Fate/Serment de victoire   作:マルシュバレー

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わしも昔麦茶と手作りめんつゆ間違えて飲んで大惨事やりました

紛らわしいっすよねアレ


168話 十三日目:よくあるやらかし

「・・・・・・大丈夫っすか」

 

「大丈夫と思えるならお前の頭カチ割って中身見てみたいわ」

 

これは少々よろしくない。いや俺と来栖さんは確かにこの有給の間でくっついたけども・・・・・・その期間中ずっといちゃらぶしてたなんて思われちゃなんか嫌だ。表向きは一応療養もかねて、という休みなのでしれっとちちくりあってたなんて言われちゃ・・・・・・なんか平尾家の沽券に関わるというかなんというか。

 

「あ、平尾さんじゃないですか!10日ぶりくらいですね」

 

「・・・・・・おはようございまーす」

 

書類の大山を抱えて颯爽と走り去っていく男性社員。

こんな無様長々と晒してられないな、と俺は起き上がり何事も無かったかのように席へ着いた。

話しかけるなオーラを意図的に噴き出させ必要最低限の話しかさせない、うちは社内恋愛OKだから咎められることはないがとにかく話してたまるもんか。

 

「パイセーン顔怖い顔怖いほら笑って」

 

ぎゅうと真一文字に結ばれていた俺の口。大丸が頬を無理やり手のひらで挟み込み口角を上げさせてくる。

どれだけ口が笑っていようと目と心が笑っていなけりゃ意味がないだろうに・・・・・・

 

「お前いいとこの生まれだろ適当に都合いい噂でも流してくれねえか」

 

「いやいやふっつーの中流家庭に何言ってんすか。つか生まれが良くてもインフルエンサーになれるとは限らねえんすよ」

 

デスクトップのパソコンを起動しながら、諦めるこってすね。と無情なことを言う後輩。こういうところだけかわいくない。

 

「・・・・・・はあ」

 

「あぁ平尾くん!!待ってたんだよ・・・・・・やっと休みも終わりかい」

 

部長が俺の隣まで来てそんなことを言う。俺がいなくてもどうにかなるよう頑張ってたんだろうが、どうしても無理なところはあったのだろう。命に関わるような経験もして挙げ句友達を失ったのだ。そんなんで休みのツケなぞ払えるほど俺は強くないぞ。

 

「いやあ君じゃないとできないことがあってね・・・・・・これでもできるだけ減らしたんだよ」

 

どか、と載せられる沢山の紙、ファイル、USB・・・・・・弊社は俺に死ねと言っているようだ。

 

「・・・・・・わかりました。これ片付け次第帰らせてもらいますよ」

 

「ひゅーパイセンかっけー」

 

どのみちこの量だと定時に帰れるかもわからんが、無駄な依頼をされないためにもそうとだけ言って俺はパソコンを起動した。

またカフェイン大盛り飲料の世話になりそうだ。

 

 

「・・・・・・腹減った」

 

「たった3時間で死人みたいな顔になってるっすよ」

 

そりゃたまりにたまった取引先の管理やらなんやらを全部やってるのだから死んだような顔になってもしょうがない。

というか何で平社員にこんなことを任せるんだ、係長とか課長はなにやってんだよほんとに。

 

「・・・・・・昼飯食ってくる、お前は?」

 

「俺はまだ残ってるんで。来栖さんとよろしくやっといてくださいっすよ。パーイセーン」

 

「・・・・・・お前な」

 

文句のかわりに一発どついてやりたかったが、今のご時世それをやると俺の方が痛い目に遭う。

冷ややかな視線だけなすりつけ、俺は席を立つ。

 

「・・・・・・はあ」

 

反吐がでるほど平和な毎日だ。昨日まで命のやりとりをしていたって言うのに。

食堂のある階層に着く。入って少しあたりを見回し、来栖さんを見つけて向かいの席へ座った。

 

「遅くなってごめんな」

 

「い、いえ私も2分に来たばっかりですので・・・・・・」

 

周囲の視線が刺さる刺さる。俺たち針鼠になっちまうってくらい視線の筵だ。

だがこれも宿命か・・・・・・

 

「・・・・・・やっぱ他のとこにするか?」

 

「いやそんな・・・・・・大丈夫です、ここで」

 

「そっちがいいんならまあ・・・・・・いいんだけど」

 

俺もカウンターで飯を頼まねば。品切れになって大急ぎでコンビニに走るのはめんどくさい。

 

「・・・・・・やっぱ金持ちは違うな」

 

「プレゼント買い放題だよなあ」

 

案の定である。

確かに俺は気に入った奴へはプレゼントを贈りたがる性質ではあるが、そんなぽんぽんと金は使わん。

マンドリカルドのことについては特別だ。別れの時がわかっていたから、ただ彼の笑顔を目に焼き付けていたくて・・・・・・思い出を作っていたかっただけだ。

 

「G定とシーザーサラダ、あとアイスコーヒー」

 

「あーら、久し振りだね平尾の坊ちゃん」

 

「今日は魚の気分なんだよ、皮肉は焼いてほかのとこに出しといてくれよばっちゃん」

 

「そんなつもりはまつげの先ほども無かったんだけどねえ」

 

けらけらとマスク越しでもわかる会心の笑顔。御年70の調理師であるばっちゃんは毎度毎度切れ味の鋭い包丁と皮肉で切りかかってくるから危なっかしいの何の。

 

「ま、ここ10日くらい大変だったんだろうけどあんたなら大丈夫だろうよ、ほれ」

 

そうやって出されたG定食のおかず。心なしかアジフライがいつもより大きい。

怪訝に思っているということを顔面に貼り付け顔を上げると、ばっちゃんはわっるい笑顔で俺にサムズアップをして見せた。

・・・・・・海の訃報を聞いてサービスしてくれたのだろうか。

まあなんでもいいかと、俺は礼を言ってご飯やサラダの受け取りのためトレイと一緒に横へ滑っていった。

 

「お待たせ。先に食べててもよかったのに」

 

「そ、そうするとなんか恥ずかしいじゃないですか・・・・・・待てずにがっつくなんてなんだか」

 

「早弁する男子高校生みたい、って?」

 

箸を持つ手がかすかに震えている。これ以上刺激したら箸が目に刺さりそうなのでやめておくことにする。

 

「・・・・・・じゃ、いただきます」

 

「・・・・・・い、いただきます」

 

周りから好奇の目が寄せられているが気にしない、気にしない・・・・・・

 

「克親さんそれ醤油ですけど後ろ抑えなくていいんですか」

 

「あ」

 

ソースのノリで危うくアジフライを醤油漬けにするところだった。

慌てて俺はソースを取り直し、慎重にフライへかける。

 

「あわや腎臓をぶち殺すところだった」

 

「変なところで危なっかしいですね」

 

「変なところか・・・・・・?」

 

醤油とソースの取り違え、砂糖と塩の取り違えなんてよくある話じゃないか。

少なくとも俺はそれでゲロ甘さ卵焼きを作った前科があるのだが・・・・・・さすがに俺だけというわけでもあるまいに。

 

「あ、あっま・・・・・・!」

 

「・・・・・・砂糖と塩間違えたでしょ」

 

ほら、やっぱり俺だけじゃなかったよ。

 

「人のこと言えない・・・・・・」

 

「お互い様ってこった」

 

自然と笑い声が漏れる。ああ、こんな風に女性と話したの初めてなんじゃないか?

海とは完璧に男子の友達(悪友)みたいな絡みかただったし、中学以前は俺であって俺でないし、これまで他の女性と付き合いはしても金か体ばっかりの関係だったし。

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