5月&日
今日で開花が出来た。ジュエルシードからアカシックレコード・モードことレコード・オブ・アルハザードの形になった。見た目は蓮と菊を合わせた感じだ。蓮っぽいけど花びらが細かくて多いから。それに小人の女王様って感じになった分身もヴェヌスの名前に合ってると思う。そんな小人のヴェヌスは僕の頭の上が定位置になった。こうして書いている時も頭にいるよ。
結局、邪魔者は現れる事がなくすぐにおじさんとはんちゃんを呼んで終わったことを知らせた。2人はまず頭にいたヴェヌスに驚き、レコード・オブ・アルハザードを見せると見入っていた。名前を伝えるとおじさんがもの凄く驚いたよ。なんでもアルハザードは望みが叶う理想郷の名前らしい。願いを叶えるジュエルシードはそこと繋がってたのかな?
その後は3人で仲良くウチで料理して楽しく食事した。ヴェヌスも一緒に食べたけど、体の大きさ以上に食べてたけどどこに入ったのかな? 今聞いてみたけど秘密らしい。
5月♯日
開花して翌日。学校が終わるとすぐに魔法がどうなったのか確認をした。ヴェヌスに聞くと思うとおりの魔法が行使できるらしいけどその分魔力も大きく消費するらしい。一般的な魔法はむしろ普通より少なくなってるそうだ。今の状態なら大抵の事は出来るそうだけど何もないからせず、軽く魔法の試し打ちといつもの訓練をしただけで終わった。とりあえず魔力量を増やさないとね。
5月☆日
「マスタ-、実は願って頂きたいことがあります」
そんなヴェヌスのお願いを叶える為にあの洞窟にまたやって来た天吹。阪奈も一緒である。
「それで何を願えば良いの?」
「はい。実はダミーには追跡機能を付けてまして。もし可能なら他のジュエルシードを回収しようと考えていました。その結果、8個ほど回収が出来そうです」
「8個と言うと、金髪の女子が回収していた分でござるな」
「そうです。それが虚数空間に落ちたようなので回収します」
「僕が願えばすぐに出来る?」
「はい。イメージはダミーのNo.Ⅲを周辺にある物と一緒にここへ召喚するでよろしいです」
「わかった」
ヴェヌスの言葉通りのイメージを天吹は思い浮かべる。ジュエルシードの姿形を思い浮かべ、その周辺にあるもの全てをここに出すイメージ。すると天吹の目の前に魔法陣が出現する。しかもこの洞窟で描いていた物と同じ絵も取り入れられたものだ。
「―――いでよ」
【――承認。実行します】
その呟きに、ヴェヌスは以前のジュエルシード状態の似た声で応えた。すると魔法陣の回転速度が一気に上昇し、輝きを増していく。ただ何故か大きくなった。しかしそれでも天吹の願いを叶える為に魔法は実行され、出現された。
そして願った通りダミーの1個とジュエルシード8個、
加えて女性と巨大なポッド装置が出現した。
「?」
目の前のそれらに天吹は首を傾げた。そのそばで阪奈がいつの間にかクナイを握って静かに女性に近づく。改めて見ると魔女のような女性で手元には杖もある。そしてポッド装置の中は天吹たちより小さな女の子が収められていた。
その2つを見てもまだ天吹は首を傾げていたが、女性に近づいた阪奈は手首を持ち上げたり口元に耳を近づけたりした。
「生きているでござるが、もう長くないでござる」
「
「どうするでござる? おそらく天吹殿なら助けられるでござるが」
「
阪奈の言葉に天吹が悩み始めると頭の上にいたヴェヌスが頭を軽く叩いた。
「なに、ヴェヌス?」
「悩むようでしたらその女性が何者か確認していかがですか? 頭に手を置けば記憶などが読み取れるはずです」
「ふーん」
それを聞いて天吹は女性の頭の方へ移動する。ヴェヌスは頭から離れると回収したジュエルシードの方へ向かう。まぁそっちが大事だろうなと思いながら女性の頭のそばでしゃがむとその額に手を当てる。
「アナタの事を教えて下さい」
そう願うと天吹の手の平と女性の額の間に魔法陣が出現する。普通よりか素早く回転する様はディスクの読み込みにも似ている。そうして数分間回り続けると魔法陣の回転が普段の速度に戻った。つまり読み取りが終わったのだ。
「……そっかぁ」
「何がわかったでござるか?」
「この人、そこにいる女の子を生き返らせるためにジュエルシードを集めてアルハザードを目指してみたい。あとはんちゃん、その女の子が金髪の魔法少女、フェイト=テスタロッタに似てるって気付いてたでしょ?」
「やっぱり別人でござったか。小柄であるし、妹でござろうなと――」
「ううん、姉らしいよ。ただフェイトはクローンだって」
「ござる?」
女性――プレシア=テスタロッタから読み取った記憶から過去のこと、現在の事を知った天吹は淡々とその情報を伝える。そうしていると8個のジュエルシードを翼か光輪のように背中に浮かせたヴェヌスが近づいてきて天吹の頭に手を置いた。
「失礼―――同期、完了しました。ところでマスター、死者蘇生を試してみませんか?」
唐突な提案に他の2人から注目を浴びるヴェヌス。しかし阪奈の物はどこか剣幕があった。
「どのような理由でそんな提案をしたでござるか?」
「限界を知りたいのです。ジュエルシード8個分をサブユニットとして機能させましたから成功率は高くなっているでしょう」
「実験、でござるか」
「必要な事です」
剣呑としていた阪奈がヴェヌスと会話のやり取りをする度にそれが収まっていく。が、それでも消え去ってはいない。彼女も天吹の限界がどれだけなのか早めに把握しておく方が良いと理解している。しかしこれは――。
「ただし、行うのはそこの少女です」
するとヴェヌスがポッドの少女を指し示した。
「その子1人だけ? なんで?」
「さすがに蘇生する魔力は1人分だけだからです」
「この婦人を回復させ、後日蘇生魔法を使うことは出来ないでござるか?」
「可能です。ですがその女性、プレシア=テスタロッタは次元犯罪者です。匿えば管理局に対する不利となります。それはマスターの為になりません」
無慈悲な回答だった。2人とも救われる事が可能でありながらあえてその片方を捨てると言った。しかし、
「わかった」
「ふむ、余計なリスクは確かに避けたいござる」
2人はその提案に一切の不快を感じなかった。忍者で現実的な考えを持つ阪奈は理解出来る。そして天吹はそう言う物かと納得した。でも、天吹はそれならばと思った。
「ねぇ、ヴェヌス―――」
走馬燈だと、プレシアは思った。かつて愛娘のアリシアと来た花畑。最後の最期でその愛娘が「妹が欲しい」と言っていた場所。
未練も無念も多い。しかし現実離れしたこの場所に来てもう先はないと理解していた。狂った妄念の炎は消え、ここにある自分はその残りカスだろうと。
「……本当、馬鹿ね」
思わず自虐する言葉がこぼれ出た。願わくば、残されたフェイトに幸せがあらんことを――。
「こんにちは」
そう祈っていると背後から聞いたことのない、子供の声が聞こえた。振り返るとそこには長い髪をした子供がいた。まだ幼いせいか男の子か女の子かわからない。ただわかるのはプレシアの知らない子供。
「誰?」
「久保田天吹。プレシアさん、って呼んでいいかな?」
「構わないけど、本当に誰なの。私は貴方の事なんて知らないわ」
「うん。だって僕がプレシアさんの潜在意識に入るように願ったからね」
「願った?」
あまり正体をハッキリさせない回答だった。しかしそんな状態に変化が起こる。天吹の胸元から小人の女性が出現された。プレシアは融合型デバイスと思ったがその女性の背にはよく知る物が円を描いていた。
「ジュエルシード……!」
「そうです。そして私はヴェヌスと言います。ですが貴女にはこう名乗りましょう。ジュエルシード、
その単語にプレシアは思わず身を乗り出し、しかし力が入らずその場から離れられなかった。
「アル、ハザード?」
「はい。貴女が目指した理想郷。その全知を行使する存在です。最もこの体は分身で本体はマスターと一体化しています。では本題に入りましょう。実はマスターに貴女の娘、アリシア=テスタロッサの蘇生を提案しました」
その言葉にプレシアの思考は空白―――、になりそうな所を理性で押し止める。まさか最後の最期で願いが叶うのかと。しかし、いくら狂気が抜けたとは言え長く探し続けた身としてはすぐには飛びつかない。ヴェヌスの言葉を最後まで聞くまでは。
「しかし私はマスターに危険が及ぶ要素は限りなく背負いたくはありません。蘇生の提案もまだ私がどれだけの不可能を可能にするか不明であるためです。故に、貴女の娘は蘇生しても次元犯罪者である貴女は助けません」
それは、納得出来て無慈悲な言葉だった。彼らと自分はなんら関係もない。求めた力がすぐ近くにあり、叶えてくれると言うがそこに自分はいない。でも不思議と、さっき胸の奥で湧き上がった気持ちほど動かなかった。どうやらアリシアへの思いは残っていたが自分自身の事はそこまでではなかったのだろう。思わず笑ってしまった。
「おかしい事を言いましたか?」
「言ってないわ。今さらになって私がどんな自分だったのか知れただけよ。それとあなた達がアリシアを生き返らせてくれると言うのなら逆にお願いしたいくらいわ。それで私が死ぬのは構わな――」
「あー、違う違う」
提案を受け入れてこのまま身を任せていいと語っているの同然に話していたプレシアを天吹は言葉を割り込ませて、続けて言った。
「プレシアさんは死ぬけど、死なないよ」
「え?」
「……実はマスターがここに追加を願ったのです。娘を蘇生させ、貴女を見捨てる。その後、
言葉足らずの天吹をヴェヌスが捕捉した。要するに、プレシアを助ける可能性を残してくれるというのだ。
「マスター曰く、今の時点で蘇生すると私たちの不利となる。しかし別の誰かが、その不利を相殺できる何かを持つ誰かが代わりに背負うなら問題ないと言いました。故に貴女の遺体は保管することになりました」
「それ、結局は私の事も助けてあげるってことじゃない」
「可能性は低いですよ。力を持つ者が望まなければ貴女は蘇生されませんから」
「問題ないわ」
「そうですか。――マスター。話は以上です」
「うん。それじゃあプレシアさん、眠る前に
「え?」
天吹が頷くとヴェヌスはその肩に乗ってそのまま振り返る。それと入れ替わるよう、その子から、あの子が現れた。
「あぁ、ああ………っ!」
それはこれから深い眠りにつく彼女に与えられた、語り合いの時間だった。
弱々しかった呼吸が少しずつ遠くなっていく。そんなプレシアの額に2つの手が重ねてある。1つは天吹の手。もう一つは、
重ねた手の周りには球体のように輝く立体の魔法陣。これが輝いてから2人は眠ったように静かだった。
そう、既にアリシアの蘇生を終えていた。天吹がプレシアの精神世界に入るよりも先に。それはこれから蘇る可能性が低い、長い眠りにつくプレシアとアリシアに親子の時間を与える為だった。蘇生の魔法に使った魔力は大幅に使ってしまったが。
そんな状態が数分。魔法陣が縮んで消えてしまうと2人は同時に目を開けた。
「終わったね」
「うん、ありがとう」
「別に良いよ。だって親子が何も話さないで終わっちゃ寂しいでしょ?」
なんて事ないと言う天吹だったがアリシアに取っては至高の時間を与えてくれた相手だった。
「戻ってきたでござるか」
「ああ、はんちゃん。もうシアちゃん*1の着替え持ってきたの?」
「元々、ここは拙者の修行場でござる。常に着替えは保管してるでござる」
改めて聞けば呆れるほどの用意周到さ。ちなみに何故着替えを取りに行ったかというと布1枚で体を隠すアリシアの為である。そしてこの布も阪奈が常日頃から備えている道具の1つである。なぜ子供の体を覆えるほどの布を隠し持っているのだろうか、はあえて考えない。
「どうでしたか?」
「うん。お母さんがしたことは許される事じゃないから最初は叱ったけど、それ以上に会えて嬉しかった」
ヴェヌスが問いかけるとアリシアは寂しそうに答えた。実はアリシアにはプレシアの記憶から今日までの出来事を与えられた。アリシアが死んでから、虚数空間に落ちた何十年分の出来事を。その中には記憶だけの妹の事も。
しかもそれを行ったのは天吹だった。ヴェヌスではなく、彼がだ。本人はプレシアと話すなら必要だと言って与えたのだった。
「それじゃあ保管するよ」
「……うん、お願い」
2人がまだ息が残るプレシアから離れる。その2人のそばに阪奈は寄ると、これからする事を見守った。
そして天吹は両手を掲げて呟く
「――おやすみ」
【――承認。実行します】
そんな一言と同時にプレシアが横たわる地面に魔法陣が出現する。そしてそれは立体的に球体へと変えていき、それに合わせてプレシアの体を浮かべる。その姿を見て、
アリシアは涙を流しながらいつか再会できる奇跡を願い、
阪奈はこれから見えぬ未来からこの2人を守る事を強く思い、
天吹はただ思うままに行動する。
3人がそれぞれの思いを抱きながら、プレシアはこの場所で眠る事となる。魔法陣は彼女の体を包み込み、そして魔力は水晶として体を覆っていく。
――パァン。
その音は両手を掲げた天吹が手を叩いた音だった。それと同時に水晶に変わっていた魔力が弾けるように、または急凍するかのように一気に加速する。プレシアの体を水晶で包み込むために。
「おやすみ。いつか、フェイトと一緒に会いに来るからね」
そんな母親を、アリシアはそう呟いた。
一期終了。グダグダと思えても後悔しない。
だって自分はスッキリしてるから!
と、ハイテンションで書き上げました。他の連載に行き詰まったら続きを書きます。