Fate/Serment de victoire   作:マルシュバレー

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140話 十日目:さあどうする

「彼らをこのまま放っておけば・・・・・・人類はある意味滅びます」

 

「ある意味」という言葉の意味はまだ察せないが、人類滅亡という結論を出されたということはそれ即ちとんでもない危機。

人類を守るという役を背負ったマンドリカルドの召喚された理由ってのが、また増えちまったというわけだ。

 

「それってどういうことだ、まさかこいつらの頭おかしい耐久性が問題とかそういうことか?」

 

不破とセイバーによって普通なら10回くらい死んでるダメージを負わされているはずの二人だが、まだ平然と息をしている。

あそこまででっかく腹を裂かれたのなら、腸どころか胃を超えて食道まで外に露出していてもおかしくないはずなのに。

 

「その物理的な耐久力も、人間の飽和という別の滅亡理由になり得ますが・・・・・・最大の問題はまた、違うものなのです」

 

「まさか・・・・・・」

 

俺はひとつとんでもない可能性を脳裏に浮かべてしまった。

地球の歴史上例があまり見られなかっただけで、存在自体はしていてもおかしくはないものだ。

だが信じたくない、宿主の体を巣食い最終的に乗っ取る”寄生生物”がいるなんて。

 

「もう彼らの体は、人の物ではありません。外側だけは一緒ですが、中身が違う」

 

俺の考えは正解であったことが、聖人の口から語られた。

内部を何者かに侵され、人類としての力を完全に利用されているのだろう・・・・・・挙動自体はこれまでとあまり変わらないため、おそらくは人格のデータに干渉、閲覧を行っているものと考えられる。

 

「寄生虫みたいなやつに全部食われたけど、人間としての生体機能は維持してるってことっすか」

 

「そういうことだろうよ。体の中身が殆どほかの生物で置換されている状態を、人間というべきか・・・・・・そこらへんの話も絡んでくるはずだ」

 

言わば中途半端なテセウスの船だろうか。

構成要素が修理や代謝などで時間とともに刻々と入れ替わっているのなら、その存在における過去の一瞬を切り取ったものと現在のそれを比べたらそれは別の存在と言えるのか。みたいなパラドックスのことだ。

数回の修復を経て元々の部品が全く存在しなくなってしまった道具は、修復を行う前のものと同一存在として見なせるのか・・・・・・パラドックスだけあって解決はしていないはず。

 

「どうすればこいつら死ぬんだよ、取りあえず首ぶった斬るぞ」

 

随分と太い剣を生成した不破が、それを横に振って唐川の首から上を切り飛ばした。べちゃ、という音を立てて泥塗れの地面に頭が転がっていく。

普通なら卒倒するような光景だが、その異常性の前では俺の意識も釘付けになるというもの。

・・・・・・骨が無いのだ。首にあるはずの、太い太い頸椎が。

じゃあなぜ、数キロは普通にある人間の頭を支えられていた?

筋肉だけではどうにもならないような重量なのだ、頸椎に替わるものがなければ支えられずひどいことになるのは目に見えている。

・・・・・・黒い、何かがいる。

一瞬不破の魔術による産物かと思って聞いたが、俺は内側から破壊するんだったら脳ごと爆裂させる。と答えられた。

じゃあなんなんだ、あれは。

 

「・・・・・・あ、れ?」

 

黒だと思いこんでいたが、月光の下にその姿を見せたそれは深い緑色・・・・・・例えるなら、黒板みたいな色をしていた。

無色透明のゼリー状物質に包まれ、不可視の深緑色領域が中心で蠢いている。

そいつが全て体の中から出てきたあとの体は、まるで脱皮でもしたあとの皮かというほどに何もない。首から上と腕、そして股間から下はまだ骨などが残っているらしいが、そこ以外には何もない。完璧な虚無だ。

酸っぱいものが腹から込み上げ、俺は嘔吐してしまう。もう胃の中身は何もないのに、ただただ吐き気が俺の体を襲い続ける・・・・・・ああ食道が、喉が焼けるように痛い。じりじりとした胸やけのような状態になるまで俺はその場に倒れ込んだまま口から酸を吐き続けた。

あれは内臓を全部食ったのだ。邪魔な骨もまとめて・・・・・・

 

「克親危ねえ!!」

 

”それ”が、俺の方へと食指を伸ばしてきたのだろう。マンドリカルドは飛び込むようにして俺の前に立ち、”それ”をデュランダルで斬った。

さすがは絶世の剣、スライム状のものですら一刀両断という切れ味には感嘆の声を漏らすほかない。

 

「ダメだ、斬ったら斬るだけ増えるぞ!!」

 

「・・・・・・え?」

 

不破の言うとおり、真っ二つになったそれは死ぬこともなく丸まり、小さくはあるが完璧に元の姿へと戻ってしまった。

サイズが小さくなるとはいえ、こうもプラナリアのように増えるのなら剣は使えない。

ならどうやって倒せばいい?

 

「なんなんだよこいつ、俺へのメタで誰かが送り込んできたのかってくらい相性わりーじゃねえか!」

 

そう、マンドリカルドは特性上持ったもの全てがデュランダルと同等の切れ味を持つようになる。

つまり鈍器だろうがなんだろうが剣になるので、武器を持って攻撃する以上必ず斬れてしまうのだ。

 

「だからって体術勝負っつうわけにもいかねえだろ、もしひっつかれた挙げ句乗っ取られたらどうしようもねえぞ!」

 

いくらサーヴァントが魔力の塊でできた体と言えど、相手は未知の存在。

もしかしたら同じ人間の姿を持つということで、マンドリカルドにも何かしらの害があるかもしれない・・・・・・

 

「・・・・・・でも試すしかないっしょ」

 

「・・・・・・俺の目の前で死んでもいいってのか、お前も」

 

ただでさえ海がいなくなって辛いのに、最愛の友を喪ってしまえば俺は二度と起き上がれなくなってしまうだろう。

彼は、たった一つの寄る辺なのだから。

 

「そんなの、どうすりゃいいって言うんすか」

 

戦わなければ死ぬ。

だが戦っても死ぬかもしれない。

この状況ならリスクを犯してでも戦わなければいけないと頭ではわかっている。だけど、感情がそれを許してくれない。

デュランダルを顕現させたおかげか、俺の中にあった確かな芯は消えている。だから、支えが必要なのだ。

 

「・・・・・・わかんねえよ、なんっにも」

 

まだ酸っぱい口の中。

不破が異常存在を炭素の被膜で覆い、なんとか近づくやつを壁の方まで押し戻すが・・・・・・操作できる範囲などのこともあり、壁へそれが叩きつけられた瞬間膜が破られすぐこちらにじりじりと侵攻してくる。

二つのうち片方は先ほどと同様にこちらへやってくるが、もう片方の挙動がおかしい。

ずるずると体を動かし、家の中に侵入しようとしているようだ。

 

・・・・・・まさか。

 

「セイバー来栖さんのとこさっさと行け、篠塚もいるだろうがあいつははぐれ化してるんだ・・・・・・単独行動でまだ存在できてるだろうがいつ消えるかわかんねえぞ!」

 

不破が奴の意図に気づき、セイバーへと声をかける。

だがもうそこに彼はいない。もっと早い段階で気づいて、霊体化をしつつ向かったようだ。一応俺にも存在を知覚できているので消滅したという訳ではないだろう。

 

「さて、今ここにいるのは俺とテメェらとルーラー・・・・・・どうやって勝つよ」

 

あくまで死ぬ気はさらさらない不破。この状況下でそのメンタルを保てるってのが心底羨ましい。

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