Fate/Serment de victoire   作:マルシュバレー

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希望の光はどこ行ったんでしょうね・・・・・・これからどうしたもんか・・・・・・


30話 三日目:手のひらを返すような人格に生まれ変わったなら

「風呂、入るか・・・・・・」

 

食後から結構時間もたったことだし、入浴といこう。血行がよくなって何かいいアイデアが浮かぶかもしれない。

クローゼットから着替えを取り出して、俺は浴室へと向かう。俺の家にある湯沸かしシステムは3分で半身浴位は出来るようになるので、体を洗っているうちに浴槽は満タンになる。

 

「今日は42度でっと」

 

いつも通りボタンを一個押すだけで機械的な女性の声と共に湯が溢れてくる。

その間に俺は髪を濡らして洗い、その流れで体も洗う。

 

「はーさっぱりさっぱり」

 

汗をしっかり流して、タイミング良く沸いた浴槽に足をつける。心臓に負荷がかからないようゆっくりと体を沈め、そのまま首もとまで湯の中に入った。

足先が冷えていたのか、随分とじんじん熱く感じてしまう・・・・・・最近冷え症の気が強くなってきたか、生姜かなにかをとらなきゃ。

 

「ふへぇ・・・・・・」

 

情けない声を漏らして水面の下へと口を沈め、ぶくぶく息を吐き出してみる。

吐息の泡が浮かんでははじけ、俺の顔を飛沫で濡らしていく・・・・・・幼稚園の頃からやってしまう俺の悪い癖だ。

静かに目を閉じてそのままぶくぶくを繰り返す。悩ましいことばかり脳裏に浮かんで、そして薄れていく。

ああ、なんか眠くなってきちまった・・・・・・風呂での眠気は失神の予兆。

のぼせてそのまま死なないように、俺は一度水を顔に叩きつけ強引に覚醒する。

 

「・・・・・・風呂入ってもまともな解決策は出ない、かぁ・・・・・・」

 

つくづく自分の無能さには反吐が出る。

少しだけでいいから、神は俺に天啓を与えてくれないだろうか。ため息まみれになりつつ、俺は湯に浸る。

 

 

風呂から上がって、体を拭き髪も乾かしたあと。

そういえばマンドリカルドは今日の戦いでかなり土埃を被っていた、と思い出して・・・・・・俺は湯を少量入れた桶と、真っ白なフェイスタオルを2枚ほど持ち寝室に戻った。

こんなタイミングで目を覚まされたら大変だなあとか思いつつ、タオルを湯で濡らして絞った。

びっくりさせぬように、マンドリカルドの服をゆっくりと脱がしていく。

体を先ほど湿らせたタオルで優しく拭いてやる。目には見えにくかったが、やはり所々砂などがついていたらしくタオルがほんのり黒くなった。

 

「・・・・・・あ」

 

何気なしに脇腹を見たが、そこには両側共に大きな傷痕のようなものが残っていて。

サーヴァントになってからも消えない記憶の顕れというものなのか、それとも傲慢かつ白痴であった自分への戒めか。

彼にとっての致命傷であったあの傷は今もなお鎮座している。

そこにタオルを這わせると、彼の体は小さく痙攣するように動いた。その場所へ触れてはならないと、そう言いたいかのように。

 

傷つけたくないと、思ってしまった。

彼を守りたいと、思ってしまった。

強大な敵と戦ってしまえば、もしかしたらどうしようもない大怪我を負うかもしれない。

四肢が消し飛ぶ、はらわたが零れる、血が噴き出る。

一度想像してしまえばなかなかそのイメージは離れない。痛みに喘ぐ彼の姿を空想して、俺は勝手に苦しくなった。

そんなことを、俺は強要しようとしている。今まで運良く大きな傷を負うことなく来れたが、あの夜謎の忠告をした男やセイバーのような奴を思い出すと・・・・・・やはり、無傷での生還は出来ないと思ってしまう。

 

「・・・・・・もう、これでいっか」

 

これ以上考えていたらまた、俺も瘴気に呑まれてしまいそうだ。

彼の体を拭き終わったところで服を替えさせ、俺はまた桶とタオルを返すために風呂場へと戻った。

胸騒ぎがするのは何故だろうか。外は普通に晴れていて月が見えるし、どこかで火事が起こったとかそんな感じもない。

でも何か、大きな災いがここを襲うような気がして・・・・・・

俺はその考えを否定するために首を振った。もうこれ以上嫌なことなんて起こってほしくない。

 

 

「・・・・・・ん、あぁ・・・・・・」

 

時刻は午後10時。本を片手に俺はまた虱潰しでマンドリカルドの治療法を探っていた頃。

唐突に彼が目を覚ましたのだ。それはもうなんの予兆もなく。

 

「大丈夫かマンドリカルド、頭とか痛くない?」

 

「あぁ?何俺にタメ口きいてんだよ、殺すぞ」

 

思考回路が凍結した。

あの陰気ながらもそれなりに従順でかわいらしかった彼の面影は消え失せ、ここにいるのは粗暴な口振りで不満を露わにする男。

・・・・・・何が起こったというのだ。

 

「いや殺すだなんて物騒なこと言わないでくれるか、これでも友達だろ」

 

「友達とか何勘違いしてんだおめでたい野郎だなテメェ、つかなんだこいつ・・・・・・俺の体に何しやがった!」

 

解析のためつけていた機械のコードを引きちぎり、マンドリカルドはベッドの上で立ち上がる。

どうしてかわからないが完全に怒っている・・・・・・彼の目つきはいつもより鋭く、眉間には深めの皺が刻まれていた。

宥めようにも逆ギレされそうな気がして全然言葉が出てこない。ああ、どうすればいいんだ。

 

「何しやがったって聞いてんだよテメェの耳は飾りかぁ!?飾りなら引きちぎってやってもいいんだぞ」

 

「・・・・・・何って、マンドリカルドの体を調べて」

 

「勝手なことすんじゃねえよ、俺をこの世界に留めることだけが仕事なマスターの分際で!!」

 

意味が分からない。

何故彼は豹変してしまったのだろうか・・・・・・これも、バーサーカーの仕業か。

答えはそれしかないというのに、混乱して考えがすぐばらけてしまう。一度、落ち着かなければならない。

 

「・・・・・・す、すまん」

 

「・・・・・・けっ」

 

マンドリカルドは徐に服を脱ぎ捨て武装し、ベッドから飛び降りた。

こんな夜分にどこへ行くというのだ。まさか勝手に戦いに行くつもりなのか。

 

「なんで武装した。今日はもう寝ていろ、まだ完全に回復したわけじゃないだろう」

 

「俺が人の命令なんて聞くかってんだよ!安心しろ、俺が全員ぶっ殺して聖杯分捕ってきてやるからテメェはここで優雅におねんねしてな」

 

どこからか出したあの木剣を肩に担ぎ、マンドリカルドは寝室を出て行ってしまった。

さすがにあのまま放っておくわけにもいかないと、俺は彼を追いかける。

協力しないとこの戦いは勝てないのだからと叫んでも止まってはくれない。

ついには家の外にまで出てしまった。周りに誰も通行人がいないからと、俺は走って彼の盾についたあの黄色い布を掴んで引き止めた。

 

「・・・・・・邪魔すんじゃねえ」

 

「邪魔するに決まってんだろ。どうしたんだよお前、そんな性格じゃなかったろ?」

 

自分に自信が持てなくていつも何かに萎縮したような佇まいだった彼と違う、目の前の”彼であり彼でない誰か”を見据え俺は呟くように言う。

何かをつかむことができて、自分を誇れるようになったのならばいい・・・・・・だが、これは違う。

拒絶の仕方が攻撃的かつ積極的になっただけで本質は何も変わっていない。

 

「ピーピーピーピーうるせえな・・・・・・帰れよ、俺にはお前なんざ必要ねえ」

 

「・・・・・・令呪使ってでも家に戻ってもらうぞ」

 

手袋を片方だけつけていても不自然だからと、令呪隠しのため新たに貼っていた大きな絆創膏を剥がして見せる。

大きな目のような禍々しい円形の模様・・・・・・さすがにこれをちらつかせれば少しは反応が変わってくれるはず。

 

「使ってみろよ、発動する前に宝具でお前のドタマかち割るぞ」

 

俺の眼前に剣の切っ先が突きつけられる。

彼から噴き出す殺気・・・・・・こいつは本気のようだ。

 

「・・・・・・令呪を持っ・・・・・・!」

 

「言うこと聞かねえ奴だなテメェはぁ!」

 

側頭部が木剣の腹で強く打ち据えられる。

サーヴァントの一撃に俺みたいな奴が耐えきれる訳もなく、一瞬にして意識は吹き飛んでいった。




地味に今回のサブタイ中の人関係だったりするのです・・・・・・(それがどうした)
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