Fate/Serment de victoire   作:マルシュバレー

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Interludeこれで一回終わります
次からやっと視点が元に戻る(はず)


34話 Interlude:夢でいいから

「・・・・・・マスターがどうした、俺はもうアイツの助けなんて借りずにこの戦争勝つつもりなんだよ」

 

いつの間にか雨が降り出し、さあさあと屋根に粒が当たって弾けていく。

風はなく、俺の背中や髪を濡らすことはない。

 

「なに、あいつのこっちゃからどうせお前には教えてへんと思う話を伝えときたいだけや・・・・・・それ聞いてどないするかはご自由にどうぞってわけ~」

 

呑気に鼻くそをほじりながら言う唐川。

俺がその気になれば一瞬でぶっ飛ばせるというのに余裕綽々な雰囲気を醸し出しているあたりとても怪しい。

無意識のうちに怪訝な顔つきをしてしまったのか、俺の表情を見て奴は笑った。

 

「嘘は言わへんよ?こういうとこでの嘘は俺の美学に反するからやね、信用してくれてべっちょおまへんで」

 

「・・・・・・わかったよ、さっさと言え」

 

敵対心マックスで睥睨するも向こうは気づかないフリ。調子が狂わされるから俺もこいつは嫌いなタイプだとわかった。

監督役じゃなくてマスターだったら真っ先に血祭りに上げてるところだ・・・・・・

 

「・・・・・・んじゃあお言葉に甘えて。まずライダーくん、お前のマスターが主だって使う魔術はなんや?」

 

「強化だが、それがどうした。何回かかけてもらったことはあるが、特に何の変哲もない術だったぞ」

 

特筆すべきことと言えば魔力が異様に体に馴染んだことくらいか。

強化の魔術を研究する七代目の魔術師ならば、あのレベルにまで達するのだろうし・・・・・・別に変なことはなにもない。

俺がそう答えたところで唐川は烈火のような色をたたえた唐辛子っぽい物を口にそのまま放り込んで咀嚼、飲み込んでからまたあの笑みを浮かべた。

 

「まあそんくらいは知っとって当然か。じゃあ、解析の方は食らったことあるか?」

 

「・・・・・・あるにはあるが」

 

あの、体の中にカテーテルを通され全身同時に広げられるようなあの感覚は体に染み着いている。

”アイツ”の中でも特に記憶に残った事柄なのだろう・・・・・・今でも、目を閉じるとあの感触が想起されてくるのだ。

 

「そうか・・・・・・わかったわ」

 

腕を組んでふんふんと唸る唐川。俺に質問するだけして肝心の話が何にも出てこないではないか。

やはり話すことなど何もなく、俺の状態を見たかっただけなのだろう・・・・・・

 

「お前さん、随分と溺愛されてんのやな」

 

「・・・・・・は?」

 

この程度でなぜ溺愛されてるとまで言われなければならないのだ。

確かに過保護というかそういう面はなきにしもあらずだが・・・・・・別に異常って程でもないだろう。

 

「あいつが他人のことそないに気にかけて知りたがるなんて珍しいわ。今年中に太陽爆発するんやないのってくらい珍しい」

 

「珍しい、か。どうだっていい話だ」

 

アイツが見ていたマスターはいつだって人と深く関わりたがらない人間だった。

喫茶店の人と司馬田とかいうの以外には優しそうな青年の顔をしてにこにこばっかしてるし、八方美人。

俺みたいな全方向性喧嘩売りマシーンとは大違いだ。

 

「お前もそんなこと言っとるけどな。心の内では愛されたいとか思っとるんやろ?」

 

「・・・・・・んなこと」

 

思っていない、訳ではなかった。

でもサーヴァントは、いつか消える時がくる・・・・・・俺はマスターと別れる時に未練なく消えたいだけなのだ。

俺だってアイツと同じくらい願望や欲望はあるけど、この身分で望んではいけないものばかり。

だから、無理やりゴミ箱にねじ込んでいるだけ。

 

「意外と噛み合うかもしれんで?平尾のヤツも似たような感じやしさ」

 

唐川は強くなってきた雨足を見て、こりゃ暫く帰れへんわとため息をついた。

どうやらまだここに居座るらしいが、叩き出す気にはなれない。

 

 

「・・・・・・アイツは昔俺が教会の手伝いしとったときにいきなり転がり込んできたんよ。雨降ってなかったのに髪の毛湿っとってな。洗い流したんやろけどめっちゃ血の臭いさせとって・・・・・・すぐおかしいってわかったわ」

 

前に見たマスターの記憶・・・・・・その続きだろうか。

あの凄惨な光景は脳裏に焼き付いたかのように離れない。

 

「そん時の俺が18やったからアイツは16くらいかね・・・・・・シスターに言われて介抱したはええけど一向になんも喋らんくてさ、俺はあの手この手使ってなんか言わせようとしたんやけどそん時のことが原因であんな毛嫌いしてくんねやろな」

 

何やったらあそこまで嫌悪されるようなことになるのだと言いたいが、どうせろくなことじゃないと想像がつくので結局聞くまでもない。

おもしろ半分に拷問紛いのことでもやってたんじゃねえの。

 

「まあそないなことは今や些事じゃ。そっからちょくちょく魔術師と聖堂教会関係者っちゅう役柄もあって絡むことがあったんやけど・・・・・・」

 

「もう結論言ってくれ、俺は寝てえんだよ」

 

日本語の特徴上そうなってしまうというのは理解できるがやっぱり冗長なのには耐え難い。

魔力の回復もしておかねばならぬというからできるだけ寝て消費量を減らしに行きたいのに・・・・・・

 

「・・・・・・せっかちやなあ。お望み通り言ったるけどさ・・・・・・あいつはお前のことを大切に思っとるっちゅうわけや。自分の命が惜しいからとか、そういう感情もあるやろけどな。でも、お前を守りたいって思いはそんな自己愛の現れじゃない・・・・・・純粋な感情よ」

 

「どうしてそこまでわかったような口がきけるんだよ」

 

「まーお前さんとあいつの絡みは一昨日しか見てへんけどさ・・・・・・現在進行形でガチガチのキモいくらいの感情見せつけられ・・・・・・いや何でもないわ」

 

なんかとんでもないことを言われたような気がするのだが、これは続きを言わせていいものなのか。

俺の霊基がさらに混沌へと向かうような予想しか立てられない。

 

「兎にも角にも、お前さんは愛されてるっちゅうこと。せっかくやったらお返しでもしてみいよ、あいつのこっちゃから絶対おもろい反応するはずやで」

 

にししし、と悪魔のような笑い声を唐川は上げた。やはり自分が楽しければなんでもいいという根っからの快楽主義者らしい。

少しだけ雨が収まったと見て、ヤツはそのまま休憩所から出てしまう。

今を逃せばいつ帰れるかわからんから、らしい。

 

「・・・・・・あんたは監督者側でしょ、なんで俺たちなんかに肩入れすんだよ」

 

「肩入れなんてしてへんよ。俺は俺の見たいものを追求しとるだけやさかいに、今回はお前のところへちょっかいかけに来ただけや。明日になったらまた別のおもろそうなとこ行くわい」

 

んじゃあな、と手だけ振って唐川は夜の闇に消えていった。

 

「なんなんだよあいつ」

 

変な奴、と俺は呟きながら椅子に再び寝転がる。

降りしきる雨はまた強くなってきて、俺の顔にも霧吹きの水がかかるように雨粒が飛んできた。

・・・・・・逆に、目が覚める。

 

「・・・・・・愛されてる、ねえ」

 

息が詰まるような、そんな感覚がした。

期待してしまう自分がいた。

差し出された手を握ってしまいたくなる自分がいた。

 

『マスターのところに謝りに行かないと』

 

『俺みたいな底辺のサーヴァントでも、ちゃんと気にかけてくれる人だから』

 

『少しだけ、夢を見させてくれ』

 

なんで、なんで、なんで。

生きていたときよりもさらに短い、1ヶ月もたぬ夢幻泡沫の命なのに・・・・・・この場所にいることそのものが夢のような話だというのに、なぜお前はさらに求める?

俺はひとりで何とかすると決めたのだ、誰の助けも貰わないと決めたのだ。邪魔をしないでくれ、俺を惑わさないでくれ。

幸せになってはいけない、それが悪役として定義づけられた俺の宿命。

マスターまで苦しませたくはない、苦痛を浴びるのは俺だけでいい。

俺はもう誰も、大切な人を失いたくないだけなのだ。

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