さぁ、アナタはどうする?
11月*日
昨日の夜、おじさんが病院に運ばれたって電話が来るとすぐにタクシーを呼んでシアちゃんと向かった。子供の電話は疑われたけどおじさんが病院に運ばれた事を伝えるとなんとか来てくれてよかった。
到着するとお医者さんがおじさんの所まで案内してくれて、何故かタクシーの運転手さんも一緒に来てついていくとベッドで横になるおじさんと会う。意識がないらしく、先生が言うには女の人がおじさんを見付けて救急車を呼んでくれたらしい。ただその女の人は家族を待たせる訳にいかないと、お医者さんに謝罪とお願いをして病院を後にしたらしい。
その後、僕とシアちゃんはそのまま病院でお泊まり。子供を保護者のいない家に帰らせるのは心配だからって。学校はお医者さんが電話してくれたらしい。その間、おじさんをこっそり診断したヴェヌスが原因を突き止めていた。おじさんはリンカーコアの魔力が奪われて、その影響で意識不明になったって。どういう事かというと誰かに魔力を奪われたからだって。また何かが起こってるみたいだ。
そんなこんなで夕方。病院にはんちゃんがやって来た。はんちゃんにも原因を伝えた上でおじさんの意識が戻らない以上は入院し続ける事を伝えるとはんちゃんの家で厄介になることになった。そう言うわけで今ははんちゃんの家で日記を書いてるよ。本当ならこの忍者屋敷みたいな家のことを書きたいけどそれどころじゃないから今度にするね。
11月$日
おじさんの意識が戻った。その時は学校にいたけど唯一の保護者だったから早めに行かせて貰った。病院に到着してすぐにおじさんの所に向かうと笑顔で出迎えてくれた。おじさんは口では過労だって言ったけど念話でヴェヌスの診断を伝えるとおじさんはそれを認めてくれた。ただおじさんは僕とシアちゃんに手を出さない代わりに自分の魔力を差し出した。そして犯人の事は教えてくれなかった。夕方にきたはんちゃんにこの事を伝えたら僕らが近づかないための気遣いだって。
その後、お医者さんは何日かおじさんの様子を見てから退院が出来るらしい。それを聞いたはんちゃんは僕らの家で作戦会議をしたよ。その結果、3人そのまま家に泊まり込んだけどね。
11月$日
「それでは『魔力強盗の対策会議』を始めるでござる~」
「待ってましたー!」
「と言っても子供3人と一機の私だけですが」
「お茶濃ゆい……」
久保田家のリビングで囲むように天吹、阪奈、アリシア、ヴェヌスが集う。中心には何枚かの紙とお茶と串団子が乗ったテーブルがある。ちなみにお茶と串団子は阪奈の家からの持参である。
「まず事の流れを改めて振り返るでござる。忠殿がリンカーコアの魔力を奪われてから数日。意識は戻ったでござるが魔力の回復には至っていないでござる」
「そうだね。ちゃんとした設備があったら回復も早いだろうけど地球にそんなのはないからね。天吹くんとヴェヌスなら出来るけどね」
「それ、おじさんに断られたから」
「マスターが望まないなら私はなにもしません」
「いや、これは忠殿の判断が正しいでござる。自然治癒より早く復帰すればなにかがあると思われるでござる」
阪奈の言う通りである。この地球で、と思うだろうが半年前までは管理局が現れる事件が起きた。つまりはまだその方面の繋がりがこの町には出来ており、ヴェヌスを宿す天吹や蘇生したアリシア、封印されてるプレシアと管理局にバレると不味い事を抱えている。目を向けられないようにするには何もないと振る舞う方が良いのだ。
「それって私たちの事を心配してだよね。でも事件は終わったし、そこまで警戒はしなくていいんじゃない?」
「そうでござるな。でも今回、この世界にいる忠殿を襲い……いや、素直に魔力を差し出したでござるから接触が正しいでござるな。要するに犯人は魔法文化のないこの世界にいる可能性があるのでござる」
「確かに。いくらジュエルシード事件があったとは言え、魔力を強奪する場所としては不適切ですからね」
「あれ、それじゃあ僕やシアちゃんは?」
「マスターとアリシアの魔力反応は私が隠蔽を施しているのでバレません。ただ忠にはしていなかったのでそれが今回に繋がったのでしょう」
「そっかー。でもおじさんなら頼んでも断るだろうね」
「忠殿ならそうでござるな」
うんうんと頷く阪奈はテーブルに置かれた紙束の1枚を一番上に出した。その用紙には刑事ドラマで捜査する際によく見る相関図が書かれていた。
「拙者達にとって始まりは忠殿でござるから忠殿が中心でござる。そこに犯人が接触したでござるが、もう1人気になる人物がいるでござる」
「え? そんな人がいるの?」
「忠殿を助けてくれた婦人でござる。彼女は病院まで付き添った後、家の事情で帰ったと医者は言っていたでござる。見ず知らぬ相手を助ける物が天吹殿たち身内が到着するまで付き添わぬは少々矛盾しているでござる」
「……もしかして、その女の人が犯人かもしれないの阪奈は思ってる?」
「第一発見者が怪しい。それは誰もが思う心理でござるよ」
「おおう。なんかクールでカッコイイ女性って感じだね」
「アリシア、そう言った感想は胸の内にしまって下さい」
阪奈は相関図に『女性』を書いて忠に向けての矢印に『救助』を書く。そしてその『女性』と『犯人』にイコールを書いて『同一人物?』と書く。
「犯人像はわからぬでござるが助けて頂いた婦人は病院の先生から聞けたでござる。20代で桃色の総髪。生真面目な雰囲気であったそうでござる」
「……総髪って?」
「ポニーテールでござる」
「普通にそう言えば?」
「基本、拙者はカタカナが苦手でござる」
「貴女のそれはキャラ付けでしょう?(笑顔)」
「フフッ、そうでござるな(笑顔)」
「(相変わらず仲が悪いなぁ)」
「あ、お団子美味しい」
火花をチラつかせる阪奈とヴェヌスをちょっと面白そうにアリシアは眺めていた。
「で、阪奈。貴女はその女性を探すのですか?」
「その通りでござる。魔力を持たない拙者なら追っ手の類と思われないでござろう。まぁ故に念話が出来ないのは惜しいでござるが」
「じゃあ作ってあげようか、通信機?」
「え、あるの?」
「うん。と言っても天吹くんだよ、それ言ったの」
「え?」
「アレの事でありませんか? 阪奈とも念話がしたいと聞いてきて肯定した件です」
「そうそう、それ」
「あ~、そう言えば話してたね」
天吹はアリシアがデバイスを作っていた頃、ふと念話だけでも使えないか聞いた事を思い出していた。
「おじさんでも作れないかって話もしたね」
「はい。と言っても設計図をマスターが望めば作成可能です。もちろんマスター自身が生み出すことも可能です」
「うん、だから天吹くんに設計図を出して貰って私が作るの」
「いや、天吹殿に頼めば……」
「ダ~メッ! 女の子なんだからデザインとか拘ろうよ! 阪奈だって忍者っぽいのがいいでしょっ!」
「うぬ、確かにでござる」
「忍者っぽい?」
「むしろ隠密に適した形と言う事では? であればマスターには不向きでしょう」
「そだね。じゃあ設計図出すね。――出てきて」
【――承認。作成します】
ヴェヌスが応えるとテーブルにあった紙の1枚が浮かび、ペンもなく白い面に図形が浮かんでいく。それが数秒で終わり、ユラユラとアリシアの前に落ちた。
「どうぞ」
「うん、ありがと。うーん、材料はうちの地下室でもある物みたいだし、数日で中身は出来そうだよ。大きさからヘッドホンタイプかな。阪奈ちゃん、そう言う訳だからデザインは考えてね」
「了解でござる。要望だけ詰めるでござるからその後で話し合うでござる」
「うんうん、楽しみにしてるよ」
「ござる。さて、であれば他の視点から考えられる可能性でござるが……」
阪奈が話を戻してこれからの予想や対策を話していく。結局、今夜の3人はこの家で一泊する事となった。
子供達は遅くても10時に就寝しました。夜更かしはさせません。
ちなみに天吹のデザイン力はシンプル寄りです。