Fate/Serment de victoire   作:マルシュバレー

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平和成分をここで充填しませう・・・・・・


117話 九日目:そういうことじゃないんだけど

「例の馬鹿焼いてきたぞ」

 

顔面にまだ返り血をつけたままの不破が我が家にやってきた。不破に呼ばれて処理の手伝いをされた唐川もセットである。

この時間帯外に出る人はまあ少ないからいいものの見つかって通報されでもしたら大変なことになりかねない。

教会で洗ってこなかったのかと問えばめんどくさかったと返答する彼に、俺はため息をつくしかない。

 

「人の体って牛さんとかと基本物質同じやのになんであんな焼いたら臭いんやろな。脳みそとかヤバかった」

 

まだ鼻に残るわと鼻をつまえて唐川がいろいろと話すのはいいが、俺たちにそんなとんでもない想像をさせないでいただきたいところ。

 

「すまんな、適当に切り刻んだからはらわたとか脳漿とかそういうの全部漏れた。なんなら一回ミンチにしてハンバーグに加工してやった方がよかったか?」

 

「やめーや人肉ミンチで作ったハンバーグとかどこのカニアマゾンの店だよ」

 

物騒な話ばっかしながら家に上がり込む二人。

不破はシャワー浴びると言って勝手に風呂場を占領、唐川は食卓の椅子を二つも奪って寝転がっている。

前から自分の家だというような振る舞いにため息が出るけども、もう唐川のおせっかい祭りで慣れていたりするのが実情。

仕方ねえなとため息をつきながら、俺は篠塚と晩飯の用意を始めた。

俺、マンドリカルド、海、篠塚、来栖さん、セイバー、唐川、不破と8人分の食事はなかなか大変なもので、いちいち出してくる材料の重さが結構ある。

まあ、俺ひとりじゃ持て余していた大きい食卓の椅子がちょうど全部埋まるってのは・・・・・・感慨深いものでもあるが。

 

「不破の奴は超甘党だが・・・・・・普通の飯まで特別にしなくていいよな?」

 

「んぁ~?まー普通に作って~、あいつの近くに砂糖とか置いとけばええやで~。サッカリンとか出すと九割九分殺しされるから気ぃつけや」

 

サッカリンといえば弱めの発癌性と対糖能異常を引き起こすとされている物質だ。

後者の対糖能異常とかいうのは、血糖値をいい具合に保つ体のシステムが馬鹿になる的な症状。普段から炭素の補給として甘いものばっかり食ってる不破からしたら恐ろしいものなのだろう。

あん時は俺も死ぬかと思ったで。と唐川がさらっと言う・・・・・・やったのか、お前。

 

「上白糖とグラニュー糖と粉糖と・・・・・・あとフロストシュガーならあるけど」

 

結構上白糖はでかい塊を形成しているが、崩せばなんの問題もない。

砂糖には賞味期限がない(表記を省略可能)というのをいいことに結構前の奴もあるが、まあいくら食っても死なんだろうとでかい砂糖入れにどさどさ入れてやった。

 

「じゃあ甘い卵焼きとかも作ったほうがいいですかね?俺はどっちかというと出汁入れる派なんすけど」

 

わざわざ煮干しと鰹節、昆布で取った出汁を舐めて味見しつつ篠塚が卵を手際よく割る。無論片手で。

本人曰くこの出汁は味噌汁とぶり大根に使うらしいが、だし巻きに回せるほどの量があるらしい・・・・・・まあ大鍋一杯なみなみ作ってるから出来るんだろうなとは思うが。

 

「あーあいつ生まれは関東やさかいなぁ、作っといて損はねえんやないか?別にあいつうどんの汁はどっちでもええって言うとったけど」

 

「ここと関東じゃあ大違いだってのにこだわりないのか」

 

俺も仕事の都合上ちょくちょく出張する事があるので知っているのだが、かなり差は大きい。

醤油の味を全面に押し出すか出汁の味を押し出すかの違いなのだが、慣れないうちはうどんの汁を残してしまったりしたものだ。

 

「旨けりゃ何でもええんとちゃう?知らんけど」

 

お約束のように伝家の宝刀知らんけどを繰り出し、唐川は寝転がっていた椅子から起き上がったかと思うとテレビの前でまた転がりだした。

ソファでくつろいでいるセイバーがなぜか足を乗っけたが、嫌がる様子もなく夕方にかけて放送されるちちん○いぷいをぼけらーっと見ている。

ちょうど今日のおかずにこれどうですか系のコーナーをやっているので、俺これが食べたいとか言い出さないか不安だ。

 

「そういえば旦那、有給とか大丈夫なんですか?」

 

「あー一応十日ほどとったからまあ余裕はあるけども、どっかで痺れ切らされるかもだな」

 

「・・・・・・なんか私、職場で噂されてるっぽいんですけど」

 

スマホの画面を見つつ、来栖さんが怯えたような声でそう言った。

同時期に長期休暇を取った若い独身の男女・・・・・・まあ噂されるわけがないわけではない。

 

「どうしたんです?まさか俺と来栖さんがデキてる的な感じに────」

 

「まさにそうです」

 

来栖さんが見せた某アプリの画面には、俺と来栖さんの映った写真がバッチリ乗っけられていた。

服装的に、恐らく数ヶ月前にあった新年祝いの飲み会帰りだろうが・・・・・・今出すものか普通。というかこの写真のあとそういういかがわしい施設に行ったわけでもなく、ただただ帰り道が途中まで同じだからと一緒に帰っただけだ。

なんか変な尾鰭ばっかつけられて社内で出回ってると思うと復帰できる気がしない。

 

「二人して1日違いで10日の休み取ったのって親御さんに挨拶して入籍とかする予定なんでしょとかもういろんな言われようなんですよ・・・・・・」

 

「来栖さんの実家って日帰りで行けるはず・・・・・・?」

 

舞綱の3つ隣にある銀部市。

3つと言っても間にある幣条、秋山、東雲はまあまあ細長い形でありいうほどここから銀部までの距離は長くない。

バスを2本と電車2本を乗り継ぐ必要はあるが、それでもすぐ到着できる。

 

「行けますね、なんなら今から行っても19時にはつくと思いますよ」

 

それならば10日も休みをもらう必要なんてないだろうに、なにやら他のことまで考えて噂でもされてるんじゃなかろうか。

言ってしまえば、初夜というかそういう日すらも想定に・・・・・・いやいやさすがにそれはないだろう。

 

「誤解解けそうですかね・・・・・・?俺社内に友達いねえから、そういうの出来ないんすけど」

 

「私もちょっと立場が弱くって・・・・・・しばらくネタにされる雰囲気しか無いんですよ・・・・・・どうしましょう」

 

もう海に頼って無理やり認識を改変するとかそんくらいじゃないと対処のしようがなさそうだ。

だがその海は魔眼をそんなことに使いたくねえよと言い出しそうなので当てにならない。軽く詰んだ音がしたのだが・・・・・・

 

「海、ダメもとなんだが」

 

「やるわけあるか結婚して末永く爆発しろ」

 

Fickt euch!とド直球な罵倒と共に中指を突き出す海。協力するつもりは一切ないようだ。

 

「いいのかお前はそれで」

 

「ああいいよ、この戦い終わったら結婚するんだみたいなフラグ立ててからお前ら爆発しろ盛大に」

 

めちゃくちゃな言いようだが海は俺たちがくっつくことを応援しているのかもしれない。

真意の程は推し量れないが、そんな可能性はあってもおかしくないだろう。

 

「・・・・・・そっか、ごめんな」

 

「なんで謝るんだよ、まるで俺がお前のこと好きみたいじゃねえか」

 

だってそうだろう?と言いたかったけど、海の表情が俺にそうさせることを止めた。

泣きそうになっていると思ってしまう。その思いは秘密にさせてくれと、言っているような気すらする。

いつか言って欲しいけど、そんな日はいつまでも来やしないんだろうな。

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