Fate/Serment de victoire   作:マルシュバレー

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金ピカさんの言い回しとかキャラが掴めない
術寄りの善人ぽいのがいいか弓(sn)のクレイジーがいいかはたまたhaみたいなやつにするか・・・・・・()


109話 九日目:不要とあらば

「んで、俺の来た理由だけども・・・・・・まずこいつを切りゃいいんだろ?」

 

俺の手をとり、そこにぴっちりと張り付くように巻かれた魔術禁止のブレスレットを指差す。

これを外すくらいなら俺以外の奴誰でもできそうなもんだが・・・・・・

 

「・・・・・・ああ、そいつ下手すると派手に爆発してこいつ殺しちまうらしいからさ・・・・・・頼む」

 

「手首ごと飛ぶが、いいな?」

 

「いい、その剣ならスパッとくっつけやすいように切れるだろ」

 

おい待て。

こいつを外さなければならないってのは俺にだってわかる・・・・・・だが手首を切り落とすとな?

令呪がついていない方の手だから、万一無くっても大丈夫ではあるが・・・・・・いや大丈夫じゃないだろ何を言ってるんだ俺は。

 

「じゃあ・・・・・・逃げるんじゃないぞ」

 

「待て!心の準備くらいさせてくれって────!!」

 

次の瞬間、見事に右手の感覚が無くなった。コンマ2秒くらい遅れて激痛が走る。

朱色の血とどす黒い血が纏めて噴き出し、アスファルトを汚す・・・・・・見ただけで失血死しそうだ。

 

「ほらよっと」

 

綺麗に真っ二つとなったブレスレットを外し、俺の手を篠塚に投げ渡すセイバー。

おい俺の体だぞ、なんか仕事終わりに缶コーヒーを奢るみたいなノリで投げつけるんじゃない。

 

「動かないでくださいね、ずれてくっつけちゃいますんで」

 

にこやかに笑いつつ、俺の腕をがっしりと掴んでくる篠塚。

もう動かないからさっさと元に戻してくれ、このままじゃ普通に死ねる。

手首に残ったブレスレットのもう半分を撤去し、切断面を一ミリのずれもないように微調整・・・・・・

 

「・・・・・・行きます」

 

歯を食いしばり、俺の体へと魔力を込める篠塚。

不思議なことに切断されたそこはじゅぶじゅぶと傷が埋まり出して、次第に感覚も戻ってくる。

宝具レベルの治療術に感服するしかあるまい。

 

「・・・・・・今のは宝具か?」

 

「ええ。真名開放すればもう少し感覚を取り戻すのが早まるんでしょうけど、今はまだ温存させていただきたかった次第で」

 

開放せずにこれほどのものとなれば、さぞ彼の正体は医療者であったに違いない。

新撰組で医者の心得がある奴となると・・・・・・まあほぼひとりに絞り込めるが、ここで言うのも無粋だろう。

 

「まあこれで助かったわ」

 

「せめてもの償いですので」

 

お前は真面目だなとか言いながら、俺は試しに魔術を一つ。

基本中も基本の視力強化(の威力を50倍にした奴)を両目にかけ、取りあえず地面を見てみる。

10m先を歩いている蟻の列が簡単に捉えられたので、どうやら問題はなさそうだ。

 

「さーて一回こいつの家で仕切り直し・・・・・・と行きたいところだが」

 

海がくるりと振り返る。

 

「ま、そう簡単に行くわけないわな」

 

そこにはかなり怒り心頭といった顔つきの八月朔日がいた。

局地的な地震が起きているんじゃないかというくらいに貧乏揺すりを繰り返し、俺たちの方を睨む。

 

「セイバーが全然けしかけに来ないなと思ってたけど、アンタらぜーんぶグルちゃんだったわけね。なんかそんな気もしたけど、まさか本当に組んでたなんて」

 

「まあ俺とライダーくんの間ではちょっとした約束をしててね。あいつはもう死んだが、一応義理ってもんがある」

 

剣を構え、凄むセイバー。

やはり普段の朗らかっぷりとは全く違う、戦争屋の顔だ。

 

「義理ねえ。サーヴァントなんだからそんなの無視してりゃあいいのに律儀な奴」

 

「せっかくこんなところに呼ばれて来たんだ。どう生きるかはオジサンの勝手だろ?」

 

個人が痛いなーとか小声で漏らしているものの、それによる向こうのアドバンテージは全くなさそうだ。

今のセイバーにとってのウィークポイントといえば、やはり俺と来栖さん・・・・・・二人のマスターをどう守りつつ戦うかだろう。

俺がやられてしまえば、存在を保ちきれず消える。海と再契約するにも時間がない。

来栖さんがやられてしまっても消えてしまうはずだ。それに、来栖さんは俺と違って魔術的な戦闘力がない。

そのためセイバーが八月朔日を殺しつつマスター二人を守るには、八月朔日の反応速度を上回っての攻撃が必要になる。

少しでも向こうに考える隙を与えたら、この空間に仕掛けられている罠が作動するとかでこちらを殺しにかかること必至。

 

「・・・・・・仕方ないわね」

 

流石に分が悪いと見たのか、八月朔日が踵を返す。

さすがここで逃すほど皆は馬鹿じゃない。全員が走って追いかけようとしたその時だ。

 

「テメェはギルティ、さっさと地獄に堕ちろ!!」

 

俺のちょうど真上を、黒い何かが飛んでいく。

八月朔日の体にそれは巻きつき、その場で奴の動きを止めた。恐らくカーボンナノチューブの配列を作り、堅牢な縄にしたのだろう。よほど身体強化をしない限り、そいつを切れるわけはない。

 

「・・・・・・不破お前」

 

「あーあーもうこれでかんっぜんにやらかした、わっかりやすく参加者の味方した!!テメェらあとで始末書の文言ゴーストライターしろ!!」

 

「・・・・・・あ、あああのそれって始末書の意味にならないのでは?」

 

そんなことはわかってんですよ、セイバーのマスターさん!と怒りながら微妙に敬語とかいう笑かしてくる口調で不破は叫んだが、八月朔日を縛り上げた縄から手は離さない。

 

「嫌なら付き合ってもらわなくたってよかったんだが?最初から唐川に頼むつもりだったし」

 

「・・・・・・これは俺の信念がやれって言ってたんだよ、始末書は嫌だが・・・・・・信念に背くことだけは死んでも御免だ」

 

右手に黒鍵を持ち、八月朔日の頭を吹き飛ばそうと不破は歩み寄る。

 

「じゃあ、ゲヘンナへの片道切符だ」

 

「待ちなさい、私がこれまでどれだけの人を救っていると思っているの!?これからの数も視野に入れてみなさい、損失どころじゃあないわよ!!」

 

不破の振りかざした黒鍵が止まる。

その隙を突いて・・・・・・一本の剣が八月朔日の心臓へと突き刺さった。

 

 

「・・・・・・あ、ぇ?」

 

ごぱ、と八月朔日が口から血を噴く。

不破の足元で頭を打ちつけるように崩れ、信じられないと言った目で剣の出所を見た。

 

「・・・・・・あれは」

 

棟の上に立ち、何を言うでもなく下の様子を見つめている男がいる。

あの真っ黒なジャケットと、完全なる金髪。そして赤っぽい目。

紛れもない、英雄王ギルガメッシュだ。

 

「・・・・・・自分のマスターを、殺したのか」

 

マスターがいなくても数日間行動できるというアーチャーではあるが、まさかここまでするものか。

稀にこういった話があると聞くには聞いたのだが、目の前で見ることになるとは思いもよらなかった。

 

「話には聞いていたが、随分と切り捨てるのが早いな英雄王様よ」

 

不破が天に掲げていた腕を下げた。恐らくあのままでいたらギルガメッシュに、こいつは我に敵対したと思われ殺されていたであろう。迅速な判断だ。

 

「必要ないと思ったのだから捨てるしかあるまい。いつか来るであろう雑種の死を少し早めただけだ、何の問題もなかろう?」

 

「・・・・・・そうかも、しれないだろうけど」

 

俺にした行為は脇に置いておくとして、彼女は現に何人もの人を救ってきた。

彼の価値観がわからないせいで、何を持って殺すと判断したのかがわからない。

俺の中に少しやりきれない気持ちがあるせいだろう、少しだけ苛ついた。八月朔日の頬を一発しばいてから地獄にでも送ってやりたかったのに。

・・・・・・まあ、そんなことを口に出してしまってはそれこそ俺が死体に加工されかねないので絶対に言えやしないのだが。


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