Fate/Serment de victoire 作:マルシュバレー
切符を切られる一歩手前のところまでトルクをぶち上げ公園へと向かう。
フルフェイスメットじゃなけりゃ絶対呼吸すらままならないぐらいの風圧・・・・・・海の体にしがみつきつつタンデム用ベルトをつけていなければ絶対俺はぶっ飛ばされそうだ。
「よくハーフのメットとゴーグルだけで耐えられるよなこいつの風圧!」
「苦しいのが気持ちいいんだよ、四年も乗ってなきゃあんなことも忘れるか?」
俺より破天荒なこいつはハーフメットでのツーリングなんて危ないと言われているのにも関わらずいつもこうだ。
いつか飛ばしすぎて事故っても知らんぞと言っても、一瞬でお陀仏になれるんなら別にいいんだよと変わらないめんどくさい奴。
「っしゃ、着いたぞ・・・・・・って、まぁーた派手にやったなこりゃ」
ゴーグルを外して海が笑う。
フルフェイスじゃあどうしても視界が狭いので俺もメットを脱ぎ公園を見たところ、所々に荒れ模様が認められる。
芝生が禿げていたり、木楢の木に何かしらが激突した様子、ベンチの足みたいな先の細いもので地面を抉ったようなところまである・・・・・・それに暗い場所だった故か騒がれていないものの、血痕らしきものまであたりには広がっていた。
一般の皆さんは事情を知らないせいか昨晩ここで花見終わりの酔っ払いが殴り合いの喧嘩でもしたんだろうと言っている・・・・・・まあ、サーヴァントなんていう常識外の存在がやったなんて答えなぞ、簡単に出せるわけがない。
「これがセラヴィって奴のいた痕跡だとすると・・・・・・こりゃ一騎は殺ったんだろうな。俺は誰が呼ばれたかなんて知らんからわからねえけど、お前なら推測はつくんじゃねえか?」
「・・・・・・俺が今まで出会ったのはセイバーとバーサーカーとランサーだ。バーサーカーはこんな戦闘をせず搦め手で来るだろうから除外できるし、セイバーはセラヴィが勝てるはずないって感じで震えていた相手だ・・・・・・いくら好戦的になったとはいえそう簡単に勝負を挑めるか・・・・・・」
そう考えると相手はアーチャー、ランサー、アサシン、アヴェンジャーの四騎のうちどれかである。
セイバーがどうかはわからないが、ここでは一旦除外しておこう。
「アーチャーだったら弓を使うはずだしこんな近接戦闘しかない痕跡にはならんだろ。矢かなにかが地面に刺さった痕の一つや二つなければおかしいし。アサシンは主戦法として一瞬で仕留める奇襲を使うだろうしこんな広範囲にまんべんなく形跡が残るかとなると怪しいし・・・・・・まあ、サーヴァントなんちゅう奴はいっくらでも例外持ちだしこれはただの偏見でしかないがな」
「・・・・・・まあ例外を持ち出したらキリがねえし、今は偏見で物を見るべきだ。とにかく、セラヴィは一騎戦闘によって消滅させまた行方をくらました・・・・・・俺の感覚で言うがそん時に宝具も使ってるはず。つっても手がかりがなあ」
なかなか絞り込めないのがきつい。
四日目にして少なくとも三騎と会っているだけまだマシなのかもしれないが、やはり判断材料が少なすぎる。
「どうする、街中ぐるんぐるん回ってるうちにもう昼時だが・・・・・・飯食いながら話でもすっか?」
「・・・・・・まあ、そうしとくか。やっぱりセラヴィに食われた魔力が結構な多量だから少しでも回復しておきたい」
体はまだ若干重たく、目もしぱしぱする。
宝具を使ったと仮定しても公園の状況からして対人の第一宝具、『
第二は存在だけがわかっているが情報は一切なくマンドリカルド自身も知らないもの、第三は説明からして辺りが否応なしで大惨事になる、第四は常時発動のパッシブ系宝具・・・・・・自然と答えは第一にたどり着く。
主力宝具がこれとなると本当の切り札にせざるを得ないのだが・・・・・・もしかしたら、他に魔力を消費する出来事があったのかもしれない。
「何食うつもりだ?」
「めんどくさいからハンバーガーで」
「りょーかーい」
近場のチェーン店で注文し、テイクアウト。
花見もかねてと言うわけで公園に戻って食いたいらしい・・・・・・海にもかわいいところがごくまれにある。
「妙齢の女性らしい理由だな」
「妙齢言うなきっしょいわ。額に根性焼きしてやろうかバカ」
「額はさすがに止めてくれ、つかしないでくれんなもん」
少しでも女の子らしく扱ったらこの豹変ぶりだ。困った輩である。
ハンバーガーの入った紙袋を公園の休憩所にあるテーブルへ放り投げ、海はどかっと椅子に座った。
「・・・・・・んだこれ、なんか落ちてるぞ」
海がテーブルにこぼれていた何かを拾ってこちらに見せつけてくる。
それは白い円盤状の粒・・・・・・少し赤い欠片がついているあたり、唐辛子かパプリカ類の種子だろう。
・・・・・・なんか、嫌な予感がした。
「もしかして昨日、唐川のヤツがここに来てたって可能性が・・・・・・」
「まあそりゃあるだろうな。清掃係が毎日ここらへん掃除するらしいし、そのときにこんなゴミあったらすぐ取ってるはずだろ。それにこんな場所で唐辛子やらピーマン食うようなやつなんてそうそういねえし」
ということは、少なくとも昨日の掃除が行われた後に来ていたってわけで。
基本山名地区の教会に入り浸るあいつのことだ、こんな場所まで来たとなると・・・・・・そりゃ、聖杯戦争関連だろう。
もしかして、戦闘の前後くらいでマンドリカルドと接触していたら・・・・・・絶対何かちょっかいかけてるに違いない。
俺の背中に冷や汗が走る。
「セラヴィの方からなにか異常があったとか知らされてるか?」
「いや何も。とりあえずこの世界にいるってのはわかるんだが、それ以外がどうしてもだめだ」
未だ接続が操作されているまんま。
令呪を使って強制的に呼ぶということも考えたが、飛んできた直後に逆上して俺を殺しにくるという可能性もある。
最善の手がわからないから、手をこまねき続けるしかない。
「マスターってのも不便なもんだねえ・・・・・・サーヴァントに嫌われちまえばただの外付け燃料タンクってか」
「・・・・・・確かに、そういう点は否めないな。英霊たるサーヴァントが現世に留まるための存在でもあるけど、今は殺さないでおくってくらいにしかならないし」
バーサーカーのせいとはいえ、俺の接し方も悪かったなと思うとなんだか辛い。
あのマンドリカルドであるが少し違う彼に、友達であるということを否定されたりもしたからだろうか。
もともとは俺が勝手に言いだして、向こうが謙遜という形でしか否定してこなかったせいか・・・・・・明確に嫌がられるとやっぱり哀しいものがあった。
「・・・・・・友達になりたかっただけなんだがな」
「お前の口からそんな言葉が出るなんてな。明後日くらいにここらへん魚でも降るんじゃねえか」
「ファフロツキーズ現象が起こるほどの異常事態なんかじゃねえだろ失礼な」
モノクルの鎖を揺らしながら海はこちらを見つめてくる。
そんな俺は孤独大好きマンだとでも思われていたのか・・・・・・心外な。
「そういや魔眼殺しの調整ちゃんとしてんのかよ。そのモノクル結構手酷い扱いばっかしてるだろ」
鼻あてやら蝶番あたりの破損がかなりわかりやすく見える。
普段から振り回したり激しい動きに巻き込まれているらしく、いつレンズが外れるかわからないくらいだ。
「ノウブルカラーなんだからちったあ気にしろよお前」
「説教垂れんじゃねえよこっちはちゃんと対策してるっつの」
アイスコーヒーをストローもつけずに飲みながら、海は呑気そうに呟いた。
門外漢の俺が言うのもなんだが、さすがにこの雑っぷりにはため息せざるを得ないのだ。