Fate/Serment de victoire 作:マルシュバレー
あとこの話を境に18時投稿へスイッチすることと相成りましたのでご理解ご協力(?)をお願いします。
35話 四日目:ニンジャサイコー
「っんだ・・・・・・体おっも」
バッチリ7時まで寝てしまったという不覚。だというのに体はとてもだるく重い。
・・・・・・マンドリカルドのヤツ、さてはサーヴァントとの戦いで宝具かなにか撃ちやがったな。
この世界にいることはわかるのだが、やはり居場所はどうやっても探れない。一晩あけて探知拒否を忘れてたりしないか、という淡い期待はここで潰えた。
魔力不足の頭痛も相まってかなりつらい・・・・・・このまま放っておけばマンドリカルドに精根果てるまで吸い尽くされそうな気がするから早く探し出して連行しないといけない。
「おーい海!もう朝だ起きろセラヴィ探しに行くぞ」
「あぁ~?朝ってのは9時からだろ早すぎるぞ」
こいつ、社会人になって時間の概念が崩壊したらしい。俺みたいな平社員ではなく重役だからなんだろうが、こんなんで人としてやってけるんだか。
これ以上待てないので俺は襖をしぺーんと開け、海を叩き起こしに行く。
「ってお前何ちゅうかっこしてんだ!」
簡単に言うと半裸、詳しく説明すると上がキャミソール一枚で下がハーフパンツ一枚。まだ肌寒さ残る季節というのにそんなものは関係なしとばかりのフリーダムさ加減、ため息が出る。
大胆にキャミソールはめくれあがりへそのあたりが丸見えだ・・・・・・こんな生き方してるけどお前も女だろと巻かれたそれの裾を戻してやる。
「よけいなお世話だっつの・・・・・・はーもう2時間も寝る時間減った」
「どう考えても過眠間違い無しなんだからこんくらいでいいの!」
ごねる海を一発しばき、無理やり意識を覚醒させる。
こんなんで事故られたらたまったもんじゃない、一応俺の命を預ける人間にはしっかりしていただきたい。
「朝飯食ってから行くけど、篠塚くんはご丁寧にあんたの分まで用意してくれてるんだとよ」
「そうか、じゃあありがたくいただくとしよう」
海を伴って食卓につくと、そこにはお言葉通り豪華な朝食がずらりと並んでいた。
種類も多くそのどれもが高いクオリティ・・・・・・昔彼は料理屋でもやってたんじゃないだろうか。
向かい合わせになる形で海と一緒に座り、俺は箸を取る。
「じゃあいただきます」
「いただきまーす」
初手テレビのリモコンを取って電源をつける海。いつもニュースかワイドショーを見るのが日課だそうで、この日は何時もより時間が早いため番組が違うことにご不満の様子。
人気のアナウンサーが誰それの結婚やら何やらを報道しているのだが、知らない俳優だったので興味も湧かん。
「続いてのニュースです。今日、──県舞綱市にて指定暴力団舞綱──組の幹部を含めた20人が暴行を受け重体、病院に運ばれたことがわかりました。県警は治療が終わり次第事情聴取をする予定だそうです。現時点で判明していることは、犯人が一人の男性であり・・・・・・黒髪に白いメッシュの入った髪型をしていたそうです。場合によっては───」
お茶の間が凍り付いたというのはこのことを言うのだろう。
黒髪に白いメッシュとか知ってる奴が一人いるんですが、というか昨日まで普通に会ってたんですが。
錆び付いた機械のように首をぎこぎこ回して海の方を見ると、さすがに奴も察したのか困ったような顔をして笑っていた。
「・・・・・・魔力摂取の為じゃね?」
「・・・・・・一般人相手にそういうことするなって言ってたのにとんでもない奴にちょっかいかけやがってあの野郎・・・・・・殺さなかっただけまだマシかもしれんが今回ばかりは逆にタチが悪い」
さすがにこれには頭を抱えざるを得ない。
無事にマンドリカルドを見つけても家へ帰るときに襲われそうで怖い・・・・・・どの道俺が死んでしまえばマンドリカルドも消えるので一緒の行動が取りにくいし、俺の防衛も兼ねて戦わなければいけないとなると彼にも負担がかかるだろう。
「監督の奴がなんとかしてくれることを祈るしかないな」
「唐川がご丁寧に記憶改竄とかしてくれると思うか?俺があの手の奴に追いかけ回されるの見てこれ幸いと唐辛子むさぼりながら傍観するに決まってる」
「・・・・・・あの人仕事自体はちゃんとして、自由なところで狂人になるタイプだろ。大丈夫だって」
精一杯海がフォローしてくれるが、俺には絶望的な未来しか見えない。
平尾家こんなところで終わりたくねえよ、取りあえず八代目見つけてぇよ・・・・・・
もうあいつがきっちり仕事するという一縷の望みに賭けるしかないという事実を飲み込み、俺は再び箸をとった。
「じゃあ法律の範囲内で飛ばして行くぞ」
「頼むわ」
ギリギリタンデム走行OKの車両でよかったなと軽口を飛ばしつつ、俺はヘルメットやグローブを装着する。
プロテクターに関しては一人分しかないので少々心許ないが、俺は魔術で防御が出来るため問題はない。
「じゃ、なんか緊急の要件あったら背中2回叩けな」
「あいよ」
エンジンをふかし、最速176km/hくらい出せるバイクは司馬田家のガレージを飛び出した。
この車種はタンデム走行が可能とはいえすることにはあまり適さないタイプなので俺の体勢はずいぶんきついがそれは我慢しなければならない・・・・・・死ぬよりマシだ。
先ほどのニュースで話があった暴力団云々の場所近辺を捜索するべく、まず俺たちは明海に向かった。
昨晩の話だからマンドリカルドはもう遠いところに行っているかもしれないが、とりあえずというわけである。
豪速で流れていく風景を見ながらマンドリカルドがいないかと動体視力を強化しつつ見てみるが見当たらない。
さて、彼はどこに行ってしまったのか・・・・・・
「・・・・・・もう一人サーヴァントがいりゃ探知してくれるんだけどな」
「んなもん俺にはいねえよ、自分で何とかしろ」
辛辣な海の言葉がグサリと刺さるが、こればっかりはドのつくレベルで正論なので俺の甘えを消し飛ばしてくれる。
海が協力してくれるだけありがたいと思わなければ。
明海でも特に都会化が進んでいる区域は一通り見て回ったがいない。
今持って行かれてる魔力量からして霊体化はしていないはずなので、どこかに姿はあると見ていいのだがやはり探索場所が広いとどうしても難しい。
「・・・・・・一回止まるぞ」
ある場所で海がバイクを道路の端に停めた。
トイレかなにかかと思ったがどうやらそうではなく、携帯に連絡が入ったらしい。
黒のスマホにクリアケースという女らしさ0のそれを手にとり、海は通話を始めた。
「もしもし司馬田ですけど・・・・・・あ、それらしきあとが見つかった?そうか、痕跡だけでもいい発見だ、場所は・・・・・・神足公園?了解了解、そのまま続けといてくれ」
なにかマンドリカルドのいた跡が発見されたようだ。
神足公園というと明海の北方にある大きな公園で、きれいなソメイヨシノが春咲き乱れるため花見の名所として県外からの観光客もよく訪れる場所だ。
今の時期は葉桜に移り変わる途中なので客足は少々減りつつあるくらいだが、それでもけっこういる花見客には見られなかったのだろうか。
「公園で戦闘の跡見つけたってよ。さっさと行くか」
「さっきの奴は誰だったんだ?お抱えの諜報員か何か?」
「ま、そんなところよ。ほらさっさと乗れ」
海に促され、俺はまたバイクの後ろに乗る。
いずれ腰をいわせそうな体勢だが、我慢・・・・・・