Fate/Serment de victoire   作:マルシュバレー

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ダンスは・・・・・・苦手だな(体育の成績5段階中3)


150話 十一日目:踊りませう

「マリンパークとか来るのも大学の卒業祝い以来だな」

 

10時に開園したばっかりの遊園地なので、他の客はまばらにしかいない。

もれなく平日ど真ん中の水曜日。来る奴は春休み中の学生だとかそういった層が多いようだ。

 

「乗る奴ならたっぷりあるけど、どこ行く?」

 

夏場限定のプールとかは置いといて、ここは年中世界展開するようなテーマパークにも引けを取らない規模のアトラクションを建設、運営している。事故対策は特に念入りで、万一ジェットコースターが脱輪してぶっ飛んでいっても死なないマニュアルなんてのがあるってのは舞綱でおなじみの都市伝説だ(無論そんなことがあれば普通に乗客は死ぬ)。

 

「じゃあ・・・・・・あれとかどうっすか?」

 

「ほう、最初っからホーンテッドハウス系とはなかなか攻めるな」

 

「・・・・・・あの見た目でお化け屋敷なんすかあれ。ただの店かとおもった」

 

マンドリカルドが困惑するのもわかる。

何てったって見た目はめちゃくちゃファンシーなショップというか風景を楽しむコースター的な様相なのだから。

騙されて入ったら地獄を見ると有名な初見殺しお化け屋敷こと、「ぬいぐるみと死の舞踏」。あからさまなホラー調フォントではなくいかにもなポップさも初見殺し要素としてきっちり働いている。

 

「以外と凝ってて面白いぞ?ダンサーのスカウトをしてくるくまのぬいぐるみとかえげついからアレ」

 

さすがに全部言うと意味がないのでぼかしたが、それでも充分なイロモノさ加減は伝わったらしい。

やっぱやめとくっす、とそそくさ逃げ出そうとする彼の首根っこをひっつかみ連れ戻す。

 

「・・・・・・お化けがお化け怖がるとか」

 

「いや怖いもんは怖いっしょ。一応このあたりに漂ってる奴らとは訳が違うんで」

 

よくも悪くも人の感性そのままなのーとまた理由を付けてどっか行こうとするマンドリカルド。逃げるなと俺は入り口の方まで連行していく。

 

「克親は鬼っすか!!」

 

「鬼畜とは言われたことがあるな」

 

高校時代海とゲームしてて一方的にボコったらそんなことを言われどつかれた思い出がある。

 

「そんなんはどうでもいいんだ。行くぞ」

 

「やーーーーだーーーーー!!」

 

珍しくだだをこねる彼であったが、中に入った途端一気に鎮静化した。

こういうところで諦めが早いのは助かる。

 

 

「ぬいぐるみたちの舞踏会へようこそ。ここでは小さな仮面をつけて、みんなと一緒に踊りましょう!」

 

アナウンスと共に、差し出されたのは二人分の仮面。目元だけが隠れるベネチアンマスク仕様で、なかなか豪勢な羽飾りが横にひっついている。

 

「こ、これつければいいんすよね?」

 

「ああ、外したらダメだってよ」

 

しれっと壁に書いてある注意書きを指し示す。

『舞踏会の中でこの仮面を外した瞬間、恐ろしいことが起きる』・・・・・・なんとも抽象的な話だが、全年齢向けとなるとこれくらいの方がいいんだろう。

ちゃんとつけたことを確認して、ゆっくりと中へ進入する。楽しそうだった世界は扉一つでシックな雰囲気に変化・・・・・・音楽もそれにあったものへと入れ替わる。

 

「ハチャトゥリアンとはまーた王道な」

 

曲名はそのまま「仮面舞踏会」。確かにぴったりではあるんだろうがいかんせん安直・・・・・・とかいうと怒られそうだ。

何を感じ取ったのか知らんがやけに殺気立っているマンドリカルドの手を引いて、俺は会場へと足を進めた。

 

「・・・・・・なんすかこれ」

 

「見たとおりだろ。ただの舞踏会」

 

たくさんの着ぐ・・・・・・ぬいぐるみたちがステージの上でくるりくるりと社交ダンスの応酬を見せている。

あんなんでよく疲れないな、と俺はひっそりと呟きそのままステージへ上がった。

 

「え、あの上がっていいんすか??」

 

「上がらなきゃなんも始まらないぞ~」

 

ちょうど曲の終わり目だ、次の曲のスタートと同時に踊ろうではないか。

困惑一色を顔面に貼り付けた彼の体を抵抗される前にゆるく倒し、ポーズを取る。

一応貴族なんだからと叩き込まれたものが芋づる式で発掘されてきた。”俺”は受けていない授業であったが、”本当の俺”の記憶がこっちに流れてきたんだろう。せっかくだから頭の肥やしにはせず、使った方が知識も喜ぶはずだ。

曲にあわせ、大きく3歩歩く。

そこから大きく滑らかに回転し、手を伸ばしたまま横へと歩きだす。

一瞬だけ静止し、さっきみたいなターンの逆回転を繰り出したり、彼の上体を地面に近づけさせたり。

 

「・・・・・・足、もつれてるぞ」

 

「・・・・・・こんなのっ、ついてくだけできついっすよ」

 

「・・・・・・仕方ない奴だな。じゃあ俺に全部任せてくれ」

 

マンドリカルドは答えも言わず、俺の背中へ腕を回す。

まるで曲芸みたいに振り回すばっかで目が回るだろうが・・・・・・周りはごくごく自然な踊りだと言わんばかりに気にしてない様子。

 

「これじゃあどっちが王子かわかんねえ・・・・・・いや、お前はもう王様だったな」

 

自分で王権を与えといて何を言ってるんだか、と呆れられそうだったがマンドリカルドは文句の一つも言わなかった。

少しずつ動き方を理解し始めたのか、ほんのりとだが俺の動きに合わせてきている。

 

「流石です、我が王」

 

「そういうのやめてくれっす・・・・・・恥ずかしい」

 

ちょっと頬を赤く染めながらも、彼は満足そうに笑っていた。

さて・・・・・・この舞踏会の本番は、これからだ。

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