Fate/Serment de victoire   作:マルシュバレー

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金ぴかは特別なのでなんか普通の奴は知らないようなことも知ってるという解釈になります()


110話 九日目:選んだもの

「なんで今まで見逃してきたんだ。こいつのやろうとしていること、知ってたんだろ」

 

「知っていたが、どうでもよいことよ。人類の危機にすらならない数を殺そうとしていただけだからな、この道化は放っておいた」

 

まるで人類の危機になるレベルでやっていたらすぐ始末していたと言わんばかりの口調で英雄王はそう宣う。

風で乱れた髪を指先で軽く整え、俺達を完全に見下しくさった笑顔をしていた。

 

「ならどうして、今ここで始末した?」

 

そうだ、どこかでキレて殺しにいくって流れまではまあ想像がつく。

だがなぜ今かがわからない。兵器として俺を作り変えようとしていただけだが、それのなにが彼の逆鱗に触れたのだろうか。

俺が英雄王にとって特別な存在なんてわけじゃああるまいに。

 

「誰が上にいようとこの星の地は全て我のものに回帰する。人がそこでどれだけ憎み争い殺し合おうと、絶滅するようなものでなければ捨て置く・・・・・・だが、我の宝物を掠め取ったり贋作を生み出そうとする不逞の輩がいたのなら、話は別だ」

 

英雄王の眼前に黄金の門が開く。

そこから顔を出したのは、マンドリカルドにとどめを食らわせた魔剣ベリサルダ。

いつの間にか回収していたのだろうが、ギルガメッシュはその剣を眺め苦虫を噛み潰したような顔をした。

 

「・・・・・・あの雑種、最初は我をとにかく崇拝するような様を見せておってな。面白い道化よとこれも一度与えたが失敗だった」

 

あのような雑兵を殺す為だけに剣を穢した。と・・・・・・確かに奴はそう言った。

確かにギルガメッシュという世界最強の王だと自他共に認めるような存在にとっちゃ、マンドリカルドはそこらへんにいくらでも転がってる奴くらいにしかならんだろう。

道理のようなものは理解できるが、やはり受け入れられない。

俺にとっては最高の友達で、最高の王なのだから・・・・・・

 

「それにだ雑種、我が宝物を汚しているのは貴様も同じよ。貴様自身の意思が絡まなかったとはいえ・・・・・・な」

 

俺の中に存在するデュランダルのことを言っているのだろう。

確かに、俺が願ってこうなった訳じゃないが・・・・・・彼が怒るのもなんとなくわかる。

自分のものを模倣したあげく、どうでもいい殺人に利用するなど言語道断というわけだ。

となると、俺も殺される対象になるのだろうか?流石に今の状況でギルガメッシュ相手に戦い勝てるという道は見えない。

セイバーとアサシンのサーヴァント二騎と、ある程度ならサーヴァント相手にも戦えるが人間の不破。そしてマスターが3人・・・・・・来栖さんは魔術が使えないのでどこかに隠れていて欲しいものだが、ギルガメッシュは広範囲の絨毯爆撃を得意とするアーチャーなのでよっぽど遠い場所でもないと普通に殺されてしまう。

・・・・・・最善は何だろう。

 

「俺の存在自体がお前の逆鱗に触れたのなら、さっさと殺せばいいだろう。俺が考える暇とか与えずにいつだってやれたはずだ」

 

「・・・・・・業腹だが、そうもいかん」

 

ベリサルダを一度しまい、英雄王は一度その場に腰を下ろした。

どうやらここで俺を殺すつもりは無いようだが、何故にそうせざるを得ないのだろう。

篠塚の持っていたジャケットを羽織っているが実際のところパンツ一丁なのだし、サーヴァントに対抗できるような防御礼装なんて全くつけていない。その気になれば適当に頸動脈か大動脈でも切り裂いてサヨナラバイバイが可能だと思うのだが・・・・・・

 

「・・・・・・なんか俺を殺したら不都合でもあるのかよ。あんたがそれを避けようとするレベルの厄介な出来事かなんかが」

 

「それもあるな。これ以上この戦争が壊れれば面倒なものが呼ばれる」

 

面倒なものというのが何かは全くわからないが、ギルガメッシュにそう言わせるレベルのものということはまあよほど強いのだろう。

それが武力なのか権力なのか、どちらにせよ来た時点で俺たちに逆らう手段はなさそうだ。

 

「英雄王様にとっての厄介ごととなりゃ相当のもんなんだろうな。俺たち雑種にゃ到底太刀打ちできねえようなやつってわけだ」

 

もうギルガメッシュ相手にはどう話したらいいのかわからんのでいつも通りの口調に戻っているが、手に掛けるつもりがないだけで内心くっそ怒っていたらどうしようとか思い出した。

機嫌を損ねる言い方とか地雷の話題とかがあまり察せないので仕方のないことだが。

 

「何にせよ今は貴様を殺すときではない。だがいつかは死ぬ・・・・・・そのときまで存分に踊れよ、雑種」

 

唐突に大きな金色の船を持ち出してきて、それに飛び乗るギルガメッシュ。

流石にあれを追いかける元気はない・・・・・・というか、向こうに本気を出されたら終わるのはこっちなのでつっつくべきじゃあないだろう。

あれだけでかい規模の船(恐らく誰かしらの宝具)、一発でその辺を焦土にできるような迎撃装置を搭載していてもおかしくはない。

見逃してもらえるだけありがたいと思って、今はさっさと逃げ帰らせてもらおう。

 

「・・・・・・一回俺ん家帰りてぇんだが、いいか?」

 

「俺もそのつもりだったしそうするか。そっちはどうするよ」

 

そう不破と来栖さんに問う海。

来栖さんはともかく、不破は監督役としての仕事があると思うので来ない・・・・・・とか考えていたが、どちらも行くと答えた。

 

「もうやらかすんだったらとことんやっちまった方がいいと思ってな、どうせ始末書の枚数が増えるだけだし」

 

事切れた八月朔日を建物の中に蹴り飛ばし、ぱんぱんと埃を落とすように軽く手を払った不破。

死体はちゃんと遺棄(それもどうかと思うが)したほうがいいと言ったら、その場で細切れにして腰から取り出したゴミ袋に詰め込んだ。炭素を操る能力というものは便利なもので、やろうと思えばダイヤモンドカッターらしいものの作成だってお手のものらしい。

 

「テメェの家に焼却炉とかあるか」

 

血まみれの袋をずいと俺に見せつけるような形で不破が俺に聞く。

流石にこの戦争で慣れたとはいえ、やはり血を見るのは苦手だ。だから見せないでくれお願いだから、俺お前ほど殺し合いが常の環境で生きてないんだから。

 

「あるけどそんなもん燃やしたくねえよ」

 

八月朔日のことだからろくなことが起こらなさそうという偏見でものを言う。教会の聖なるパワーでどうにかしておいてほしいと言ったら、不破はめんどくさとか言いつつもわかったよと袋を肩に担いだ。

 

「サンタみたいだなそれ」

 

「死体プレゼントしてくるサンタとか子供ギャン泣きするわ」

 

なんというイカれた発想をしているのだ海は。

そんな殺伐としたサンタががいてたまるか。

 

「じゃあ俺はこいつの処分をしてくる。あとでそっち行くから勝手にどこぞへ出かけるんじゃねえぞ」

 

「わーったよ、今日はもうどっか行く元気ある訳ねえ」

 

つーわけでまたな、と不破は囲いの外に出る。これまた真っ黒なバイクのエンジンをふかし、行ってしまった。

あそこまで堂々と人体の細切れを運べるのはもはや感服できるレベルだ。流石に警察が見たら逮捕間違いなしなので、乗る前に炭素の幕を作り中身は隠していたが。

 

「俺らも行くか。お前手の調子はどうだ?」

 

「もう大丈夫だ。いつでもお前の鳩尾に叩き込める」

 

右手を数回握ったり広げたりを繰り返したが、違和感は存在しない。

ピーク時より怒りの感情はましになったが、さすがに海のやったことは到底許されるべきでない行為だし、それなりの制裁は加えてやらないといけない。殺すのはさすがに嫌だが。

 

「・・・・・・私が言えた立場じゃないですが、あなたのしたことはやっぱ駄目だと思います。平尾さんの大切な人も、奪っちゃったんですよね」

 

「ああそうだ、俺のせいでセラヴィは・・・・・・」

 

「他に方法は無かったんですか、誰も傷つかないで済むような方法は」

 

まるで猛獣に立ち向かう猫のような目をしているあたり、かなり無理しているのだろうとは思う。

だがそれでも来栖さんは言いたかったのだろう。俺の友達を傷つけた奴が許せないってことを。

 

「俺の力じゃどうしようもなかった。俺だって誰も苦しまずに終われるやり方があったのならそうしてたに決まってる。理想はあっても、それを実現するだけの能力がないならできないんだよ。だから・・・・・・だから、少しでもマシな方法を選ぶしかなかった。セラヴィが死ぬか、こいつが死ぬか。俺の生死を問わないとしても、あん時の俺にできたのはこの2つの中から選ぶしかできない・・・・・・こいつが、克親が死んだらセラヴィも一緒に消滅するのは目に見えてた。もれなくセイバーも危険に晒される・・・・・・だからだよ。確定1のみと、確定1想定2をとるなら少ない方をとるしかない」

 

トロッコ問題のようなものだ。

一人だけを殺すか、三人を殺すか。この選択肢以外がないとすれば、どちらにせよマンドリカルドは消えてしまうとすれば、できるだけ損害がないほうを選ぶしかない。

 

「言い訳がましいだろうが、これが俺なりの最善策だった。いくらでも文句をつけてくれていい、俺みたいな馬鹿にゃそれ以上の案は思いつかなかったんだから」

 

自分でい言って悲しくならないのだろうか。

半ば開き直るように、そう言い張った海。

確かに俺も、海と同じ境遇にあれば一人を犠牲にしてしまうだろう。そう思うと、責めようにも責められない。

 

「悪だけを駆逐して誰も彼も救えるような正義の味方になれるんなら、なりたかったに決まってんだろ」

 

いきなりくるりと踵を返し、海は行ってしまった。

篠塚が待ってくださいよと言いつつ後ろをついて行く・・・・・・追いかけるべきだろうか。

 

「やめとけ、今捕まえてなんか言っても駄目だ」

 

セイバーがやんわりと止めてきたので、俺は踏み出そうとした足を止めた。

 

「・・・・・・あの、私言い過ぎたんでしょうか。それならやっぱり謝らなきゃ」

 

「謝らなくっていいよ。来栖さんの言うことだって正しいんだから」

 

あいつは叶うかどうかわからない理想を追いかけることよりも、少しでもマシな現実を持ってくるようにしたけだ。

その選択を頭ごなしに否定するのは駄目だが、少しは理想を求めるべきと言ったっていいだろう。

価値観の違いが消え去る日なんて永遠に訪れやしないのだから、仕方のないことだ。

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