Fate/Serment de victoire   作:マルシュバレー

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このお話終わったらまた新しいの考えて書きたいけどどうしようかねえ
ふたつ案があるけども完結までの道が見えない


169話 十三日目:それってどういう

「あのさ、人事でも・・・・・・」

 

俺が全部を言い終わる前に来栖さんは頷いた。

案の定噂は広がっているらしく、朝っぱらから質問責めをくらいまくったらしい。

 

「不都合なことがありゃすぐに言ってくれ、俺にできる範囲でどうにかするから」

 

「・・・・・・はい、ありがとうございます」

 

心なしか彼女の顔が赤い。さては人事女子(仕事柄スキャンダルの情報集めに強いのが多い)になんか言われたのか。

 

「・・・・・・ほんとに大丈夫か?」

 

「大丈夫です、あの・・・・・・克親さんのこと聞かれただけなんで」

 

俺のこと・・・・・・か。ただの興味か、不祥事狙いか、隙あらば奪いにこようという算段か・・・・・・

おおかた善意が前に出た内容ではあるまい。

 

「どういうこと聞かれた?」

 

「・・・・・・す、好きなもの、とか・・・・・・いろいろ」

 

こりゃ絶対シモの話も聞かれただろうな、と表情から察する。

残念なことにまだそういったことは致してないので答えようは全くないのだが。

ご飯に温泉卵を投げ入れ醤油をぶちまける。生卵でやると結構な確率で腹を壊すので俺が卵かけご飯を作るときは毎回温泉卵なのだ。

それをかっこんで、コーヒーで一気に流し込む。

人によっては牛乳×ご飯のようにえづいてしまうだろうが俺は大丈夫なクチだ。

 

「そちらは大丈夫でしたか?」

 

「・・・・・・ああ、まあ、なんとか」

 

まともに話そうとも思えないほどのオーラと気配遮断の魔術を薄くかけていたおかげで仕事の邪魔は殆ど(大丸の世間話などを除いて)されなかった。

俺が元から自分のことを話さないのが幸いしたか、周囲も気を遣ったか・・・・・・そのあたりがどうなのかはわからんが、とにかくそれに助けられたのだ。

 

「ま、こんなんで折れてちゃやってられないからな」

 

学生時代俺と海が付き合ってるだのなんだのはあったが、あれは地位がかなり近い状態だったからお似合いだよね扱いされて双方あまりいびられることはなかったが、来栖さんは実家がそれなりに強力と言えど彼女自身は限りなく一般人。

なにかしらの妬みがあってもおかしくはない。

アジフライの尻尾を除いて空っぽになった机上の盆。あまり長居してもばっちゃんに怒られるだろうし、そろそろ俺は退散するべきだ。来栖さんも殆ど食べ終わっているし時間的にちょうどいいだろう。

 

「ごちそうさま。俺は今日定時に仕事終われるかわかんないから申し訳ないけど・・・・・・」

 

「無理はしないでくださいね。その調子で働いてたらカフェイン中毒で腎臓が死ぬって篠塚さん言ってましたよ」

 

そんなの聞いた覚えがあったかな?とか思いながら俺は盆を持ち上げ返却口まで歩き出す。

 

「そんじゃ、また明日」

 

「明日はお弁当作ってきますね?」

 

「・・・・・・頼むわ」

 

どんな風に言うのが適切なのかわからないから、とりあえずそんなことを言って俺はその場を去った。

次の瞬間来栖さんのテーブルに大量の女性社員が集まりわあわあとなにか言っている。

ひどい高音でちょくちょく聞き取りが難しい箇所もあるが、なんとか聞ける部分を分析したところ『なんで平尾さんとくっつけたの』だの『どんなプレゼントもらったの』だの質問祭り。恐らく人事以外の女性社員が事実を知って来たんだろうがあれじゃあまともに動けもしないだろう。

 

「おまえさんら、食堂はご飯食べながらしゃべる場所ではあれどなんも食わずくっちゃべる談話室じゃあないんだよ。ほら散った散った」

 

見るに見かねたばっちゃんが助け船を出してくれたお陰で、集っていた女性社員は渋々自分の席に帰るか食堂を出て行った。

 

「わかってないねえ」

 

「・・・・・・悪かったなと思ってるよ」

 

へっ、と人を見下したような顔で彼女は俺を笑った。ちょいと苛つく感じもするが、悪いのは俺なので言い返せはしない。

また今度不用心に先走ってしまったことを謝ろうと思いつつ、俺は営業部の階へ戻った。

 

 

「あーもう疲れた」

 

ぐたあ、と机の上に突っ伏した。金属にありがちな冷えが頬をちくちくと刺す。

 

「休み明けにあんな量鬼の早さで消化してってんだから疲れて当然っすよ。ほら」

 

大丸が差し出してくるのは某界隈で水のように飲まれている黒と緑のデザインが印象的なアレ。

いや、来栖さん(というか篠塚)に心配されたのだ、そういったものに頼るのはもうやめにしたい。

あと睡魔を抑え込んで無理やり起きる魔術もしばらくは使用禁止にしておこう。どれだけ高位の魔術師でも体を壊したら普通に死ぬ可能性があるし、見えない体のダメージが凄まじい。本能がやめろと言っているので素直にやめる。

 

「いや、やめとくわ。そろそろやべえぞって医者に言われたからな」

 

正確には医者に治療の腕を認められた監察、だが。

 

「確かにそうっすよね。こないだまでパイセンやばかったっすもん、この世の人間とは思えないくらいにひどい顔して手足軽く痙攣してたっしょ」

 

「記憶にないな」

 

記憶障害とかそういう話ではなく、ここ一週間半の記憶が強すぎて印象に残っていないだけなのだ。

 

「ほんと緑のスライムでもぶちまけてやろうかと思いましたよ」

 

「俺がもし動く死体だったらどうするつもりだったんだお前は」

 

「そん時は世界終焉を茶でも飲みながら見守ってますよ」

 

「人類滅亡の戦犯なのにひでーやつ」

 

「他人に興味なんてないっすから死のうが何だろうが関係ねーっすよ」

 

「じゃあなんで俺に構うんだか」

 

書類の山から次やるべき仕事を引っ張り出してきて、パソコンのスリープ状態を解除する。

さて、18時に帰れればいいんだが・・・・・・

横で棒状の焼き菓子をぼりぼりと食べながら大丸が笑っている。仕事しろよ、と言おうとしたが、俺の声はその先を紡がない。

 

「だってパイセン、普通じゃないっすもん」

 

背筋が、ちょっとだけシャーベット状になった気がした。

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