Fate/Serment de victoire   作:マルシュバレー

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ブラックバレル欲しい(白目)


137話 十日目:守るために

「おいおい、死の概念そのものとか殺せるわけねえだろ」

 

セイバーがこりゃ参ったなといつものようにへらへら笑いで言うが、その表情の裏に余裕は全くと言っていいほどない。

タナトスは「死」を神格化したもの。これを殺すということは死の概念を破壊することとなり、どうしようもないパラドックスが形成されるだろう。

死そのものが死んだとしたら、この世界の命はどうなる?

数も減らない、食事として摂取したくても肉牛などは生き返り食えたもんじゃない。人口は現状よりもっと強い加速度で増殖し、土地が欠乏する。

食事はすべて化学合成の栄養剤。処理速度に追いつかないゴミ。

こんなことをしてしまえば地球滅亡待ったなしだ。

 

「なんつー無理ゲーなんすかこれ・・・・・・勝っても負けても終わりじゃないっすか」

 

「そうなることを予期してタナトス様をお呼びになったんですのよ~」

 

降臨した青年は黒い服を揺らし、こちらをただ見つめている。

俺たちの命の価値を、見定めているのだろうか?

 

「・・・・・・アンタは、何故ここに来た」

 

「人間は増えすぎたから。それだけだ」

 

つまりは、数の調整。この星に暮らす何十億という人間を、飢餓に苦しんだとき行う口減らしのように殺すというのだ。

言い換えるなら、人間の間伐。

 

「人間は皆平等だ。平等に────無価値だ」

 

「・・・・・・神の癖してテメェも虚無主義者かよ」

 

不破が吐き捨てたが、タナトスは気にもとめず話を続ける。

 

「ヘルメスが何故英雄の魂のみ冥府に運ぶのかわからない」

 

「・・・・・・英雄」

 

ここにいるマンドリカルド、ヘクトール、そして新撰組の核となる英霊が習合した篠塚。

サーヴァントは皆、知名度とかの差はあれど英雄だ。俺なんかとは比べものにならないくらいの。

 

「皆、平等に冥界へと送らねばならない。ヘルメスの仕事なぞ、必要ない」

 

「・・・・・・そんなことしたら、英霊の座は崩壊するだろ」

 

そうなってしまえば、実質的に世界は終わりだ。

マンドリカルドは確かにそう言った。

 

「そりゃあな。オジサンみたいなやつはともかくとして、冠位持ちとか抑止の守護者がいなけりゃ人類はおろか地球そのものが滅びるかもしれねえ」

 

冠位を持つ七騎は人類を滅ぼすような一個の存在群を倒すために存在する。

抑止の守護者・・・・・・マンドリカルドのような存在も、人類が危機に瀕したときそれを脱出するための鍵となる。

それが存在しなくなれば・・・・・・自明の理であろう。

 

「そこの凡庸なる英霊よ、貴様も同じことをしようとしているはずだ」

 

「・・・・・・違う、少なくとも・・・・・・今は違う!!」

 

手を握りしめ、神を睥睨するマンドリカルド。

 

「確かに仕事上、何人も無辜の民を殺した。人類のためだと割り切って、ただ剣を振るった」

 

上擦る声。

おそらく今の彼はデルニなのだろう・・・・・・自分のしてきたことを思い出したのか、彼は歯を食いしばった。

 

「でも今回のわたしは・・・・・・人を殺さなくていい。守り抜けばいい」

 

「・・・・・・そうか。ならば、邪魔なだけだ」

 

「っ!?」

 

いきなり俺の心臓が千切れそうな程に痛む。

立っていられる力は一瞬で消え失せ、泥まみれの地面に顔から倒れ込みそうだ。

 

「克親!」

 

マンドリカルドが体を支えてくれたお陰でひどい鼻血を出さずには済んだが、それよりもずっとひどい心臓の痛み。

呼吸がまともにできない。魔術も構築できない・・・・・・英雄の魂を持つマンドリカルドを消すために、凡人の魂を持つ俺を殺しにきたか。

 

「・・・・・・やめろタナトス、克親に手を出すな!!」

 

「・・・・・・勝手に言っていろ」

 

駄目だ、脳細胞が死んでいくような感覚が・・・・・・意識も遠のいていく。これじゃあもし生き残ってもまともな生活が出来なくなる。

視界が、ぼやけ、て────。

 

「・・・・・・そいつは、()()()()()()()()

 

いきなり苦痛が晴れ、まともな酸素が脳に届きだした。

あれは、海の声だった・・・・・・ような。

 

「あ”、う”・・・・・・」

 

「・・・・・・”克親”!」

 

彼のサーヴァントが駆け寄る。

すでに終末呼吸の兆しが見え始め、処置をしなければすぐに彼は死んでしまう。

だが俺の魔術じゃ・・・・・・”宝石魔術”じゃどうしようもない。この手に彼を救えるほどのものはない。

 

「・・・・・・篠塚」

 

「はい、マスター」

 

「・・・・・・神って、暗殺できる範疇か?」

 

「できるかは未知数ですが、主命とあらばやりましょう」

 

彼を救うためにはやるしかない。

迷ってなんていられない。

 

「・・・・・・令呪参画を以て命ず・・・・・・神を殺せ、”山崎丞”────────ッ!!」

 

「・・・・・・御意」

 

山崎が長巻を抜く。

脇腹の令呪が赤く光り、一つ残らず消滅していった。

 

「我が主の命に従い、我はここに力を解放する!集え・・・・・・我が同胞!!『誠の旗』よ、ここに翻れ!!!」

 

山崎丞が、地面に一本の旗を刺す。

赤地に黒字の旗が、風で大きくはためいた。

彼の体から3つの光が分離、独立する。加えて沢山の気配が現れ、少しずつ実体化し始めた。

 

「やっぱうちの監察は最高だな」

 

「なんてったって記録に存在する隊士ほぼ全員ですからねーチートですよ」

 

「よっしゃさっさと行くぞ」

 

何人いるのかすら数える気にならん人数の隊士・・・・・・おそらく全員サーヴァントが一斉に襲いかかる。

 

「無駄よ」

 

「・・・・・・やってみなきゃ分からねえだろ」

 

タナトスに弾き返されるのが大半だが、その刃は確実に届いている。

おそらく英霊の魂として認められた存在はタナトスの管轄外・・・・・・倒せずとも干渉は可能なのだろう。

 

「この太平の世を守るためならば、この身塵に帰そうとも──────」

 

山崎のもつ長巻から、多大なエネルギーが噴き上がる。俺の令呪によるブーストもかかり、並のサーヴァントなら一撃で消し飛ぶであろうほどの力・・・・・・

 

「例え守るものが間違いであったとしても、俺は戦う」

 

克親の家が壊れていくが、もうしょうがない。

俺はただ、やれとだけ叫んだ。

 

「『主守りし隊士の刃(いずみのかみ)』ッ──────!!」

 

轟ッ!!!

ただの横薙ぎであるはずなのに、それは全てを吹き飛ばすような風を上げて疾った。

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