まぁそんなことより、A’s編の最後。そして、天吹きの出会いの回です。
12月24日
ナハトヴァールことなはとを飼える事になった。
はんちゃんとシアちゃんが怒ってたのは僕が怪我までした事に対してだった。無茶しないでとか、せめて一言言ってほしいとか、泣きながら怒ってた2人だった。でもそこにおじさんが管理局に見付かる前に逃げ出すように言ってくれてすぐに逃亡した。家に帰ったら両腕を応急処置した後でまた怒られ続けた。ちなみに今は魔法で鉛筆を動かして日記を書いてるよ。
ともあれなはとの事だ。闇の書の闇で正式にはナハトヴァール。生まれ変わったような物だから名前は『なはと』。もう防衛プログラムの力はなくて今はただのキツネモドキでしかない。あと再構築にちょっと失敗したのか鳴くことがない。近所迷惑にならなくていいけど。おじさんはちょっと考えてみたいだけど『一度は消滅したからいいよ』と納得してくれた。シアちゃんはなはとの可愛いが意見にすぐにOKだった。はんちゃんは戦闘力がないから問題ないって。
そんな感じに今日は色々あったよ。クリスマスパーティーは明日にしててよかったね。ケーキの受け取りとかあるしね。明日は何事もないといいな。
あっ、またフラグ立てたかな?
12月25日
今日は予定通りクリスマスパーティーで盛り上がった。朝方はちょっと疲れたけどそれが吹き飛んだように楽しんだ。ケーキを頬張るシアちゃんを前にすごく悔しそうなはんちゃんとか、気に入ったのか冷蔵庫にあった油揚げを食べるなはととか。色んな事があったけど今日パーティー出来てよかったよ。でもやっぱり疲れたから日記はこのくらいにしようか。
パーティー以外に今日もまたはんちゃんとシアちゃんに怒られちゃったしね。いいかなって思ったけど、黙ってなのはちゃんたちの所に行ったのはダメだったみたいだね。
追記
気にしないでよろしいですよマスター。
12月25日
「……キツツキ」
目覚める直前、突かれる夢を見えた気がする天吹はそんな一言を呟いた。でも突かれる感触は残っており、そこに顔を向けてみればなはとが角で突いていた。
「どうしたの?」
「(ンッ、ンッ)」
なはとは鳴けないが、様子から何か焦っているようだった。
「……ん」
伝えたことがあるのだと悟り、天吹はなはとの顔に手を添えて思考を読む。
なはとの思考に感情と呼べる物はまだ未熟だ。しかし、防衛プログラムの機能を失いながらも本能は残ったままだ。そしてその本能とは主と闇の書を守る事。
「……止めに行こう」
そう言って天吹は体を起こしてベッドから降りるとすぐにクローゼットへ向かう。そしてなはとの願いを聞き届けよう。
管理プログラムを救ってと言う願いを。
天吹はなはとから暴走していた機能を全て取り払うことが出来たが繋がりが完全に消えたわけではない。なはとからの一方通行だが管理プログラムへのリンクは残ったままであり、後日それを取り払う予定だった。しかし今回はそのおかげで管理プログラムの自己破壊を察する事が出来た。
曰く、なはと自身は分離されたが闇の書本体はまだ歪んでおり、その歪みから新たに防衛プログラムを再生されてしまうそうだ。つまりなはととは別に新たなナハトヴァールが復活してしまうから自己破壊を望んでいるという。これまで思考することがなかったなはとはそれが実行に移されようとした所で察知したのだ。
防寒着を纏った天吹は首の裏側になはとを潜ませて管理プログラムのいる場所に1人で向かう。急いだために誰にも伝えず、両腕の怪我も雪の寒さで痛むがその足取りはスムーズだった。
「ヴェヌス、どうやったら救える?」
『そうですね。かつての姿である夜天の書の形に戻すことが理想でしょうが、そうなると人格や記憶も失うでしょう。願うならと言うなら、今の管理プログラムが残る形に』
「そう願えばいいんだね?」
『はい』
「(トントンッ)」
首の裏に潜むなはとが叩いて急がせながらも手順を確認する。しかし彼は考えていない。管理プログラムに向かうと言う事は十中八九、なのはたちもいると言う事。でもそれ以上に、救ったなはとが最初に覚える感情が『哀しい』は寂しいから、と。
「(―――マスタ―、止まって下さい)」
するとヴェヌスが急にそんなことを言い、天吹は素直に足を止めた。急いでるのにと思ったがもうちょっと進んだ先、十字路の角から誰かが出てきた。
「あっ」
「え?」
天吹はその少女を知っていた。名前は、八神はやて。しかし簡単な上着を着て車いすを必死に進ませている姿は見てわかる通り急いでいた。
「キミは……、そや。キミッ、あそこまで押して言ってくれへんか!」
彼女は早朝で誰もいない中、同い年ぐらいの天吹と遭遇してそんな事を頼んだ。そんな彼女が指し示す場所は天吹も向かっていた場所であった。
「……急いでる?」
「うんっ、大事な、大事な家族の為なんやっ!」
それを聞いて彼女もまた管理プログラムを救おうとしてると知った。隠れているなはとはどう思っているか。少なくともさっきまで急かせて叩くのが止まっていた。
「いいよ」
「っ! ありがとう……っ!」
涙ぐみながら感謝の言葉を呟くはやて。天吹は返事せずにすぐ彼女の後ろに回って車いすを押し始めた。
その後ははやて1人よりは速く、天吹1人よりは遅い速度で向かう。この後は誰とも遭遇しなかったが通行の邪魔になる物もないまま進んでいく。そうしてあとは上へ登っていく所まで辿り着いた。
「ここまででええ!」
「わかった」
そう言われて天吹が手を離すとはやては自分の力で車いすを動かして登っていく。そんな彼女を、見送りながら天吹は一度なはとに尋ねる。
「今さらだけど、なはとが出たら攻撃されるかもね。大丈夫?」
「(トンッ)」
『大丈夫、だそうです』
「じゃあ行こうか」
天吹も追い掛けるように登っていく。この後は間違いなく厄介事になってうというのに、彼は迷わず進む。
邂逅まで、もうすぐ―――。
本当に心優しい主だと、リインフォースは思った。まだ存分に動かない体でここまで来て、私に生きてくれと訴える。そんな主に涙を流せて胸の奥が痛むが、それでもこれが最善だ。守護騎士たちも残る。自分を止めてくれた心優し少女達がいる。そして消滅したあと、私の名を継いでくれる魔導書も現れる。心残りは、ない。
「リイン、フォース……」
「はい、我が主」
主はやて。どうか幸せに――。
「ふぐっ!」
はやてに遅れて登ると見えたのははやてと管理プログラムの女性。しかもなのはとフェイト、守護騎士も勢揃いだ。
「まぁいっか」
しかし天吹は気にしなかった。今ははやてと管理プログラムの2人に注目して気付かれていないが、あと少し近づけば気付かれそうだ。その当たりで管理プログラムが立ち上がろうとする。
「なはとGO」
『(フンスッ!)』
何を思ったのか、突撃を指示すると潜んでいたなはとが飛び出し、そのまま駆けると管理プログラムの顔に飛び込んだ。
「ふぐっ!」
恐らくこの場の空気を壊すこと間違いなしの声が漏れて管理プログラムは尻餅をついてしまう。
まさかの光景に誰もが呆気に取られる。その隙に天吹は倒れたはやての車いすを起こす。
「よっと」
「え? あっ、キミは……」
「雪の上じゃ風邪引くよ」
そう言って転んだはやての体を抱えて車いすに座らせる。
「なっ、何がっ」
そして尻餅をついた管理プログラム、リインフォースは起き上がって顔に張り付いたなはと離し、言葉を失った。
「リインフォース?」
突如として凍り付いたリインフォースにはやては首を傾げる。そんな彼女と入れ替わるように天吹が近づく。
「はい。戻っておいで」
「(コクッ)」
腕を伸ばし、なはとはそれに飛び移ってそのまま頭の上に居座った。
「まっ、待て! どういう事だ!?」
「ん? 見たとおり?」
「そういう事じゃない! キミの頭にいるそれは、その子は……」
「そうだよ。闇の書の闇、ナハトヴァールだよ」
「えっ?」
あっさり告げられたその名前に皆が驚く。しかし天吹の耳に届いたのはそばにいたはやての声だけ。
「でも、いや、しかし……」
そしてこの場にいる誰よりも信じられないリインフォース。あの防衛プログラムと呼ぶにはあまりにも小さく弱々しい。しかし管理プログラムとしての彼女が告げる。これは間違いなく闇の書の闇だと。
「安心して。自動再生機能と自動迎撃機能はもうないし、変な生物にはならないよ。ただ、この子がいても貴女の機能が別の闇の書の闇が出てきちゃう。そうでしょ?」
「あ、ああ……」
「だから」
天吹は未だ動揺するリインフォースの手を握る。これで、準備は出来た。
「貴女も家族と過ごせますように」
【承認。実行します】
願い、天吹の力が発動する。彼とリインフォース、そしてはやてを中心に魔法陣が出現する。
「えっ、なに!?」
「魔法……?」
「なんだよこれ!?」
唐突に現れた天吹となはと。それに加えて見覚えのない魔法陣が展開されて他が慌て始める。しかしそれを無視してヴェヌスは願いを実行する。
願いの対象となったリインフォース。そんな彼女の意志を無視して闇の書が出現する。
「っ!? なぜっ」
外部の干渉を受け付けない闇の書が主と自分を無視して出現したことに目を疑った。
【闇の書より管理プログラムの構成情報を把握。これより独立化のため、現在の構築体から再構築します】
今回はヴェヌスの本体も分身も出現せずに音声が響く。そしてリインフォースの体は天吹と繋いだ手から魔力に覆われる。
「っ! リインフォース!!」
「大丈夫」
思わずはやてが声を上げるがそれを天吹が返す。それを証明するかのようにその魔力が覆ったのは一瞬。変わらないリインフォースの姿があった。
【再構築の成功により独立化も完了。管理プログラム、名称『リインフォース』喪失。加えて防衛プログラムも喪失しているため闇の書本体の維持は困難。破損箇所より崩壊を始めます】
そして今度は闇の書は魔力に包まれ、降る雪のように散っていく。しかしその中心で表紙にあった剣十字の紋章だけが残る。
【闇の書、崩壊。以上を持って全行程を終了します】
その言葉を最後に、出現した魔法陣は静かに消え去った。
あまりの出来事に元々あったベルカ式の魔法陣は消え去っていた。しかしそれはもう、必要なかった。
「どう、今の状態は?」
「あ、ああ……」
全てが終わり、天吹はリインフォースに尋ねる。彼女は何が起こったのか、理解していた。そう思うと、彼女の目から涙が溢れる。そしてその瞳はいつの間にか、光輝いていた。
「どないしたんやリインフォース!?」
「あ、るじ……」
いきなり泣き出したリインフォースにはやてが近づくと、そのまま彼女に抱きしめられる。
「ちょ、ホンマにどうしたん!?」
「すみません主、あんな事を言ってしまいましたが……。ですが、ですがっ! これからもお側に居させてもよろしいですか……?」
「えっ、それって……」
「闇の書は消えたよ。でもその人は残る事が出来るだけだよ。それとコレ」
リインフォースに変わって天吹が答え、そしてはやてに何かを差し出す。未だ理解出来ていないはやては思わず手を出すとその手に剣十字の紋章を渡された。
「なはとはどうする?」
「(ポフッ、ポフッ)」
「もういいの?」
「(コクン)」
「そっか。じゃあ僕はコレで」
用が終わったと言わんばかりに天吹は背を向け、なはともリインフォースをジッと見つめた後に頭から肩へと移る。実際に用が済んだからその行動は彼にとって自然だ。
しかしそれが流れるように通るわけではない。
「待て!」
「ん?」
少し進んだ所で天吹を、シグナムが止めた。振り返れば自分を見ているのは彼女と、ザフィーラの2人。他の4人ははやてとリインフォースを囲んでいる。
「なに?」
「……キミは図書館で会った子か」
「うん」
「そうか。なら聞かせてくれ。キミは何者だ?」
防寒着を着込んでいてすぐには気付かなかったがシグナムは声や雰囲気で天吹が図書館であったあの子供だと確信した。あの時は魔力など感じなかった筈なのに、今はここの誰よりも膨大な魔力を持って魔法を発動させた。しかもミッド式でもベルカ式でもない、不可解な術式を使って。
ちなみにシグナムを含め、ここに居る全員は気付いていないが管理局に気付かれないよう、隠蔽をして願いを実行していた。つまりここで起きた事を知ってるのはこの場に居る者たちだけであった。
そして天吹はシグナムの問いに、なんて答えようかと考えているとヴェヌスからの声を聞く。
「(マスター。早めに立ち去った方がよろしいかと)」
「(ん、わかった)」
急いだ方がいいと告げられ、同時に転移魔法の準備をしながら天吹はシグナムにこう答える。
「種を育て、花を咲かせただけの子供だよ。――じゃあね」
夏、ヴェヌスがジュエルシードの頃にいつも口にしていた言葉で答えた。そしてそのまま別れの言葉を残して転移魔法を発動させた。
「待――」
シグナムは手を伸ばしたが、その言葉が言い終わる前に天吹は姿を消した。
これにて傍観者は舞台の上へ。アルハザードの力を持つ久保田天吹は魔法世界の表へと現れた。
高町なのはのきっかけとなったジュエルシードを手にした事で始まり、
フェイト・テスタロッサの姉アリシアと母プレシアの命を救い、
八神はやてにリインフォースを救う奇跡を与えた。
ここが天吹の始まりとなるのか? それともこの一舞台で終わるのか。
彼と3人の魔法少女との巡り会いは如何に?
どちらを願いますか?
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なのはたちとの物語を見たい
-
ここまででいい