Fate/Serment de victoire 作:マルシュバレー
輝かせたいけれどいつ本当に煌めかせるかが!決まらぬ!!
ようやく痛みが収まったところで、マンドリカルドと共有する意識領域をある程度切り離しこれ以上の侵食を防ぐ。
俺の方に流れてくるはずの力が彼の中で対流するので先ほどより辛い思いをさせるかもしれない、だからすぐに治す。
寝室に戻り未だに眠るマンドリカルドの額に手を当てる・・・・・・少しずつ触覚が戻ってきたのか、彼は呻くような声を上げて体を小さく動かした。
「・・・・・・少しずつ感覚が戻ってきてる、のか・・・・・・?」
試しに彼の名を呼んでみたところ少しだけ反応した素振りを見せてきた。
おそらく何かが聞こえるということはわかっているが、その言葉の意味を取れるまで明瞭には聞こえていないレベルだろうか。
何しろ未知の出来事過ぎて手がかりもへったくれもありゃしないのだ、手探りでどうにかするしかないというのだからしちめんどくさい。
不平不満言ってる暇はねえとわかりつつも精神的に参っているせいかテンションが上がらん。ここが日本じゃなかったらアンフェタミンでも作って吸うんだがそういうわけにも行かないのでカフェインで代用するしかあるまい。
台所に移動して、インスタントのコーヒーを淹れる。それを寝室に持って帰りベッドサイドへ引きずってきた椅子に座って口に含み嚥下した。カフェインが興奮伝達物質に関する機構のブレーキを不能にしてドーパミンを暴れさせてくれる・・・・・・
これで嫌でも気分が上がってくるっちゅう絡繰りだ。
「っしゃおらあ!」
飲み干したカップをサイドテーブルに叩きつけ俺は立ち上がる。
どかどかと研究室まで走って、持ってこれるだけの道具を引っ張り出してきてすぐさまベッドに逆戻り。
強化魔術のため、一緒に研究している解析学のセットを持ってきた・・・・・・何かしらはこれでわかるはず。コラそこ、お前の研究してる魔術基礎的なのばっかだなとか言わない。
「・・・・・・さて、調査だ調査」
敵サーヴァントの感覚を奪い、マスターにもパスを辿って攻撃を行う精神干渉型の術。
ここまで強力なものとなるとやはり、宝具に近しい何かであろう。
解析魔術を機械と融合させることにより生み出した逸品『Médecine légale』により、マンドリカルドのエーテルでできた体全域へと魔力を薄く広げ魔術を発動、結果を言語化し液晶へと映し出す。
出た内容は『外界との隔絶』『精神汚染』『霊基の歪み』。どれも随分と物騒な話だ・・・・・・
霊基の歪みについて詳細を調べさせたところ、クラスチェンジを起こすまでの異常には至っていないという。
安心は全くできないが、いきなりバーサーカーになるとかの大事故はないらしいというわけでほんのちょっぴりの安堵である。
「はぁ・・・・・・それにしても真名解放してないのにこの威力、恐ろしすぎる」
ナディアの従えていたバーサーカーはマスターとの会話が出来ていたため狂化ランクは低いと見ていいだろう。
もしくは、理性ある狂気を持っているという可能性もあるが。
体格もかなり小柄めだったし格闘には強くなさそう・・・・・・やはり向こうの戦法は搦め手、とにかくこちらの自爆狙いで行動してくるに違いない。
キャスターがいないと一安心していたのにこれかと俺は溜め息しかつけないまま。精神感応系はいくら九偉人の鎧をつけていても防げはしない。
「ま、す・・・・・・た」
突然マンドリカルドが声を発したので俺は飛び上がってそれに耳を傾ける。
何か解析ではわからない情報があるかもしれないから、一言一句逃すまいとキスしかねない勢いで近づいた。
「どうした、マンドリカルド」
「・・・・・・も、だめ・・・・・・たす、け・・・・・・」
苦しそうに俺を見て手を伸ばしてくるマンドリカルド。
俺は慌てて手を握ってやったが、それが返す力は子供のようにごくごく微弱。
彼の目尻から伝った透明な筋を見て、少しだけ・・・・・・胸が締め付けられるように痛くなった。
あれからまた、彼は眠ってしまった。
声はある程度まで聞こえているのか耳元で叫ぶとうるさそうに寝返りを打つようになり、足の裏をくすぐるとびくりと足を引っ込めるので感覚自体は大丈夫そうだ。
先ほど発したあの言葉、助けを求めるあの声を思い出して、どうすればいいのか悩みながら椅子の上で縮こまる。
自分にできることはなんだ。彼を助けられる方法はなんだ。
無理矢理思考を4つに割って考えるもまともな策は出てこない。
「・・・・・・だぁああクッソ!!」
埒があかん、一回外の空気でも吸いに行かねば。
玄関から家の外に出て、何にも思いつかない自分に対する苛々の感情を庭の雑草にぶつける。
なんとか封じ込めたとはいえ、さっきの精神攻撃がまだ効いているのか激情が収まらない。ぶちぶちと草を根元から抜いては投げ捨て、叫ぶ。端から見りゃ狂人そのものだ。
「す、すいませーん平尾さーん?」
「・・・・・・篠塚くん」
とんでもないものを見せつけてしまって申し訳ないと取りあえず謝り、俺は土を払いながら門扉の方へと歩いていく。
彼は大きな紙袋を引っさげて立っていた・・・・・・ほのかに鼻を刺激する香ばしい香りを感じる。
「どうしたんだ、わざわざこんな山の上まで」
「いやあ、マスターに言われて平尾さん家までこれ届けに来たんですよ。材料の発注間違えて冷蔵庫がそれに占拠されるっていう地獄を回避するためにマスターが家を知ってる常連さんとこへ、おすそ分けといいますか押し付けといいますか」
中身を聞くとローストチキンとオムレツだそうで・・・・・・鶏と卵の親子まとめて誤発注とかどんだけおめでたいミスしてんだか。
まあ今日は飯を作る気力が足りなかったのでちょうどいい、ありがたく頂いておこう。
「そういえばセラヴィさんどうです?ここの生活は楽しんでますか?」
「あーまあとりあえずな。今日はちょいと事情があって寝込んじまったけど」
事実を洗いざらい吐くわけにもいかなんだ、というわけで雑に今の状況を説明する。
また元気になったら顔見せるよとでも言ってサヨウナラと行きたかったが現実はそう甘くないらしい。
篠塚の視線がいきなりぐっと強くなり、此方を見据えてくる。
どうした聞けば、セラヴィさんを診せてくださいなんて言い出すし。
「いや大丈夫だって、ただの風邪だから」
「だめです、ちゃんと病院に行ったんですか」
「・・・・・・行ってないけどさ」
サーヴァントなのだからそうおいそれとかかれる訳ないだろう。保険もないんだし診察してもらうにはいろいろ不都合がありすぎるのだ。
「なら診せてくださいよ。いいでしょ、旦那」
「・・・・・・仕方ないな」
これ以上引き下がっても無駄だと気付いたので俺は渋々篠塚を家に入れる。
なにかまずいことをされるのも嫌なので監視はしなければ・・・・・・
「セラヴィさん、体調のほう大丈夫ですか?」
やはり返ってくるのは寝言未満のような意味のない音ばかり。こりゃぐっすりと眠っているようだ。
「熱はないし、不感蒸泄もそんなにない。体の赤みもあまり認められないし・・・・・・ほんとに風邪ですか?これ」
やはり診せない方が良かったかもしれない。完全に嘘であると看破されている。
このまま追い返しても”友達を睡眠薬などで眠らせなにかしらをしようとしていた”と思われこれまた厄介なことになる。
さて、どうしたものか・・・・・・
前にも書いたと思いましたが克親さん、役に立つなら科学だろうがなんだろうが使うタイプです。
それのせいで魔術使い呼ばわりされることもしばしばという・・・・・・