Fate/Serment de victoire   作:マルシュバレー

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※バチクソ中の人ネタをぶっこんでいます。ギャグじゃないです。


27話 三日目:何もかも虚しく

「ふん、まあいいですわ。平尾さん、今日はそんなどうでもいい問答をしにわざわざやってきたわけやないの」

 

ギットギトの関西弁を続けながらナディアはこちらへ歩み寄ってくる。

そんな簡単に距離を詰められても困るので、俺はマンドリカルドの手を引き茂みの方へと退いた。

彼女たち以外に見られないと判断したところで念話にて武装命令を下す・・・・・・一瞬だけ霊体化してキャストオフ、先日と同じ装備をつけて再び実体化させる。

 

『向こうが怪しい動きを見せたらすぐにかかれ』

 

『了解っす』

 

体積を弄って小さくしていた方天戟(呂布などが使っていたとされる槍、西洋で言うとハルバードに相当する)を元のサイズに戻し、マンドリカルドに手渡す。

・・・・・・やるならば一撃、人目に付かないように一発で仕留め武器を仕舞わねばならない。

難易度は高いが、昼に戦うというのはそういうことだ。

 

「・・・・・・ふふ。ランサーとお見受けしましたが無駄ですわ。射程圏には届かせまへん・・・・・・Поехали(やっちゃえ)!バーサーカー!」

 

槍を持たせたのが幸を奏したのか、向こうはマンドリカルドをランサーと誤認しているようだ。

彼自身一応はランサークラスの適性もあるそうだし、どうせならこのままにしておいた方がいい。

 

хорошо(御意です) мой хозяин(我が主)。すぐにでも手に掛けましょう」

 

言葉からしてバーサーカーはロシア圏の人間、とは言っても候補が多すぎる。バーサーカーなぞどんな英霊だろうと召喚のための詠唱時に特定の文を挿入するだけでいいのだ・・・・・・そう簡単に当てられる訳がない。

 

「こっちも行くぞ!突撃!!」

 

Ураааааа(行くぜええええ)!!」

 

「なんでお前もロシア語なんだよ!?」

 

向こうがそうだからって何故マンドリカルドも乗るんだと、俺は場にそぐわぬつっこみを繰り出してしまった。

 

・・・・・・タタール語でも万歳が『Ураааааааа』と言うことを知るのは、しばらくあとになってからのお話。

 

 

「可愛いやんか・・・・・・猪突猛進してくる子ブタちゃんは嫌いやないわ!やりなさいバーサーカー、あいつの霊基を歪ませなさい!」

 

一瞬にしてバーサーカーへと肉迫するマンドリカルド。戟を振るえば一瞬で首が飛ぶ距離へ入ったというのに向こうは一切の狼狽もない。

・・・・・・怪しい、やはり裏に何かあるのでは?

 

「・・・・・・んふふふふ!此方が策をほのめかしていたにも関わらずアホのように飛びかかるだなんて、あなたのところの家畜はどうなってんのかしら!」

 

「なッ・・・・・・あぁ!?」

 

ひと薙ぎで敵の霊核もろとも砕くはずであったはずの戟が、止まっている。

いくら力を込めても動かないらしく、マンドリカルドは一度それを元の位置に戻した。

 

「っクソ、どうなって・・・・・・やがる!」

 

マンドリカルドは諦めず何度も叩きつけようとするが悉くそれは彼らの体の前で止まってしまうのだ。

強固な防御魔術で弾いているのではない、まるでこちらの無意識に侵入して当てることを反射的に出来なくさせるかのごとき・・・・・・まさか、まさか奴らは!

 

「戻れセラヴィ!そいつらは・・・・・・」

 

「時すでに、遅し・・・・・・もう子ブタちゃんにはマスターの声、聞こえていまへんよ?」

 

がくりと、マンドリカルドの膝が折れる。手に持っていた戟も力なく落ち、傍らに乾いた音を立て眠る。

ナディアが地に着いた手を容赦なくピンヒールで踏みつけてそのまま踵で蹴るが、彼は痛みに叫ぶこともなくただ倒れ込んだまま転がることしかしない。

それほど過度な運動でもなかったはずなのに呼吸が荒れている。

俺がどれだけ叫んでも反応はないし、目も開いてはいるが虚ろ・・・・・・あからさまにおかしい。

 

「この子は未来に進めない・・・・・・右も、左も、上も、下も!関係ないのですわよ!もう・・・・・・無重力状態にただよう哀れな負け犬なのですわ。それにしても・・・・・・()()()()()()()()()()()()サーヴァントなんて、とんでもない厄ネタを抱えてるのねぇ。あなた」

 

「・・・・・・どういうことだ」

 

「そのままの意味に決まってるやないの。やからね、もっと・・・・・・かわいくデコってぐちゃぐちゃにしてあげたわ?あなたはせいぜい、自分のペットにむざむざと殺されなさい!うっふふふふふふふふ!」

 

反応のないマンドリカルドの腹を蹴り飛ばして、ナディアはバーサーカーを連れて何処かへと向かっていく。

追いかけたかったが今の状況では絶対に返り討ち・・・・・・もはや、見逃されたという方が正しいだろう。

俺は追跡を諦め、ひとまずマンドリカルドの元へと駆け寄った。

 

「おい、セラヴィ。大丈夫か」

 

声をかけてもやはり反応はない。目の前で手を振っても、鼻に指を突っ込んでもだめ。

ベンチに座らせて一部の防具を外し、膝の下を叩いて見たところびくりと足が跳ね上がった。

・・・・・・どうやら、脳そのものはちゃんと動いているらしい。そうとなると、マンドリカルドは五感や平衡感覚などを全部ひっくるめて無くされたということか。

外界を知る手段全てを奪われてしまった恐怖を考えるだけでさぶいぼや冷や汗が酷く出る・・・・・・できるだけ早く元に戻さねばなるまい。

このままここにいても他の奴らに襲われかねないので、俺は動けないマンドリカルドを背負ってあの坂の上にある家へと帰る。

膂力があまりないので鎧と病院に持ってきていた荷物も合わせて70キロは越えるであろう彼を運ぶのは大変だったが、死ぬよかましだというわけだ。

 

 

ひいひい言いながら家へとたどり着いた。

結界の確認もちゃんと行った上でマンドリカルドを運び込み、寝室のベッドに転がしてやる。

 

「まだ、俺の声は聞こえないか」

 

乱れた呼吸はましになったが、未だにまともな感覚は戻っていないらしく声をかけても反応はない。

こればかりは俺も長期的な治療をしなければいけないと覚悟、彼には辛い思いをさせてしまうかもしれないが仕方がない。

俺の無力さがまざまざと見せつけられるようで、胸が痛みに震える。

一族が満場一致で後継者と認めてくれるような魔術師であれば、彼をこんな目にはあわせなかったのでは?

錯綜する思考、こんなことしている場合じゃないのに、心の何処かにいる自分自身が姿を隠したまま俺を責める。

 

「・・・・・・違う、違うっ!」

 

”それ”を振り切るために壁へ頭を打ちつける。あたりどころが悪かったのか、額からなにか生温かいものが垂れてきて・・・・・・

 

「・・・・・・ひ、あ、ああああああ!」

 

血だ。

嫌だ、赤い色が、壁に、床に、おれのからだに、ひろがっていく。

耳鳴りがする。高い音が脳を貫くように響き、朝の時と同じ痛みが走る。

ざあざあ雑音と共に流れる風景、人だったものを分解しながら嗤う誰か。怯える残党の視線、目障り、全部殺した。否違う、俺はあんなことやってなんかいない!

滅茶苦茶になる頭。思考は混沌、感覚は歪曲。このままいれば俺は歪んでねじ切れてしまう!

少しでもいいから溢れる痛みを和らげるべく”知らない記憶”を無理やり編んだ魔術で打ち捨てて、俺は立ち上がる。

とりあえず八月朔日に処方してもらったあの薬を飲まなければならない。俺が少々無理してでもマンドリカルドのサポートをしなければ、この戦争引きこもっていても勝てはしない。

 

「っく・・・・・・まさか、あんな手で来るとは」

 

これも、あのナディアとバーサーカーの仕業なのだろう。マンドリカルドのみにかけた術かなにかだと思わせておいて、サーヴァントとマスターの間に通るパスを悪用して此方にまで侵食してくる業・・・・・・去り際に彼女が言っていた通り、精神を崩壊させ内ゲバを誘発し自滅させて自分たちは無傷で生還という算段だろう。

狡猾だがとてつもなく合理的な戦法だ。

 

「となると、早く俺は回復しなきゃ・・・・・・なあ」

 

鞄の中から薬を取り出し、ふらつきながらもキッチンのほうへと向かう。

水を汲んで言われたとおり2錠を飲んで流し込んだ・・・・・・頓服薬と言えど、すぐさま効果は出ないらしい。

失神してしまいそうな痛みの中、俺は食卓の椅子に座ってうなだれる。

 

「嫌だなあ・・・・・・どうして、どうして俺もマンドリカルドもこんな目にあわにゃならねえんだよ」

 

苦しむために彼は来てくれた訳じゃない、死ぬために俺はこの戦いに参加した訳じゃない。

与えられるのは苦難ばっかりで、希望らしい希望なんてろくに見えてこないまんま。

まだ今日は三日目でしかないのだから、この先もっと苦しいことや悲しいことがあると思うと戦うことが嫌になる。

・・・・・・でも、あのクソ神父に泣きついて保護してもらうなんてのは、ブラフマーが生まれて死ぬまでの間(311兆400億年)は毛頭ご免だから何とかして生き残りたい。

精神的に乱されている時もその思いは絶対に変わらん、絶対にだ。




中の人ネタをいきなりテニミュから持ってきてしまいました。だって作者が全国立海好きなんだもん(言い訳)

ナディアちゃんが某ドラゴンステーキの人みたいになってますがそこらへんはお許しくだされ・・・・・・
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