Fate/Serment de victoire 作:マルシュバレー
なにぶんStaynightセイバールートしかク(文章はここで途切れている)
1話 一日目:サーヴァント召喚
────────独りだった。
小学校でも、中学校でも、高校でも、大学でも。
だが魔術師とはそういうものだと教えられてきたせいか、友達が欲しいと思うことはあまりなくて。
自分だけ周りと隔絶されている世界で生きてきたかのようだ。
あったのはただの人数合わせ的な関係。
校外学習の班を作るのにここ足りないから入って、組体操のここに人が必要だから入って。
俺に求められたのは精神でなく肉体のみ。異性との触れ合いも、俺の内情なぞつゆ知らずな人が求めた一夜限りの云々なんてことくらいしかない。
母の顔は忘れた。大脳の引き出しから出してこれるのは優秀な魔術師だった親父のものばっかり。
自分以上に優秀な者を作るためと俺に課したものはとても大きかった。そして、この背中に移したものも大きかった。
根源の渦への到達。
これは魔術師ならばほぼ誰もが持つものであろう。
その中でも俺の一族が悲願として望むのは第一魔法の習得。
つまり、「無の否定」と呼ばれるものである。
「・・・・・・はあ」
親父は俺にでかい屋敷とかそういうやつだけ残してきれいさっぱりと逝っちまった。
人としてのうんたらとかは全く教えんで、いかに魔術師として強くなるかばっか教えてくる典型的な人道的要素欠落系魔術師だったがまあ実力は折り紙付きだってのは絶対に言える。
今の時計塔ロードと殴り合いして引き分けに持ち込んでるんだから・・・・・・まあそれのせいで生まれてしまった縁が俺を現在進行形で苦しめてるんですけども。
「聖杯戦争なんて俺はお断りですよ、あんなモンに頼ったところでロクなことにならんだろうしそもそも手に入れられるかもわからないもんなんざ・・・・・・」
「まあそういうなよ平尾くん。こっちにも事情があってな・・・・・・頼まれちゃあくれんかねえ。もう召喚期日はすぐなんだからいい加減折れてくれって」
向こうでドラムの激しい連撃が繰り広げられている音。
こないだまでiPodとかだったのに今度は高級志向のスピーカーか、魔術師の癖に科学物品大好きすぎんだろうが。
人のことは言えんけど。
「つか、ニルヴァーナたあまーた定番なもん聞いてますね。あんたのことだから最新のロックでも聞くと思ってたけど」
「たまにゃあこういうのも悪かないだろうよ。新しいもんとか世界に革命起こすようなもんが好きとは言ったがそうじゃないやつが別に嫌いって訳じゃないんだよオレは。ま、例の剣手に入れたって聞いたしとにかくよろしく」
一方的に押し切られ通話が途切れてしまった。
つーつーと電話の鳴き声が虚空に響く。あざ笑うかのように近所のゴミ捨て場にたむろするカラスが声を上げた。
「そのために無理やり抜いてきたわけじゃねえんだよなああの剣は」
携帯を尻ポケットにねじ込みながら地下の工房へと繋がる扉を開く。
精密に研磨され一切の狂いがない石の階段を一段ずつ降り、部屋の灯りをつける。
ここだけいまだに電気が通っていないのは如何なものかと思うが、こんなところに業者なんて入れたら工事終わって即抹殺なんていう沙汰になりかねないからこのままになっている。
「・・・・・・デュランダル」
シャルルマーニュ伝説に出てくる聖剣。
ローランの歌ではシャルル王に天使が授けたものとして、狂えるオルランドではトロイア戦争における英雄ヘクトールが使っていた剣として名を馳せたもの(そちらではドゥリンダナと呼ばれていたが)・・・・・・のレプリカである。
昔盗まれたとかなんとかで差し替えられているブツだが長いことデュランダルとしてそこにあったという事実があればまあいいというわけだ。そのためだけに前科案件をやらかしたのはさすがにやばかったと後悔したが。
「不毀の絶世剣から研究のアプローチと行きたかったんだがねえ」
錆にまみれたその剣の表面を指先で撫でる。
ざらざら、置いていた机の上に粉状のものが落ちていく。多分電柱一本斬ったらボッキリ折れそうなくらい劣化している・・・・・・レプリカだから仕方ない。
聖杯戦争におけるサーヴァント召喚システムは触媒によって呼び出す英霊をかなり絞ることができるらしい。
触媒とはまあ英雄が生前使っていた武具とか、直筆の書物とか。例をあげるとすると、本多忠勝を呼びたいならば蜻蛉切を召喚術式に用いるとかそんな感じだろう。
だがどんなに良い触媒を用いても英霊の方が召喚を拒んだら意味がない。お望みのものを貢ぐのはとっても大事なんだそうで。
ついでに関連物品であるなら市販品でも極小な効能はあるらしい。知らんけど。
「偽物とはいえデュランダルだしな・・・・・・触媒に用いればシャルル王かローランくらいは呼べる、って算段かね。なんならヘクトールでも呼べと」
そう簡単にいくかぼけなんて悪態をついて、自らの血で描いた魔法陣の広がる床に座り込む。
日頃からため込んでいる魔力リソースは十分にあるし、今からでも召喚は可能っちゃあ可能だ。
だが俺の魔力が一番励起してくれるのは午前3時。それが訪れるまでいつの間にかもう30分。
晩飯は食ってしまったし、風呂も入った。もう日常的なものでやることはない。
戦争の開始は明日から。7騎のサーヴァント・・・・・・召喚された英霊が揃ったところで口火が切られる。
そっからはもう人智を超えた武士たちの戦い。肉弾戦やら魔術戦、ありとあらゆる形態をとり戦闘が繰り広げられ、最後の1騎になるまで終わらないとされる。
正直言ってそんな厄介ごとやりたくなかったし他の奴と戦うのも嫌、聖杯とかいらない。なんて言ったらサーヴァントに八つ裂きにされるから今のうちに言わないよう暗示をかけておこう。サーヴァントはそれなりに大きな聖杯にかける願いをもって現界するんだから。
「はーやだやだめんどくせえ。第一後継者も作ってねえのに死にかねん事案に参加させやがって・・・・・・」
買った水銀試薬瓶の封を開け、専用の筆で床に陣を描く。
買うのに身分証明、管理すると言ったせいでとらされた毒劇資格・・・・・・生贄の血とか溶かした宝石なんて使えないし使いたくないからって水銀を用いるためどんだけ苦労したことか。
「俺は化学とか好きじゃねえってのに」
恨み節をぶちぶち吐きながら大きく弧を描いた線を繋いで円にする。
消去の中に退去、退去の陣を4つ刻んで召喚の陣で囲む。
大きな水銀試薬瓶丸ごと一本使い切る術式を組み、触媒である朽ちた聖剣を所定の場所に置いた。
電波が遮断される空間にあるせいで電波時計が狂うなどということもなし、時間はきっちり午前2時55分。
そろそろ、開く時がきた。
額にある空想のボタンを脳にまでめり込むように強く押し込む。
最初の「開き」がイヤイヤ期による壁頭突きだったせいで未だに回路を開けるたび頭が痛い。
幼児の頃の自分に叱りつけたいがタイムスリップなんちゅう芸当はできるわけもなく。そもそも時間旅行は第5魔法だしできる人間なんていないに等しい。
「・・・・・・
メイン30本の回路をゆっくりと起こしていく。
神経と入れ替わった”それ”が魔力を生成し、反発による疼痛が体の芯を焼いていった。
時は来た。只それだけ。
肉体全部に魔力を行き渡らせる。満ち足りながらも物足りない、とても不可思議な感覚。
脳裏に浮かぶ、光輝の剣。壊れず、折れず、曲がらず・・・・・・神話に等しい世界にあった剣。
「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。祖には我が大師────────。降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」
体に熱がこもる、だがもう一度詠唱を始めてしまえば止められはしない。
「
脳裏に浮かぶ光景。
焔が、服だけでなく我が骨肉すらも焼けただれさせる。
熱い、ああ熱い。だが止められない。
「汝の身は我が下に、我が命運には汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意この理に従うならば応えよ。誓いを此処に、我が命運、汝の総てに預けよう。我は常世総ての善と成る者。我は常世総ての悪を敷く者。汝三天の言霊を纏う七天・・・・・・抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ───────────────!!」
怪物に腕を丸ごと食われたかのような虚無が襲う。瞼を閉じていようと貫通する極光、体全てを吹き飛ばすような衝撃。
なんとか倒れることなく、最後まで陣に魔力を注ぎ込む。
多大な魔力を喰らい、聖杯によってエーテルの体を作り出された英霊。
さあ、誰が来たか。シャルルマーニュか、ローランか。
めんどくさいから嫌と言っていた割にはわくわくしながら、俺は閉じていた目を開いた。
「サーヴァント、ライダー。召喚に応じ参上したっす・・・・・・じゃねえ、させてもらった。じゃあ、まず問おう」
三白眼の中に輝く漆黒の光彩が俺を見据える。得物を俺の顎に突きつけ、口角をほのかに歪めた。
品定めのつもりか、お気に召さなければ殺されるのだろうか。
「────アンタが、俺のマスターか?」
「・・・・・・ああ」
「そうか。ここに契約は成された。我が真名はマンドリカルド・・・・・・今からアンタのサーヴァントとして、剣として、いかなる命にも従いますぜ、マスター」
静かに男は目を閉じ頷く。
俺は、仕えるに値する人間だったのだろうか。ああ、なんか疲れて頭が回らない。今すぐにでも寝たいくらいだ。
「そうか、それはよかった・・・・・・んで、誰?」
魔力を大幅に持って行かれ判断力が鈍っていたせいでもんのすごく失礼なことを口走ってしまったような気がする。
まあまず状況整理をしよう。出てきた彼は俺のサーヴァントで間違いないだろうが風貌はどうみてもヤンキー然とした男子高校生。黒髪に白のメッシュが入ったなかなかファンキーな髪型。
んで宝具らしいものが、すごいとげとげしてて釘バットみたいになってる木剣。
扱いを間違えればリンチされそうな気がする・・・・・・やらかしたかこれは。
「ですよね、俺みたいな三流どころか五流くらいの英霊なんて知らないっすよね。イキって申し訳ありませんでした座に帰ります、令呪とかいうやつで契約切っといてください。アンタがこの戦争で勝てるよう座の端っこで見守ってるぜ・・・・・・」
「待てぇええええええええ!!」
なんらかを悟ったような表情をして鳩尾に木剣をぐりぐりするマンドリカルドとやらを疲労困憊の体で止める。
「介錯はいりやせん帰らせてくださいお願いします!!」
「召喚後1分でさようならするサーヴァントがどっこにいるんだよ!」
「ここにいるから俺に早く二度目の死を」
「させるわけないだろうが!・・・・・・はあ、令呪をもって命」
自害するなの命令で一画使うのはさすがにもったいない気がしたがここをどうにかしなければ論ずるに値しない案件になるわけで。
仕方なく左手の甲に浮かんだブツを消費・・・・・・
「わかった、やめるから令呪使わないでくれ!」
やっと彼が得物を地面に置いたので、俺は安心してその場にへたり込んだ。
膝がどんな王だろうとしないような爆笑をしている。ここまできついのは研修旅行で槍ヶ岳登ったとき以来な気がする。
「・・・・・・疲れた」
「・・・・・・俺もっす、マスター」
なんかもう主従関係というものが一瞬で瓦解したような気がする。
ぼっちの俺には、これがまるで友達のように思えてきて・・・・・・ってこんなのは違うだろう、断じて違うだろう。
兎に角、召喚は成功したのだ。いろいろ確認をして、明日にゃ神父のとこに言うだけ言おう。
・・・・・・あの「胡散臭さを臭気9段階快不快度表示で表すならー4」みたいなやつに会うのは嫌だけどしゃーないか。