Fate/Serment de victoire   作:マルシュバレー

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???
171話 ???:守られた約束


あれから長い時間が経った。

海の葬式を済ませて、八月朔日の葬式にまで体が弟のものだからって巻き込まれて。

そのあとになんとか家を直したが、戦争勃発前の状態には戻らずまた新たな外装で家の外観となじませた、という感じだ。

不破は始末書として原稿用紙10枚分を書かされた(約束通り俺も手伝った)あと、舞綱の龍脈を管理する役職につけられたらしい。つまりしばらくの間舞綱に居座ることとなったのだ。

前までは俺が自由に扱ってよい、という話だったのだが今回派手に使いすぎて少々奴らに目をつけられたらしく、これからは規定量以上使うと罰金刑だそうだ。そもそもあれだけ派手に使ったのは聖杯戦争で生死の危機に瀕していたからであり、これからそんなことをする必要なんざ全くないだろう。たぶん。

 

「・・・・・・はる」

 

我が細君の名を呼んだ。

戦争終結後、半年の交際を経て俺たちは結婚した。

式は親戚のみで行われたが、身よりのない俺にはほとんど来ず、来てくれたのは殆どが彼女の親族であった。

それでも盛大に行われた式は、今でも色濃く思い出に残っている。

 

「・・・・・・やっぱ、魔術師の宿命さな」

 

彼女の返事はもうない。

そりゃそうだ、もうあれから120年も経っているのだから。

俺は根源に到達するための実験を重ね、結果その体に異常性を宿してしまった。

無くしたはずだった不毀の絶世剣デュランダルの持つ力が暴走して、擬似的な不老不死になってしまったのだ。

それ故、夙に俺の姿は30歳の見た目から変わっていない。中身だけが老け、その間にいろいろなものと別れてしまった。

細君と、愛娘の梨花。孫の里菜。今じゃ曾孫のうち透と星蘭が我が家に暮らしている。

 

「ひいじいちゃーんあの木に水やってきまーす」

 

「ああ、いっておいで」

 

あのとき埋めた木のかけらは、こもった魔力の作用により奇跡とも言えるような芽吹きを見せた。

今では大きな楡の木になり、家を見下ろしている。

根元に供えた酒は未だに飲んでいないから、かなりの古酒になっていることだろう。

 

「・・・・・・さて、そろそろか」

 

あと一歩で、根源へは到達できる。

そろそろ死にたいと思っていたところだ、俺を殺してくれる彼が来ないのであれば、手にした魔法で無へと還ろう。

十分すぎる時を生きたのだ。もうこれ以上、この世に止まるわけにもいかんだろうさ。

ふと窓の外を見る。

透が水をやるシャワーを持ち、星蘭が蛇口を捻っているようだ。勢いが良すぎて幹で水滴が跳ね返り、透の服がびしょ濡れになっている。

冬ならば風邪を引くだろうからとすぐ家に戻したが今の季節は夏。逆に気化熱などで涼しいくらいだろう。

 

「おまっ、なにしてんだ!」

 

「めんごぜよ」

 

「謝って済むなら警察と裁判所と法律はいらねんだよ!!」

 

楽しそうなおいかけっこが始まった。

こりゃしばらくは戻ってこないだろう。

 

「・・・・・・殺すなら今のうちだぞ」

 

「・・・・・・言われずともわかっている」

 

人の思い出は音から忘れていくと言うが、これは一時も忘れたことのない声だった。

ずっと待っていた。ずっと進み続けた。

お前に殺されるために。

 

「あれから120年か」

 

「・・・・・・何のことだ」

 

ああ、そうだった。

忘れているんだったな。

 

「Син миңа бик ошыйсың」

 

「・・・・・・ぶ、ふふ・・・・・・ははは!!」

 

約束の言葉を告げると、彼は吸っていた息を噴き出し笑った。

 

「アンタ、初対面の男に愛してるとかどんだけトチ狂ってんだよ!しかも自分を殺しにきた相手だってわかってる癖に!!」

 

思わず取り落としてしまった剣を拾い、彼は乱れた呼吸を元に戻すため深呼吸を3回行った。

もう次のことを言っていいだろうと判断した俺は、続きを言う。

 

「・・・・・・昔のお前が、また会えたときに言ってくれって遺言でな。ひさしぶりだ、俺の親友」

 

「・・・・・・昔の、俺?親友?」

 

言葉の組み合わせに納得がいかない、とばかりに彼は首を傾げる。

 

「生者と亡者は交わるべきではない、そうだと言うのに・・・・・・友だと?」

 

「ああ、120年前の聖杯戦争でな・・・・・・俺は友達になったんだよ、マンドリカルドというひとりの英雄と」

 

俺がその名を口に出すと、彼の三白眼がさらに見開かれる。

彼からすれば初めて会う敵対者が自分の真名を知っているのだ。驚いて当然だろう。

 

「・・・・・・その名は」

 

「これで証明になるか?」

 

空間転移術で、寝室に置いていたそれを手元に引き寄せる。

 

「・・・・・・あ」

 

「紛れもなく俺とお前だろ?」

 

あのときとほぼ変わらない姿で、二人はここにいる。

 

「・・・・・・そうか、俺が、そんなことを・・・・・・」

 

胸元に光っていたのは、最後の日の前に俺がプレゼントしたペンダント。

それはきらきらと、とても柔らかく優しい光を放っている。

 

「さ、ここにきた意味はわかってる。あの子たちが戻ってくる前に、スパッと殺しておくれ」

 

「・・・・・・ああ。無へ還るのは許されないこと・・・・・・抑止の守護者として、我は裁きの鉄槌を加えよう」

 

懐かしい煌めきを見せる剣が、天へ掲げられた。

ああ、やっとだ。

不完全に顕現してしまったデュランダルの霧は、本物によってかき消される。

 

「・・・・・・打ち砕かれよ、許しは死の中で与えられる。永遠の安らぎを享受せよ、光の中で静かに眠れ・・・・・・さあ、最期の言葉を告げよ」

 

「長い人生だったが、楽しかった。遺言状は加工不可にして置いてあるしもう問題はない。ひと思いに殺してくれ・・・・・・セラヴィ・アムスール・・・・・・」

 

「・・・・・・今はただ、安らかに」

 

「・・・・・・ありがとう、約束通りにしてくれて」

 

剣が振るわれ、俺の首を骨などなかったと言わんばかりに軽く切断する。

皮も肉も血管も、全てが切り裂かれた。

噴水のように噴き出す血が、遠くに見える。

 

「・・・・・・どういたしまして・・・・・・か・・・・・・」

 

彼が、何かを言おうとして詰まる。

落ちた俺の首を抱え、何をするのだろうか。

斬首してから生きていられる限界は1分ちょい、もうすぐ俺の意識と生命は終わりを迎えるだろう。

 

「・・・・・・まんど、り・・・・・・かるど?」

 

頭部にあるだけの回路で無理やり声帯を震わせる動魔術を発動させ声を出したが・・・・・・反応は鈍い。

いや、俺の感覚が消えていっているだけだろう。

 

「克親」

 

俺の頬へ、その指は確かに触れる。

ああ、ああ。

最期に、俺の名前を呼んでくれた。それだけで、ここまで生きた甲斐があったと・・・・・・俺は目を閉じる。

 

「愛してる」

 

ぽた、とまぶたに一滴だけ落ちた透明な何かが何だったのかを理解する前に、俺の意識は消えていった。




これにてFate/Serment de victoireは終結とあいなります!

最初の登場人物紹介入れて約52万文字とかいう頭おかしい長さになりましたが、ここまで読んでいただき時に感想を下さったり評価をしていただきまして本当にありがとうございました!!
五体投地しすぎて地面に頭めり込んでます額割れてます!!!

最後の解釈とかは各人にお任せしますので都合いい続きを妄想してくださっても構いません。

このシリーズは完結としてこの先更新することもないでしょうけど、また新しい話を考えたらこのサイトにぶん投げると思うんでそのときはまたよろしくお願いします。

3月の終わりから9月の終わりまで・・・・・・長い間どうもありがとうございました!!

ヒマダッタラヒョウカシテッテモイイノヨ(オイ)
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