Fate/Serment de victoire 作:マルシュバレー
13話にしてやっと二日目なんですけどこの調子で言ったら戦争集結に何話かかるんだろう・・・・・・()
13話 二日目:セイバーは誰だ?
目玉焼きを作りながら、俺は大きなあくびを一つした。
時刻は午前7時、始業の時間が9時からなのでまだちょっとはゆっくりしていられる。
「おはようございまぁあふ」
「今日はお布団ダンジョンからきっちり出られたんだな。起こしに行く手前省けたわ」
大あくびをして食卓の椅子に転がり込むマンドリカルド。
服装は寝起きらしく乱れに乱れたシャツだったが、その首筋に煌めいていた銀色一条。
・・・・・・少しだけ胸元をのぞき込んでみると、きっちりダイヤ型の石が揺れていた。
「あ、昨日の付けてくれたのか。よかった」
気付かれてなかったらどうしようなんて考えていたが大丈夫なようで何より。
キツネ色に焼けたトーストを皿に乗っけて、朝飯の準備もできたところだ。
いろいろと説明もしなければならないのでさっさと食うもん食っちまおう。
「いただきます」
「い、いただきます」
なんだかマンドリカルドの様子がおかしい。
やけにそわそわしているというか、なんというか・・・・・・
なにか言いたいことがあるけれど逡巡しているようにも見受けられる。ここで話させないと後々厄介なことになりそうだと俺は見て、マンドリカルドに洗いざらい話してみろと促す。
「・・・・・・実は、昨日」
10tくらいありそうなほどに重い口を開けて、彼は昨日あったらしい出来事を話してくれる。
第2宝具でも思い出したか、それともまた新しい何かを見つけたか。何を聞いても驚くまいと心に決め、俺はコーンポタージュを飲むためカップを口につけた。
「セイバーと、出会ったんです」
「へぶぅえ!?」
全くの予想外だったせいで俺は派手にスープを噴いた。
なんてことさらっと言ってのけてんだこいつは、油断ならないったらありゃしねえ。
テーブルの上に置いてあったティッシュを2枚程取り口を拭く・・・・・・あとで布巾もってこなきゃ。
「・・・・・・無事で済んだみたいなのはいいが、なんで黙ってた」
油断していたら一発で殺されていたこと間違いなしだろう。
敵陣営と接触したらすぐ逃げるかどうかはさておきすぐ俺に報告しておいてほしいものだ。
報連相は現代社会の基本なのだから。
別に説教垂れたい訳でもないので小言はほどほどに、事実確認を優先して進める。
マンドリカルドの話によるとそのセイバーと自らクラス名を名乗った男(濃い茶色の髪を後ろでちょっと結んでいる感じの髪型で、顎にひげを生やし自らをオジサンと称するらしい)はこちらへ同盟を結ばないかと提案してきたらしい。だがその割には契約のような話は一切なく、マンドリカルドの不安を聞くだけ聞いて去っていったという。
ついでにさらっと隙あらば始末していた発言されたらしい、恐ろしいにもほどがあるってんだ。
随分と怪しい挙動だが、なにか意図があってのことなのだろう・・・・・・真意が全く掴めないが、今はそう考えるだけに留まる。
「なにかまずいことはしゃべってないだろうな?」
「・・・・・・自分のクラス名ぐらいしか明確な情報は渡してないつもりっす」
ライダーであることを明かしただけならばまあ損失は少ないといえるか。向こうもセイバーと名乗っている訳だし。
クラスから真名を探られる可能性だってなきにしもあらずだが、ライダークラスは基本騎兵として名を上げたもの以外にも乗っていた馬などが有名だった英霊や船乗り(船長クラスが多い)とかならたいがい当てはまる。
つまり他のクラスよりちょっとはバレにくい・・・・・・はず。希望的観測ではあるけれども。
「まあそれくらいなら痛手でもない。とにかく何事もなくてよかった」
「・・・・・・あ、あとちょっとだけ気になることがあったんすけど・・・・・・これ」
そう言ってマンドリカルドが出してきたのは盾、武装したときに背中へ引っ掛けている丸盾だ。
銀色に黒の装飾が美しく、中心部に結ばれた黄色い布が飾り兼簡易版目くらましとしてひらひら揺れている。
「その盾がどうした?」
「セイバーにこの盾いいセンスしてるって言われたのが気になって・・・・・・ただそれだけなんすけど」
黒い鷲の模様がつけられただけの何の変哲もない盾なのだが、セイバーにとってそれは馴染み深いものということだろうか。
馴染み深いもの・・・・・・つまりセイバーが見たものもしくは身につけたことがあるものなのかもしれない。
そう仮定するといろいろセイバーの真名予想が進む・・・・・・見たものであったとすれば彼はマンドリカルドと生前どこかで会ったはず。つまりシャルルマーニュ伝説の関係者。
「まさかの弟?」
確か盾に関する話を持っていたような気がする。
「それはないっすよ。カンドリマンドのやつは基本洞察力だけいい馬鹿なんで俺の盾見て気づいたら”兄貴ー!”とか言い出しますぜ。あとそもそも俺は40いくまえに死んでんだ、それより先に死んだあいつがおじさんの姿で召喚されるわけないっすよ」
ド正論で真っ向から否定される。
まあ自分より先に死んだ弟が自分より明らかに年食ってくるわけないよね、そりゃこう言われるのも是非もなしだ。
セイバーの真名を探るのは結構難航しそうなので、この件はあとに回しておこう。もしかしたらミスリードを誘うためにわざと情報を撒いた可能性もあるので、考えるのはもう少し情報が揃ってからだ。
「で、そのペンダントちゃんとつけてくれたんだな」
飯も食べ終わり今はゆったりテレビを見ながら出勤の準備を整えているところだ。
マンドリカルドは霊体化すればいいので昨日のようにきっちり座って朝のニュース番組を見ている。
「風呂から戻っていきなりあったんで驚きましたよ。綺麗っすね、これ」
「そうだろ?俺も気に入ってんだそのデザイン。シンプルイズベストってな」
ペンダントトップとチェーン、あと接合部の補強パーツ以外はなにもない究極のシンプル。
簡素だとかつまらんとか言われりゃしまいだが、これはこれで美しいというものなのだ。
「どんな効果があるんすかこれ?すごい・・・・・・なんつーかあったけえっていうか、優しさを感じるっていうか」
石を握りしめてマンドリカルドがそう呟く。
サーヴァントだとやはりマスターの魔力に敏感になるのか、俺が込めた意志をやんわりとだが受け取れているようだ。
・・・・・・でも、さすがに今効果をバラすと多少戦闘スタイルが変化しそうなので言いたくない。よしぼかそう。
「簡単に言っちまえばお守りみたいなもんさ。少しでも長くお前といられますようにってな」
うわ気持ち悪い、言い回しも言い方もなにもかも完全に女口説こうとしてるやつじゃねえか。
案の定マンドリカルドが目に見えて困惑してるし。
もともと小さめな黒目が更に小さくなって目自体もスイミングタイムだ。
「お、お前武装したときいろんなところにダイヤ模様あるだろ?せっかくだからそれにあわせようと思って石も・・・・・・その・・・・・・形を・・・・・・」
駄目だ巻き返せそうにない。
どうして好きな人に告白ってわけでもないのに俺はこんなに焦ってんだ畜生、ちったあ冷静になれ。
そう自分を咎めても状況が改善されるというわけはない。どうすりゃいいんだか・・・・・・
「ありがとな、克親」
はははと軽やかに笑ったマンドリカルドの顔を見て、俺を悩ませていた焦燥感がなぜか薄れてしまう。
ああ、笑ったらやっぱかわいいななんて言えるわけない感想を抱きつつ、俺はどういたしましてとだけ返した。