Fate/Serment de victoire 作:マルシュバレー
「あーきっつぅ・・・・・・」
ひいひい言いながらチタンを加工し、レンズと合体させる。ねじの稼動も問題なくスムーズに折りたためるので概ね問題はなし。
鼻当ての部分を汚くならないように液体プラスチックで接着し、同じ要領でチェーンもつけた。
これでもう完成っちゃあ完成なのだが、それだとさすがに味気ないので一つだけチェーンの付け根に飾りを接着する。
何の花だったかは忘れたが、それはそれは綺麗な形をしていた。
「よし、以外ときれいにできたんじゃねえか?」
傷の有無を確認し、一度小さな箱に入れる。
メッセージカードなんてものは恥ずかしいので入れない。
「突き返されたら終わりだよなこれ」
海以外の誰が使うんだってわけだ。俺の知り合いに魔眼持ちは他にいないのだから。
努力を無駄にさせないでくれよと祈りつつ、俺は階段を下りる。時刻は既に朝ご飯の時間帯、篠塚が何かを作っている音と共に香ばしい香りが鼻をつく。
「雨はめんどくせえな」
この頃ずっと晴ればっかりだったような気がする。気圧の関係か、地味に調子は悪い。
リビングで少しくつろごうと思って扉を開けたが、そこのソファは海が堂々と占領していた。
寝っ転がるばかりか足までのばしよって。来栖さんが正座でテレビ見てるじゃないか。
「おはよーございまーす」
「おせーよ」
中指だけ立てて海が時計を指差す。時刻はもう10時だ。
朝ご飯どころか昼ご飯の時間帯に近づいている・・・・・・魔眼殺しを作るのにそこまで没頭していたか。
呼んでも来なかったんで朝ご飯は置いといたんですよ、と篠塚がサンドイッチを差し出した。随分と中身の層が分厚く、食べ応えがありそうな逸品・・・・・・このままほっといても腐るだけなので俺はありがたくそれをいただく。
「・・・・・・うーん安定の旨さ」
もぐもぐとそれをほおばって、海に持っていた箱を渡す。ちょっとマヨネーズが付いてるけど別にいいや、海だし。
「・・・・・・んだよこれ」
「もうすぐ誕生日だったろ、お前」
「・・・・・・明日は台風だな」
3月に台風とか数年に1回くらいの感じで出来るが、ここらへんまで来ることはそう簡単にはない。つまりそんだけ珍しいということだ、失礼な。
「いいから開けろ、できたてだぞ」
「・・・・・・こいつは、もしや」
取り出したそれを見つめ、珍しそうに俺の顔を見る海。
「お前のそれ、もうボロボロだろ?だから新しく魔眼殺し作ってやったんだよ、迷惑ならさっさと返せ」
「・・・・・・いや迷惑なんかじゃねえよ・・・・・・」
目にかけていたものを取り外し、俺の作った方を装着する。
装飾とかのランクはかなり落ちたなあと我ながら技術力の低さに泣きたくなった。美的センスをもっと磨いてりゃよかった。
「やっぱ返してくれ、俺のセンスがクソすぎて恥ずかしくなってきた」
「・・・・・・嫌だね」
「なんで」
「何でもいいじゃねえか」
これ以上聞くなめんどくせえとため息をついて、海は再び寝転がってしまった。
「付け心地わっる」
「だったら返せっての」
「やーだ」
小学生か、小学生なのかお前。文句言いつつも返さないとか気に入ってんのかお前。
それならもういいやと俺はリビングを出て研究室に戻る・・・・・・そういや、マンドリカルドはまだ剣を作っているのだろうか。
「セラヴィ?」
書斎とつながるドアの前に立ち、その名を呼んだ。
だが返答はない。こんな時間に寝ているのだろうか?
「・・・・・・入るぞー?」
そう問いかけても返答はないので、静かに俺はドアを開けた。
床には大量の木くずが散らばっており、机の上には謎の大きな木箱(メロンとかが入りそうなサイズ)と小刀らしいものが置いてあった。
剣を作っていたというのは嘘だったらしい・・・・・・大方予想通りではある。
さすがに中身を勝手に見るわけにも行かないので、俺は箱に触れることなく部屋の掃除を始めた。
読みかけのイリアスを顔面に置いて眠っているマンドリカルドを起こさぬよう、静かに箒とちりとりで木くずを取っていく。
「・・・・・・多い」
どれだけゴミ箱に入れても終わらん。
そりゃあの木箱、板を張り合わせたものかと思ったら彫りだしだったしこんな参事になって当然だ。
ひいひい言いながら出来るだけの量を詰めてゴミ袋に詰める。なんか袋からとげのように飛び出してこないか不安だ。
「・・・・・・克親?」
大あくびをかまして起きてきたマンドリカルド。俺の姿を見て少しだけ焦っている感じがする。
「あ、あの・・・・・・」
「箱の中身なら見てねえぞ」
「・・・・・・それはよかったっす」
安堵の息を漏らして、その木箱をベッドの下に隠すマンドリカルド。俺が存在を知っているから隠すだけ無駄なんだが、まあ突っ込みはよしておこう。
「剣じゃなくて何を作ってたんだよ」
「・・・・・・それは」
唇をゆるく噛んで、いかにも言いたく無さそうに振る舞うマンドリカルド。
かかとですすすと箱を奥に押し込んでいる。そんなに見せたくないのか。
「まあ秘密にしたいならどうぞってことにしとく。隠したまま消えるのだけは勘弁してくれよな」
「消えるつもりはぬぇーっすよ・・・・・・ちゃんと完成した奴、克親に渡すつもりっすから」
「お、プレゼントだったのか」
「あ」
言っちまった、とばかりに頬を紅く染める。
箒を本棚に立てかけて、マンドリカルドのほっぺたに両手で触れた。かなり熱い。
「・・・・・・今のは聞かなかったことにしといてくれっす」
「えー」
柔らかい頬を少しいじくり回すと、少しむすくれた顔になったマンドリカルドが俺の手を引き剥がしてきた。
「えーじゃないっすよ!今すぐ忘れてくれないすかねえ!?」
「王の勅命とあらばやりますけども?」
「あーもうそれでいい、それでいいから忘れてくれっす!!」
しょうがないなあと俺は自分に記憶処理を施す。といってもその記憶を鍵付きの引き出しにねじ込んで鍵をかけただけなので、結構簡単な衝撃(物理精神問わず)で思い出すのだが。
「えっと、んでなんの話してたんだっけか?」
「・・・・・・なんもないっすよ」
「・・・・・・そうだっけ?」
取りあえず部屋の木くずをかき集めていた筈だが、マンドリカルドと何を話していたのか・・・・・・
「おい家主ーちょっと来いよ」
外からそんな不破の声がしてきた。どうやら俺を呼びつけているようなので、少しもやもやが残るままだが箒とちりとりだけマンドリカルドに渡して部屋を出る。
玄関の方で少し髪を濡らしている不破が俺を待っている・・・・・・さっさと行かなきゃ叱責されそうだ。
「どうした?」
「来たんだよ、こいつが」
ドアを開けると、そこにはひとりの男子高校生が立っていた。刃学院の制服を着ているのを見るに、おそらく彼が貴志なのだろう。
傘もささないでこっちまできたのだろうか、全身ずぶ濡れ・・・・・・平日になんでだとかそんな話は置いといて、この状態じゃあ風邪を引いてしまうだろう。敵同士かもしれないが、今は取りあえずバスタオルを渡してあげた方がいい。
「敵意は」
「今のところなし。まあ巧妙に隠している可能性もあるから一応俺が対応策をとっている。敵対行動をした瞬間首が飛ぶさ」
物騒すぎるだろと突っ込んだが、不破曰わく戦争ってのはこんなもんらしい。
確かに一理どころか千理あるのだが、こんな高校生にやっていいものか・・・・・・いや、マスターとしての関係ならみんなほぼ対等なんだけども。
「取りあえずここに来た理由とかを教えてくれ、話はそれからだ」
「はい、お邪魔します・・・・・・」
礼儀正しく一度深いお辞儀をして、彼は家に上がる。
もしかしたら仲間になる可能性だってあるから、適当な扱いはできないだろう。