Fate/Serment de victoire   作:マルシュバレー

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最近暑くて脳みそ溶けそうです
たちけてえ


128話 Interlude:信頼とは

「・・・・・・ん?」

 

視線を感じて、ふと振り返る。

そこには音もなく、あと気配もなく篠塚が立っていた。時間が時間だったらこの家全体に響いてもおかしくないほどの悲鳴をあげていたことだろう。俺は仕上げ作業に入っていたそれを一度箱にしまって、話を聞いてみることにする。

あまり感情を表に出さないよう心がけている彼が、珍しく思い詰めたような表情だったから・・・・・・さすがに俺も陰キャのクラススキル「コミュニケーション能力欠陥」を振り切らざるを得ない。

 

「どうしたんすか、用があるなら言ってくれっすよ。俺今のところ暇なんで」

 

「・・・・・・あの、セラヴィさん」

 

ベッドの傍らに置いてある椅子へ篠塚は腰を下ろす。

言おうか言うまいか、かなり自分の中で葛藤を繰り広げているようだ。これは相当重たいものに違いない。

 

「もし、自分のマスターが裏切って自分を始末するしれないって思ったら・・・・・・サーヴァントは、どうすればいいんですか」

 

「・・・・・・それは」

 

おそらく彼は知ってしまったのだろう。サーヴァントが一番知ってはいけないであろう事項を。

 

「俺、もし自決を命じられても主命とあらば従うつもりでした。でも、いざそのことを聞いてしまったら、怖くて」

 

心が生前より弱くなってるんです、と手を強く握りしめる篠塚。

俺はどう言葉をかければいいのかわからない。

抑止力に死後の自分そのものを売り渡してしまった、到底まともではない英霊・・・・・・否、英霊という格に無理やりしがみついた悪霊の俺には。

生前従うべきである主は唯一神以外おらず、教典の戒律と精霊より課された呪いに等しい誓約以外はもはや守ることもなく好き放題していた自分だ。新撰組という将軍を護るために命をかけ、厳しい法度の元に時には仲間すらも泣く泣く殺したような人達に偉いことは一切言えるはずもない。人間としての格が違いすぎるのだ。

 

「もし俺がその立場だったとして、マスターとちゃんとした関係になれてなかったとしたら・・・・・・早とちりしてマスターを殺してたかもしれないっすね。最後まで戦ったのに願いが叶えられないかもしれないって思ったら、より願いを叶えさせてくれそうなマスターを探し出したいっすもん」

 

俺のクラスがライダー故に、そういうことをやるのであれば次のマスターを見繕ってからやらないと消えかねないので危険だ。

アサシンやアーチャーであれば、そういった心配はそこまでないのだろうけど。

 

「そうですよね。ああよかった・・・・・・」

 

どうやら自分と同じ感性のサーヴァントを探していたらしい。

セイバーはマスター(来栖さんのほう)の安全を最優先していることもあり、最後の最後でもし裏切られたとしても「あーあ、結局働き損感すんなー」とか言うだけ言って大人しく自害しそうなイメージではあるため俺の方に来たのだろう。

どこか似たもの同士という印象を俺も抱くししょうがないのかもしれない。

 

「でも俺は・・・・・・もう願いなんて無くなっちまいそうなんすよ。この戦いに参加して・・・・・・4つのうちの3つは叶いそうだし、残りの一つだってもしかしたら」

 

俺の内側はほぼ完璧に満たされている。

克親の奥に存在しているあれこそが、欠陥品である俺を元に戻す欠片であると・・・・・・もうわかってしまっている。

普通の英霊なら未練を失えば人類滅亡や地球崩壊というような世界の危機でもない限り、二度と召喚されることはない。だが残念なことに、俺はいくら生前求めていたものを手に入れてもサーヴァント稼業から足は洗えない。永久雇用契約をしてしまったせいだ。

 

「・・・・・・羨ましいです」

 

「あの・・・・・・アンタは、マスターのこと信じてるんだよな?」

 

「当たり前じゃないですか。皆さんの前では結構な扱いされてるように見えるかもしれないですけど、本当はすごい優しいし」

 

「それじゃあいいじゃないっすか、最後まで信じりゃ。もし裏切られたんなら地獄の底まで付き合ってもらうつもりで殺しちまえばいいし」

 

我ながらとんでもないことを言っている気がする。

自害を命じられるということは大概令呪を使用されてのことになるだろう。

令呪へ対抗することもできるにはできるが、対魔力のランクがAでやっと1画分を耐えきれるくらい・・・・・・つまり数値化が不可能であるEX(無論上に振り切れている場合)くらいだったとしても、複数使われれば従わざるを得ないはずだろう。

一度精神のみの状態でそれを受けたが、対魔力Cの俺だと抵抗するだけ無駄だと思えるような圧力を感じたのだ。

あの時は戸惑いもしたが、心なしか嬉しく思っている自分がいることに気づきすぐ受け入れたが、そうでない命令・・・・・・例えば、意味もなく人を殺せなどと言われたときが怖いとは思った。

克親がそんな命令をするだなんて全く思えないし今回に限っては完全な杞憂ではあるが。

 

「そんなことできるんですか」

 

「まあ・・・・・・一応できるにはできるはずっすよ。自害を命じられた瞬間体がそれを実行する前にマスターを殺して自分も死んだってパターンを知ってるっす」

 

抑止力としての任務を遂行するためならば、その覚悟もしておけとデルニにも言われた。

まあ克親を守りきることが俺の仕事なので、今回それを覚悟する必要はないのだが・・・・・・言葉は忘れられないものだ。

 

「・・・・・・一応聞いとくっすけど。アンタにはそれだけの願いがあるってことっすよね?」

 

聖杯戦争に参加しているのなら当然かもしれないが、聞いておきたかった。

これまで大切に接してきたマスターを殺してでも、叶えたい願いがあるのかと。

 

「ええ。誰もがしょうもないと笑うようなつまらない願いですけど」

 

俺という存在の、根幹に関わることなんで。と篠塚は言う。

 

「どんなもんだろうと、俺は否定しないっすよ。俺だってどうしようもなくしょうもない願い持ってたっすから」

 

生前のぼっち生活に嫌気がさしたせいで生まれた友達が欲しいという願い。

今じゃあ聖杯に願うことも無かったではないかと笑えてくる。

例えどれだけどうでもいい、人類の歴史に影響を与えないものであっても・・・・・・与えられた擬似的な命をがりがり削ってまで実現させたいと願うのであればそれは立派な欲望であり願望だ。

好きなだけ希えばよいのだ、そんなものは。

 

「少しだけ気が楽になりました、ありがとうございます」

 

心なしか少しだけすっきりした様子だ。

俺なんかが役に立てたというのなら嬉しいけども、あんな言葉でよかったものかと少しだけ後悔してしまう。悪い癖は治らない。

 

「では、買い出しに行ってきますので。ああ、あと気になってたんですが」

 

俺の後ろにある箱を指差し、篠塚は少しだけ微笑む。

 

「それは、マスターのために?」

 

「・・・・・・そうっすよ。これが俺の、最──」

 

どごぉと大きく雷が鳴り、俺の言葉がかき消される。

こんな時にかっこつかないのって何なんだ、新手のデバフかなんかか??

 

「え、今なんて?」

 

「・・・・・・なんでもないっす」

 

はぐらかした。よく考えればさっき雷に邪魔された部分めちゃくちゃ恥ずかしい言葉だったし、よくよく考えれば雷GJ案件・・・・・・なのかもしれない。

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