Fate/Serment de victoire 作:マルシュバレー
明日の更新がもしなかったら察してください、自分はマイフレンドとオリュンポスで暴れ回っています。
今回初の戦闘シーンですかね?(海馬クソザコ)
今までよりさらに拙い出来かも知れませんが許してください。
Interlude表記ありませんがマイフレンド視点です。
嚆矢は既に射られた。
鋼を埋め込んだ木剣を両手で握りしめ、最速で振り下ろす。
ランサーには案の定光の盾で防がれるがそんなことは始まる前からわかっていた。
防御を考えない俺の特攻に向こうもチャンスと見たか右手の武器で俺の脇腹を狙ってくる。
「俺の横っ腹ぶち抜くなんて無理なんだよ!」
対策はたっぷりとってありますよ、だって生前の死因だから。
鍛治の神が造った九偉人の鎧・・・・・・だけだと普通に防具貫通してくる剣を隙間からねじ込まれてしまったことが致命傷になり殺されたので、避ける方策はいくつも考えてある。サーヴァントというのは死因が弱点になってたりするから。
左側から迫ってくるその槍の穂先を蹴り飛ばしてその勢いで空中回転からの着地、間髪入れずに追撃を繰り出す。
「はッ!!」
反撃の暇さえ与えないための連撃。盾に阻まれなかなかランサー自身にダメージが通らない。
淡緑色の光でできた部分の範囲がなかなかに広く、どこからなら攻め込めるかが不明だ。
こうなったら一度あのめんどくさい盾を吹き飛ばすしかあるまい。
そう思って俺は剣のグリップを強め、強撃を相手に叩き込まんと・・・・・・
「・・・・・・げ」
「折れたァ!?」
ばこんといった低い音がしたかと思うと、剣の重さが急になくなってそのまま重心を崩してしまいそうになる。
マスターの仰天声が聞こえたので大丈夫だと取りあえず叫んだ。
さすがにこれで転倒したらフルボッコ間違いなしなので、何もなかったかのようにそのまま左足で踏み込み、残った剣で無理やりランサーに攻撃しにかかる。
マスターはこんなに早く剣が壊れるとは思っていなかったみたいで、代替品の受け渡しにはまあ時間がかかりそうだ。
リーチがとんでもなく短いがここで退くわけにもいかない。
「そんな耐久性の武器を使っていただなんて、私を見くびるのにもほどがあります!」
別に侮ってこれ使ってる訳じゃないんすけど、という反駁を発せる雰囲気ではない。
なぜか手に持った槍っぽい武器ではなく盾で殴りかかりにくるランサーの攻撃を防ぎつつ、背中につけていた盾を取って投擲する。
こちらも盾で殴打しようとしたが手が滑りあらぬ方向に飛んで行かせた愚考と見たか、向こうはこれ好機なりとさらに攻撃を仕掛けてきた。
だが甘い。
「なんだかんだ言ってそっちも俺を賤しめてんじゃねえのか!?」
盾に付随してたなびく布を無理やりひっつかみそのまま遠心力をかけながら振り下ろす。
向こうの槍に阻まれかけるがそこは柔軟な布。槍の持ち手部分に合わせて曲がりランサーの背中に盾本体を直撃させる。
さすがに今のはきいたらしく向こうは一瞬怯んだがすぐ持ち直された・・・・・・なかなか決め手に欠けるこの戦い、武器がなくなったら終わりな俺たちの方がいかんせん不利。ここではブリリアドーロを呼んでも満足な機動は出来ないし道は狭く逃げるのも難しい。
・・・・・・あれ、初っぱなから負けフラグじゃね?
「くそっ、んなわけあっか!」
無理やり首を横に振って考えを振り飛ばす。
戦うときくらいは強気でいようと思ったのにすぐこうなる。冷静な分析もいいが悲観をしてたら勝てるもんも勝てないってんだ。
「ライダー!すまん魔術解くの手間取っちまった!」
マスターが投げ渡してきたのは馬上試合用の刃がないランス。
一応例の誓約を立ててからは槍とかも使っていたがかなり久方ぶりな気がするので大丈夫か不安だが、こうなった以上これでやるしかない。
「ほう、あなたも槍を使うのですね!ならばランサーの端くれとしてさらに全力でお相手しなければ!」
なんか向こうが本気出してきた。
ランサーの端くれといっても結局さっきまでと戦闘スタイルは変わらず、例の盾で俺を殴るか圧殺しようと突進してくるかだ。
「ランサーって言うんだったら槍主体で使えよ、お前シールダーでいいだろそれ」
「失礼な!」
さっきより一層殴りつけの勢いが激しくなる。
こっちもランスで防ぐのはいいが攻勢に入るのが難しい・・・・・・さっきとは立場が逆だ。
ランサーの持つ盾から燐光が少しずつ漏れ出てくるのが嫌でもわかる。このまま耐久を続けていては危険だと本能が察知し叫ぶが戦況を変える手段も瞬間も見つからない。
「・・・・・・
マスターがなにやら詠唱して魔術をかけてくれたらしく、四肢に魔力が染み渡る感覚がした。
腕と足の力が強化されたらしいが、それでもこれで打破できる状況ではあまりない。
・・・・・・ならば、少しでも猶予時間を稼がなければ。
「・・・・・・っくっ!」
後ろに飛びすさる。
相手がこちらに猪突猛進してくる前にマスターを抱え、俺は壁を蹴った。
横幅がまあまあ広く縦幅が小さいこの空間ならば、対面の壁を交互に移ることで効率的な上昇ができる。
約15mほど登ったところで後ろを見るが今は追って来ないようだ。
このままちんたらしてりゃ階段でも何でも使って来るだろうし今のうちに退散といくしかない。
「ライダー逃げんのか!?」
「そりゃそうでしょうよ!あのままだったら向こうは宝具かそれに匹敵するくらいの技ぶっ放してきたんだから、それでビルとか壊れられたら俺ら死ぬし街の人にも迷惑っしょ!」
マスター相手になんたる口振りだ、と言った後で後悔するがもう口から出たものは戻せない。
あとで何十回か謝罪しようと心に決め俺はマスターを抱えたまま跳ぶ。
駅周辺のビルを転々と移りながら、できるだけ人目につかない場所に一度降り立つ。
20mくらいの所から降りてきたので普通なら足の骨を折っているところだが、マスターの魔術のおかげで無事に済んだ。
このまま電車で帰れればいいのだが、あのランサーが車内に乗り込んできて周りを巻き込みながら戦闘を繰り広げるかもしれないと思うと無理がある。
戦争の本には書いてないルール的なので、一般人への被害はできるだけ抑えることというものがある・・・・・・
非常事態にそれを遵守する暇があるのかと言われたらそれまでだが、あまり俺としても目立ちたくない。
だって電車のど真ん中にイベントもない中こんな体を鎧で固めた奴がいたら、常日頃からコスプレしてる変人扱いされるし絶対。
「待ちなさい!」
なんて逡巡していたらさっきの奴が追ってきた。
こんな場所で戦えるわけがないので俺は道路を駆け抜け雑木林の方へと脱兎のごとく逃げすさる。
フェンスに“不審者出没注意!子供は入らないこと!”と書いてあったので人除け効果は高いし周りの目にもつきにくい。
ついでに言えば周りに住宅街やらがないため少々の無茶なら通せるはず。
「戦士同士の戦いで背中を見せて逃げるとは何事ですか!」
「あっこで逃げたのは申し訳ないと思ってる。だがそっちは宝具的な奴の準備をしていただろ、どんな攻撃なのかは知らねえがあんなとこで撃たれたら大惨事間違いなしだっての」
俺は暗に示す、ここなら撃ってもまだ影響は少ないぞと。
その意図を汲んだらしいランサーは少しだけ唇を噛む。
さすがに対要塞やら対星レベルの物を解き放たれたら俺とマスターはまとめて消し炭になるしかないのだが、そんなことはなかろうと信じてランスを構えた。
「ならば、全力で参ります・・・・・・!」
彼女の持つ槍から解き放たれる極光。
目が焼けそうなほどの光度。だが目を瞑るわけにもいかない。
この程度耐えて見せねば、此度の戦争には勝てぬ。
九偉人の鎧を信じ、俺は・・・・・・マスターの真ん前に立った。
灼けるものならば灼いてみろ、俺の皮膚に火傷の跡を一つでもつけてみろ。
俺はただ、ランサーを睥睨した。