Fate/Serment de victoire   作:マルシュバレー

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戦闘になるとキャラ崩壊しがちなのが悪い癖(普段からずっと崩壊してる気がする)
都々逸へたくそ選手権優勝してますごめんなさい0


164話 十二日目:ゆめゆめかなわぬゆめを

一直線に、彼は走った。デュランダルは薄い光を纏い、彼の思いに同調する。

 

「猪突猛進ってのもいいけどな・・・・・・勢い任せの行動は時に身を滅ぼすって知ってるだろ、お前さんは」

 

敵の首を刈らんと、その剣を下段に構えたままマンドリカルドが前へと進む。

ヘクトールも負けじと足を踏み出し、真っ向から勝負する・・・・・・と、俺が予測した直後だった。

 

「残念でしたァ!」

 

槍を唐突に地面へ突き立てたかと思うと、そのまま棒高跳びの要領でヘクトールは大きく飛び、ちょうどマンドリカルドの背後を取ってきた。

常時背中に盾をつけていたせいで攻められなかったが、それが左手に移ったことで満を持して後ろから攻めに行ったということか。

咄嗟にマンドリカルドも振り返り迎撃しようとするがコンマ一秒遅い。

 

「ぐあっ・・・・・・!」

 

斬られたら即死んでしまうような場所は回避したが、左の上腕あたりを切り裂かれた。

山吹のシャツに赤黒い血が滲み出し、裂けた服の下からは綺麗に真皮まで見えるほどの傷がある。

サーヴァントの肉体故にそれはすぐさま治るだろうが、それにとる魔力と時間が相手にアドを与えてしまうのだ。

 

「一発食らっただけで機能不全たあなってないね」

 

ヘクトールの攻撃は雨あられのように降り注ぐ。

それを必死で弾き返すもいくらかいなしきれずに食らっているマンドリカルド・・・・・・このままじゃジリ貧だ、さっさと終わらせなければならないというのに。

 

「ふひっ・・・・・・はははっ、はは!!」

 

変な笑い声を上げた彼は、デュランダルで攻撃を弾き返すのをやめた。盾はいつの間にかどこかに吹き飛ばされている。

そんな、もう諦めるのか。俺との約束を反故にして、憧れの人に殺されて終わるのか。

それは嫌だ、そんなことされるくらいなら、俺が間に入ってやる。

 

「・・・・・・終わりだな」

 

「・・・・・・そんな、はずは」

 

エクレアを頬張りながら言う不破に、俺は明確な否定の言葉を言えなかった。

 

「とどめと行くか」

 

「・・・・・・嘘だよな、セラヴィ」

 

血みどろの体。

塞がって間もない、数えるのすら億劫になるほどの切り傷。

頭から血を流して、彼はまだ笑っていた。

 

「じゃあな」

 

黄金の聖剣が振り下ろされる。

肉が、骨が、石をも斬り殺す剣に裂かれる音がした。

 

「おっと・・・・・・こりゃ予想外」

 

「・・・・・・俺には、毎度こんな手しか使えないんすよね!!」

 

ドゥリンダナの切れ味を知っていながら、彼はその手で刀身を受け止め握りしめたのだ。手首には九偉人の鎧の一部があるからその先は斬られないと、右手を犠牲にヘクトールの首筋へ薄い傷を付けた。

 

「・・・・・・やっと、届いた!!」

 

「だが死ぬまで終わらねえのは分かってるだろうな!!」

 

再びデュランダルとドゥリンダナがぶつかり合う。

さすがに首へ傷を入れられたことに焦ったのかヘクトールも余裕をなくして笑い、致命傷を食らう前に相手を殺してしまおうという感情が透けて見えてくる。

 

「Renforcement de l'armure・・・・・・Ajout d'onde de choc・・・・・・Récupération immédiate!」

 

防御上昇、衝力上昇、瞬間回復の術をかけた。これで残るは5回。

双方が傷つきそのたびに回復しているせいか俺の魔力もごりごりと減っていってる感覚・・・・・・倒れないように今のうちから龍脈より魔力を汲み上げておくべきか。

 

「だぁらぁっ!!」

 

マンドリカルドの振るった剣は、ヘクトールの左腕をはねた。

肘から先の部分が吹き飛び、こちらの方まで転がってきた直後魔力の霧へと還っていく。

今まで感じたこともないようなめまいに、俺は思わずよろめいてしまう。

 

「だ、大丈夫ですか克親さん」

 

「・・・・・・あ、ああ」

 

欠損箇所の再生には時間と大量の魔力が必要だ。

俺の体が出せる限界の速度を超えて回復させられているため、彼と繋がっている回路のオーバーヒートが酷く、立ち上がれない。

 

「契約した時点でわかってただろ。最終的にはそういう羽目になるって」

 

「・・・・・・ああ。だがそうしなければ、来栖さんも救えなかっただろ」

 

「お人好しめ」

 

「お前もたいがいだろ」

 

主義主張の違いはあれど、俺たちの本質は似たもの同士。

付き合いが長ければそれなりの友達にはなっていそうだが、彼は仕事が終わり次第帰ってしまうからもったいないものだ。

 

「なかなかしぶといなお前さんも!」

 

「往生際の悪さには一部で定評があるんでね!!」

 

どちらもいつ倒れるかわからない状態。

熾烈な剣戟は未だに続く。折れるどころか刃こぼれすらしない、不毀の剣がぶつかり合う。

双方息が上がりつつあり、普通の動体視力じゃ捉えられそうにない動きも次第に見えてくる。

 

「はーっ、はーっ・・・・・・!」

 

「まだまだ・・・・・・こんなもんじゃねえ!!」

 

ばちばちと、金属音に合わせて火花が散る。

この戦いの終わりはいつ来るのだろうか。俺には予想のつかない未来の話だ。

 

「壊れず、折れず、曲がらず──────我が槍は全てを射抜く」

 

打ち合いの最中、その詠唱が鼓膜を叩いた。

不毀の極剣の詠唱とは違う、彼のもう一つの宝具・・・・・・

 

「避けろ、マンドリカルド────ッ!!」

 

ヘクトールの右肘についていた装甲から、まるでジェット機のような爆風が噴き上がる。

衝撃波でこの隙に攻撃することすらままならない、これをまともにくらってしまっては────!

 

「・・・・・・れ、令呪を二画もって命ず・・・・・・ヘクトールさん、勝って下さい!!」

 

向こうはこれで勝負をつけに来たらしい。だがそう簡単に死んでもらっては困るのだ。

 

「Endure, vis, ne meurs pas, s'il te plaît, gagne, âme soeur────!!」

 

大規模魔術5回分の魔力を消費し、俺は叫んだ。

ヘクトールの宝具使用合わせたあまりの強度の負荷に、立つことはできなくなった。

本来は別々に展開しなければいけない術式を並列思考で無理に組んだためか脳にもダメージがでかい。衝撃波で毛細血管がやられたのか鼻から血が噴き出ている。

 

「か、克親さん!!」

 

「・・・・・・だ、い・・・・・・じょうぶだ」

 

俺は顔を上げる。例えどんな結末になろうとも、彼の戦いから目を背けたくなかったからだ。

 

不毀の極槍(ドゥリンダナ)!!」

 

その切っ先が、マンドリカルドの心臓を貫く。

家の壁に磔にされ、がくりとうなだれる彼。ごぽり、と口から痰混じりの血を吐いて・・・・・・

 

「・・・・・・今度こそ、かね」

 

「・・・・・・いや、まだだ」

 

心臓に刺さった槍を掴み、彼は引き抜いた。

もう魔力を回復に回そうだなんて思考はない。切れて振り子のように揺れる、無惨に根本から切れた彼の指たちは、邪魔だとばかりに落とされた。

 

「・・・・・・あのとき俺は、夢を見た」

 

右手で、血まみれの聖剣を握りしめる。

 

「地獄の中で、ただひとつ」

 

デュランダルに、ほのかな光が灯る。

体を維持する魔力すらそれにつぎ込んで、あるものを編み上げる。

 

「誇りを胸に、誰かを守る・・・・・・そんな騎士に、なった夢」

 

「・・・・・・あいつ」

 

ヘクトールは何もせず、ただその様を見ていた。

それが、単なる宝具使用後のオーバーヒートなのか、諦めなのか・・・・・・それとも他の何かなのか。俺には、俺たちには、知る由もない。

 

「この身写し身、英霊の影・・・・・・されど人なり、心あり」

 

勿忘草の光が吹く。

それはまるで俺に、「私を忘れないで」と訴えかけるような・・・・・・そんな気がした。

 

「・・・・・・人の夢はかくあるべしと言うのなら、我は今散ろう」

 

視神経を焼く、閃光。

吹き荒れる暴風の中で、凛としたその声が響いた。

 

絶世の儚剣(レーヴ・デ・デュランダル)




明確には書けてないんですけどついに間際の一撃使っちゃいましたよ・・・
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