Fate/Serment de victoire   作:マルシュバレー

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ほげえええもう明日で100話に到達しちまうよおおおおおお
長い人じゃ3ヵ月以上もわたくしめの作品にお付き合い頂いてますけどもありがとうございますううううううう


99話 八日目:運命か宿命か

俺は、誰なんだろう。

何度自分に問っても、まともな答えは見つからない。

本当の平尾克親と、八月朔日喪の混ぜものである俺は・・・・・・どちらにもなりきれないままふよふよと浮いている。

記憶にも嘘が練り込まれ、俺自身にはどれが真実でどれが虚構か一切合切わからない。

 

「・・・・・・セラヴィ」

 

そこにいるのなら、どうか俺の願いを聞いてくれないだろうか。

もしも俺が俺でなくなった時には、その剣で・・・・・・首を刎ねてくれ。

何もかもがぐちゃぐちゃで、わからなくなる。

父さん母さんと作ったたくさんの思い出も、海と喧嘩して殴り合いで会話した思い出も、会社にこき使われまくった挙げ句一度死のうと思って登ったマリンタワーから見えた景色も。

全部、作り物だったらどうしよう。

全部、なかったものだったらどうしよう。

 

「・・・・・・そんなの・・・・・・耐えられるわけねえよ」

 

今度こそ俺は、人でなしになる。

八月朔日はそれを期待して俺に全てをぶちまけたのだろうが、まだ隠し玉があってもおかしくはない。

もしそれがあったとしたら、どんなものなのだろうか。

俺の生きてきた理由も、何もかも・・・・・・否定されるのだろうか。

 

「・・・・・・それは、それだけは嫌だ」

 

そんなことをされるくらいなら死んだ方が何億倍もマシだ。

罪のない人を傷つけて殺すなんて、嫌に決まってる。

デュランダルは・・・・・・ドゥリンダナは、騎士でもなんでもない俺なんかの手にあってはいけない。そう、俺の大切な友達にこそ持って欲しいのだ。

立派な騎士になりたい、と願った彼に・・・・・・マンドリカルドの手にこそ相応しい。

だから、まだ折れたくはない。

いつか彼へ、俺の手から渡したい。

自分の中にある”それ”を知覚して、明確な形を描き出す。黄金色をした刀身、漆黒の柄、橙色の紋様。

あの暴露があったせいか、前よりもさらにイメージは鮮明化している。

 

「クッソ・・・・・・」

 

だが、魔術を編めないようにとされたブレスレットのせいで具現化はできない。

これさえできれば、扉を物理破壊して逃げられるというのに・・・・・・

 

「・・・・・・それができたとしても、完成じゃあないけどさ」

 

何かが足りないのだ。

俺の中にあるデュランダルの形は殆ど完成している。けれどそれは概形だけで、中身がない。

魂のこもっていない剣なんてのはいくらものが切れてもだめだ。

誰を殺したいとかいうような腐った内容であっても、強い思いという中身が必要だ。感覚と偏見でものを言っているから、明確な根拠もクソもないがこれは真実であるはず。

俺にはまともな心がないから、空っぽのままなんだろうか。

 

「そうだとしたら・・・・・・悲しいにもほどがある」

 

人間を寄せ集めて作った人間未満の生命だから、本物には追いつけないのだろうか。

完成まであとひとつというところで、最初からないパズルのピースを探し続けなければいけないのだろうか。

そんなことを続けるだなんて、虚しいにもほどがあるだろう。

すべてを投げ出して、ピースと一緒に枠すらも破壊してしまったらどれだけ楽だろうか。

でも俺の起源がそれを許してくれはしないだろう。「具現」は、完成するまで俺の本能に語りかける。

「その空想を具現化しなさい」と。

なら最後のピースをくれと叫びたくなった。

はめるものが無ければどうしようもない、適当にパテで埋めて絵を描けばいいじゃないかという問題でもない。

何が、答えなんだ────?

 

「・・・・・・もしかしたら」

 

ある考えにたどり着く。

デュランダルのレプリカでロジェロでもローランでもなく、デュランダルを持って召喚されない彼が呼ばれた理由が、その英雄としての不完全性にあったとしたら。もしもこれが運命(Destiny)でなく、宿命(Fate)であったとしたら。

 

「・・・・・・俺は、あいつを英雄として完成させるために生まれたのか?」

 

彼との関わりの中で俺は最後のピースを獲得し、イメージする聖剣をこの世界に具現化する。

そしてそれを彼に手渡すことで、完全な英霊になれるとすれば。

それを叶えることは、俺の生きる理由になる。

いいことじゃあないか。俺の貰った最後のひとかけらが、彼の最後のひとかけらにもなるのなら。

ただの金だけはあるような魔術師がする根拠もクソもない妄想だが、それは俺を挫けさせることなく立たせてくれる強い支えになる。

 

 

マンドリカルドがまだ近くにいてくれるという感覚が、とても嬉しい。

ブレスレットのせいでかなり魔術的な感覚は鈍っているが、彼との繋がりはよくわかる。

目を閉じて少しだけ集中をすれば、遠くにいるだろうセイバーの反応も検知できた。

おそらく向こうも、俺からの供給に異変を感じたか教会に言って長いこと話し込んでいるらしい。

出来れば外部からうまいこと介入し助け出してくれれば最善なのだが、八月朔日どころか海まで相手にいるとなるとかなりきついはずだ。

不破とセイバーたちがうまい具合に結託してくれれば可能性はあるけれども、流石に不破はそこまで協力してくれるかどうか・・・・・・

それこそ八月朔日の計画が完全に露呈すれば、俺諸共の可能性はあれど潰しに来てはくれそうである。

だが俺は死ぬわけにいかないので、どうにかして八月朔日たちだけを消してくれるよう仕向けられは・・・・・・俺には到底無理か。

 

「俺の中にあるデュランダルを取り除けばどうにかなるのか・・・・・・?」

 

空想具現化だけに止まらず体から摘出してマンドリカルドに渡してしまえば、俺の体からは脅威となるものが無くなるはずだ。

雑な推測が浮かんで消えてを繰り返す。

調べる手段がないから検証しようもないし、最善手があったとしてもそれへ実際たどり着けるかどうか・・・・・・

壁は多いが、道が丸ごと崖になってなくなっているよりかはずっとましだ。

壁なんてのは乗り越えてもいいし壊してもいい、下に潜ったっていいしなんならちょっと遠回りして抜けたっていい。

それはいつか通れるだろう道だ。最後の最後に何もなくったって、その場所にはたどり着ける。本当の記憶が何かもわからない俺だけど、それは確実な轍になる。

死ぬときに少しだけ振り返って後ろにそれがあれば、俺はもう満足するさ。

 

 

「あの旦那、ご飯・・・・・・食べません?」

 

扉の向こうから篠塚の声が聞こえてくる。

確かに朝から何にも食ってなかったはずだし、腹の虫も泣き喚く寸前だ。

 

「毒とか盛ってないならありがたく頂く」

 

「盛るわけないでしょうが。俺は旦那をもし殺すとしたら、ちゃんとそん時は刀で殺しますよ」

 

絶妙に信用ならない言葉を吐いて、篠塚は部屋の扉を開ける。

給食を運ぶときに使いそうなでっかい台に何個も皿をのっけてがらがらと運んできたのはいいが、どこからどうみても一人前じゃない。

 

「一応多めに作っときましたんで、お腹いっぱいになったら残してくれても構いませんよ。言ったとおり毒は何一つ盛ってません・・・・・・アレルゲンとかいう奴はあるかもしれないですけど」

 

「俺は花粉症意外なんも持ってねえよ・・・・・・ま、ありがとな」

 

「では戻らせて頂きます・・・・・・あ、最後に一つだけ」

 

右手の人差し指を立てて天井を指さすようにポーズを取る篠塚。

どこぞの警部というか特命係長の真似っこをしているつもりだろうか。

 

「・・・・・・なんだ?」

 

「今晩、ちゃんと早めに寝たほうがいいですよ?」

 

なぜそんなことを問うんだと聞き返したかったが、その前に篠塚は行ってしまった。

早く寝たら俺にとって良いことがあるのだろうか。もしかしたら早いこと人体実験を始めるために俺には寝ていてほしいとかそういうことでは・・・・・・いや、そうなってくると飯に睡眠薬でも入れておいた方が早いと思うのだが。

いろいろと考えながら俺はまずサラダに手をつける。

ばりばりとシーザードレッシングのかかったレタスを頬張りながら、無意味に俺は天井を見つめていた。

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