Fate/Serment de victoire   作:マルシュバレー

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最近自分がダメすぎてかなしい
高専爆発しろ()


152話 十一日目:ヒールで人を蹴ってはいけない

「窒息するかと思った」

 

「しないしない」

 

遊園地内のレストランの一角を陣取り、ぐえぇと机に突っ伏すマンドリカルド。

お化け屋敷の一件で少し時間を食ったせいかもう正午だったので昼飯を食うことになったのだが、何を買ってくるべきか・・・・・・

 

「昼飯はがっつり食っときたいか?」

 

「どっちかというと食べときたいっすね。いつさっきみたいなことになるかわかんねぇっすもん」

 

別に食事を取ったところでサーヴァントのパフォーマンスはそこまで向上しないのだが、そこらへんはモチベーション維持の一環というわけで。

席取りの意味を持つ荷物を置いて、注文カウンターの方まで向かう。土日とかならめがっさ混んでるそうだが、やはり平日は空いていて楽だ。

 

「どうする?」

 

「あー・・・・・・んじゃ俺これで」

 

彼が選んだのはこの店一番人気のメニューであるオムライス。タンポポタイプにデミグラスソースという組み合わせで、店主のえげつないこだわりっぷりが余すところなく出ている逸品・・・・・・俺も食いたくなってきた。

 

「じゃあ俺もおんなじやつ食おっかな・・・・・・飲み物とサイドメニューは・・・・・・まあ無難なやつでいいか」

 

カリカリとした食感がいいニューストリングカットのフライドポテトとシーザーサラダ、そして飲み物にブラックコーヒーとオレンジジュースを頼んで札を取り席へと戻る。完成次第運んできてくれるのでしばらく暇な時間ができた。

 

「・・・・・・このまま何もない平和な時間がずっと続いてりゃいいのにな」

 

「そういうわけにもいかないっつーのが悲しいところっすね」

 

刻々と迫る終わりの時。

それが近づくにつれて、彼を手放したくないという欲求が爆発しそうになる。

令呪の消えた手に、右手の指で触れた。

 

「やっぱり、俺は受肉を望んだ方がいいんすかね?」

 

「・・・・・・何を願うかは、お前の自由だ。俺の干渉するような話じゃない」

 

「・・・・・・そうっすか」

 

ばつが悪そうに、マンドリカルドはストローに口をつけぶくぶくとジュースの中で泡を弾けさせていた。

お前のやりたいことのために、戦ってくれと俺は言った。

次の言葉を紡ごうとする直前に注文していたオムライスが届き、話は中断される。

頂きますのかけ声を揃って発しながら、スプーンをその皿へと刺し小さなオムライスを作る。

口へそれを突っ込んだ直後、こわばっていた頬が一気にとろけた。

 

「ぅううめえええええ」

 

「さすが1000円も取るだけあるっすね・・・・・・なんだこれうっま」

 

目を輝かせたマンドリカルドの口に次々と消えていくオムライス。

できたてで熱いはずなのだがそこらへんお構いなしで鼻息も荒く食べまくっている。

 

「これだけで来た価値あるっすね。ごちそうさまでした」

 

「はえーよ」

 

俺が半分食べ終わったところでもう彼は皿をきれいさっぱり(ソースまで綺麗にスプーンで掬い取って)完食してしまった。

腹まだ減ってるんなら追加してもいいぞと言うも、やんわりと断られる。

 

「待たせるがいいのか?」

 

「いいんすよ、ずっと待ってるっすから急がなくって」

 

滑らかに光るアカシアの机に肘をつき、じーっと静かに俺を射抜く彼の視線。

見られていることを意識しながら食う飯の恥ずかしさたるや・・・・・・

 

「・・・・・・本当にいいのか?いくらでも甘えてくれたっていいんだぞ」

 

「・・・・・・まだそん時じゃないっすから、今はこのまま」

 

半ば「あとでわがまま言います」という宣言をして、また俺を見つめる双眸。

鈍色の眼が、きれいだと思った。

 

 

「ごちそうさま」

 

俺も食べ終わり、皿を返却して店を出た。

帰る時間なんて気にせず遊べるだけ遊ぼうではないか。それが今日の存在意義なのだし。

一日で回りきれる気がしないくらい多い施設を散策し、乗りたいものがあり次第乗りまくるという方針だ。

 

「・・・・・・どした?」

 

ふと後ろを振り返ると、あるものを前にして立ち止まっていた彼がいた。

視線を辿ると、そこに鎮座しているのはメリーゴーランド。単なるメルヘン趣味・・・・・・というわけでもなさそうだ。

 

「乗りたいのか」

 

「いや、そうじゃないっすけど・・・・・・ただ、ブリリアドーロのことを思うと・・・・・・なんか全然出してやれなかったなって」

 

彼の霊基に一体となって登録されているらしい、名馬ブリリアドーロ。

確かに戦闘の時にしか呼べないという特性を加味しても、その出番が少なかったのは明白だ。

 

「帰ったら庭先でちょっとだけ出せるかやってみたらいいんじゃないか?ちょっと俺も触れ合いたいし」

 

対アヴェンジャー戦で俺を運んでくれた時ろくにお礼すら言えなかったし。

 

「わかったっす。呼べるかわかんねっすけど・・・・・・」

 

彼もやる気を出してくれたので、忘れられる前に帰った方が良さそうだが・・・・・・まあ、そこらへんは気分次第で。

 

 

「あばばばば目がまわる”ぅううううう」

 

「吐くなよお前ぇええ」

 

「いやそこらへんは大丈夫っすけどおぉおおお」

 

コーヒーカップに乗った俺たち。

男子にありがちな調子乗って回せるだけ回したあと遠心力でぶっ飛ばされかねない状況になるまでやり戻れないというアホをかましたせいで、二人して胃の中身がシェイクされまくり危険地域。

もう少しでマーライオンしそうだ、といったところで機械が止まったからいいものの・・・・・・死屍累々である。

 

「お客様大丈夫でしょうか?」

 

「・・・・・・大丈夫っす」

 

「自己責任なんで心配なさらなくて大丈夫です・・・・・・ぐえ」

 

そばのベンチで溶ける。

やはり25ともなれば三半規管に衰えがくるってもんだな・・・・・・と空を見上げながら一人思った。

 

「あーらこんな平日に遊園地だなんてリストラでもされたんですかぁ?」

 

向こうの方から何やら聞き覚えのある声がして、なんだなんだと俺は顔の向きを元に戻す。

・・・・・・そこにいたのはナディアであった。この戦いからしれっと脱落していたのは知っていたが、いらんちょっかいはかけられずにすんだのかピンピンしている。

 

「有給だっつの」

 

せっかくの休みに何の用だと言おうとして、少しだけ恐ろしいことを想像し背筋が冷えた。

まさかこの期に及んで聖杯戦争を勝ち残ろうと、マンドリカルドを奪おうなんて魂胆で近づいて来られたとしたら。

反射的に体が動き、大切な友の体を守るべく前に立つ。

 

「なに警戒してるんですの。もう戦いに興味はないのですわ・・・・・・完璧に負けたんやから」

 

「・・・・・・そうか。セラヴィを取らねえってんならいいんだ」

 

彼女の表情を見て、それは真意であると判断した俺は元の位置に戻る。

 

「それにしてもいいんですの?」

 

「・・・・・・何がだよ」

 

その答えに、ナディアは珍しく眉を動かし困ったような顔をする。

何を言いたいのかはわかっていた。だが、俺の口がそれを言うことを拒否しているのだ。

 

「司馬田さんのこと」

 

言いたいことはたくさんあるが、言えない。

無意識にか歯を食いしばってしまったのか、顎がじんわり痛い。

のどの奥が痛くなって、目尻と鼻の奥がつんとする。こんなところで、泣きたくないってのに。

 

「わかってる、んなもんはわかってる・・・・・・けど、俺は」

 

本当なら。

本当なら、もう少しだけ・・・・・・一緒にいられたはずなんじゃないかとか、そんなことばっかり考えてしまうのだ。

ああすることでしか、俺が生きていられる道はなかったというのに・・・・・・それでも、海の犠牲は間違っていたのではないかと思ってしまう。

失礼にも程がある。命を賭して俺を救ってくれたのに、もっといい方法があったんじゃないかって思うのは。

 

「俺はあいつの分まで生きて、地獄の底でまた殴り合うって決めたんだ。だから」

 

「・・・・・・それならいいんですわ。生きる気があるっていうのなら」

 

踵を返そうとするナディアを呼び止める。

 

「・・・・・・なんで俺に生きていて欲しいんだよ。死ぬほど嫌いだろ、俺のこと」

 

「勝手に死なれては困るんですわ。あなたこそ正面から叩き潰さなければコカンに関わるってやつですの」

 

「沽券なそれ言うなら」

 

「・・・・・・言い間違えただけですわ!!」

 

俺の鳩尾に激しい蹴りを食らわし帰って行ったナディア。

ピンヒールの先っぽが見事に刺さりちょっとえずいたのは言うまでもない。

つかマンドリカルドいつの間に寝てんだ。

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