Fate/Serment de victoire 作:マルシュバレー
海の魔眼が持つ力は幻覚で、それもランクは黄金に近い結構強いヤツ。
魔眼殺しがあると言えど風呂やプールの類でははずさなければいけないため、その時は基本的に自らの姿を偽造(男っぽい体)に変えているそうだ。実際のところ俺はそうやって使用しているところを見たことがないためどんな感じだとかは言えない。
「お前も一歩間違えれば封印指定モノだったと考えりゃ、なんか感慨深いな。いい眼持ってるのにばっちり腐らせよって」
「現代社会で有効活用できる機会がねえんだよ。なに、姿消してマジックの手伝いでもしろってか?」
「んなわけないだろ、ほら・・・・・・他者への運命干渉なんちゅうとんでもないことホイホイ出来るんだから、うまいこと」
正直言って俺も活用法が戦闘と隠密以外で全く浮かばない。
サーモグラフィー的な奴まで誤魔化せるんだったらそりゃ不法侵入し放題だが、本人曰わく別にそんなこともないらしく。
海が毎度言うように”輝く場面がねえ”というのは本当なのだろう。
「まだ眼単体で魔力作って発動するからいいけど、これが俺の回路からちょろまかして展開だったら本当・・・・・・目くりぬいて売りに出してたわ」
「お前さあ」
せっかく持って生まれたものなのにありがたいとは思わんのかと聞いたところ、思わねえよと一蹴された。
時たまこいつは俺よりサバサバしてやがる。
「自分の好きなところとかねえのか、お前は」
「・・・・・・ないな。好きだったらこんな生き方してねえよ」
やっぱり煙草は体に悪いと自覚しているらしい。
・・・・・・だというのに改善しないからタチが悪いのだ。さっさと死にたいという願いを潜在的に後押ししているものだから煙草もやめたがらない。
照り焼きチキンのハンバーガーをじとーっとした目で食いながら、海は葉っぱまみれになった桜の木を見ていた。
「かくいうお前はどうなんだよ、自分の好きなところあんのか」
「・・・・・・そう言われると特筆すべきものはない」
結局俺もそんなもんだ。
魔術師としての生き方をそのままなぞってるうちに脱線し始めて・・・・・・そのまま流れるように、ビー玉がより低いところへ転がっていくかのように生きている。
毎日毎日ニコニコニコニコ、もっと楽しい生き方があるとわかってはいるけどどうにも変われないままだ。
・・・・・・俺だけしか辿ったことのない歴史、というものに憧れはするけど・・・・・・やっぱり、一歩を踏み出せない。
聖杯戦争というものが俺の人生で一番変わった出来事になるんじゃないだろうか。魔術師としてもそう簡単に参加できない儀式だし。
「まあ普通そんなもんさ。自分が結局何なのか、何がいいところかなんてわからずじまいで死ぬもんだ、人間ってのは」
「20代のいう言葉かこれが」
すでにいろいろ悟っているような物言いで海はオニオンリングを3個まとめて口に詰め込んだ。
海に全部食われる前に食べとかなきゃと、俺も急いでハンバーガーを食らった。
あれから結構探し回ったのだが、結局見つからずじまいでもう16時である。
季節が季節なのでまだ日はそれなりの高度にあるが、あと3時間もすれば日没なのでそれまでには見つけて連行したい。
とりあえず海岸の方まで来て探してみたが、やっぱりマンドリカルドはいない。
「・・・・・・もうどこ行ったんだよあいつ・・・・・・見つけ次第こめかみに拳骨グリグリしてやる」
「普通勝手な行動したサーヴァント相手にその程度で済ますか甘ちゃん」
「い、い、の、そ、れ、で!」
なんだかものすごくイライラしてきた。
買った缶コーヒーを飲み干し、缶をゴミ箱に投げ捨ててため息をつく。
なんで自分のサーヴァントに悩まされなければならないのだ、という気持ちが俺の中で大きくなっている・・・・・・だめだ、マンドリカルドは友達なんだから、ちょっとくらい扱いに手を焼いたところで怒っても仕方がない。
「・・・・・・お前さ、あいつのこと結局どういう存在だと思ってんだ。どう考えても部下みたいな感じじゃねえよな」
ボラードへ片足をのせ、よくある映画とかドラマの男みたいなかっこをして海を見る彼奴が唐突に問うてきた。
・・・・・・そう言われると少々複雑な感じもするが、とりあえず思っていることは言ったほうがいい。
「やっぱり、友達・・・・・・になりたいけどなりきれないくらいの奴だな。部下というか、奴隷みたいには扱えないわ。俺にはとうてい無理」
「・・・・・・ふーん」
どうでも良さそうな海の反応につい青筋を立てて怒りたくなるが大人げないのでやめておこう。
・・・・・・マンドリカルドのことを友としてちゃんと接してあげたいとは考えていても、今までを思い出せばただの押し付けがましい男であったなと思う。結局自分のことしか考えてないのだ、俺は。
「友達の定義って、何だろうな」
「それ考え出したら友達できねえし減るぞ・・・・・・って元からお前にゃいなかったか。俺みたいな社会不適合者のドクズ野郎くらいしか」
へっ、と海が不敵に笑う。
・・・・・・俺としては微妙なところなのだが、世間的に見ればこの関係は十分友人・・・・・・もしくは親友に値するものなのだろう。学校を卒業してから仕事関係もなしにちょくちょく絡むし飯も行くから。
「そうだな。俺にはお前みたいな歩く公害しかいねえよ、友達は」
「公害言うな」
だったら禁煙しろ、と反駁をぶつけたが海は意にも介さずといったところだ。
「まあ人の扱いなんて俺にゃわかんねえからさ、そういった関係は勝手にしとけっちゅう話だ。もうお前らが最終的に抜きつ抜かれつみたいになっても知らん」
抜きつ抜かれつのところになんかすごい悪意を練り込まれていたような感じがしたけども気のせいだろう。
海はいつものコートを翻しながら立ち、俺の方を向く。
きっちり刻まれた眉間のしわがなんか怖いけども、デフォルトでこれだからもう慣れた。
「ま、頑張れや」
「・・・・・・言われずとも」
留めたバイクの方へ海が歩いていったと思うと、ハンドルに引っかけていたヘルメットを投げ渡された。
もうそろそろ出発するぞ、ということなのか。
「さぁて、我が親友たんの友達候補探しますか」
「親友たん呼ばわりやめろ気持ち悪い」
時折海はこういった言い回しというかおちょくりを仕掛けてくるのが厄介だ。
俺が不機嫌そうな表情をしているとものすごく楽しそうに笑い、海はバイクへと跨がる。
俺は後ろからその体を抱きしめるような形になって乗り、落ちないよう体の角度を調整する。
「てめっ、どこ触ってんだ」
「お前も胸触られたら気にするんだな」
薄っぺらいが女のものであるそこに触ったら流石に怒られた。ついでに軽口を飛ばしたらどつき回された。
・・・・・・暴力ヒロインはもう一世代くらい前だぞとか言えない、絶対言えない。