Fate/Serment de victoire 作:マルシュバレー
「じゃあまず遊撃のライダーが適度にあいつをおちょくって平地に誘い出す。そっからセイバー加入、ある程度やりあった所で隙を突いてアサシンが霊核を狙っての一撃・・・・・・これが成功しなかったとしたらもう延々白兵戦だろう。向こうが本気の宝具をぶっ放す前に何としても決着をつけるべきだ」
ギルガメッシュが本気を出せば日本が消し飛びそうなので、早期の決着は確かに望ましい。
「それにしてもいつ戦いに出る?向こうからの示し合わせもないし、普段どこにいるかもわからない・・・・・・コンディションが整ったまま突入できれば一番なんだが」
「あいつの居場所自体はわかってる。ランサーのマスターだった奴の家になぜか居候して、再契約もせずにやつをいじくり回しているらしい」
アーチャークラス故にマスターはしばらく必要とせずとも生きていられるらしいが、再契約をしない理由がわからない。
ランサーのマスターであった男は魔術師の歴史も浅くそこまでの技術も持ち合わせていないらしいが、そんなんでもしないよりかましだと思う・・・・・・
「じゃあそこに喧嘩売りに行けばいいってことだな」
「いや待てよ海、確かランサーのマスターって刃学院とか言ってたろ」
学区を考えるにあそこは特待生以外は明海の人間限定だったはずだ。それだけの制限をつけていても舞綱マンモス校の一角として数えられる位なのだから学生数はお察しである。
「ああそうだな。普通学生だからまあ明海の奴だ」
明海地区でも田舎寄り区域と都会区域があるので一概には言えないが、基本的にあっち側は住宅密集地やビル群だらけだ。
広場という広場と言えば北にある神足公園と海岸沿い辺りくらいしかない。一応市庁舎とがある中心部にも公園があるにはあるが、大概立地が致命的。少しでも宝具が敷地の外に飛び出れば、大企業のビルやら何やらが粉微塵になること間違いなしだ。
「そいつの住所わかるか?」
「わかる。ちょっと待てよ」
食事中にタブレットをいじくり回すのはいかがなものかと思うがこの際言ってられない。
悠長にやっていいほどの暇なんてないのだから。
「えー明海の・・・・・・堂上区亀田通り7丁目5-3」
「まあまあいいところじゃねえか」
準一級邸宅地呼ばわりされることがしばしばな区域にやつは家を持っているらしい。
そんなところで殺し合いなんて始めたらちょっとセレブなお母様がたに目を付けられるどころじゃ済まないような大惨事になること請け合い。
流石に海が土下座して宝石を送りつけようとも許される感じにはならんだろう。
「うまい具合にギルガメッシュだけ神足公園とかへ呼び出せねえか・・・・・・そういうのできるかライダー」
「その場で殺されない程度に煽るのってどうすりゃいいんすか、陰キャに何を期待してるんすか」
マンドリカルドが手に持っているお茶入りのコップがかたかた震えている。
零れるんじゃないかと心配したが、緊張で喉を乾かした彼が一気に中身を飲み干したので杞憂に終わった。
「・・・・・・一応、スキルを使えば狙われる確率は上げられるっすけど・・・・・・あいつに効くかはわかんぬぇーっすよ」
ブリリアドーロの力も借りて敵の注目をかっさらうというスキル・・・・・・確かにそれと、防御力を上昇させる力を持ったもう一つのスキル、九偉人の鎧を使用すれば立ち回りとしてはかなりやりやすくなるだろう。
スキルランクもかなり高かったはずだし、ギルガメッシュにもちゃんと効果を発揮するとは思うのだが、マンドリカルドの自己評価はなぜか低い。
「裏山で立ち回りの流れの確認もしたいけど夜だからな・・・・・・灯りもないし危ないだろ」
基本的に平尾邸の裏山は水道くらいの設備しか存在しない。
昔から夜になってあそこに行くと帰ってこられなくなるなんて話が子供の躾話として加わっていたこともあってか、今に至るまでまともな利用方法なんてものはないのだ。
一応アカマツやらが生えているので探し回れば松茸とかも取れると思うのだが、そんなことをするほどの余裕は俺にはない。
時折勝手に入ってきて松茸をパチっていく不届き者がいるにはいるのだが、特に気にすることでもないなと放置していたところだ。
まあ魔術に関する物を見つけられたらその瞬間に粛清コースなので、彼らが綱渡りしつつ犯罪していることに変わりはないのだが。
「まあなるようになるやろ」
人差し指を鼻の穴に突っ込んで呑気にほじくる唐川。
きたねえなと不破が美しいどつき回しを見せたところで俺はつい噴き出してしまった。
「笑うなや~わいちゃんの不運ってやつを~」
「俺がやっかいごとに巻き込まれたら、だいたい笑顔のまんまギリギリまで傍観してたお前が言えたたちかよ」
みんなが飯を食い終わって、ゆっくりといろんな場所に散らばっていく。
まあ俺ら以外は基本リビングに詰め込まれる形なので、部屋移動はそうそうないのだけど。
「明日か」
廊下で静かに佇んでいた海がワイングラスごしに外を見る。何でもない月が、ただそこには浮かんでいるだけだ。
「なんだよんな顔しやがって、死兆星でも見えたか?」
現在この角度から北斗七星は見えないはずだが、まあ俺は冗談めかしてそう言った。
「・・・・・・見えちまったかもなあ」
きゅぽ、と何かの栓が開く。
なんだろうと思って海の手元を見たらそこにあったのは一本のワインであった。
「あっお前1995年のシャトー・マルゴー勝手に開けやがって・・・・・・」
「いいだろどうせ、明日死ぬかもしれねえんだから・・・・・・今飲もうぜ」
一つっきりのワイングラスにそいつをなみなみと注いで、俺に渡してくる海。
流石にこの量を一気に飲むと具合が悪くなりそうなので半分だけ残そう、こういうのはじんわりと楽しむもんだ。
「味はいかほどで?」
「旨いに決まってんだろ」
いい具合に果実の芳醇な薫りが舌を転げ回るように広がり、特有の渋みもあまり感じられない。
当たり年と呼ばれるだけあってかなり出来のいい味わいだった・・・・・・できればもうちょっとゆっくり楽しみたかったのが本音だ。
「・・・・・・そうか」
俺の手からグラスを奪い取って、一気に残りを飲み干した海。
間接キスの概念を知らんのかってレベルに雑な挙動に溜め息も許されそうなところだが、もう海の自由さなんてのは慣れっこだ。
「満足したか?」
「した・・・・・・もうこれでいつでも死ねる」
「自分で縁起でも無いこと言うんじゃねえよ」
背中をどついて、俺は寝室へと戻る。
言いたいことがあったのに、言えずじまいで。