Fate/Serment de victoire   作:マルシュバレー

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最近暑さが少しマシになってきたので蝉がうるせえです
ずっとひぐらしだけ鳴いていてくれねえかな・・・()


146話 十日目:聞きたいこと

たっぷりと魔力を注いだ影響か、マンドリカルドは頬を赤くしたままうつらうつらし始めた。

まるでご飯を食べたあとの子供みたいな挙動だな、と俺は風呂から上がり体を拭き下の服を着る・・・・・・彼はなんとか立っているけどもいつ落ちるかわかったもんじゃない。

 

「眠い?」

 

「・・・・・・ん」

 

サーヴァントは寝なくても死にはしないというけれど、眠くはなる。目をむいむいとこすりおぼつかない足取りで寝室へと向かっていったが途中で倒れてたりしないか心配だ。

濡れた髪へドライヤーを当て乾かしたところで、上の服も纏い脱衣所を出た。

特徴的な煙のにおいが、俺の鼻を刺激する。

・・・・・・海のとは違う、煙草の香り。

 

「セイバー、来栖さんは?」

 

「もうお休みなすってるよ。襲うなら今だぜ?」

 

それがどっちの意味なのかはあえて聞かないが、俺は来栖さんにそんなことするつもりはない。

襲わねえよ、とだけ言って俺は窓の外を眺めるセイバーの隣に立った。

まだまだ辺りは暗く、今の状況で見られるのは戦闘で少し荒れた庭だけである。

 

「ルーラーと監督役が協議した結果決闘は明後日・・・・・・まあ正確には明日なんだがな。その日にやるみたいだ。一応公平な戦いにするため前日は回復か何かに当てろっつう話だよ」

 

その決定は俺にとってとてもありがたいものだった。

マンドリカルドとセイバーの魔力供給を一手に担っている上に今日派手な消費をしたせいで、回復までまあまあ時間がかかる。

回復速度は早い方なので1日もあれば十分な領域まで持ってこれるはずだろうから、肝心要の決闘には影響しないはずだろう。

 

「それは随分とありがたいもんだ・・・・・・セラヴィと最後の戦い、全力で楽しんでくれ。って俺が言うのも違うか」

 

「ははは、一応お前さんも俺のマスターではあるんだから違っちゃいないだろうよ」

 

携帯灰皿に燃えかすを落とし、再びくわえて大きく煙を吸い込むセイバー。

相変わらず、何かを隠していそうな不敵さを感じる笑顔・・・・・・よからぬことを企んでないか不安だ。

 

「そういや聞いたか?アサシンの反応が消えたって」

 

「・・・・・・いや、聞いてないが・・・・・・まあ想像の範疇ではあったよ」

 

彼は自害する事を怖がっている素振りだったが、それはマスターという存在から命令されることに対する恐怖。

自分の意志で死ぬのは怖くなかったんだろう。武士道に生きた、新撰組の人たちなのだから。

海に操を立てたか、それともただただ惨めに他人へしがみついてまで願いを叶えたくなかっただけなのか・・・・・・それは俺にはわからない。わかるはずもない。

 

「もう邪魔する奴は、どこにもいねえってこった」

 

「・・・・・・まあ、そうだろうな」

 

もうこれ以上聖杯戦争へ介入する存在など、ルーラーの奴が許さないに決まっている。

あくまでも、これはちゃんとした決着をつけるはずだ。マンドリカルドとセイバー、どちらが勝つかは未知数だろうが。

 

「なあセイバー・・・・・・いや、ヘクトール。お前は・・・・・・セラヴィのこと、どう思ってんだよ」

 

彼のマンドリカルドに対する思いは少しだけ知れたと言ってもまだまだほんのひとかけら。

明日聞けるかわからないから、今聞いてしまおう。

 

「・・・・・・彼のこと、ねえ」

 

ヘクトールは少し目を閉じ、言葉を吟味するように小さく唸った。

まあまあ綺麗にまとまった顎ひげを親指で少しいじくりながら、しばしの時間が経過する。

 

「すんごくひん曲がってるように見えるけども、根っこは良くも悪くもまっすぐ・・・・・・だなーって。オジサンの偏見だけど」

 

ギリギリまで吸いきったその煙草を携帯灰皿でもみ消して、彼は胸ポケットへとそれをしまい込んだ。

適当なこと言ってるから本気にしないでおくれよ~とは言っているけど、おそらくはこれが本心。俺には直感でなんとなく感じ取れた。

 

「お前の言うとおりだよ。セラヴィはまっすぐで・・・・・・綺麗なんだ」

 

自己嫌悪とそれに起因する自虐はあれど、根底は実に素直。

俺なんかだめだと繰り返すのも、保険の一種。捨ててくれていいといった旨の発言だろうと、本心は違っていたりするのだ。

俺が噛みしめるようにそう告げると、ヘクトールは当たっててよかったなんて言ってくるりとその場で回転・・・・・・窓にもたれかかる。

 

「・・・・・・なあもう一人のマスターよ」

 

「・・・・・・なんだ?」

 

また、へにゃついた視線が一気に鋭くなった。

未だに慣れないせいで俺の体はほんのりびくっと震えてしまったのは・・・・・・バレバレのようだ。

 

「近いうちにオジサンたちはいなくなる・・・・・・決闘に勝とうが負けようが、聖杯に受肉を願わない限りな。いなくなったあと、お前さんはどうするんだ」

 

どうする、とはどんな意図で聞いているのだろうか。

マンドリカルドも海もいない世界で、生きていけるかの心配?・・・・・・否、辛いことに変わりはないが、膝を折るわけにはいかないとわかっているしヘクトールもその考えを知っているはずだ。

だとしたら、彼が聞きたいことは・・・・・・

 

「来栖さんなら、ひとりでも大丈夫だよ」

 

「・・・・・・本当にそう思ってんのか?」

 

ああクソ、本来の考えまで見透かされてるんじゃねえかこれ。

来栖さんをひとりにさせるのはかわいそうだとか、俺の勝手な感情だから言わないでおいたものを。

 

「でも、俺と一緒にいたらややこしいことに巻き込まれる・・・・・・ただでさえ普通の人が遭遇してはならないことを経験してるんだ。これ以上変な目には遭わせたくないし、守りきれる自信がない」

 

そう、来栖さんは魔術回路があるかもわからないような一般人。

こう言うとまるで差別のように聞こえてしまうだろうが、俺と彼女では生きる世界が全然違うのだ。

今までのように、同じ会社にいる、ちょっと名前を知ってるくらいの間柄でいい。それが、一番なにもないはずだから。

 

「・・・・・・そうアンタが言うんなら、それが正解だと思うんなら・・・・・・俺は何も言わんさ。けど、最後に聞かせてくれ」

 

「・・・・・・なんだよ」

 

「好きか?」

 

飾りもなにもないそのままの言葉が、俺の胸に容赦なく刺さる。

これはどう言えばいいのか。嫌いなわけはないし。

 

「・・・・・・好きでは、ある」

 

けれど、その手を伸ばすわけにはいかないのだ。

 

「来栖さんが一番幸せになれる方法があるってんなら、俺はそれに従いたいよ」

 

俺と一緒にいることが一番だというのなら、ちゃんと付き合って愛してあげたい。

だけど脳裏に海の顔がちらつくのも事実・・・・・・裏切ってしまうような気がして、少しだけ怖いのだ。

 

「・・・・・・だとよ。マスター」

 

リビングへとつながるドアを見やるヘクトール。これはまた謀られたか・・・・・・と俺は頭を抱えた。

扉がほんの少しだけ開いて、ちらりと丸っこい目が見える。俺の表情を見てそそくさと退散しかかったが、ヘクトールに言われおずおずとその姿を見せた。

 

「・・・・・・釣ったな?」

 

「へへへ、アンタにゃ悪いことしたねえ」

 

ちっとも悪いと思ってねえぞこいつ。

しれっと霊体化して逃げられたし、無理やりふたりっきりの場面になってしまった。

・・・・・・海以外の女性と話すのはあんま得意じゃないってのに、ほんとあのおじさんは・・・・・・

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