Fate/Serment de victoire   作:マルシュバレー

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やっとこさここまできましたよぉおい


135話 十日目:例え儚くとも

「────啼くがいい」

 

ギルガメッシュの体に走る赤い紋様が、心なしか光った。

魂が理解している。こいつをまともに食らったら、細胞の1つさえ残らないだろうことを。

だが俺は逃げるわけにもいかない。マンドリカルドと一緒に生きて、一緒に死んでやる・・・・・・その覚悟で戦ってきた。

俺は手に持っていた”それ”を彼に渡し、静かな息を吐く。

 

「貴様には地の理など必要ない、天の理を見せてやろう────」

 

一瞬でも気を緩めたら全てが吹き飛んでしまうような地獄。マンドリカルドとセイバーのために魔力を生産するだけで気が遠のくような状態なのに、倒れることは断じて許されない。

セイバーが宝具の発動準備段階に入る。太ももの回路が悲鳴を上げ始める・・・・・・あからさまなオーバーヒート状態だけど、この際ぶっ壊れようが構わない、死ぬより断然マシだ。

 

「そんなもんはいらねえな。こちとら地でも天でもなくって”人”だからよー」

 

セイバーの剣が、光を纏い打ち震える。

 

「壊れず、折れず、曲がらず──────我が剣は全てを刺し穿つ」

 

「・・・・・・そうか、ならば・・・・・・好きなだけ謳うがいい、雑念」

 

神話の出来事と言われてもおかしくないような力が、圧倒的な力が、一帯に吹き荒れる。

ああ、見惚れる暇なんて許されない・・・・・・なのに、それは俺の視線をいとも容易く奪い取っていくのだ。

 

「・・・・・・原初を語る。元素は混ざり、固まり・・・・・・万象織り成す星を生む」

 

「掛け替えなき物の守人として死ぬるなら、この命すら惜しくはない!!」

 

これ以上もたついていたら間に合わない。セイバーと最後の決闘をする約束が、果たせない。

俺はマンドリカルドの手に、優しく触れる。

 

「今になって不安になってきたっすよ・・・・・・あんな戦いに、俺なんかが」

 

ここに来て自信を失わせる訳にはいかない。自分を信じさせなければ、何も成功しないだろうから。

俺は、マンドリカルドの双眸を見つめて告げる。

 

「・・・・・・お前なら。行けるさ、絶対に」

 

それでも揺れる瞳。

俺は思い切って、彼の額に張り付いた前髪を掻き分けそこに唇を触れさせた。

 

「・・・・・・あ」

 

「・・・・・・大丈夫、俺がお前を信じてるから。お前は俺を信じてくれるだけでいい」

 

戸惑う彼だったが、さすがに決心がついたか口を真一文字に結ぶ。

 

「わかった・・・・・・俺は、克親を信じる」

 

聖杯戦争が始まって二日目。あのとき折れて粉々になった、マンドリカルドが最初に持っていた木剣の柄を握りしめ・・・・・・静かに彼は目を閉じる。

俺の一番奥がどくりと大きな脈を打つ感覚。封印は全て解けていないが、その力の片鱗は遺憾なく発揮できる!!

 

「ふ・・・・・・う”っぁあああああああああああ!!」

 

俺はすべてを擲ってでも、彼の力になる。

例えこの体がばらばらになって消え失せようと、魂すら残らず奪われようと、構わない。

この身に背負った平尾家の歴史が、自発的に駆動する。

神経がぶった切れても、血液が沸騰して気体になってもおかしくないような熱が体を焼く。雨で体が冷えていなければ、普通に体温が42度を越えていただろうとさえ思える。

 

「う”ぅおおおおおおおオオオオぉおおおッッッッ”!!」

 

俺のオーバーヒートの影響で辛いはずなのに、それをおくびにも出さず懸命に耐えるマンドリカルド。

網膜を焼くような閃光が、俺の左胸から溢れ出る。

柄から先のない剣にそれは集い、実体と見紛うような刀身を形成した。

 

「・・・・・・ふ、不完全ながら形にしよったか。まあいい、全て消し去るのみだ・・・・・・世界を裂くは我が乖離剣」

 

「そういうわけには行かねえな・・・・・・俺のもう一人マスターからも言われた。何があっても守り抜けってな!」

 

セイバーが、剣を構えた。

 

「死を以てその口を閉ざせ・・・・・・『天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)』ッッ!!!!」

 

地を穿つ力の奔流が、視界を埋め尽くした。

ああ、死ぬ────────と、普通なら思うだろう。

だが、今は”普通”なんかじゃない。

 

「『不毀の極剣(ドゥリンダナ)』ッ!!!!」

 

強大なそれが、ある一点で2つに裂かれる。

それでもなおギルガメッシュの力は強く、背後にある森の木々をなぎ倒す所か消してゆく。

 

「・・・・・・ヘクトール、様」

 

顕現させた光の剣を手に、マンドリカルドは命を懸けて追い求めた英雄の名を呟いた。

やっぱり、あなただったんですね。と・・・・・・静かに、右目から一粒零す。

 

「感動の出会いとかそういうのはあとだ・・・・・・さすがにオジサン耐えきれなくなっちまうからな!」

 

行け、とセイバー・・・・・・否、ヘクトールが叫んだ。

そう言われてしまったらもう踏みとどまってはいられない。

 

「行くぞ、セラヴィ!!」

 

「ああ、心中覚悟の特攻だ!!」

 

勝利を引き寄せる風になると、そう決意して俺たちは走り出す。

なにもかもを破壊する力だとしても、決して屈しない。打ち破って見せる。

破砕の奔流へ光の刀身が触れた。

 

「・・・・・・う”ぉる”ぁあ”ぁ”ア”ぁ”ア”ァアアあ”ぁ”ァ”ッ”!!!!」

 

彼は全ての力を振り絞り、絶叫する。

これは、人のもたらした夢の形だ。

いずれ醒めて消える宿命であろうとも、その輝きは嘘になんてなりはしない。

例え、どれだけ儚くとも────────。

 

「ぶち破れぇええええええええええええええええッ!!!!」

 

魔術刻印が眩く輝く。

あんな奴には、絶対に負けない。

 

「俺は、大切な人を守る”ッ・・・・・・それが俺の・・・・・・全てだ──────っ!!」

 

赤の奔流が、完全に裂ける。

そして眼前には、少しだけ眉を動かし驚いたような素振りを見せるギルガメッシュ。

さあ、例え届かずとも、この剣の輝きを脳裏に焼き付けてやる。

 

「我は、第一宝具を誓約のもとに破棄する・・・・・・我が手には宿命の絶世、不毀を誓う極剣!!」

 

さらなる光が、剣の全てを包む。

 

「これは俺が・・・・・・否、俺たちが見た、”人の夢の結晶”!!我が親友の為、此処にその力を解放する!!」

 

マンドリカルドはその剣を両手で持ち、高々と天へ掲げた。

指し示す、生き方の形。

見るがいい、これが俺たちの・・・・・・すべてだ。

 

「『絶世の儚剣(レーヴ・デ・デュランダル)』」

 

その名を、彼は叫ぶこともなく静かに言った。

瞬間、光の奔流が世界を包む。

雨を降らせていた雲は一瞬にして蒸発し、隙間から月が顔を見せた。

 

「・・・・・・綺麗だな」

 

「・・・・・・ああ、本当に」

 

一緒に地を蹴り、天を駆ける。

 

「行けっ!!!!」

 

「っらぁああああああああああああああああああああ!!」

 

その刀身が、ギルガメッシュの脳天を切り裂かんと振り下ろされる。

向こうはただ、手を掲げるだけだ。

 

「・・・・・・これも、友というあり方か」

 

ギルガメッシュがぎっと歯を食いしばり、なにかしらの剣を取り出してきた。

さすがに抵抗はするだろう、だが打ち負ける気はしない!!

 

「ちょっとごめんなさいね」

 

「・・・・・・え?」

 

聞き覚えのない、見知った声が聞こえた。

なんだ、唐川も、不破も、来栖さんも・・・・・・ここには来ないはずだろう?

 

「・・・・・・ッが」

 

ギルガメッシュの心臓を、一振りの刀が貫いた。

切っ先から血が垂れる。確実に、これは死ぬ一撃だ。

 

「最初っからこんな作戦だったろ」

 

「・・・・・・あ、ああ」

 

なんで今まで忘れていたんだ。海と篠塚の存在を。

 

「なんで忘れてたんだろうな、お前らのこと」

 

「失礼な」

 

奴はそう言って、右目を擦る。

月明かりだけだからよくわからないが、どこかおかしい。

 

「認識災害を意図的に引き起こすのは奴らから言われてたんだがな。しゃーなしだ」

 

「・・・・・・ふ、はははは・・・・・・よもや、そこまでとはな」

 

あくまでもギルガメッシュの表情は崩れ去らない。

蝋燭が燃え尽きるとき最後の劫火らしいものは見えない・・・・・・諦めた、という表現は適さないだろうが、そういった感じなのだろう。

 

「・・・・・・これが、人の力だ」

 

刀身を失った剣を下ろし、マンドリカルドがそう呟く。

俺は顔を上げた。

 

「・・・・・・ん?」

 

黒い穴のようなものが、虚空に見えたのは気のせいだろうか。

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