Obsolete ship   作:しらたきの図書室

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深海棲艦の集い。

 私が話を始めると、病室の空気が一気に変わった。まるで重くのしかかるようだった。私のお話し相手は鎮守府、いや、大本営の諜報部調査室の調査員だ。貴重な経験談を聞きに来たのだろう。

 

 

調査員「悪魔...?もっと詳しく教えてくれ」

 

木曾「ふ...もう分かってるくせに...喋らせる気か」

 

一応、私達生存部隊の証言も聞くことは分かっているが...思い出したくもない。

 

調査員「必要事項だとは理解しているだろう?」

 

木曾「ふ...人間の脳ってのは世界最古の記録装置だからな...」

 

 人の脳は、この世で最古の記録装置である。そして私の口はそれを出力するスピーカーと言ったところか。ある意味これは艦娘の優れたところだろう。人間一人だけでいいのだから......

 

 

木曾「ふ...まだこの鎮守府も捨てたものじゃないな...悪いところだと頭いじるんだろ?」

 

調査員「一応人権派だからな」

 

木曾「やつら...新型には見えなかった。ただ...旗艦のレ級が変だったような...」

 

調査員「...変?」

 

 

 私が手を顎にやり、考えるような姿勢を私は取る。調査員はすこし、靄がかかったような表情を浮かべた。

 

 

木曾「通常のレ級よりも頭がよかったというか...」

 

調査員「知能が通常より高いレ級種...」

 

木曾「正直に言って....脅威だ」

 

 

 

ー深海棲艦司令本部ー

 

 

 

 我々は司令室での挨拶を済ませ、ノ級に施設の説明を受けていた。

 

 

ノ級「まず、私達が現在居るこのブロックは中央司令部。参謀本部や総務部があります」

 

 

 中央と言うだけあって、かなりの敷地面積があった。そしてこの中央司令部のある地区を中心に特化した地区があるようだ。

 

 

ノ級「右手に見えますは建造や装備の開発を行う工廠地帯。左手に見えますはドック兼居住区。皆様の部隊の特別室を用意しております」

 

リ級「おー、すげぇな」

 

ヲ級「ええ...さすがは司令本部と言ったところでしょうか」

 

レ級少佐「ノ級殿。一つ聞きたいことがあるのだが...」

 

ノ級「はい。なんでしょう」

 

レ級少佐「ちらちらと横を通るあの深海棲艦は...まあ、先ほど見たのだが」

 

 

 いわゆるメイド服を身にまとった深海棲艦達が傍を通っていた。

 

 

ノ級「ああ、あの子達はゐ級ですよ」

 

 

 ゐ級...しかし、イ級とは違い人型であるようだ。

 

 

ノ級「そうですね...イ級とは違い、基本的には雑務を担当しています」

 

レ級少佐「戦闘は出来るのか?」

 

 

 私の質問にノ級は微笑んだ。

 

 

ノ級「はい、それはもちろんですとも。もしも敵の襲撃があったならば守備隊にも改編可能です」

 

 

 この司令部のほとんどの機能を担っていると考えると、ここには非戦闘員は居ないのだろうか。

 

 

レ級少佐「それは頼もしいですな...」

 

ノ級「ええ。彼女達自体、とても従順なのでとても感謝しています」

 

リ級「さすが司令本部だぜ…」

 

ヲ級「確実にほぼ全員が戦闘員…もし前衛艦隊が壊滅しても追加投入出来るということですか…」

 

 

 我々が少々驚きを隠せない合間にも居住区へと辿り着いた。

 

 

 

ー居住区ー

 

 

 

ノ級「ここが今後皆様が休みいただける居住区です。現在皆様は共用スペースにて待機中です」

 

 

 我々はある施設に入った。

 

 

イ級少尉「しょーさぁー!」

 

 

 私にまるで豪速球、いや、砲弾のような物が飛び込んできた。

 

 

レ級少佐「…」

 

イ級少尉「んー♪しょーさぁー」

 

 

 イ級少尉が私の頬を彼女の頬と共に頬ずりする。

 

 

ル級「こらっ、なにやってるの」

 

 

 それを見兼ねてかル級がイ級少尉を剥がしてくれた。

 

 

イ級少尉「ぬー」

 

 

 まるでライオンが我が子の首を持って運ぶが如く、イ級少尉の首を掴んでいた。

 

 

レ級少佐「ありがとう。すまないなル級」

 

ル級「いいえ、私の監督不行き届きです」

 

レ級少佐「構わない。子供が無邪気な事は良いことだ」

 

イ級少尉「あー!しょーさがさらっと子供扱いしたー!」

 

 

 イ級少尉はまるでフグのように頬を膨らませた。

 

 

リ級「ぷっ、はっはは!なーんだよその顔っ!あっはっは!」

 

リ級が笑い出すと皆も次々と笑い出した。

 

レ級少佐「ふ...」

 

 

 それは私にも伝染していった。私は、この光景を見て少し心が暖かくなったかもしれない。この艦隊は私の家族のような存在へと変わって行っているようだ。そのようなことを思いふけって居た所に、ノ級が声を掛ける。

 

 

ノ級「皆様。歓迎会の準備が整いました」

 

リ級「か、歓迎会....?」

 

 

 歓迎会。この基地での歓迎会とはどのようなものか考え物だった。

 

 

ノ級「炊事課の料理は絶品ですよ。私が補償いたします」

 

イ級少尉「おー♪」

 

イ級少尉は目をキラキラとさせている。

 

ノ級「待ちきれないようですので、今すぐにご案内致します。」

 

イ級少尉「はっ...!」

 

レ級少佐「かわいい奴だ」

 

 まさしく子どもだと言える。だが私はかわいいと思った。おそらくだが、私だけでなく周りの全員が感じているだろう。我々はノ級の案内に従い、"食堂"へと向かった。食堂はヨーロッパの建築方式で石材を用いて建てられたような物だった。いわゆるお洒落な食堂である。

 

 

 

ー食堂ー

 

 

 

 まず我々が足を踏み入れると、火薬の破裂音が響いた。

 

 

 我々は少々身構えたが、次に飛んできたのは弾丸ではなく紙テープだった。

 

 

レ級少佐「っ...!?」

 

 

 壁には飾り付けがされ、垂れ幕には"新設遊撃艦隊歓迎会"とあった。

 

 

リ級「あ、あぁ....?」

 

「「歓迎ッ!新設遊撃艦隊ッ!」」

 

 

 我々が少しの困惑を抱きながら進んで行くと、拍手が出迎えてくれていた。

 

 

ノ級「ゐ級達が一目会いたいとのことで参加しております。たまにはこのような場も必要だと思いますし、私は賑やかで良いと思いましたので」

 

 

 ノ級の言う通りこの場には戦闘艦の他にゐ級達が出席してた。ゐ級達は基本同じように見えていたが、髪や装飾。そして服装で区別されているようだ。

 

 

 しかし、その他"汎用戦闘艦"以外に一際目立つ艦達が居た。水鬼を含めた"姫級"の面々がいらっしゃったのだ。

 

 

レ級少佐「あちらの方々は....?」

 

 

 私はノ級に彼女達のことを訪ねた。

 

 

ノ級「あの方々はこの基地の守備艦隊の方々です。」

 

 

 守備艦隊、恐らくだが我々を迎えに来たのも同艦隊の者だろう。この場で私が視認している姫級の方々は軽巡棲姫、重巡棲姫、水母水鬼など。なかなか頼りがいのありそうな面々だ。

 

 

 そしてしばらく前に歩いていると、演説台のようなものがあった。まず初めに、ノ級が台にあがる。ノ級は一息入れて言葉を紡いで行く。

 

 

ノ級「皆様、本日はお集まりいただき誠にありがとうございます。本日の催しはB海域で孤立奮闘されたレ級少佐ら、新設遊撃艦隊の方々の歓迎会となっております。次に、レ級少佐。早速ですが乾杯のコールをしていただいても?」

 

 

 何を言っているんだ。いきなり私に振るんじゃない。台本なんて用意していないぞ。

 

 

 と、私が思っているとノ級は台を降り私に譲った。冗談ではない。練習なんてものはしていない。しかし、私はこの会場に居る参加者達に恥ずかしいところを見せまいという気持ちを抱え台へ登る。

 

 

 とにかく、私は即興で言葉を作る。

 

 

レ級少佐「お初にお目にかかります。私はレ級少佐と申します。本日新設遊撃艦隊の任を拝命致しました。えー...私は話が長いのは嫌いですのでここで切ります。乾杯!」

 

「「「乾杯ー!」」」

 

 

 私の乾杯の号令で皆同じようにグラスを上に掲げた。この会場のテーブルには様々な料理が並べられていた。基本洋食がメインのようだが他にも和食なども用意されているようだ。

 

 

リ級「よーし!食うぞー!」

 

イ級少尉「おー!」

 

 

 イ級少尉とリ級は皿に多くの食べ物を持っていく。まるで勝負をしているかの如くであった。

 

 

ル級「ちょっと、行儀が悪いですよ」

 

タ級「たまにはいいじゃーん、パーティーなんだし」

 

 

 ル級が少々リ級達をなだめ、タ級が和ませるような形であった。しかし、にしてもだ....

 

 

ヲ級「少佐....」

 

レ級少佐「ああ....分かっている。言いたいことは....」

 

レ級少佐・ヲ級「「飯がうまい」」

 

 

 そう。この会場の料理はどれもうまい。ノ級の言う通りであった。だからここの深海棲艦達はみな活気があるのだろうか。食事が良い組織は決まって士気が高い。これは今実感した。

 

 

ノ級「いかがでしょうか。この基地の味は」

 

 

 ノ級は私に感想を尋ねた。

 

 

レ級少佐「そうだな....絶対に生きて帰って食いたい味って感じ....だな」

 

 

 こんなにもうまい料理は、生まれて初めてだった。私の艦娘時代は中々悲惨だった思いがある。

 

 

ノ級「...それは、嬉しいですね。炊事班も喜びます」

 

ヲ級「中々前はちょっと美味しいものにありつけませんでしたしね」

 

ヲ級もそうなのか。最近はそういう鎮守府が横行しているのだろうか。

 

レ級少佐「...あとは、食後のコーヒーでもあれば素晴らしいのだが」

 

ノ級「後で淹れましょうか?」

 

レ級少佐「.....あるの...か」

 

ノ級「はい。もちろん」

 

レ級少佐「....頼む」

 

 

 私はコーヒーが無いと生きられない体となっているようだ。別にカフェイン中毒者という訳ではなく、嗜好品としてコーヒーが好きなのだ。次に私は、二人の深海棲艦が近づいてくるのに気が付いた。二人とも姫級だ。一人は、白い髪に黄金の瞳、額には左右非対称な二本角を備えている麗しい女性。"重巡棲姫"だった。

 

 

重巡棲姫「お初にお目にかかります。私は"守備艦隊即応第一戦隊"旗艦の重巡棲姫と申します。

 

 

 重巡棲姫は私に一礼した。私が第一印象として感じたのは"ちゃんとしている"という点だった。もう一人の深海棲艦は黒髪に左右対称の二本の角を備えた仮面を身に着けていた。目視で口元が確認できるような、目を覆う形の仮面だった。

 

 

軽巡棲姫「どうも、レ級少佐。同じく"守備艦隊沿岸警備第一艦隊"旗艦の軽巡棲姫。先ほど私の艦隊がお迎えに上がりました」

 

 

 そういうと、彼女は私に一礼した。私は彼女を見て誰かに似ているなと思いながらもその考えを飲み込んだ。

 

 

レ級少佐「ああ、どうも。改めまして、新設された遊撃艦隊の指揮の任を受けました。レ級少佐です。こちらは我が艦隊の航空群をまとめているヲ級です。」

 

ヲ級「ご紹介に預かりました。ヲ級です。」

 

重巡棲姫「...やはり、あなたはまともなレ級なようで...」

 

レ級少佐「は、はぁ...」

 

軽巡棲姫「無礼なのは分かっているのですが...普段接しているレ級がアレなもので....」

 

 やはり、レ級型の性格のギャップがあるらしく物珍しく見られているようだ。

 

レ級少佐「いいえ、構いませんよ。少し慣れました。」

 

重巡棲姫「そうですか....今後とも少佐殿とは友好関係を築いていきたいものです。」

 

ヲ級「そういえばこの基地にはあなた方、守備艦隊以外に艦隊はあるのでしょうか?」

 

軽巡棲姫「ええ。もちろん。中央参謀本部の"グレイプニル"の下に"フェンリル"という艦隊が居てね....」

 

 

 グレイプニルにフェンリル...どうやら名付け親は北欧神話がお好きなようで....

 

 

重巡棲姫「あの艦隊はこの基地でも一番強力で凶悪な艦隊なんですよ」

 

軽巡棲姫「そうそう、どこにでも噛みついて行くような

 

 

 ある意味現場の主要人の会合となってしまったところに、リ級が加わる。

 

 

リ級「少佐ー、食ってるかー?」

 

 

 リ級はいくつかの大皿を空にしていた。私の記憶では結構な量があった気もするが、それらは跡形も無く消滅していた。

 

 

レ級少佐「.....リ級。食いすぎだ」

 

リ級「いやー、よう。ここの飯がうますぎてなー」

 

 

この会話を聞いて重巡棲姫と軽巡棲姫の二人は思わず微笑んでしまう。

 

 

重巡棲姫「ふふ、良い食べっぷりですね?」

 

軽巡棲姫「糧食班の苦労が労われるものですね」

 

レ級少佐「ええ...そうですね。糧食班の方々に後でお礼を...」

 

 

そんな中、イ級少尉がこちらへ来る。

 

 

イ級少尉「うー....ぎぶっぅ....」

 

 

イ級少尉は倒れこんでしまった。お腹は大きく膨らんでいる。

 

 

リ級「おいおーい。もう終わりかよ」

 

レ級少佐「リ級....太るぞ」

 

リ級「うんや、その分運動で消費されるから大丈夫だし。私よりも凄いのが居るからなぁ」

 

 

 リ級が指を指した方向を見ると何やら人だかりが出来てるのが確認できた。その人だかりの中心には.....

 

 

ポニーテールのゐ級「うっ...もうむりぃ...」

 

ツインテールのゐ級「あっ....やばっ...」

 

ル級「.....」もぐもぐ

 

 

 黙々と皿を積み重ねるル級の姿があった。

 

 

タ級「誰がル級を倒せるか、挑戦者求むー」

 

 

 なぜだ。ル級の性格上このようなのは好かないはずだが....

だが、私はル級の顔を見てすべてが分かってしまった。

 

 

ル級「....♪」

 

 

 そう、笑顔で食べ進めていたのだ。ル級は食べることが好きなようだ、さすがは戦艦。恐るべき戦艦。なんという事だ戦艦。どこからあんな食欲が出るのだろうか。

 

 

レ級少佐「...リ級。行ってくればいいんじゃないか?」

 

 

リ級は首を振る。

 

 

リ級「あの境地にはたどり着けねえよ....」

 

レ級少佐「あぁ...」

 

 

 最終的にこの場にいる中でル級に勝てるものは居なかった。この歓迎会の終盤ではル級と戦い、敗れ、倒れるものが数多くいたのであった。

 

 

 なお、最後は自由解散となった。自由解散後は宿舎へと我々は向かった。

 

 

 

ー宿舎ー

 

 

 

リ級「はーっ、食った食った」

 

レ級少佐「食いすぎだ」

 

タ級「ル級も食べすぎなんじゃなーい?」

 

ル級「...つい、料理がおいしくて」

 

ヲ級「というか、タ級殿は途中から仕切り役みたいなことしてましたよね?」

 

イ級少尉「うっぷ......おなかいっぱい....」

 

チ級「戻さないでくださいよ...?」

 

 

チ級はイ級少尉に肩を貸して歩いている。

少々はしゃぎすぎたというのもあるが、良い歓迎会だったとは思う。

 

 

ノ級「皆様、お部屋の準備が整っておりますのでご案内します」

 

 

宿舎の構造は4階建ての洋風の方式でまるでホテルを思わせるような内装だった。それぞれ個室と4人部屋が用意されていた。

 

 

リ級「少佐....は、個室がいーよな。つか、士官はフツーそうだろ」

 

 

確かに士官には個室が与えられることが多いが....

 

 

レ級少佐「ならイ級少尉もそうなるんじゃないか?」

 

イ級少尉「えー!一人やだー!少佐とがいーい!」

 

 

やはりそう言うと思っていた。

 

 

リ級「まぁ、しゃーねえ。俺らで面倒見るぜ」

 

イ級少尉「あー!少佐ーー」

 

 

ひょいっとリ級に回収されて4人部屋の方へ連れて行かれた。私はその光景を尻目に自身の用意された部屋へと入る。

 

 

レ級少佐「.....私は異世界に迷い込んだか」

 

 

部屋はホテルのようだった。清潔でベッドはシーツがピンと張られとても綺麗だった。本部はこんな生活をしているのか何とも羨ましいと思いながらベッドに身を沈める。ベッドのスプリングが軋み、私の疲れた身体を受け止める。ふかふかだ。

 

 

レ級少佐「.....疲れたな」

 

 

私はその安心感から天井を見つめその言葉を呟いた。移動から戦闘とイ級の進化、基地の規模と文化水準、新設遊撃艦隊。驚くことが多すぎてお腹いっぱいだ。私は脳を休ませるため、目を閉じる。そうして疲労からの睡魔に身を任せることにした。

 

 

 

 

 




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
巨大な深海棲艦司令本部。
新設される遊撃艦隊の編成。
目まぐるしく変わっていく状況にレ級少佐は休息の時を楽しむのだった。











深海に沈んで失踪してました。ごめんちゃい☆
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