Fate/Serment de victoire   作:マルシュバレー

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金ピカマンの口調やっぱりわからん!!


133話 十日目:雷雨の夜に

「これでいいか」

 

一通り内容を書いたところで俺はノートを閉じ、金庫の中に入れた。

深く椅子に座って、大きくため息をつく。

 

「明日も雨、つってたな」

 

2階からの景色は1階と同じように大雨。

ざあざあと降る雨は屋根で一度溜まって、滝のような流れを生み出している。

 

「・・・・・・あれは」

 

虚空で、何かが輝いたような気がした。

こんな雨だ、星でもなければ月でもない、高度を考えたら普通の飛行機とかでもない。

ならばなんだ、こんな雨の中わざわざ誰が────

 

「まさか」

 

背筋になにかが走り、ぶるりと思わず体を震えさせた。

ギルガメッシュがこの近くを通ったんじゃないかという可能性がとても高い。なんなら爆撃を食らわせてもおかしくなかった。

なぜまだ放っているのかわからないが、早く決着をつけるべきだろうか。

皆は寝ている。不破は聖杯を確認するため教会に戻った。つまりこんなタイミングでやられちゃひとたまりもないのは自明の理だろう。

 

「いつか来るとはいえ、おぞましいな」

 

「なにがおぞましいのだ雑種」

 

心臓が跳ねる。

いくら強固な結界を張っていても相手は人智を越えた存在であるサーヴァント。破られるかもと思っていたがこんな簡単に侵入されるだなんて・・・・・・

俺は、声の聞こえた方へ目を向ける。

 

「ぎ、ギルガメッシュ」

 

あんな雨の中移動してきたのなら必ずズボンの裾でも濡れていそうなものなのに、一滴の水もついていないように見える。

俺の研究室に土足で入るとか言語道断なのだが、そんなこと言ってたらキリがないしそく首ちょんぱされても仕方のないことだろう。

 

「・・・・・・俺を殺しにきたのか」

 

「なに、殺しはせん。ただその身にやつした剣を取り戻しに来ただけのことよ」

 

胸に手を当てる。

この剣は、デュランダルは・・・・・・マンドリカルドのための剣だ。こんなやつに渡してなるものか、奪われてなるものか。

 

「やめろ、これはライダーとの約束に」

 

不完全な彼を完成させるための、最後のひとかけらなのだ。すべてを水泡に帰するなど、俺が死んでも死にきれない。

マンドリカルドに強めの念話を送る・・・・・・眠っている状態故に対応まで時間がかかるかもしれないが怠るわけにはいかないだろう。

 

「呆れた雑種よ・・・・・・このままでは、死ねなくなるぞ?」

 

「・・・・・・それでもいい、俺は決めたんだよ」

 

例え、どんな地獄を味わおうとも・・・・・・友のために俺は誓ったのだ。

これは誰にも渡さない、渡すものか。

 

「・・・・・・それならば仕方あるまい。我もそれなりに対応するだけだ」

 

ひゅん、と眼前に鎖が顕れる。

反射的に俺は後ろに跳びかわしたがこの早さでは2撃めを食らうこと請け合い。

ならばと俺は思い切って体をひねり、窓をぶち破って外に出た。大雨のせいで一瞬にして体が重たくなる。

 

「克親!!」

 

再び飛んできた鎖を、マンドリカルドの剣が打ち払う。だがやはり耐久度の差か、壊れはしなかったが剣はかなりへこんでいる。

 

「こんな雨の日にやり合うだなんて思いもしなかったっすよ」

 

いつになく殺る気凛々のマンドリカルドが、部屋に残るギルガメッシュを睥睨する。

向こうは何をいうでもなくこちらを嘲るように笑うだけだ。

 

「・・・・・・ふん、貴様のような雑兵・・・・・・指一本で倒せるわ」

 

「だったらやってみろってんだよ!!」

 

大雨よろしく飛んでくる剣を手に持った木の剣で打ち払っているのだろうが、動体視力を強化していない俺の目では何が起こっているか全く視認できない。

あのときみたいに、剣で腹をぶち抜かれることがないか心配ではあるが離れるわけにもいかないと強化をかけて支援しなければならない。

 

「っ・・・・・・くそ、数が多すぎるっす!」

 

剣の強度を上げてはいたがさすがに耐えきれなかったのか、盛大な音を立てて粉々になる。

他の剣を出すこともままならない状況、どうするのかと思ったがマンドリカルドはいきなり森の中に走り去っていった。

 

「はっ、所詮はその程度か」

 

わざわざ傘のようなもの(これも宝具なのだろうか)を出してギルガメッシュは窓の割れた研究室から出てくる。

何らかの宝具を使い浮遊したまま、家の屋根へと降り立った。やはり高いところにいなければ我慢ならないらしい。

 

「ふぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉおおおおお!!」

 

遠くからなにやらとんでもない声が聞こえてくる。

いやそんなまさか、こんなところで原典の再現をやるつもりか。

一本の木が大きく傾いた。

 

「おもてええええええええええええ!!!」

 

そりゃそうだろ、と俺は仕方なく筋力増強の魔術をかける。こんなんで勢い余って家を壊さなければいいのだが・・・・・・

というか、そもそも俺が剣を出せればなんの問題もなかったはずなのに。情けない。

 

「うおらぁ!!」

 

土がついたままの根っこを一度地面に突き刺したかと思うと、棒高跳びの容量でマンドリカルドは一瞬にしてギルガメッシュまで肉薄する。

さすがに屋根の上で大木を振り回すわけにもいかないと判断したのか、盾を取り出し握りしめるマンドリカルド。

ギルガメッシュはわかりやすく怒り顔になって、びゅんびゅんと剣やら槍を出しまくるのはいいが屋根に大穴があけられまくっている・・・・・・修繕するのにどれだけかかるかわからない、取りあえず雨漏りだけでも防がせてほしい。

 

「つかなんでドンパチやってんのに気づかねえんだあいつらは!!」

 

篠塚は寝ているのかもしれないがセイバーは見張りやってたはずだろうがと俺は悪態をつきつつ雨漏り防止魔術を仕掛ける。

 

「天に仰ぎ見るべきこの我と、同じ場所に立つか!」

 

「俺だって王だからな!!」

 

突き刺さった槍を抜き、距離を詰めるマンドリカルド。

ギルガメッシュも負けじと鎖で動きを妨害しに来るのだが、敏捷Aは捕まらない。

俺の上げた空中歩行の中敷きを使い、そこら中に見えない壁を生成して不規則な動きにより翻弄していく。

なんて呑気に動きを見ているわけにもいかず、ギルガメッシュは俺のほうにも宝具を飛ばしてくるから危なっかしい。

 

「うおっとぉ間に合った」

 

「セイバー!」

 

もはや庭の原型を留めないくらいに飛んでくる宝具群を簡単に打ち落としつつ、セイバーは俺の前に立ったままめんどくさそうに話す。

 

「マスターとちょっち話してたもんだから遅れた。オジサンそこまで足早くなくって申し訳ない・・・・・・まあ防戦は得意なもんだから守って見せますよっ・・・・・・と!」

 

ぎぎぎぎん、と連続して襲いかかるものたちを落としてセイバーはマンドリカルドとギルガメッシュの戦況を見守る。

分裂できるわけもないので加勢できないと彼は嘆くように言ったが、増えられる方が怖いので守ってくれるだけで十分だ。

 

「克親!宝具いっすか!!」

 

「家だけは壊さないでくれよな!!」

 

さすがにこの状態で宝具を使うなと命令したら負けるのは必至。余波だけでも我が家が粉々になるだろうが、背に腹はかえられない。

 

「・・・・・・せいぜい謳うがいい、雑兵」

 

「ああ、言われなくてもやってやるよ────」

 

誰のものかもわからない槍を強く握りしめ、マンドリカルドは大きく跳ねた。

この軌道、家粉みじんになりそう。


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