Fate/Serment de victoire   作:マルシュバレー

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外道はとことんまで外道にしてやるしかねえべと思った結果がこれです


104話 九日目:怨嗟

「・・・・・・デュランダルのデータがパス付きzipフォルダみたいになってる」

 

端末をしばらく無言でいじくり回していた八月朔日が、唐突にそう呟いた。

zipというと複数のフォルダを圧縮して小さく纏めたものについてる拡張子の一種(ほかにはlzhやcabなどが該当)である。

八月朔日の表現から察するに、俺の中に秘められたデュランダルの力や形のイメージがとある箱に入れられて小さくまとめられており、それを開けて解凍するには何らかのパスワードらしいものが必要だということ。

無論俺はそんな操作した覚えがない。それに今でもデュランダルの形は容易に思い描けるのだが・・・・・・

 

「あなた、解除方法を教えなさい」

 

「知らんがな」

 

設定した覚えのないシステムの解除方法なんて知ってる方がおかしい。

どういうタイミングでそれがなされたのかと考えればまあ、昨晩マンドリカルドと夢の中でいろいろやりとりした時くらいだろうなあとは思いつくが、少なくとも俺はそういった操作をしていない。

マンドリカルドが俺を自らの深層に潜らせた後接続を利用して俺の内部に干渉、聖剣の概念をかき集めて封印した・・・・・・いや、そんなことを彼が勝手にするだろうか・・・・・・?

 

「しらばっくれるの?なんならベラドンナ由来の自白剤ぶち込むわよ?」

 

「お前はそれでも脳外科医かつ魔術師か」

 

そんな適当極まりないやり方をされちゃあ秘密を吐く前に廃人になること間違いなしだ。いや吐く秘密もないんだけど。

せっかく脳外科のスペシャリストかつ魔術にも造詣のある人間なら医学か魔術でやっていただきたい。まあ実際のところやってほしくはないんだが。

 

「つか俺に何やっても無駄だぞ。マジでそのパス付きzipみたいなデュランダルのデータとかそんな風に圧縮した覚えも何もねえ」

 

真実をきっちりと伝えたつもりだが向こうは全く俺のことを信用していない。

兵器に加工されるのを拒否って起動の要たるデータを封印したと見ているようだ・・・・・・俺は言葉で説得するくらいしか出来ることがないので、現状方法が存在しない。

 

「んーめんどくさー。またあの子いじめよっかなー」

 

「・・・・・・んなこと簡単に言うんじゃねえよ」

 

体に刺さる物を全部ぶっこ抜いて瓶を叩き割って殴りかかりたいくらいだが、出来るわけもないしどうせ出られてもまた筋肉が弛緩するアレを打たれておしまいだろう。

言葉での抗議はするけれども、やっぱりこいつは人の話を聞かないというか都合のいいことしか頭に入れない。

 

「アサシンくんいるー?またあの子いじめてくれない?もう腕とか足とか大事なところ切っちゃっていいから。これの目の前で」

 

「・・・・・・わかりました。殺さない程度に切り刻みますか?」

 

厨房にいた彼は玉ねぎを刻んでいた手を止めて、冷徹にもそう言った。

彼はあくまでも八月朔日の命令には従うらしい・・・・・・叛逆すれば自分が消されかねないし、仕方ないとは思うがやはり憤りを感じる。

 

「ええ、ついでにあの子からも情報を引き出せたら最高ね・・・・・・どうせサーヴァントだし重要なところさえ壊さなきゃ消えないでしょ」

 

「・・・・・・御意」

 

随分と暗い顔つきで、篠塚はみじん切りにしていた玉ねぎを深いボウルに移してラップをかけた。

包丁を撫でて洗い元の場所に戻したところで、エプロンを脱ぐ。

カメラの画角から見えなくなったと思えば、すぐにマンドリカルドのいる部屋へとその姿を現した。

 

「・・・・・・セラヴィさん。ごめんなさい」

 

「なんすか突然」

 

目にも止まらぬ速さでシーツを使いマンドリカルドを縄なし簀巻きにする篠塚。彼の技巧が恐ろしいということなのだろうが、流石に軽くやられすぎじゃあないだろうか我が友は。

むーむーと暴れる彼を抑え込み、またカメラの視界から消える。

 

「さてさてお楽しみターイムの始まり始まり~」

 

また端末を操作して何かをしたかと思うと、いきなりちょうど俺の目の前に大きな椅子が現れる。

床下に格納されていた拘束具つきのそれは、明確なまでの害意を感じるデザインだ。

 

「そしてショーの主役は我々、なーらーぬーかわいいかわいいあ・の・こだ~!!」

 

キャスター付きの台に沢山の刃物やら何やらを置いて、篠塚を迎え入れる八月朔日。

椅子の上にシーツでぐるぐる巻きにされたままのマンドリカルドが乗せられ、あっという間にそこへと括り付けられた。

傷をよく見せるためか、パーカーとズボンは取り払われている。

 

「・・・・・・また拷問ってか。今度は克親の前で・・・・・・」

 

「うんうん。映像だけじゃあ実感が沸かなかったみたいだから、実際にみてもらった方が効果高いと思ってね」

 

「・・・・・・いくらでもやってくれっすよ。俺はなにがあっても折れる気はねぇ」

 

歯をぎりりと鳴らし、八月朔日を睥睨するマンドリカルド。

彼女の手は脱がした服を適当に持っていて、こいつをどうするべきかと指先で弄っている。

 

「・・・・・・あのさ。この服、すっごい大事なものなんでしょ?」

 

にたりと悪意を隠そうともしない顔で、八月朔日がそう言った。

 

「ああそうっすよ、克親に買って貰った大事なもんだ。昨日も言ったはず────っ!?」

 

彼女の右手にはいつの間にかライターが握られている。まさか、火をつける気か。

 

「マスターとの思い出とか、どうでもいいもんわざわざ抱え込んで気持ち悪いんだよ未練がましい悪霊が」

 

かち。

立つ炎は、無慈悲にもパーカーの袖に引火し焼けていく。

綿とポリエステルでできたそれは簡単に燃え、ばらばらと黒い炭素の塊に鳴りながら崩れていく。

マンドリカルドはなにも言わないまま、ただ口を開いてその様を見つめていた。

 

「・・・・・・なんで」

 

震える声で、彼が呟いた。

落ちたかけらを見つめて、静かに涙をこぼす。

 

「使い魔程度が主と友人関係なんてちゃんちゃらおかしくて横っ腹に激痛走るわ。勘違いにも程があるだろ、なにそれなんていう思い上がり??」

 

「・・・・・・ふざけるな」

 

彼の唇から血がにじむ。

 

「大切な思い出を抱え込んでなにが悪い。友達でなにが悪い。確かに俺はサーヴァントだ、けど人でもあるんだよ!!」

 

「は?きっしょ」

 

片口まで焼失したパーカーを床に投げ捨て、八月朔日はその足を振り上げる。

マンドリカルドの頬に回し蹴りを食らわせて・・・・・・大きな溜め息を彼女はついた。

彼に対して人間がダメージを通すには、はよほど高度な技術(不破の使用する鉄甲作用などが該当)および魔術が必要なので実質ちょっと衝撃を感じたぐらいなのだが、彼の顔はかなり痛そうに見える・・・・・・心の痛みが表情に出ているのだろう。

 

「なにお涙頂戴みたいなこと言い出してんですか、あなたはどこまで行っても下僕でしかな・い・の!人としてイカれたマスターに優しく接されたせいでひっどい勘違いしてるっぽいけど、それ修正した方がいいよ?」

 

「・・・・・・誰が修正するか」

 

ぐっと握られた拳には、憤怒そのものが込められている。

悲しみで震えはいつしか憎しみの震えへと変化し、マンドリカルドの中で煮えたぎっているように見えた。

 

「俺は克親のために戦って死ぬと決めたんだよ。友達でいることがもし間違いだったとしても、それでいい。克親は俺と友達になりたいって言ってくれたし、俺もそれに応えたかっただけだ。アンタなんかにそれを否定される筋合いはねえ」

 

きっぱりと彼はそう言い放った。

譲れない思いを彼女に叫びで叩きつけて、さあ殺さば殺せと鼻息荒くアピールする。

 

「・・・・・・ああもうほんと・・・・・・調教しがいのある子だこと!アサシン、さっさとこいつの体を切り落とし肉に加工しなさい!」

 

「・・・・・・わかりました」

 

大きな菜切り包丁のようなものを手に、篠塚はゆっくりとマンドリカルドから見て左側に佇む。

左手で彼の手を抑えつけ、包丁を握ったその手を高く掲げた。

 

「ごめんなさい」

 

その刃は振り下ろされ、いとも簡単に肉を断つ。

何度も、何度もそれが叩きつけられ、骨にもダメージが通り出す。

 

「あ”、ぁ”あ”!!!」

 

腕が断たれると共に鮮血が飛び散り、辺り一面を血の海に変えた。

前みたいな拒絶反応が顕れ、ずきりとひどい頭痛が俺を襲う。

すぐそれは再生するが、痛みが引くわけではない・・・・・・繰り返しそこに攻撃は加え続けられ、俺の魔力が限界になるまで破壊と再生を繰り返すことだろう。

保有量がかなり多いだけに、そう簡単に供給はストップしないから永遠にも感じる責め苦を受け続ける・・・・・・だからといってここでパスを切ることにより再生を制限しても消滅という結末が早く訪れるだけで何の解決にもならないのだ。

 

「・・・・・・セラヴィ」

 

「まだだ、まだ・・・・・・こん、なんでっ!!」

 

呻き声を上げながらも、彼はずっと耐えている。

助けたいのに、俺には何もできやしない。

分厚い硝子の壁に手を触れても、出ることは叶わず・・・・・・傍観しか出来ないのだ。

 

「・・・・・・セラヴィ、すまん。俺のせいで」

 

俺がもっと強ければ、こんなことにはならなかったのに。

彼を泣かせることも、無かったはずだって言うのに。

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