうなのが居るぞ?」

 

「どこよ!」

 

 一瞬で目をつり目がちに開きながら探すムサシに辟易しながらコジロウは指を差す。

 

「あの、ガキんちょが抱えてる水色の見たことないポケモンだ」

 

 おそらく新米トレーナーなのか周りをよく見ないで一人で居る様は彼らには大変カモに映った。

 

「隙だらけねー、じゃいっちょ、大人の怖さってものを教えてやるとしますか」

 

 取り出したのはポケモンを捕獲する道具で先端にはネットが付いているランチャーのようなもの。それを地上にいるポケモンに照準を定めて発射した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「メソッ!?」

 

「メッソン!?」

 

 突然メッソンが手元から離れていく。驚きながらも上を見ると、メッソンを捕まえた奇妙な二人組がいた。

 

「ほんとちょろいわねー」

 

 彼らの手の中にはすでにメッソンが捕まっていた。メッソンもネットから逃げ出そうとするが、絡まっていくばかりで身動きを封じられていた。

 

「あなたたち何なの!?私のメッソンを返して!」

  

「あなたたち何なの!?と聞かれたら」

「答えてあげるが世の情け」

「世界の破壊を防ぐため」

「世界の平和を守るため」

「愛と真実の悪を貫く」

「ラブリーチャーミーな敵役」

  

「ムサシ」

「コジロウ」

 

「銀河をかけるロケット団の二人には」

「ホワイトホール、白い明日が待ってるぜ」

 

 

「ニャーんてな!」

 

「喋るニャース…?」

突然パフォーマンスを始めた二人と一匹に困惑しながらも私はもう一度力の限り叫ぶ。

 

「そのメッソンは私の大切なパートナーなの!だから返してよ!」

 

「大切ぅ?はん、そんなに大切なら盗られないように次からはしっかり管理しておくことね。浮かれてるあんたが悪いのよ」

  

「そうだぞお嬢ちゃん、大人は怖いんだぞぉ」

 

 

「用も済んだことだし次は…」

   

「「「帰る!」」」

 

「さらばにゃ」

 

「ま、待ってよ!」

 

 私の制止の声は届かず嵐のように去っていくロケット団。その後ろ姿を呆然と見ながらヘタリ込む。

 

「ど、どうしよう……」

 

 こんなことになるなら、もっと気をつけたのに…確かに私は浮かれていたのかもしれない。でもそんなの仕方ないじゃん。初めてのポケモンとの初めての旅なんだから……

 

「……探さなきゃ」

 

 立ち上がり足に力を入れる。こうしてる間にメッソンが泣いているかもしれない。私のことを待っているはずだから。臆病な子だからトレーナーの私がしっかりしなきゃいけないんだ!

 

 

 

「絶対に取り返してやるんだから!」

 

 走り出してロケット団を追いかける。彼らはハロンタウンの方向へ向かって行った。あんなに目立つ乗り物に乗っているんだから街の人に聞けばどっちに行ったかすぐわかるし、目撃した人も多いだろう。

 

 

「待っててね、メッソン」

 

 メッソンを取り返すために私は決意を固めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夕暮れ時になり、研究所のガラス張りの窓からはまばゆいほどの夕日が差し込んでいた。その光は部屋に備え付けてある観葉植物に反射し柔らかい空気を生み出していた。

 

「これが、オーキド博士からの研究資料です」

 

 俺はマグノリア博士に研究資料が入った封筒を渡す。

 

「ありがとね、サトシくん。そうだ、お礼代わりと言っては何だけど、もう夕方だし今日は家に泊まって行きなさいな」

 

「いえ、それには及びません。それに、気になることがあるのでこれからすぐ出発しようと思います」

 

「ユウリちゃんのことかい?」

 

 

「まぁ、そんなところです」

 

 別れ際に窓にぶつかりながら走って行ったあいつのことを思い出す。今頃どこかで転んでいてもおかしくないと思うほどに彼女の気分はおかしかったような気がする。

 

「考えすぎだと思うけど。トレーナーなら自分で何とかすることも必要よ。それにポケモンがついているから安心だと思うけれど」

 

「それならそれでいいんです」

 

  

 旅を始めた頃を思い出す。オニスズメの群れに襲われて、それでようやくたどり着いたポケモンセンター。俺のピカチュウが治療室に入って行ってそれで……ロケット団に襲われたことを思い出す。その時は本当にピカチュウが治るどうしようもなく不安だったし、1秒が、1分がとても長く感じた。

 

いくらポケモンが付いていたとしても、そのポケモンを奪われればこちらに成す術はない。

 

「いくだけ行って、何もなければ一番ですよ」

 

 

「行こうぜ。ピカチュウ」

「ピカ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 薄暗く霧がかった森は怪しく不気味だった。このまどろみの森は入ってはいけないと昔から言われていたけれど…ロケット団の気球が降りていったのもこの森なのだ。木々がざわざわと揺れ動き、まるで怪物の口の中に入っていくような感覚になる。震える足を無理やり動かしながらメッソンを助けるという目的のために気持ちを強く持つ。

 でも、本当にどこにいるんだろう。この森は深くて霧も出ているから完全に日が暮れると最悪森から出られなくなってしまうかもしれない。そう考えると背筋が凍るような気分になってくる。見つかるんだろうかとぐるぐる考えている間に、霧はより深くなっていった。

 

「う、嘘……何も見えないよ」

 

遂に視界が見えなくなるほどの濃い霧に包まれてしまう。そして……

 

『ウルォーーード!!!』

 

 森に響き渡る何かの鳴き声。まるで何かを拒むような声に私は後ずさるしかなかった。まずい。霧も相まってすごく不安になる。その時目の前に青くてぼんやりとした影が浮かび上がった。

 

その影は私に付いて来いとでも言うように森の奥へと入っていく。

 

「ま、待って!」

 

 慌てて追いかける。狼のような体をしたポケモンに必死に付いていく。しばらく付いていくうちに霧が晴れて、私はひらけた場所にたどり着いた。そこには案の定ロケット団が居た。

 

 

「見つけた!メッソン!」

 

 俯いているメッソンに声をかける。それと同時にロケット団がこちらに振り向く

 

「げ!あんた!しつこいわね!」

「この霧の中を追いかけてきたのか!」

 

 

「もう逃がさないよ!返してもらうから!」

 

 メッソンの目はたくさん泣いたのか目元が赤く染まっていた。

 

 私は一歩前に出て彼らを逃がさないようにする。隙を見て取り返せばあとは霧の中に身を隠せばいい。それからのことはまずはメッソンを取り返してからだ。

 

「ふふふ、ポケモンも持たないで取り返せると思っているの?ニャース!」

 

 前に躍り出てくるニャース。その爪は非常に鋭く引っかかれようものなら何でも切り裂いてしまいそうだ。

 

「おミャーは良くここまで来たと思うけど、残念ながらミャーには手も足も出ないのにゃ」

 

 瞳孔が開き目が大きくなるが鋭く細められた目がこちらを睥睨する。雰囲気が変わり気迫というか、野生の恐ろしさというか、とにかくそれに睨まれた私の体はピクリとも動かなくなった。

 

 でも、それでもこんなところで諦めたら終わりだと思い、私はニャースに飛びかかる。体の大きさは私の方が圧倒的にあるんだから、一瞬でも取り押さえて、遠くに投げ飛ばせれば、あとはあのふたりからメッソンを取り返すだけだ。

 

 

 しかし、捨て身の突進はニャースに躱されてしまう。

 

「遅いにゃ」

 

 その声を聞いた時、私はニャースに跳ね返されていた。

 

 立ち上がり、またニャースへぶつかりにいく。その度に躱され、跳ね返されていく。その度に地面へ倒れこむ。服が汚れていくが、その度に絶対取り返すんだという気持ちが強くなる。

 

「往生際の悪い奴にゃ。なんどやっても同じにゃ」

 

そうかもしれない。実際にそうなんだろう。でも諦められない諦められるはずがない。自分のポケモンをもらってすぐ奪われる私なんて不注意なバカと言われても仕方ないのかもしれない。浮かれて目の前のことでいっぱいいっぱいになってた私の姿は彼らには如何しようも無いカモに見えたんだろう。

だからって私は……私は……!!

 

「私は……勝てないからっておとなしく自分のポケモンをホイホイと渡すほど、お利口さんじゃないの!!」

 

 

私はニャースの目をめがけて、転んだ拍子に両手にかき集めた土を力一杯放り投げた。

 

「にゃにゃ!!?目が!?」  

 

 

目を擦って動けないでいるニャースを抜き去り、驚いている二人を尻目に私はメッソンが捕らえられているカプセルを奪いすぐさま距離を取る。

 

「ちょっとニャース!何やってんのよ!」

「取り返されたじゃないか!」

 

「うるさいにゃ!取られたのはおミャーらのせいでもあるのにゃ!」

 

 

喧嘩し始めたロケット団に気づかれないように霧の中に逃げ込もうとした時、ニャースの爪が一気にこちらを狙って来た。

 

私はメッソンを抱えて庇う。爪が私の肩に触れ、衝撃で吹き飛ばされる。

 

「っつ……!!」

 

肩が熱くなり、服が裂かれ、地面へ叩きつけられる。前を見ればニャースが憤怒の顔を浮かべていた。

 

「よくも…よくもミャーの顔に……!」

より一層鋭くなる爪に私は恐怖した。それでも、メッソンを守るように抱え身を丸めた。

 

「絶対に…もう離さないよ……!!」

 

 

「ごめんね……メッソン。でも、もう傷つけさせやしないんだから……!」

 

 

来るであろう衝撃に目をぎゅっと閉じて身構える。

 

 

 

「ピカチュウ!!10万ボルト!!」

 

その時黄色い閃光が目蓋を光らせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「砂利ボーイ!?」」」

 

 

 

「遅くなってごめんな、ユウリ」

 

 

「サトシ……!!」

 

  

 

 

「ピカチュウ、アイアンテールでメッソンを助けてやってくれ」

 

言うなや否や、メッソンが捕らえられていたカプセルが木っ端みじんに割れる。

 

「ピィィカァ……」

 

「お前たち、許さないぞ…!」

 

体から漏れる尋常ではない強い電撃に身を震わせたピカチュウが力強い足どりでロケット団に近づく。あれだけ

威勢の良かったロケット団が震え上がっている。

 

私の腕から降りたメッソンもまるで私の指示を待つように背を向けている。

 

「ユウリ、お返しだ」

 

「う、うん!メッソン!!水鉄砲!」

 

「ピカチュウ!10万ボルト!!」

 

 

「「「もしかして……これは……」」」

 

勢いよくまるで激流のような水鉄砲がメッソンの口から放出される。それに合わさるように、10万ボルトがロケット団へ向かって行き、大きな爆発が生まれる。

 

 

「「「やな感じ〜!!」」」

ピカチュウとメッソンの攻撃により放り出されるように飛んでいくロケット団は、あんなことをされたにも関わらず、少し、ほんの少しだけ不憫に思えた。

 

 

 

 

 

 

 

 




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