楽園の悪鬼   作:我輩=メイじゃもん

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37.信者の矜恃

 小さいとは言え身長130センチはあるだろう、私の腕には少し余るカッパの体。死んだように眠っているものの、かすかに息をし脈打っている。

 ようやくだ。

 今やっと、こいつの為の舞台は整った。目覚めの時間である。

「カッパ。起きろ。コーザがそこにいる。反乱軍を〝説得〟するんだろ? 起きろ……!」

 

 反乱軍という一言に、カッパのまつ毛がピクリと動く。ぼんやり開いた目と唇。起き上がろうとして咳き込んで、ゴポリと血を吐いた。一体どこの傷が開いたのか、ツンと上を向いた鼻からもタラタラと流れだす血液。

「大丈夫か。話せるか……?」

「お、ろして……自分で、歩いて、いくから……!」

 いや無理だろ、じっとしとけよ、連れてってやるから。

 

 そう言いかけた私の腕をグッと掴んだカッパの手。籠められた力の強さは意志の固さだ。気遣いは呑み込んで、よろけるガキを地面に下ろす。

 

 コーザを守るように陣を組んだ男たち……反乱軍幹部の面々は、痛々しく歩みよるカッパを凝視していた。止めようとする者はいない。この場はまだ、先程のイガラムの言葉に支配されている。

 幽鬼のようにふらつくカッパは、足を動かすだけでやっと。

 背は丸まり、首は重たげに俯いて、前を見ていないのだ。それでも自力で進むのは、執念としか言いようがない。

 彼らは迷いながらも、カッパのために道をあけた。

 

 その向こうに見えてきたのは、倒れたコーザの真紅のコート。彼に付き添うのは、赤黒いキャップをかぶった男である。ここまでのやりとりを聞いていたのか、躊躇うような眼差しをカッパに注ぐ。

「待て、コーザは今、意識がないんだ……!」

「……コーザ……さん……!」

 

 ドサリと、カッパは座り込んだ。手当てや施術を受けていようが、腹や胸を負傷したのは今朝のことだ。声を出すのも辛いだろう。

 それでも今叫ばなければ、己の命に意味がなくなる。

 覚悟をぶつけるようにして、カッパは震える叫びを放つ。

 

「ニセモノっ……なんだ……! おれの事を、ナノハナを、襲った国王は……ニセモノだったんだ……! 本当なんだ、おれ見たんだ、ニセモノの国王が、変なオカマに変わるところ……! 見たのがバレて、襲われたんだよ……!」

 

 だから……!

 

「騙されたんだ、みんな……! みんな本当は、戦わなくて……いいんだ……!」

「それは違うぞ、少年」

 

 イガラムは身を起こし、背を伸ばし、まんじりと前を見据えた。

「我々の敵は……。この国を〝壊した〟本当の敵は、他にいる! 守るべきものを守る為には! 〝真の敵〟と、戦わねば……!」

「そうだな……」

 

 掠れた男の声である。喉から空気が漏れたような、聞きずらい声。それだというのに何故なのか、こいつの声は毎回、心にまっすぐ飛び込んでくる。

「おれは……戦う相手を間違えた」

 

 白いインナーは血に濡れていた。起き上がろうとするコーザを、仲間が慌てて支えてやる。そしてコーザは静かに語った。止まない乱戦の中にあって、コーザの話を邪魔するものは何一つ入ってこなかった。

 

 

 この戦い……反乱軍一斉蜂起は、乱心した国王と、それに従う国王軍を討ち取るためのもの。しかしアルバーナに到達した時、コーザには最後の最後で迷いが生まれたらしい。

 王都アルバーナの中に、住民が一人もいなかったのだ。

 

 アルバーナは30万以上の人口を誇る。国民がバラバラに避難すれば、大規模なパニックが巻き起こるだろう。逃げるのが間に合うかも怪しいものだ。

 しかし反乱軍を待っていたのは、荒れた様子もない、ガランとした王都。他でもない国王軍が、真っ先に国民たちの安全を慮り、皆を避難させた……そうとしか考えられぬ光景だったという。

 

 王の悪事を隠すため、ナノハナの町を焼き、こどもを蹴り倒した国王軍と〝同じ軍とは思えない〟。何かがおかしい。そう感じたコーザは、反乱軍の軍勢から離れ、単身、王宮へ先行することにした。

 

 真実はどこにあるのか。

 己の目で見たものの、どこからどこまでが真実なのか。

 

「投降するよう、王都の国王軍を説得するつもりだった。戦わずに済むならそれが一番いい。そして、できるならもう一度、国王の真意を問いたいと……。だが……宮殿に行き着いたおれが見たのは……」

 杭で打たれ、磔にされた国王。

 息絶えた、国王軍の精鋭達。

 そして加虐的な笑みを浮かべ、死体を見下ろす「クロコダイル……!」

 

 

「クロコダイル? 砂漠の英雄が……国王軍を討ったのか……?」

 反乱軍幹部の問いかけに、コーザは答えようとして咳き込んだ。内臓が傷ついているのか、口から血飛沫が舞う。「コーザ!」

 身を案じる仲間の声を振り切るように、コーザはひしと、カッパの肩を掴んだ。

「あいつが……! クロコダイルが! おれ達の本当の敵だった………! お前の話を聞いて、今心底納得した……! おれ達はずっと! クロコダイルに踊らされていたんだ!」

 

 イガラムは立ち上がり、戸惑う反乱軍の面々を見回してゆく。

「私はこの2年間、国王の命により、秘密裏にクロコダイルを調べてきた。奴の目的は、この国を乗っ取ること。英雄と謳われるその裏で、奴は、アラバスタを苦しめてきたのだ……! その悪事をすべて国王になすりつけてな……! クロコダイルの部下には、他人の体に変身できる〈マネマネの実〉の能力者がいる。ナノハナに現れ、少年が見たという〝国王のニセモノ〟は、おそらく……そいつだ」

 

「それじゃ……この国の雨を奪ったのも、クロコダイルだったってことか?」

「この戦いは意味の無いものだったと……そう言ってるのか」

「おい、そんな………今の話こそ、国王軍の罠じゃないのか!」

 

 肩を支えられ、コーザは立った。頭巾をかぶったカッパの頭を、ぐしゃりと撫でたグローブの手に迷いはない。

「わざわざ戦場まで……おれ達に教えに来たんだな。ありがとう。……あとは任せてくれ……」

 

 たまに居るのである。命の輝きの〝純度〟が、桁違いに高いニンゲンが。

 混じりっけのないその気配は、どれだけ輝いても眩しくなんてならない。明るさと温もりだけを振りまき、周囲の心を否応なしに惹きつける。

 コーザはそちら側のニンゲンだった。

 

「みんな……聞いてくれ……!」

 コーザが囁くだけで、狂気に呑まれかけた兵達が鎮まる。

「おれは宮殿で、クロコダイルが自白するのを聞いたんだ……! ……奴は、この広場を」

 

 ふわりと、風が吹く。

 強烈なジンセンプウがこの場だけは消失し、今、ヌメッたように遅すぎる風がコーザの身を包んでいく。

 

 ギィン………!

 

「てめェ、裏切ったな……!」

「私は嘘はつかねぇし、約束は破らねぇよ?」

 

 コーザだけを覆った〝砂〟と〝風〟。ヒリつくような気配を伴うこれらは、〈悪魔の実の能力〉で生み出されたものだ。瞬時にあつまった砂つぶたちは、みるみるうちに一人の海賊の姿をとる。

 

 僅かに乱れたオールバックの黒髪、ダークグリーンのファーコート。そして顔を横一文字に貫く古傷と、猛獣のごとき眼光。

 王下七武海が一角、クロコダイル。

 

 奴の鉤爪がコーザの首を刺し貫く寸前、私はコーザを押しのけて迎え撃った。

 秘色色(ひそくいろ)した私のナイフと、黄金(こがね)の鉤爪が鍔迫り合って不協和音を響かせる。

 

「あの密約を忘れたか……!」

 さすがは年季の入った海賊、痺れるような殺気だ。抑えようとしても口がニヤつく。

「私がしたのは、あんたの計画を邪魔しねぇって約束だけだ。この反乱があんたの計画だとは聞かされてねぇぞ」

「減らず口が……!」

 

 ガキィ……ン……!

 

 弾きあった鉤爪とナイフ。クロコダイルは腰から下を砂に変えて宙に浮かぶ。私は奴を見据えたまま、つま先でカッパを蹴り上げた。ふわりと舞ったガキの体は、イガラムの腕の中へ。

 

「もう英雄ごっこはやめたのか?」

 クロコダイルはカッパをチラリと目で追った。

「ガキに絆されたか……。お優しい事だ、ミス・シェルディーナ」

 

 状況が掴めたらしい。突き飛ばしたコーザの元へ、反乱軍幹部達が駆け寄り、クロコダイルから庇うように立つ。その視線の先、音もなく寄り集まる砂粒たち。黄土のモヤの中心から浮かび上がるのは、海賊の全身だ。

 

 奴が腕をあげれば、掌に小さなつむじ風が生まれた。それは歪みながら広がり、私たちの体をすり抜けていく。出来あがったのは、あまりにも局地的すぎる砂嵐。

 〝砂塵〟のドームは、この一帯を目隠しするように吹き荒れる。

 

「クロコダイル……!」

 地の底から響くような声だった。こらえきれずに漏れたのだろう、イガラムだ。

 クロコダイルは不愉快そうに鼻を鳴らした。

「フン……やはりな……Mr.8。いいや……元Mr.8。〝殺した〟と報告のあったてめェが、まだ生きてる。()()()の裏切りも、確定……!」

 

 苛立ちに歪むクロコダイルの口元に、血を拭った痕がある。殴られ吐血したかのようだ。もうルフィとの〝ケンカ〟をはじめてるのか? それならルフィは今何処に?

 いや。

 何にせよ、今はまだ、コーザを殺させる訳にはいかない。

 クロコダイルが全身砂になっちまえば、私は気配を感知できなくなる。目を離さぬままでいると、不意にクロコダイルは肩をすくめ、微笑んだ。

 

「……まァいい……人間は裏切る生き物だ……。てめェもこの〝くだらねェ国〟を救いてェんだろう?」

 

 問いかけられたのは私である。しかし返答を待たず、海賊は両腕を広げる。堂々と、朗々と、まるで舞台の中央に立つ役者のように。

 

「義侠心あふれる君へ、教えてやろうじゃねェか! あと6分……いや……5分かァ……? あと5分少々で、この広場は、吹き飛ぶ……!」

 

 〝あと5分〟?

 

 あえて乱戦という状況を作ったクロコダイルの、真の狙い。それはうすうす読めていた。

 この広場に集めた兵士全員を、まとめて消す事だ。そして今の弱体化したクロコダイルならば、自分ではなく他人を使ってやらせるだろうとも。

 

 コーザとカッパが話す間、私は〝おかしな動き〟の気配を探っていた。広場の付近にいるくせに、戦いには参加せず、挙動の怪しい人物。

 そんな奴らはもう見つけてある。ただし数と位置が悪すぎる。

 

『アルバーナに介入するなら、知っといて損はねぇ』トカゲ男・キースの語った〝裏事情〟『今回の反乱の裏にある〝四つの組織〟』

 

 あれは嘘じゃなかったようで、この王都には今おかしな奴らが三千人程、あちこちをウロついている。

 所属そのものが違うのだろう、てんでバラバラな奴らの動きと現在位置。どれがクロコダイルの部下だか見分けがつかねぇ。

 全員潰すとしても、この数とこの位置どりだ。アラバスタの兵士を一切死なせず、怪しい奴だけ倒すとなれば。

 5分じゃ……足りねぇ。

 

「……へぇ? 広場が吹き飛ぶ……。地雷じゃねぇな? 爆弾か?」

「クハハハハ!」

 海賊の高笑いは、戦場によく響く。

「この〝尊い命ども〟を死なせたくねェなら、王都の中から探し出してみろ……! 健闘を祈るぜ?」

 

 間に合うとは思えねェが

 

 そう囁き、クロコダイルはかき消えた。砂となり何処ぞへ飛び去ったのだろう。この一帯だけを覆っていた砂塵のドームも、幻のように消えていく。

 残るのは、舌先に砂が付いたような違和感だけ。

 

 コーザの首を狙って来たにしては、引き際が早すぎる。更には、何故だかわざわざ教えて〝くれた〟爆弾の存在。

 奴の話し振りからすると、ここに来たのは〝誰か〟の裏切りを確かめる為だと推測できる。そして、爆弾の話をしたのは、私をここに足止めするためか?

 

「…………追わねぇよ」

 あんたの相手はルフィだ。

 

 はじめのやり取りは聞かれていなかったようだ。顔を青くさせた反乱軍幹部たちは、爆弾を探すべきだと口々に言い募る。

 コーザだけが静かに拳を握りしめ、首を振った。

「ちがう。おれ達がやるべきは、反乱を〝止める〟こと」

「だが!」

「宮前広場を吹き飛ばすほどの爆弾だ。それを見つけたところで、一体どうする。爆発の巻き添えをくうだけだ……。みんなを救う道は一つしかない……! 反乱を終わらせる! そしてこの場の全員を、広場から逃がす!」

 

 じくり、じくりと、コーザの胸元に血が浸み出してくる。真紅のコートをよく見れば、流れ出た血でベットリと濡れている。

 それでもこいつは()()()()()

 

「おれは戦う相手を間違えた。取り返しのつかない過ちだ……! だが……だからこそ! おれにはこの反乱に、終止符を打つ責務がある! 号令をかけた者として……! 一人のアラバスタの民として! 仲間の無用な流血を止めたい! 頼む! みんな……力を貸してくれ……!」

「ふざけるな!」

 

 怒声をあげたのはキャップを被った男だった。先ほどコーザを支えていたそいつは、頭を下げるコーザの肩を掴み、語気を強める。

「おれはっ、おれは反乱軍に入った訳じゃない! お前についてきたんだ! お前を信じてついて来たんだよ! コーザ!」

「謝って済む事じゃないのは分かってる……それでも本当に、すま」

「そうじゃねェだろ!」

 キャップの男は叫んだ。

 

「お前の過ちは、おれの過ちだ! それがお前を信じた責任ってモンだろう! 頭下げるヒマがあるならっ……! 指示をだしてくれ! おれの命はお前に預けてある! お前がちゃんと! 使ってくれ!」

 

 あと5分で何ができる。

 

 あれからまた反乱軍の増援が到着し、広場で戦う気配はもはや35万に近い。狂乱の気配に頭の奥が焼かれ、思考がまとまらねぇ。

 この規模の乱戦を、5分で止めて、全員ここから避難させる? 不可能だ。

 私の〝奥の手〟を使えば、乱戦は今すぐ凍結させられる。それでも35万人に真実を説明し納得させ、避難させるとなると、5分じゃ……。

 

 無理だ。できねぇ。どうしようもない。諦める他に手立てがない。

 

 それでも。それだけど。

 こんな時、ルフィなら。

 ルフィならきっと、諦めないはずだ。

 

 全てが無常なこの海に、旅人を導く星などない。身寄りも野望もたない私が、目指すべき光は一つだけ。

 私の太陽。私の北極星。いつだって私に生きる勇気を与えてくれる、唯一の光。

 ルフィ。

 

 〝イラストの少年〟を追いかけている。届かない光に、それでもいつか手を伸ばしたいと願っている。

 

 もう私は、彼に顔向けできねぇくれぇ残忍な事を山ほどしてきた。〝あの少年〟が忌み嫌うだろう卑怯なマネだって、いくらでも。

 譲れねぇものの為なら、私は今後もしていくだろう。

 

 いくら強くなったって。どれだけ目指してみたって。魂の形が違うのだ。

 〝彼〟(主人公)のようには生きられない。

 

 それでもせめて出来る限りで、〝イラストのルフィ〟に恥じる真似はしたくなかった。

 

 親鳥のマネする雛鳥みてぇな、安直な動機だとしても。

 彼の姿(イラストの少年)を思い浮かべる。そうすれば確かな熱をもって、腹の底から湧き上がってくる。

 〝希望〟を信じる力が。

 〝絶望〟からの誘いを突っぱねる、勇気が。

 もがくための気力が。

 

 こんな時、ルフィなら。

 あのルフィ(イラストの少年)ならきっと、諦めないから。

 

「イガラム。爆弾の場所に心当たりは」

 

 随分な無理をしたんだろう。肩で息をするカッパは、大男の腕の中、意識を朦朧とさせている。

 こいつの願いを叶えてやる。てめぇでやると決めた事だ。難しいからやめました、じゃ、カッコつかねぇもんな……!

 猶予はあと5分強。乱戦を止めて35万人を全員〝無事に〟退避させるより、爆弾を探し出して処理するほうがまだ希望がある。

 

「……爆弾を処理する策があるのだな……! ……時刻を定めてあるということは、乱戦のどさくさで誤爆するような場所には無いはず……! この広場の直径は約5キロ」

「5キロ……!」 道理でデケぇ訳だ。

「これだけの範囲を、乱戦の外側から狙い、一気に爆破するとすれば……一つの爆弾ではなく、複数を、いくつもの大砲から撃ち出す他ないのでは……!? 王宮の外壁には大砲が配備されている!」

「わかった潰す、他は」

「兵士詰所だ! 広場をはさんで王宮の逆側に、兵士詰所がある! あちらにも大砲の予備が保管されている! 私はこちらを潰そう!」

 

 何言ってんだコイツ。

「だが、あんたが私から離れたら」「心配ご無用!」「カッパの安全はどうなる!」「うむそう来ると思ったが」

 

 ゴォオオオオオオ………!

 ワァアアアアァ………!

 

 ジンセンプウは未だ、王都の空を暗く塞いでいる。乱戦の怒号は終わりを知らない雪崩れのように、耳に、頭に、滑り込んでくる。

 藍色のスーツを砂で汚した大国の幹部は、伸ばした背筋で不敵に笑った。

 

「私も軍人の端くれ、あなた程でなくとも戦える! それに、我々がピンチに陥ったその時は……」

 くるっくるの長髪をした、ガタイの良すぎるおっさんが、顎をクイッと引いて小首をかしげる。脂汗にテカつくデッカい顔で、甘え上手なお嬢ちゃんみてぇに。

 コテン。

 ニコッと。

「マジェルカ殿。あなたがすぐに、駆けつけてくれる……。……そうだろう?」

 

 パチパチパチパチ、思わせぶりなまばたきをして、このおっさん、正気か?

 

 声が詰まって出てこねぇ。言いたいことがまとまらねぇ。

 お前がやるな。お前がやるな。お前に可愛さがあるとでも思ってんのか。1ミリもねぇよ!

 

 あまりの衝撃でかっぴらいた目玉に、砂つぶが飛び込んで来た。イテぇ! は? なぜ痛ぇ?

 目玉に指を突っ込めば、もっと痛ぇ。なんでだ!?

「ああっ! クソ!」

 

 知らぬ間に、覇気での肉体強化が解けていた。スタミナはまだある。覇気の強化が解けた原因は、イガラムだよ!

 イメージが発動の鍵となる〈覇気〉は、心理的な衝撃によって解除されてしまうことがある。一瞬諦めかけた時ですら解除されてなかったっつうのに。

 このおっさん、なんつう精神攻撃しかけてきやがる……!

 

「味方じゃねぇのかてめぇは!」

「はいィ? この戦場で、貴殿と私は味方同士だろう、どう考えても!」

「うるっせぇよ……!」

「えっ、何で!?」

 

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