Fate/Serment de victoire   作:マルシュバレー

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少し今回は短めです。
なんかもうひとりにしておくと勝手に闇モードオンしちゃう性質がついてる今回のマイフレンドですが・・・・・・この先大丈夫だろうか(作者次第だろ)


11話 Interlude:道具でよかったのに

「守る戦いを知らないのなら、この戦いで知ればいい」

 

煙草の煙が、ふわりと夜風に煽られ立ち上る。

サーヴァントのはずなのに、男は元からここにいたみたいにこの世界へ溶け込んでいた。

 

「・・・・・・この、戦いでですか?」

 

「ああ。単独でしばらく動けるアーチャーとかと違って俺たちはマスター無しじゃあ姿を保つことすらままならん。だからマスターを守るのは必定というもんだろ?」

 

確かにそうだ。

サーヴァントはマスターなしじゃ動けないし、現世にいることすらできない。

いくら能力が高くても、単独行動のスキルがなければマスターを失っただけですぐ消えてしまう。

だから基本はマスターの隣にずっとついているか、魔力のパスがきっちり繋げていることを前提にだがマスターを安全な場所にこもらせサーヴァントが単独で戦うかだ。

 

「もう英霊として成立しちまった以上そう簡単にゃ変われないが、記録として少しでも残せたらそれはお前の価値になるってな・・・・・・決めた。隙あらばその無防備な胸を一突きしちゃおうって思ってたけどやーめたっ」

 

男が立ち上がる。つか今もんのすごく物騒な台詞が飛んできた、俺軽く殺られるところだったってのか。

これって下手こいたら『殺されてなんたらスタンプ①ゲット☆』ルートだったってのかと、今更恐怖と冷や汗が間欠泉みたいに噴き出してくる。

男は確実に仕留められる技術を持っていると本能がしきりに言っていたのだからなおさら怖いのなんの。

 

「・・・・・・あ、あんたのお眼鏡にかなうようなことができっかわかりませんけど、ま、せいぜい頑張らせていただきますよ」

 

焦ってなに言ってんだ俺は!

ちょっと怖がってませんよアピールしたかったがためになんか喧嘩売ってるような口調になっちゃったし、声の震えが情けないことになってて全然かっこよくもねえというかダサい。

ああ死にたい、もうこれ死んだ方がマシじゃね??

 

「ははは、その意気だ。お前さんの顔は不敵に笑ったほうがかっこつくぜ。んじゃオジサンはそろそろ行かせて貰いますかね・・・・・・最後に、その盾。なかなかいいセンスしてるじゃないか。ほんじゃ」

 

男は目の前で霊体化し消えた。そのまま住宅街の壁を全部すり抜けて走っていく。

速度からして俺が頑張れば追いつけるかもしれないレベル・・・・・・敏捷は同ランクくらいだろうか。

俺の横にほんのり残った煙草のもやが、なんだか煙に巻かれたって感じをよりいっそう強調してくる。

男は結局、何を目的に来たのだろうか。同盟を結びたいのならばもっとそういった話をするだろうし・・・・・・やはり、最初の目的はブラフで敵陣営の戦力確認、機会があれば真名看破あるいは殺害といったところか。

何にせよ油断ならない、今日はマスターの研究を邪魔して不興を買いたくないので、明日の朝一番にでも報告しなければ。

 

「・・・・・・それにしても盾か」

 

背中に引っ提げていたそれを取って眺めてみる。

トロイアの家紋として伝えられた黒い鷲モチーフの紋様が刻まれた銀に輝く盾・・・・・・堅く、かなりの攻撃を防げる代物だ(ちなみにヘクトールのものではない)。

昔はヘクトールの盾をなんで持ってんだーっとロジェロに噛みついたのになんか俺が貰うとか言い出したグラダッソと喧嘩が始まって木をぶっこ抜いて殴り合いしたっけか。あんときのうのうと申し訳程度に制止しようとして眺めてたロジェロは今でもなんか一回八つ裂きにしたい。怨恨は意外と消えてくれないもんだ。

 

「これの何が気に入ったんだろ・・・・・・」

 

品質がよいだけでそれ以外特に変哲もない盾なのだが、見ただけではわからない何かを感じてそう言ったのだろうか。

まさかこいつを作った人・・・・・・なわけもないだろうし。

謎は深まるばかりである。

 

 

少しずつここから見える街の灯りが消えていく。もう皆寝る時間帯なのだろう。

俺も霊体化し部屋の中に戻って、読みかけだった本を取り開く。

マスターが俺のためにと買ってくれたもの。どうせすぐにいなくなるのに、と思ってはいても心の中で嬉しがってる自分がいた。なんだよ俺、生前にそういう経験ないからってちょろすぎねえか。

 

「はー・・・・・・友達かぁ」

 

今日彼に言われたことを思い出す。

あの時言えなかった言葉をいつか問える時が来るのだろうか。自分に、聞ける勇気があるのだろうか。

ああ、イリアスの内容が全然頭に入ってこない。ひらきっぱの本を顔に乗せ、俺は大きくため息をつく。古本だからか少し煙たい臭いがした。

 

「なに考えてんだ俺。あくまでも俺はサーヴァント、マスターに仕える召使いなんだ」

 

でしゃばっちゃいけない、マスターの心に癒えない傷を残してはいけない。

ただの傀儡、戦闘人形として戦いに徹しなければ彼のためにならない。

いずれ来るだろう終わりの時に、少しだけ悲しくなって欲しいけどそんなのは俺のエゴだ。マスターが死ぬときに、ああそんなやつもいたっけ?くらいでいい・・・・・・いや、もう覚えてもらえてなくったっていい。

 

「マスターの記憶の中に、俺はいちゃいけない。そうだろ、俺」

 

そうやって自分に言い聞かせても、収まらない。

なぜか胸中でじりじりと焼ける篝火が痛くて、少しでもそれから逃れようと感情を言葉にしようとするけど上手い言い回しどころかなんにも出てこない。泣きたい訳じゃないのにのどの奥がつんと張って涙が出そうになる。

また自分勝手な感情が騒いでいるのだろうか。そんなものは抑えていないといけないのに、俺の思いも知らず暴れやがって。

 

「・・・・・・くそっ」

 

何を思ってか俺はおもむろに立ち上がって部屋を出る。

窓からさす満ちた月光も、さっきまでは綺麗だと思っていたが今だけは鬱陶しくて嫌いだ。

こういうときは湯浴みでもしてさっさと寝るに限る・・・・・・サーヴァントは夢を見ないのだから、寝てしまえば余計なことを考えずに済みそうだ。

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