Fate/Serment de victoire   作:マルシュバレー

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そろそろわいSCP-1374-JPにしばかれそうですね


141話 十日目:黒

「・・・・・・蜈玖ヲェ・・・・・・縺ゥ縺?」

 

”それ”が、俺には到底理解のできない言語を用いて何かを告げた。

 

「なに、言ってんだこいつ」

 

「菫コ縺ョ荳ュ縺後°繧峨▲縺ス縺ェ繧薙□・・・・・・蜉ゥ縺代※繧」

 

ぶくぶくと内部でなにかが沸騰した水のように泡立つ。それはまるでヤマビルのように細長く伸び、俺の背中へと触手らしいものを回り込ませた。

アレにくっつかれたら終わりだ、と本能的に察した俺は吐瀉物塗れの口を拭って横っ飛びする。

 

「繝槭Φ繝峨Μ繧ォ繝ォ繝菫コ縺ョ蜿矩#菫コ縺ョ諢帙☆繧倶ココ縺ゥ縺薙↓繧り。後°縺ェ縺?〒縺上l縺ェ縺?°」

 

脳へ何か声が響く。軽度の精神汚染だろうか、言葉がもつれそうになって危なっかしい。

おそらくこいつは唐川の使っていた魔術を吸収したのだろう。あいつは人をおちょくるのだけは一級品だったから。

 

「縺薙l縺御ココ逕」

 

ぶくぶく、ぶくぶく。

それが大きく棘を伸ばし、人間の四肢にも似た構造体を形成する。

それだけだったらまだ気持ち悪いなと思っただけかもしれない。だが、許されざる事象が、次の瞬間発生したのだ。

 

「・・・・・・か、つ・・・・・・ちか」

 

「・・・・・・ざけんな」

 

それは当初の質量からは考えられないような膨張をして、人の形を取った。

やけにスレンダーな脚。

随分と目つきの悪い三白眼。

かなりヤンキーくさい自由な髪型。

トレードマークとも言える白いZ字のメッシュ。

 

「あいつ・・・・・・俺になりやがった」

 

呆然とした顔で、マンドリカルドはそう呟いた。

今度は俺への嫌がらせか。友をこの手で殺せというのか。

全身が深緑色だったそれは少しずつ着色されていき、本物と全く見分けがつかないくらいに変化した。

 

「随分と悪趣味な奴だなテメェはっ!!」

 

不破が鎖を展開し、紛い物へ絞殺を試みる。

だがそれは右手から一瞬で剣を生み出し、鎖を断ち斬ってしまった・・・・・・どす黒いが、あれはおそらくデュランダル。

姿を変えた時に剣のデータも読みとっていたのだろうか・・・・・・なおさら腹が立つ。

 

「・・・・・・アンタ、何者だ」

 

「言わなきゃわからないとか・・・・・・本物のくせに馬鹿っすね、アンタって奴は」

 

奴がけらけらと笑う。それは本物のマンドリカルドそっくりで、俺の心を少しだけ揺さぶってくる。

何故だろう、友は俺の隣にしかいないってのに。

 

「克親、そこの出来損ないじゃなくて俺の方に来るべきっす。満足するまでいくらでも愛してやれるっすよ、俺なら」

 

「んなこと許されると思ってんのか、克親は俺と一緒にいるって言ってくれたんだよ!!」

 

「俺もアンタも・・・・・・同じ存在だろ?」

 

剣に取り憑いた瘴気が消え、奴の持つデュランダルは本物と一切変わらない姿に変わる。

精神汚染の効力も相まってかどっちがどっちかわからなくなりそうだ。耐えろ俺、本当の友を見失うな。

 

「大丈夫かよ」

 

「・・・・・・ああ、まだ、なんとか」

 

とても苦しい状況だが、弱音は吐いていられない。

目を離しちゃいけない、逃げてはならない。

膝に手をついてでも、俺は立つことを止めない。

 

「どっちが本物か証明する方法は・・・・・・わかるだろ」

 

「殺し合わなきゃ、生き残れないってこった」

 

ぎ、とマンドリカルドが歯を食いしばって剣を握る。

一斉に二人は飛びかかり、強烈な剣戟を開始した。

どちらも技量は同じ、きんっきんっとデュランダルのぶつかり合う音が反響する。壊れることのない剣がぶつかり合うために、どちらかが破損する事もない。

つまり、持ち主がどれだけ耐えるか、攻めるかが問題なのだ。

 

「せいっ!!」

 

「そらどうしたァ!!」

 

片方が盾を投げつける。もう片方が防御の緩みを一瞬で察知しすかさず足払いを繰り出してバランスを崩そうと画策する。

このまま倒されてなるものかと彼は首に巻いていた鎖を取り鞭のように振るい、相手の右手を強く打った。

本物の胸には俺のあげたペンダントが揺れているのだが、あまりにも双方の動きが早すぎて見分けがつかん。

 

「ぐっ!!」

 

片方が剣を取り落とし、右手を軽く抑えた素振りを見せた。

さすがに決着がつくかと思われたがそんなことはない。

 

「なーんちゃってぇ!」

 

トドメを刺そうとしたマンドリカルドの腹に、奴の手が触れる。

その瞬間、深緑色の何かが体に入り込み、偽物の体は消えていった。

 

「セラヴィ・・・・・・」

 

「あ”、う”・・・・・・やめ、ろ”・・・・・・あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!」

 

心臓を抑え苦しむ彼。

鈍色の目が金入れ替わり、肌の色も白に寄っていく。鎧は美しい白銀から禍々しい黒色に染色、剣も同様に汚染された。

そして、メッシュも黒く染まり地毛の部分と同じ色と化した・・・・・・

俺が知覚できるレベルでもわかる霊基の変化・・・・・・何が起こっていると言うのだ。

 

「・・・・・・黒化」

 

「・・・・・・それって」

 

嫌だ。そんなことがあってたまるか。

 

「あれは聖杯の泥に似たもの・・・・・・それがサーヴァントに触れると霊基は汚染され、強制的に別側面が引きずり出される」

 

ルーラーの奴はあくまでも冷静に分析を続けた。

サーヴァントを侵しもれなく人間の肉体を乗っ取れるような聖杯の泥に似た物体となれば、世界中に拡散した時点で終焉待ったなし。ルーラーが呼ばれるってのもわけないっつうことだ。

 

「あー気持ちいい!やっぱ略奪ってさいっこーだよなあ!!」

 

胸元で煌めくペンダントを握り、彼は問答無用でチェーンを引きちぎった。

地面にぼとりと落とされるそれを見ても、俺の口からは言葉が出ない。

意味のない音と、嗚咽を漏らす。どうして、どうして俺を苦しめるんだ。俺はただ、少しだけ幸せでいられたらそれでいいのに。マンドリカルドと、普通に笑って別れたかったのに。

なんで、世界は俺を苦しめるのだ。

 

「テメェ・・・・・・何やってるかわかってんのか」

 

「わかってるに決まってるだろ?俺以外が不幸になろうが死のうがどうだっていい、俺は俺の快楽に従うだけだ・・・・・・楽しかったぜ?アンタとの親友ごっこ。薄ら寒くて風邪ひきそうだったわ」

 

霊基が汚染されているからこんな言葉が出るんだとわかっていても、胸が痛い。

同じ声でそんなことを言わないでくれ。俺の、居場所だったのに。

 

「いやぁほんとに苦労したのなんの。コミュ障患った陰キャの真似して、雑魚に苦戦してるような素振りまで見せてさぁー・・・・・・しっかしアンタって馬鹿だよなぁ?暴走した時点で俺の危険性なんてわかってたはずなのにさぁ??」

 

今まで見たこともないような歪みを感じる笑顔。

そんな顔は見たくない、そんな台詞はもう聞きたくない。俺をどれだけ絶望させれば気が済むのだ。

 

「・・・・・・テメェ、そろそろ黙れ」

 

何か言いたいのに、言葉にできない。

頭がもうぐちゃぐちゃになって、考えても考えても言葉が出ない。

 

「なんで黙らなきゃいけないんだかな?どうするかは俺が決める、アンタが口出しすることじゃねえよ。黙るのはそっちだ」

 

「じゃあその口・・・・・・縫い止める!!」

 

細い炭素繊維のワイヤーが数え切れないほど不破の両手首から飛び出す。人の体に当たったらおそらく、簡単に肉が裂けるような代物・・・・・・

 

「お前も馬鹿だったみてえだな!!とっとと死ね、『叛逆の絶世(リベリオン・デ・デュランダル)』!!」

 

絶世の儚剣(レーヴ・デ・デュランダル)』の放つ光とは真逆の黒光。命を破壊せんと駆ける屠殺者。

ああ、ああ・・・・・・俺たちの夢は、どこに行ってしまったのだ。

一人うずくまる俺の肩に、ルーラーが音もなく手を置いた。

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