Fate/Serment de victoire   作:マルシュバレー

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収拾つくんだろうかこれ(白目)


142話 十日目:まだできること

黒の連弾が再びしとしとと降り始めた雨の中で共鳴する。

わかっていたことだが人間対サーヴァント。どれほど不破の技術があったとしても、壊れた彼を止めることは不可能だ。

最後の令呪一画が浮かぶ、手の甲を俺は見つめた。今の彼はどう考えてもステータスが上昇している。Cだった対魔力もいくつかランクアップしていたっておかしくはない。

となると、もう俺の力で制御することはできないという可能性まで浮上する。

 

「・・・・・・セラヴィ、セラヴィ・・・・・・!」

 

地面を這うようにして動き、落ちたペンダントを拾い上げ握りしめる。

雨のせいで冷えていたはずだが、それはほんのり温かいまま。ずっとマンドリカルドの肌に触れていたからだろうか・・・・・・たったそれだけのことなのに、涙が止められない。

 

「おせえんだよアンタはっ!そら『叛逆の絶世(リベリオン・デ・デュランダル)』ッ!!」

 

幾度となく繰り返される、反転した彼の宝具発動。どういうわけかクールタイムを一切合切無視して宝具を撃ちまくっている・・・・・・

 

「っ、げほっ、がはっ!?」

 

体の力がどんどん奪われていく感覚。

あいつは・・・・・・俺との接続をわざと切っていない。魔力欠乏で俺を苦しめたいという意図の表れだろうか。

どっちにしろ、このままじゃ死ぬ。

 

「止まれ、セラヴィ・・・・・・お願いだから・・・・・・止まって、くれ」

 

「うるせえんだよ」

 

不破と戦うための踏み台がごとく、俺の背中に彼の踵がぶつけられる。その衝撃で上体を支えていた腕はがくりと崩れ、顔面は泥の中にびしゃりと浸かる。

その上でジャンプされたもんだから、ブーツのヒール部分が深く背中に刺さり呼吸をまともにさせてくれなくなった。

ひゅうひゅうと情けない音を漏らし、必死で酸素を取り込む。

まだ死ぬわけにはいかない。マンドリカルドとの誓いを果たすまで、生きていたい。

 

「ぐっ、ぅううっ!・・・・・・はは、ははははは・・・・・・ここまで魂ごと焼け付くような戦いは久方ぶりだ!!」

 

額から夥しい量の血を流してなお、不破は狂気を孕んだ声を上げる。

戦闘力の低いサーヴァントなら制圧も可能という技量と、未だ底らしい底を見せていない魔力の量。

やはり、埋葬機関に近しい人間というわけか。

 

「受肉したってのが運の尽きだと思え」

 

不破の左胸に大きく浮かぶ青い回路・・・おそらくこれが、彼の魔術刻印。

三日月のような形は、まるで彼の操るもの・・・・・・即ち炭素の「C」にも見えるが偶然だろうか。

 

「心臓すらまろび出る暇なく崩壊させてやんよ・・・・・・!」

 

不破の着ていたキャソックの一部が翼のようにはためいた。

一瞬で針のように尖り、奴の体を追い回す。

 

「随分と厄介なもんやってくれてんだなこいつはっ・・・・・・と!?」

 

「有機体に生まれたことを後悔しろ」

 

やつの体に針の一本が刺さる。

それを見てか、デュランダルで奴は自ら左腕を切り落とした・・・・・・受肉したというのは本当らしく、普通ならすぐに止まる血も勢いよく噴き上がっている。

次の瞬間には針がぶくりと不自然に膨れ、左腕の組織を吸収していく。おそらくこれはタンパク質などを分解して炭素を回収するという技・・・・・・対人戦ならばどうしようもなく強い。

 

「その程度かよ!」

 

「まだに決まってんだろうがクソったれ!!」

 

再び激しい両者のぶつかり合い。双方大量の傷を負って、地面に血しぶきを撒き散らす。

不破の表情はかなりおかしくなっていて、簡単に言うなれば「頭イってる」とかそんな感じだろう。奴に対する憎悪と、強い相手と殺しあえる快感に揉まれているせいだろうか。

 

「『叛逆の絶世(リベリオン・デ・デュランダル)』五連打ァ!!」

 

「っ脳筋かテメェ、そこらへんは元の奴の方がよかったなっ!!」

 

もはや家が壊れまくっていることなんてお構いなし。

周囲の木すらもなぎ倒してあいつらは戦闘を続けている。

・・・・・・奴が何発も宝具を撃つせいで、俺の体が壊れていくのにも拍車がかかる。

 

「ぐはっ、が・・・・・・げほ」

 

鼻血が中を通って口にまでやってきたせいだ。俺は降りてきた生臭い味を早く無くしたくてそれを地面に吐く。

当たり前だが鼻からもたらたらと赤黒い血がこぼれてきた・・・・・・ここまで来るとかなりやばい。龍脈の魔力を濾過することもなく無理やり体に入れることでなんとか生命維持できているが、さすがにこれ以上耐久できる気配は全くない。

 

「縺ゅ↑縺溘?莉雁ケク縺帙〒縺吶°?」

 

「・・・・・・あ」

 

完全に忘れていた。まだ、アレは存在する。

八月朔日の体から這い出てきた”それ”は、静かに不破と奴の戦いへと近づいていく。

・・・・・・不破が戦闘へ夢中になっている隙に、乗っ取るという算段だろうか。さすがにそこまでやられたら終わりだ、俺にはどうしようもなくなってしまう。

 

「ルーラー・・・・・・俺は、俺は・・・・・・どうしたらいいんだ」

 

ペンダントを、右手でそっと握りしめる。

顔についた泥と血と涙を手の甲で拭った・・・・・・令呪の模様が、嫌でも目に入る。

最後のひとつ。目のようなそれが、俺を見ている。

未だに顔の周りがつーんとして、喉が痒い。いろんなものをなくしてしまった悲しさが、俺の中には残ったままだ。

また目尻からボロボロと涙があふれ、雨と混じり合う。

俺の存在は罪なのか。

生きてちゃ、幸せになっちゃ駄目なのか。

俺だってそんな風に生まれたくなんてなかった。俺はただ・・・・・・普通に生きていたいだけなのに。

こんな戦いに参加したのが悪いのだろうか。さっさと断って別の奴に押しつけてしまえば、こんなことにはならなかったのか?

 

「・・・・・・いや、違う」

 

この流れ、俺がいてもいなくてもどうせこうなっていた。

八月朔日のやつが聖杯の泥に似たものを持ってくるし、抑止の使者は必ずここにやってくる。

そして放っておけばそのまま世界が終わる・・・・・・俺がいて、変わることなんて。

 

「・・・・・・ライダーのマスター。”貴方だからこそ、出来ること”があるはずです」

 

俺を見かねて、ルーラーはそう俺に告げた。

 

「・・・・・・もう絶世の剣デュランダルは俺の中にない。それでもか」

 

ルーラーは静かに頷いた。

俺の持つ、チェーンの壊れたペンダントを見て。

そういうことか、と俺は一人納得する。

 

「私が守護するのは忠誠と愛、そして・・・・・・友情」

 

それは俺に味方してくれるということだな?と確認だけとって、俺は仄かに温かみを感じる石を両手で包み込んだ。

ルーラーが令呪を消費し、マンドリカルドの現実性・・・・・・つまり、彼の存在そのものを強化する。

奪われた霊基は取り戻され、幻霊未満となっていた存在は英霊に返り咲く。

だがまだまだ足りない。この世界に呼び戻す為には、依代が必要だそうだ。

・・・・・・ならなってやろうじゃねえか。

友を取り戻せるのなら、命以外のものはなんだってくれてやる。

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