Fate/Serment de victoire 作:マルシュバレー
「負けてたまるかってんだ、お前なんかに!!」
放たれる剣を膝当てや肩の防具で精一杯弾くがやはりその程度では凌ぎきれることもなく。
鎧の隙間から何本も、体内にねじ込まれてしまう。
「っんぐはぁ!?」
体の中が冷たい金属に冷やされたかと思うと溢れ出す血液で急激に熱くなる。
極力剣そのものへ触れないようにしながら抜き、昨日のように魔力によって無理やり出血を止めた。
ギルガメッシュとかいう金髪男は、その間何をするでもなく俺を観察していたが・・・・・・なぜとどめを刺さなかったのだ。
「・・・・・・なんで来ねえんだよ、俺を殺すには絶好の機会だったはずだ」
「なに、ここで始末すれば・・・・・・我がこんな三下へ本気を出したとでも思われて業腹なのでな。少し、遊んでやろうかと思ったのだ。喜べよ雑種、その頭地に擦り付け感涙に咽べ!」
ギルガメッシュが右手を振るう。
先ほどの剣たちと同じように虚空から現れるのは金色の鎖。
こんなものに貫かれれば動くことすらままならないと察した俺は後ろに飛び退いて大きな鉄材を掴む。
こんなに大きかったら取り回しがきかないと思って放置していたが、この際お構いなしだ。
「っぅらぁ!」
飛んでくるものたちを時に撃ち落とし、時に巻きつけ体への到達を防ぐ。
あの鎖を出している間は剣を飛ばしてこないと希望的観測をして、俺はギルガメッシュの方へ少しずつ進んでいく。
武器の差は歴然としているが、兎にも角にも戦うしかない。
「・・・・・・やはり、一本ではさすがに捕らえられぬか」
「なッ!?」
背後で何かが光ったと思い咄嗟に振り返ったが時既に遅し。
新たに現れた鎖は俺の四肢と首に素早く巻きつき、廃倉庫の床をぶち抜いて刺さる。今までの動きは全て舐めたプレイの最中であったと理解するのにそう時間はかからなかった。
「・・・・・・貴様、手加減してたってのか」
「そうするに決まっているだろう?我が本気を出したら最後・・・・・・お前はここ一帯の土地と纏めて塵一つ残らず消えるだろうしな。元より、我の本気なぞ・・・・・・友にしか見せるつもりはない」
なんの疑いもなくそう断言するギルガメッシュ。普通なら大法螺吹きとでもなんとでも言えるのだが、今回ばかりはさすがに不可能だ。
軽く手首を捻ろうとしたがびくともしない・・・・・・これほどの耐久だというのならもう俺に脱出できる目はない。
ただ、消える時を待つことしかできなくなった。
「やれ、天の鎖」
ギルガメッシュの命令に従い鎖は俺の腕や足を締め付ける。
首の鎖は何もしてこないが、これは呼吸ができなくなり俺が嗚咽を漏らせなくなることを避けるためだろう。
つくづく嫌な奴だ。
「・・・・・・ぐ、あぁあ・・・・・・が、ア!」
みしみしと骨が軋む。
激痛が俺の神経を焼くが逃げることは不可能。
先ほどの強制回復に使った魔力がかなり多く、マスターのところから奪うのにも時間がかかる。
宝具を発動できれば一本は斬れるかもしれないが、その間に俺の首が絞られ頸椎ごとちぎられるだろう。
そも、剣を編む魔力すら確保出来ていないのだ・・・・・・この状況を打開できる方法なぞ、ない。
「どうした、声が聞こえぬぞ?」
「ひ、イ・・・・・・あぁあああ──────────ッ!!」
ぎちぎち、鎖の締め上げが皮膚を巻き込んできた。
内出血から始まったそれはいつしか皮を絞めて切り、細く血の筋を流し始める。
倉庫の床にできる赤い円。水玉模様のごとく、ぽたぽたと灰色の地面を彩っていった。
「やめろ、さっさと・・・・・・殺るなら、首をもいで殺りやがれっ・・・・・・ぎ、うぐぁ!?」
腕の骨が折れ、変な方向にねじ曲がる。
砕けた骨の破片はその動きによって肌から飛び出し、僅かについた骨髄がぼたりと音を上げて落ちていく。
脳が麻痺するほどの痛みに絶叫することしかできない。
・・・・・・こんな辱めを受けるために召喚されたわけじゃないのにと叫びたかったが、声帯が思うように震えてはくれなかった。
「申し訳ないなぁ。我もこういった行為は好きではないのだが・・・・・・貴様のような雑種でもよいから、サーヴァントの体というものが診たいと望む者がいるのでな。我もつらい、と~ってもと~っても・・・・・・つらいのだぞ?」
心にも無いことを口から放ちつつ俺の姿を見て愉悦に耽る男。
ああ、この体が自由ならば、今すぐ八つ裂きにしてくれるというのに。
「・・・・・・っ、んな、勝手・・・・・・がぁ、っぐ通じると思うなッ・・・・・・あ、が、あぁ───────あぁあ!!」
体を締め上げる鎖が動き、俺は磔のような格好にされる。
言葉じゃ強がっているような素振りを見せているが実際のところ限界が近い・・・・・・このまま拷問じみた行為を続けられれば、心が折れてしまいそうだ。
歯を食いしばりながら胸元を見る・・・・・・そこには、あの時マスターから貰ったペンダントの石が緑色に輝いていて。
少しだけ申し訳ない気持ちになった。俺一人で聖杯を手に入れてみせると息巻いていたのに、このざまか。
これの礼も何も言えぬまま死ぬのかと思うと、目がじりじりと痛くなる。満足な答えも何も渡せないまま、俺は弱い人間のまま・・・・・・
「・・・・・・嫌、だ」
俺の中の何かが言う。
『抗え。それが例え、砂漠の中の水一滴にも満たない力だったとしても』
すでに原型をなんとか保っているレベルでしかない魂が言う。
『叫べ。それが例え、誰一人の耳にも届かなかったとしても』
弱音ばかり吐いていた俺が言う。
『戦え。それが例え、俺の名誉の為でなかったとしても』
いつ死ぬかわからないこの状況で何を無責任なと俺は笑いつつ、ギルガメッシュの方を向く。
・・・・・・消滅するのは、奴の鼻っ面をへし折ってからだ。