Fate/Serment de victoire   作:マルシュバレー

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なんかじみーにでっかーーいフラグを立てちまったなあ


108話 九日目:後で覚えてやがれ

嘆くだけじゃ、何も変わらない。

魔力を体に循環させるだけで麻痺症状を起こさせてくるこいつを怖がって何もしないようじゃ、兵器として利用される以外の結末はないだろう。

もう全てを失ったようなもんだ。こうなったら、八月朔日だけでも殺してやろう。

体についたコードを引きちぎろうと、手で鷲掴みにする。

外れた途端に俺を殺すようなシステムになっている可能性だって考えついたが、もうそんなリスクを恐れて縮こまるつもりはない。

死んだらそれまでだと、覚悟を決めた。

 

「・・・・・・脱獄するつもりか?」

 

唐突に声がした。

扉の奥からひょこっと顔を出して不敵に笑う海・・・・・・どうせ八月朔日にチクって終わりなんだろ。ああ早いゲームオーバーだった。

 

「ほっといてくれ。俺は・・・・・・行きたいんだ」

 

「ほっとくわけねえだろ、馬鹿かお前は」

 

また煙草に火をつけて、大きく煙を肺に取り込んで恍惚とした表情をする海。こんな緊迫した状況で余裕綽々だな、と言う元気すらない。

 

「味覚土砂崩れの奴らとやいのやいの言ってたら結構長引いてな。おかげでセラヴィに悪いことしたとは思ってる」

 

「・・・・・・悪いことしたとかで済む問題じゃねんだよ、何回も言ってるだろうが」

 

コードをぶちっとまとめて引き抜き、適当に放り投げる。

腕に空いた穴数本から血が流れ出す・・・・・・この程度で失血死するような体でもないしどうだっていい。

 

「おい馬鹿、コード抜くなら抜くって言えよバレるだろうが」

 

「・・・・・・お前にとっちゃバレたほうが手っ取り早いだろ」

 

「なわけあるかい。ったくお前は昔から勝手な奴だ」

 

お前に言われたかねえよと返したが、海の様子が何やらおかしい。

壁に手を付いて、右手で頭を抑えている。息は少し荒くて、見るからに体調が悪そうだ。

・・・・・・でも、今の状況で大丈夫かと言えるほど、俺は寛容じゃない。

 

「・・・・・・くっそ・・・・・・んなとこで・・・・・・くたばれるか」

 

足を引きずりながら、俺の体が入った瓶の前まで奴は進む。

俺の足元あたりにある端末に顔面を近づけ認証させ、何やら操作を始めた。

 

「・・・・・・ははは、あいつけっこうガバってるわ。生体認証だけとかワロスの極み」

 

手際よくパネルの上で指を踊らせ、2分程度・・・・・・

いきなり俺の足元から大きな穴が現れ、例の液体をどんどん吸い込んでいく。

 

「え、ちょっと待って俺まで巻き込まれるだろこれ!!」

 

「耐えて」

 

「てっめ無責任過ぎにもっ・・・・・・ごぼぇあ!!」

 

肺の中で酸素を供給していた液体も、すぐ酸素を使い切ってしまい窒息しかける。

なんとか瓶の壁を四肢で抑え、液体を吐いたがまともに動ける気がしない。

こんなん、途中で八月朔日に見つかって最悪の結末になること間違いなしだろう。

 

「まあそうなると思った」

 

「げっほ、ぐぇ・・・・・・お前、ちょっと・・・・・・がはっ」

 

なんとか瓶の中から這いずり出て、浮力に慣れてしまった自分の体を立て直す。

足がまだふらつくが、いざというときは走れなくもない・・・・・・例の筋肉を弛緩させてくるアレを打たれなければの話だが。

 

「・・・・・・しゃあねえな、ほら」

 

「・・・・・・背負ってくれんのかよ」

 

珍しい。

こいつが進んでこんなことを言い出すなんて。

俺が死んだら困るからってだけの理由だろうが、今は利用させてもらおう。

ことが終わったら徹底的にボコボコにしてやる。

海の肩に手を乗せ、背中に体重をかけた・・・・・・なんだか、所々汗ではない少しぬめついた液体に触れるのだが、まさかこれは・・・・・・

 

「血、出てねえかお前」

 

「あ?・・・・・・あー、ちょっとカプサイシンに寄生された奴と一悶着あってな。そんときの返り血」

 

埋葬機関に行きかけたという不破が強すぎてかすんでしまうが、唐川の奴もかなり戦闘は強かったはずだ。

それを海の奴が返り血をあびるほど殴ったってのはいまいち信じられん。

まあ唐川のことだから殴られるのって面白いとかいう方向性に目覚めたあげく・・・・・・という常人ならまずないような変わりかたをしかねないのでどうとも言えないけども。

 

「・・・・・・お前は怪我してねえのかよ」

 

「ちと黒鍵かすっただけだ。ガバエイムだし血は出てねえ」

 

「・・・・・・そんならいいけど」

 

いつの間にか、海といつも通りの会話をしている自分がいる。

許せないはずなのに、どうしてだろうか。高校からの付き合いだし、本当10年程度・・・・・・大学を卒業してからはめっきり話していなかったので、体感としては少し短いがそんくらいだ。

その程度の関係だってのに、どうして俺はいつもこうなるんだろう。

海のことを、許してしまいたくなるんだろう。

意味がわからなかった。

 

 

「旦那は無事ですか」

 

「・・・・・・ああ」

 

パンツ一丁の俺を背負ったまま海がエレベーターのところまで歩いていくと、篠塚が黒っぽい服を着て影に溶け込むように潜んでいた。

顔だけ出して俺の安否を確認した後、目にも留まらぬ速さで海の隣に飛んでくる。

 

「・・・・・・旦那、先程は申し訳ないことをしました。俺を容赦する必要はございません」

 

「・・・・・・そうか」

 

あの時に見た、幻のマンドリカルドが言っていた『まだ終わりじゃない』という言葉。

どこかに、彼がいる気がして・・・・・・怒りが少しだけ和らいだ。

 

「俺も、不可抗力っつって・・・・・・ひでえことをした。いつか、戦争が終わったその暁には・・・・・・俺を好きなだけ、気が済むまで殴ればいい」

 

これは海なりの贖罪なのだろうか。

それだけで全てが許される訳じゃないけれど、俺はその気持ちを受け取らない訳にはいかない。

ちょうど俺も海をボコりたかったところだ。普段は女扱いするなといわれているけれどもやはり海が女性であることを思ってしまい容易に手が出せなかった。

あいつがいいなら好きなだけやってやろう。それが俺にできる最善だと信じて。

 

「・・・・・・もうあいつら着いてるんだってよ」

 

「あいつらって誰だよ」

 

「見りゃわかる」

 

エレベーターに乗り込み、あっという間に地上へ到達する。

病院のシークレットな出入り口・・・・・・今はちょうど昼頃らしく、太陽がかなり上の方にいた。恐らく南中だろう。

舞綱の地理を考えるに、南中が訪れる時間帯はだいたい正午だったはずだ。

 

「お、やっと来たか。いやーオジサン待ちくたびれちゃったよ」

 

「お前・・・・・・!?」

 

いつもの調子で後頭部を雑に掻くセイバー。

後ろには、来栖さんまでいる。

 

「なんでここに」

 

「いや当たり前でしょ。お前さんが死んだら俺も消えちまうんだし、助ける以外の選択肢がないっての」

 

場の雰囲気にそぐわない、陽気そうな笑顔を見せてくるセイバー。

少しでも俺の緊張を解こうとしてくれているのか・・・・・・真意はよくわからないが、そんなセイバーの振る舞いがとても嬉しかった。

 

「それにな。もし俺がなんとかかんとか他やつから魔力もらえることになっても・・・・・・お前さんがいなくなりゃライダーの奴は絶対本気出せないだろ?例え他の奴と再契約しても・・・・・・な」

 

本気のマンドリカルドと、セイバーは戦いたいらしい。

あいつは、この戦いに勝つと誓ってくれた。

なお幕引きが、セイバーの望んだような形にできるかはわからない。俺としても、正々堂々と綺麗に決着をつけて終わらせたいけれど・・・・・・マンドリカルドが、俺の元に戻ってきてくれるかもわからない状況ではどうしようもないのだ。

 

「・・・・・・セイバー」

 

「ライダーくんはお前さんがいなきゃ最大出力は出ない。なんてったってここいら一帯でも最強クラスの魔術師だろ?巨木みたいなお前さんと比べりゃあ他の奴らは一部除いて全部ドングリみたいなもんだ」

 

それに、とセイバーはさらに付け加える。

 

「何回か見てて思ったけどな・・・・・・アンタと彼は出会うべくして出会ったんだろうよ」

 

俺もそう感じていたことだ。

セイバーがいうのだから、それは恐らく本当の話なのだろう。

俺とマンドリカルド。デュランダルを体に宿す者と、それを手に入れるため人生をかけた者。

聖杯がそれらを引き合わせるのも、当然だったのだ。

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