Fate/Serment de victoire   作:マルシュバレー

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うおおおおおお朝勢いで書いたああああぁああああああ


126話 十日目:まああんなん一筋縄じゃいかんよな

「まず目的を教えてくれ」

 

篠塚が風邪を引かぬようにとドライヤーで髪を乾かしている。うちのやつは静音めなモデルだがそれでもごおごおうるさいのは仕方ない。少しだけ声を張って会話しよう。

 

「は、はい・・・・・・あの俺、気持ち悪い変な医者に追いかけられて・・・・・・」

 

「・・・・・・変な医者?」

 

ものすごく嫌な予感がする。聖杯戦争に関わっている医者といえば、八月朔日。でもマスターであったしのぶはあのギルガメッシュが殺したはずだ、不破が死体を燃えるゴミのように焼いているので死んだのは間違いない。

 

「それは、どんな奴だった?男か?」

 

「いや、髪の長さから見て女性だったと思います。身長はだいたい・・・・・・160前後くらいだったかと。白衣を着てたんですけど、胸に大きな穴が空いたような赤黒いシミが怖くて・・・・・・なんとか振り切ってここに匿ってもらおうと。山名で一番の魔術師って言われてる平尾さんの家だから、一応端くれとして知ってたんですよ」

 

「・・・・・・ほう」

 

嫌な予感、ほぼ的中と見て間違いないだろう。

どういうわけか知らないが、八月朔日は生き返っている。そしてマスターであった貴志を付け狙っている・・・・・・もうランサーは消滅したのでその権利を奪うことは不可能。確か八月朔日は令呪を全部使用していたはずなのでおそらく貴志の持つものを奪いに来たのか。

 

「その手のひらのやつか。それも2画・・・・・・」

 

菱形の模様が貴志の手にはきっちりと出ていた。

形状から見て、おそらく三層に別れ、内、中、外と段階を踏んで使用のたびに消えていくのだろう。

そして使われたらしい1画が外側、次に無くなるとしたら今一番外にある層が消えるはずだ。

 

「はぐれサーヴァントの出現により、聖杯から再分配されたんだろうな。元々マスターだった奴に優先して配布されるからそいつが戻ってきたっつうわけだ」

 

不破のいうはぐれサーヴァントとは無論ギルガメッシュのことだろう。単独での行動が可能とはいえマスターはきっちりと失っているのだから。

 

「あのクソアマ、どうやって復活したか知らんが体は恐らく別モンなんだろうな。だから魔術刻印もないだろうし、マスターとしての権利もない。たいがい、一回死んで復活した元マスターのわいには余ってたランサーのマスターの令呪が貰えるやろ~とかいうアホみてえな算段だったんだろ」

 

海の推論はかなり説得力がある。

八月朔日というずる賢さも含めた天才児(俺からしたら天災児だが)が、そんな希望的観測まみれの行動を起こすかと言われると微妙だが、令呪をもういくつか貰っておきたいという行動原理は間違ってないだろう。

 

「バーサーカーとアヴェンジャーのマスターが持ってた令呪はどうなんだ?」

 

「恐らくこいつの手に2画しか出てない時点で、全部消費された可能性が高いだろうよ。脳みそ花畑系魔術師だったらやべーやつに殺されそうになったらすぐビビって令呪をぶっ放しかねない。んで変態だったらいらんことに全部使ってサーヴァントにぶっ殺されるパターンが多いだろ?」

 

バーサーカーとナディアはおそらく純粋火力が低かったために緊急避難を続けまくったりしたのかもしれない。話によるとギルガメッシュにやられたそうなのでそのときに抵抗して後の2画を使ったのだろうか。

アヴェンジャーに関しては不明だ。来栖さんとセイバーが見たのは八月朔日の指揮下に移ったアヴェンジャーだけ。

もしも令呪が存在するのなら惜しみなく投入してくるだろうし、それがなかったということはもとより0。

アヴェンジャーの美麗な顔を見ると、悲惨な目(所謂性的なお話)に遭わされていても、そんでもってそいつをたたっ斬るという展開もまあ納得はできる。

 

「まあその消費理由は別に今どうでもいいだろ。てか、令呪ってマスターからマスターで受け渡しとかできたっけか?」

 

「いくらか方法はある。一つは特殊な術式を用いることで無理やりこう、回路からべりべりっといくやつ。こいつは相当な手練れじゃないと成功しない上に、激痛が伴うそうだから奪われる側も暴れまくってかなり難しい。二つはもう令呪の出てる部位をスパッと切ってさっきと同じようにはがして得る。こいつは元のマスターとの接続が途絶えている状態だから、まあまあ簡単に取れるっつう話だ。あとはどこぞの歴史長めな家の奴らが使うらしい偽臣の書ってやつ・・・・・・まあこいつは作るのに令呪1画使うらしいからクソレートだし微妙と」

 

手早く説明をしてくれた不破。このあたりのことは頭に入っているのか、詰まる様子もなくすらすらと呪文を唱えるように話す様は結構感心する。

 

「基本令呪の取引は教会を通してやるのが多いんやがね。基本サーヴァント失ったら教会来るんが定石なんやが、この子怖いもん知らずでさ、ランサーがいなくなってたのに平然と学校行ってたんだぜ?」

 

「それは強い」

 

「部活が忙しくって・・・・・・行かなきゃ先輩にどやされるし」

 

「元帰宅部にはわからん辛さだ」

 

帰宅部というのはどれだけ早く家に帰れるかという己との戦いを楽しむスポーツクラブである。え、友達と帰るとかいうのはないのかって??ぼっちの俺にはダブルスなんて存在しなかったのだ、悲しいことに。

 

「今日は部活休んだのか?」

 

「・・・・・・はい、なんとか認識を弄って俺がいない理由を信じ込ませたんですけど、効いてるかどうか・・・・・・俺まだ下手くそなんで」

 

髪の毛が十分乾いたのか、ドライヤーの音が止まった。

片付けて来ますねと篠塚がぱたぱた洗面所へ行くところをなんとなく見届けて、話を再開する。

 

「どんな内容でごまかした」

 

「あー・・・・・・ちょっと柄の悪い人に絡まれたって」

 

「あとがめんどくせえ奴だろそれ。ちょっと待ってろ」

 

海がモノクルを一度外す。鼻当ての後が結構残っているところを見るに俺って眼鏡作り下手くそだなあと悲しくなった。

 

「・・・・・・理由なき納得を、人々へ・・・・・・その先輩の名前なんだ?」

 

「えーっと・・・・・・野田隆太郎先輩、藤田巧先輩、鈴木伊知朗先輩・・・・・・ですかね、後輩に厳しいの」

 

「顧問はどうする?」

 

「大丈夫です、うちの顧問ゆるいんで」

 

先輩が厳しくて顧問が緩いとかどういうことやねんと言いたいところだが、海の集中をそらすとぶっ飛ばされること請け合いなので黙っておく。

 

「・・・・・・よし、照準固定、印象改悪・・・・・・」

 

いつも改変なのに今回は改悪というあたり、悪いことをしているという自覚らしい。

 

「・・・・・・非効率だがこうする他ねえな。範囲、舞綱全域」

 

基本的に相手を見ないと本領を発揮できない魔眼だが、海は魔力と引き換えに効果範囲を莫大にする事ができる。

魔眼の作り出した分と、自分でも生み出す分を合わせて初めて適用されるのだ。

 

「こっちにも来た・・・・・・」

 

「・・・・・・ぐえ」

 

つかれたと自転車にひき殺された牛蛙のような声を出して海はソファへどさあと倒れ込んだ。

そりゃそうもなるわ。

 

「今日あいついないけどまあいっかくらいの感じにしといてやったぞ、なお明日行かなきゃお前の存在そのものがそいつらの中から薄れるのでご注意ですわよ」

 

謎のお嬢様言葉を最後に海は滑るように寝た。篠塚がすかさず薄手のブランケットを持ってきて海にかけている。なんとまあいい彼氏なことか。

 

「あ、あれが魔眼ってやつですか」

 

「ああ、一応ノウブルらしいぞ」

 

見るからに貴志の目が輝き出した。ああいう異能感バチバチなタイプがお好きなもようだ。

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