Fate/Serment de victoire 作:マルシュバレー
昨日はずっと絆周回して憔悴してたのれす・・・(言い訳)
防御用の礼装を下着の上に纏い、その上からワイシャツ、ジャケットと重ねていく。
これは通常の銃弾なら傷一つつかない特別製のもので、練り込んだ術式の数が桁違いなのだ。
魔力の隠蔽も高水準で行っているためまず相手にはバレないはず・・・・・・とは言いつつも聖杯戦争に参加する魔術師はだいたい超一流クラスなので過信は禁物である。その上サーヴァントの攻撃にどれだけ耐えられるかは未知数だし。
「さーてと、そろそろ行くぞー霊体化しろー」
俺は鞄を引っさげ玄関まで歩を進める。そのすぐ後ろをきっちり霊体化したマンドリカルドがついてきた。
鍵を取り出し手のひらで遊ばせながら履きつぶした革靴を履く。
「行ってきまーす」
『行ってきます』
玄関を出て、家の鍵をしっかり閉める。防御結界の綻びがないか確認し、門扉を開いた。
昨日通ったところと同じ坂道を下り、駅まで行くバスに乗る。今回も時間ぴったりに来てくれる日本の交通は素晴らしいなと本当に思う。外国でルーズな電車(1時間遅れとかざらにある)にやきもきしていた時期があっただけに余計ありがたく感じる。
12分程バスに揺られ、終点の駅前まで運ばれたところでそれを降りて電車へと乗り換える。
ここはあまり大きくない都市なのだが、それでも東西に走る地下鉄の駅が11位はある場所なので明海に行くにもいろいろ必要なのだ。
定期をいつも通り自動改札に叩きつけて、いつも通りの時刻に出発する車両へと乗る。
変わらず車内は通勤通学ラッシュをもろに食らって80%位埋まっていた。東京の方と比べりゃ屁でもないだろうがきついもんはきつい。
『・・・・・・大丈夫か』
一応マンドリカルドがはぐれるなんて大惨事になっていないかとかの確認のため念話を繋げる。
霊体化しているので人間でも何でもすり抜けられるらしいが、まあするに越したことはない。
『問題なしっすよ、ちょっとここまで人がいると霊体でもきつく感じますけど。なんか圧迫感があるっつーか・・・・・・』
『俺は実体だけどよくわかる。これでもダイヤ改正で本数増えてるんだけどな』
扉の横っちょで縮こまる。この時間帯女子大生やらも普通に乗っているので何かの拍子に触れてしまわぬよう細心の注意を払っているのだ。
女性の中には男を嵌めて冤罪で警察にしょっぴかせるのを楽しんでいる輩だっているという話なので恐ろしいのなんの。
『まあ5駅程度の辛抱だ、ここは一つ耐えてくれ』
ごとごと揺れる車両の中。香水やらなんやらの入り混じった空気が充満しているせいであまり気分はよろしくない。
なんでこんな電車の中でまき散らせるのか、家でやる時間もなかったのか。その神経がわからぬ。
俺は呼吸の回数を最低限にまで減らし目を瞑る。
ああ早く会社のデスクに行きたい・・・・・・
『克親、なんか誰かの手が尻に』
『・・・・・・なんだよ、俺なんか狙う痴漢がどこにいっ・・・・・・!?』
マンドリカルドの言ったとおり俺の臀部を緩く触ってくる誰かしらの手。動きからしてもう完全に痴漢のそれである。
全身が粟立ち軽い震えを帯びる。何の目的で俺に触ってくるのだろうかこいつは、まさか何かに気づいた魔術師か?
ほぼありえない話すらも可能性と考えてしまうくらいに焦ってしまう。
こいつをとっつかまえて変態ですと警察送りにしてもまあ遅刻にはならないくらいの時間だが、どうしたものか・・・・・・
「いでででで!!」
思案を巡らせていると、俺にお触りしていたらしい男の呻き声がなぜか上がった。
別に俺は何もしていないのだが、なにかあったのだろうか。
『克親、今の奴なんとか離れたぞ』
『・・・・・・そりゃ俺もわかってる。なにかしたのか』
『まあ手だけ実体化させて足掴んだんすけど力強くて足首にちょいとひび入れちゃいました・・・・・・やりすぎだったっすかね?』
しれっと病院に行かざるを得なくなるようなえげつないことをやってくれているがまあ今回ばかりは助かったのでお咎めなしでいいだろう。
これに関しては完全な善意というものなので現代との間に起こる若干な道徳心の乖離はほっといても問題ない。
殺さなけりゃなんだっていいと、俺も魔術師の子らしく人間らしさを欠かしてるしコンビにはちょうどいいさ。
『いや、あんな外道普通は首の骨折ったって良かったくらいだ。灸を据えるのにはこんくらいがいい』
さっきの男がさっさと降車したことでとりあえずの安寧は手に入れられた。
もう二度とあんな経験したくねえ。
「・・・・・・ふう」
やっとこさ会社にたどり着き、エレベーター前の機械に社員証をかざす。
無駄に豪奢な音が鳴って扉が開かれると、運良く他の人は乗っておらず空のやつがきた。後から乗ってくる奴もいない。
俺は7階のボタンを押して、そのまま流れで閉じるボタンも押す。
透明なエレベーター周りの空間。明海どころか山名まできっちり見えるというのはなかなかいいものらしく、社会科見学できた子供たちには人気なんだそうだ。
まあそんなこた置いといて、俺はエレベーター出てすぐの営業部区画にあるいつもの座席に腰を下ろす。
デスクに置いてあるのはパソコンと資料、あと多少の気分転換グッズくらいだ。
デスクトップの横き佇むそれの頭を人差し指の腹で撫でてから、パソコンの電源を入れる。
そっからはもう慣れたものだ。ログインを済ませソフトウェアを起動、そして資料の束を開く。
効率化を計りたいがそれに費やす時間もあんまないので今のところは丁寧な作業というわけだ。
腱鞘炎対策はしっかりしないと後がとっても怖い。