楽園の悪鬼   作:我輩=メイじゃもん

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27.だれのシナリオで踊りましょうか

「こんのクソガキ!」

 叫んだのはおばちゃんだ。50歳前後だろうその医者は、かけたメガネを吹き飛ばさん勢いで体を動かし、指示を飛ばす。

 

「手術室の洗浄は終わってるね!?」「はいっ!」「F型の輸血準備!」「ありますっ!」「念のためノコギリの用意!」「あっ、はいっ!」「シビレダケの麻酔じゃない、砂漠の苺の麻酔を使うっ!」「えっ!? はいっ!」

「こどもの体だ、麻酔を一滴まちがえりゃそのまま死ぬからね! 覚悟しなよ!」

 

 壮年の女医がすごんだ相手はカッパではない。周囲の看護師たちにむけられた言葉である。白いスモッグ姿の男も女も、一段、緊張感を引き上げる。

 

 診療所の片隅に突っ立った、私の緊張もひきあげられた。木製のカートのようなストレッチャーに乗せられて、カッパの姿が診療所の奥へと消える。

 この診療所に、麻酔医はいないらしい。そりゃそうだ、病院じゃねぇからな。手術のできる医師がいただけでも恩の字である。

 

 看護師によれば、カッパは一度、反乱軍のメンバーによってこの診療所に運び込まれてきたらしい。しかし、手当てを受けた後、いつの間にか姿を消していたという。

 あの大怪我で勝手に動き回っていたのだ。医者が怒るのもムリはない。

 

「黒ちゃあん………あのこ、カッパでしょー?」

 巨大船と火災のせいである。ベッドだけでは足りず、診療所の床一面に、怪我人が所せましと寝かされている。

 

 怪我人のうめき声と独特なニオイに、心細くなったのだろう。私の足にナノハナじえーたいのガキンチョがくっついてきた。

 女児の髪を、ぽん、と撫でれば、私の太ももに押しつけられる、小さな頭。

「カッパは……死ぬ?」

「死なねぇよ!?」

 なんつうこと言いやがる。縁起でもねぇ……。

 反対の足には男児がしがみついてくる。こっちはもう完全に、全身をつかって私の足を抱き込んでくる。コアラかてめぇは。

 

 男児はびくつきながらも、ある一点を見つめていた。その視線をたどれば、すぐそばに寝ている男の顔。

 

 痛みに耐えているのだろう、苦悶する額から、汗がたれていた。その汗で流れたらしく、顔にぬられた黄色い軟膏が、一部とれてしまっている。

 うっすら見える、火傷で爛れた皮膚のありさま。

 

 私が見たって痛々しい。ガキには刺激がつよすぎるか。

「………外に出て待とう」

 

 診療所から出れば、ヤシの木が横たわっていた。巨大船が突っ込んできた時、吹きとばされた瓦礫が当たったようだ。木のてっぺんの青い葉っぱが今は地面を舐めている。

 

 ガキンチョ二人がしがみついた足を、のったりのったり動かしていれば、道の向こうから声がした。

「あっ!」

 国王軍の軍服を着た男だった。次いで、どこかを振り返り、叫ぶ。

「居たぞぉー!」

 なんだ。

 その声に応えたように、こちらへゾロゾロとやってくるのは、男ども。白金の鎖帷子の胸に、黒いバツマークをつけた、元国王軍兵士たちだ。

 

 その全員が全員、ロープを引っ張っていた。ロープの先につながれて、引きずるように連れてこられたのは、

「あ?」

 大きなワニである。ワニ?

 

 所々崩れてしまった町並みの中、大きなワニが引きずられてきた。くすんだイエローの巨体でもって、クビを振りながら、ロープに抗おうとしている。

「ブルン! ブルルルン!」

 ひびいた重低音は、あのワニの鼻息か?

 

 ひくつく鼻のその上には、なぜだろう、バナナが一房ついている。バナナが一房ついている。どういうことだ。

「引けぇーっ!」 兵士たちが必死にロープを引くが、一足遅かったな。

 ワニの暴れる尻尾が、オレンジ色の外壁をかすった。ボゴォン、と派手な音をたて、壁の一部がすっ飛ばされる。

 

 しかし、なぜなのか。ワニの大きなしっぽの先にも………どデカイバナナが一房。バナナが一房ついている。

 

「バッ………バナナ………」なぜ?

 

 足にしがみついていた男児は、パッと私から離れ、ワクワクした声で叫んだ。

「おあー! ババナワニぃー! エフワニぃー! すげぇー!」

 あれが、エフワニ? ババナワニ? どっち?

 

 先ほどあっと叫んだ男がかけてきて、右の拳を胸にあてる。それが敬礼であるらしい。

「マジェルカ殿でありますな! イガラム護衛隊長より話はうかがっております! 極秘任務のため、アルバーナへ向かうとのこと! 砂漠越えにはこのエフワニをお使いください!」

 

 エフワニと呼ばれたワニの背中は、平べったい。その上に、座席がとりつけられていた。

 馬の鞍のように、ワニが背負っているらしい。分厚い革のホルダーの上、透明なドームでおおわれた中に、座席らしい椅子がある。

 

 5メートル前後あるエフワニが背負っているのは、流体力学を考慮した、楕円形のドーム。まるで、ワニが高速移動するとでも言うかのようだ。

 

 最後は、その場に足をふんばってまで、エフワニは進むのを嫌がった。兵士が10人がかりで引っ張れば、ズザザザザ、と砂が鳴る。

 しかし、私と目があった瞬間。

 エフワニは絶望したように脱力したのだ。

 

 目を伏せ、頭を伏せ、首をちぢこまらせて、エフワニはその場にひれ伏す。

「……あ……」

 もしかして、こいつ、私のせいで暴れてたのか?

 

 そういえば今日は、2度ほど、己の気配を解放していた。陸の動物は、強者の気配に敏感だ。遠すぎて人には感じとれないその脅威を、正しく感じとり、怯えていたのかもしれない。

 その元凶の元へ、無理やり引きずられてきたのなら、あの嫌がり様にも納得がいく。

 

「エフワニは、緊急時の移動のための、砂漠超えによく使われる生物であります! このエフワニは、国王軍ナノハナ基地にて飼育されております! 顔に似合わず、人に、よく、懐き……えー……よく懐くはずなのでありますが、本日は少々……混乱しているのでありましょう!」

 

 足の速さは保証する、と、焦ったように告げる兵士。

 今度は一転、ビクビクとしはじめたエフワニは、チラチラ私をうかがっている。

「黒ちゃぁん、こっちみてる、えふわに……」 そうだな。

 

 しがみついていた女児を、足から降ろし、エフワニへ近づく。

 平身低頭したその姿。そこまで怯えているようじゃ、まともに走れもしないだろう。

 

 ワニの鼻先に、そっと、手を伸ばした。大きなワニの鼻は、私の腰ほどの高さがある。くすんだ黄色のかたい皮膚へ、グッと、掌を押しつけて、ゆっくり離す。

 

 服従の意を受けとるサインだ。人間風に言うと、〝お前、私の子分にしてやるよ。だからお前を食ったりしねぇんで安心しろ〟といったところか。

 

 野生動物には大抵、これが通じる。飼われているワニには伝わるだろうか。そう様子をうかがえば、エフワニは、見るからにホッとした様子で震えを止めた。

 

「あれっ、おとなしくなった……!」

「よかった……いつもの調子に戻ったな……!」

 ワニの様子に、国王軍の鎧をまとった男たちはロープをゆるめる。

 

 ガキンチョ二人はエフワニの周りをうろちょろし、黄色く巨大な体躯に顔をちかづけては、恐る恐る、突っついたり触ったり。それに怒りもせずじっとしているのだから、元は温厚なワニであるらしい。

 

「………で、あんたら、その胸のバツマーク。国王軍をやめたんじゃねぇのか?」

 

 ぽつりと問えば、男たちは顔をひきしめた。

 

 あの大男は、自分を国王軍だと言っていた。王族の護衛なんちゃら、という単語が出ていたのだから、軍の高官なのだろう。

 国王軍兵士が、あの男の指示に従うならわかる。しかし、国王軍をやめたはずのこいつらが従う理由はないはずだ。

 

 暗にほのめかした問いかけを、正しく理解して男は言う。

 

「ええ、我々は国王軍をやめました。だが、この国を守りたいという思いは、変わりませんのであります。もしも、イガラム隊長のおっしゃる通り、本当に、この戦いが不要な争いであるならば……それを止めることができるならば……全力を尽くす所存であります。助力も惜しみませんであります!」

 

 まっすぐな男の目に、カッパの言葉を思い出す。

 〝今朝方、この町に火を放った国王はニセモノ〟〝みんな騙されてる〟。

 あの大男が、とっさに漏らした一言。

 〝この国を、クロコダイルには渡さない〟。

 

「……ま、なんにせよ、ありがてぇよ。こいつを使っていいんだろ?」

 はい、という言葉と同時に、エフワニが「ブルン」鼻を鳴らした。

 

「だが………こいつ、馬より速ぇの?」「当然であります!」エフワニも肯定するように「ブルルルルゥン!」鼻息を荒くする。「揺れはあるのか?」「いえ! ほぼありません!」「……そうか。じゃ、よろしく頼むぜ」

 調子を取り戻したらしい。エフワニはニヤリとニヒルに口角をあげる。任せろってことだな。

 

 建物の角をまがり、あの大男が小走りでやってくる。周囲の兵士たちが一様に姿勢をあらため、拳を胸にあてた。

 

 王の威信がゆらいだこの状況でも、これほど敬われているとは。この大男はよっぽど人望があるようだ。

 

「お前は………ン〜! ンマァ〜〜! 貴殿は、マジェルカ殿というのだな。兵士たちより、あなたのこれまでについて聞いた。国王に仕える一家臣として、この国の民の一人として、この町のために尽力いただいたこと、感謝する!」

 ぐるぐる髪の大男は、スーツの胸に拳をあてる。

 

 ドンッ、と音を鳴らしたのは大男の胸ではない。ナノハナじえーたいの二人がマネをして、自分の胸を叩いた音だ。勢いをつけすぎたのだろう、二人してゲホゴホ咳込んでいる。アホ。

 

「……あんたが連れてくるのはカメじゃなく、ワニだったのか」

 大男に問えば、気まずげに頷かれる。

「カメではなく、ワニにしたのだ。私が乗って行こうと思ったカメは……足が速くないと言われたもので……」

 だろうな。カメだもん。

 

 カッパの手術は一時間ほどで終わった。幸い、肺に損傷はなかったらしい。肋骨の一部が折れ、その先端が体の表面に飛び出していたのだとか。やっぱりか……。

 

 エフワニの座席にもたれたカッパは、まだ麻酔で眠っている。輸血のおかげか、手術前より顔色はよかった。

 

 血を吐いていたのは、食道が傷ついていたせいだと医者は言う。次に起きたら飲ませるようにと、液状の飲み薬をあずかった。

 

 シワのよった顔に、さらに深いシワを刻み、女の医者は言う。

「私は患者を死なせるために助けているわけじゃない。人はいつか死ぬが……それをできるだけ先延ばしにするために医術をふるっている。そうして増やした命の時間には、価値があると信じている。………せっかく一命をとりとめたんだ、すぐに死なせるような事はしないでくださいよ」

 ギロリ。

 メガネ越しでもするどい医師の眼光は、大男に向かっていた。大男はその視線をしっかりと受け止める。

「もちろんです」

 医師はつづいて、私を睨んだ。うなずきを返す。

「ありがとう」カッパを助けてくれて。連れ出すことを許してくれて。

 

 エフワニの座席をおおう透明なドームは、前がパカリと開くようになっていた。限界までリクライニングさせた座席のシートに、カッパは寝ている。その周りに、看護師たちが、点滴などを取り付けていった。

 

 用意が終わったらしい。じゃあ出発しようかとしたところで、大男に呼び止められる。

「マジェルカ殿、ひとつ問題が」

「あ?」

 ナノハナじえーたいは、もう家に帰した。カッパの手術中に、昼メシを食べ、サンセットハウスの女将さんに町を離れることも告げた。カッパの親の許可もとり、カッパの着替えの服も用意した。ほかになんの問題があるというのか。

 大男は言う。

「このエフワニ、基本は1人乗り、2人でめいいっぱい、3人は乗れない。私と貴殿の、どちらかは、乗ることができないのだ」

 こいつ、バカにしてんのか?

 

 エフワニを見れば誰でもわかる。まともな座席はひとつしかない。補助椅子のような座席がもうひとつあるだけだ。

 細身の3人ならばまだしも、大男が混ざった時点で、3人は乗れるわけもないと見てわかる。

 

「貴殿か私のどちらかは、馬に乗ってあとから追いかけるしかない。私は国王軍に顔がきく、少年と共にアルバーナへ入るべきであるからして………マジェルカ殿は、あとから馬で、追いかけてくるといい」

「なぁ。………私はあんたを信用してねぇんだよ」

「はっ?」

 

 大男の名は、イガラムだったか? 覚えてるさ。それでも今のところ、その名を呼ぶつもりはない。

 

「てめぇよ………カッパをなんの為にアルバーナへ連れてくつもりだ」

「またその話か……! 少年に、証言してもらうためだと、」

「だったら、カッパが死んだらマズイよな。あれだけの怪我したカッパを、そのまま砂漠に連れて行きゃあ……途中で死ぬだろうとは、わかるよな。だがてめぇは、カッパを医者に診せようともせず、砂漠へ向かってた」

「何が言いたいのだ、時間がない! もう反乱は始まっている! 我々は一刻も早く、反乱を止めねば、」

「お前。カッパをわざと、死なせるつもりだったな?」

 

 大男の表情が、冷たく止まる。その目を見上げて、告げる。

 

「お前は、この国を奪うために、裏で動きまわる、クロコダイルのことを知ってた……。奴の作った、バロックワークスのことも……。怒りに満ちた百万人の、反乱軍を、とめる? 地位も身分もねぇ、ガキの一言で? 国王が真実を知ったら反乱は止まる? その国王に信用がなくなったからこそ、反乱が起こっているのに?」

 

 低く低く告げた言葉に、大男は、高級軍人らしい無表情を崩さない。

 そのスーツの胸に、指を一本、押しつけた。

「お前は軍の高官だろう? そんな夢物語はアテにしねぇ」

 指を曲げ、トン、と大男の胸をノックする。

「軍人ならこう考えるはずだ。今、この国の敵は、反乱軍とクロコダイル。それなら……」

 

 反乱軍とクロコダイルを、潰し合わせればいい。

 

「反乱軍の怒りの矛先を……国王から、クロコダイルへ向ける……。カンタンだ。この国の反乱軍はもとから、国を守るために立ち上がった。国民をだれひとり見捨てねぇために戦ってる……。たとえば〝とある罪なき少年〟が………クロコダイルの秘密を知って、クロコダイルに殺された………なんて話が持ち上がれば、反乱軍は……クロコダイルに向かっていくんだろうなぁ?」

 

 大男のスーツの襟を、掴んだ。グッと引き寄せた大男の耳元に、囁く。

 

「生きた少年つれていくより、クロコダイルに殺された少年を〝持っていく〟方が、てめぇにゃ都合がいいだろう」

 

 こいつが本当にアルバーナへ持っていこうとしているのは、カッパの証言なのか。

 それとも、〝悲劇の被害者〟という物証なのか。

 

 〝生きたまま〟アルバーナに連れて行かねばならぬはずのカッパを、こいつは、まともな治療も受けさせぬまま、連れて行こうとしていた。カッパの怪我の位置も知っていたはずだろうに、私と対峙した瞬間、イガラムはカッパを肩に担いだ。カッパの怪我を圧迫するような体制をとった。

 むしろ。

 カッパが怪我をしていることを、隠そうとしている様にも見えた。

 

 こいつの求めるものが、カッパの証言ではなく、少年の悲劇的な死であるならば、その行動に辻褄があう。

 

 戦火の中では、人の理屈が通じない。迷ったら死ぬ、立ち止まったら死ぬ、そんな修羅場を潜り抜けるうちに、人の〝判断基準〟そのものが、とても原始的な水準になっていく。

 

 よくある反乱軍が、ただの暴徒の群れになりがちなのは、上層部がこの現実を理解していないためというのが大きいだろう。戦争の現場の狂気を甘く見積もり、兵のコントロールを失うのだ。

 

 この国の反乱軍がいくら規律正しいとはいえ、すでに走り出してしまった彼らを、修羅場の中に入ってしまった彼らを、理屈で止めることは難しい。

 その逆。

 強い感情で足止めすることは、意外にも容易い。

 

 将軍やリーダーが死ぬと、なぜその軍の勝敗が左右されるのか。あとからやって来た学者などは、政治的な判断のためだと断言するだろうが、現場で起こるのはそのように理論だった行動ではない。

 兵士の感情がゆらぐからだ。

 〝もう負けなのかな?〟兵士の一人一人がそう思えば、軍は止まり、負ける。

 〝リーダーを殺しやがって、絶対に許さん〟兵士の一人一人がそう思えば、猛攻が始まる。

 

 少年の遺体を運んできた大男、など、平時では怪しい人間でしかない。しかし戦火の中では、言ってしまえば、ノリが全てだ。

 〝少年を殺しやがって、絶対に許さん〟。そのような〝ノリ〟を生むことができれば……扇動することができれば……反乱軍をクロコダイルへ向けることも不可能ではないだろう。

 

 どうせ理屈は通じない。こまかな辻褄あわせは、戦後に行えばいい。

 死人に口無し。キーパーソンが生きているよりも、死んでいる方が、この大男の好き勝手に〝シナリオ〟を後付けすることができる。

 証言者である少年は〝遺体になっていた方が都合がいい〟。

 

 大男の言う、国を守りたいという想いは本物だろう。

 ただし、国を守るとは、国民のほとんどを守ること。国民全員を守ることとは限らない。

 

 私の予想がどこまで当たっているかは知らないが、大男は、眉をしかめた。小さく、本当に小さく漏らされた、舌打ち。

 その一瞬ののち、わざとらしいほどの大声で、のけぞってみせる。

 

「砂漠の英雄、クロコダイルが! この少年に! 大怪我を負わせたというのか!?」

 白々しいその一言に、しかし、兵士と言えどもお人好しなアラバスタの民はギョッとした。

 

 こいつはその〝シナリオ〟を真実にするつもりらしい。

 その〝ストーリー〟を描くなら、カッパの命を守ろうとする、私の存在は邪魔になる。私を遠ざけたいのだろうとは、エフワニの座席を見た時からわかっていた。

 

 舞台にアドリブを添えてやろう。私もわざわざ声を張り上げる。

「あんたは! カッパを殺すつもりなのか!? やろうとしてみろ! その瞬間、私は、てめぇの、敵になる!」

 大男が目を見開いた。「なっ……にを……!」

 またざわめく兵士たちに、大男はざっと目を泳がせた。そこへ吹き込むように、私は囁く。

 

「カンタンだろ? そのシナリオは諦めろ。あんたが覚えるべきことは、一つだけ……。あのガキを死ぬ気で守れ。あいつは私の友だちだ。あいつを守っている限り………私は敵にはならねぇよ」

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